簡単なお知らせですが、もう更新日の目標とか建てません。好きな時に好きなように書いていくスタイルでいきます。
それと感想の方は絶対に読ませてもらいますが、返信して期待を持たせてしまうのも読んでくださる皆様に悪いような気がするので、返信も控えさせてもらいます。自分勝手で申し訳ありません。
一人の少年が机に向かい、紙に何かを書いている。時折筆が止まり、暫し何かを考えるように首を傾げ、再び書き始める。
「なんや随分と人間臭いな~、フェイトはん」
「自分でもこういう一面があったのかと驚いているよ。それで月詠、何か用かな?」
「士郎はんの調査がどんくらい進んだのかと思いまして~」
「どれ程かは分からないな。調べれば調べるほどに謎が増えるよ」
「ほなら今の段階でのフェイトはんの考察っちゅうのを聞きたいわぁ」
「…………そうだね。一度考えを纏める為に口に出すのも悪くない。君の疑問から解決の糸口が見つかる可能性もあるしね。まず衛宮士郎の出現した頃からだ」
フェイトの調査では士郎が表舞台に姿を見せたのはネギが麻帆良へとやってきた頃とほぼ同時期だ。奇妙なのはそれ以前の経歴が一切見つからない事。そしてどうやって麻帆良へとやってきたのか手段が不明な事。
今の士郎は一応は30歳とされているが、それが正しいかどうかも不明。肉体的に見ればそのくらいかもう少し若いくらいだが、エヴァンジェリンのように見た目と年齢が一致しない例などいくらでもある。
麻帆良に出現してからはエヴァンジェリン宅に居候として住み込み、用務員として仕事を行っている。魔法先生や魔法生徒が行う深夜の警備には参加していない。
「麻帆良へ来て以降、その経歴はしっかりと残っている。どの日、どこで、何をやっていたのかも調べれば大抵は判明する。しかしそれ以前が不自然なほどに経歴がないんだ」
「例えば~、整形して名前を変えたとかやったらどうどす?」
「そうだね、一般人ならそれでもおかしくはない。しかし衛宮士郎は魔法使いだ。それも特異な魔法を使用する。経歴を詐称しながら過ごしていたとしてもあんな魔法を使えばどこかしらで痕跡が残る」
「? 物を持ってくるだけの魔法やないんです?」
「一見するとそうだけど、よくよく調べていくとあれは転移系の魔法ではないのが分かった。無から有を生み出す魔法、という感じだ」
「お伽噺に出てくる魔法みたいやな~」
正確には魔力を消費しているので完全に無という訳ではないが、造り出される武具の中には内包された魔力が士郎の総魔力量を明らかに上回るものもあった。等価交換の原理を完全に無視している魔法。そんなものがこれまで見つからないとはとても考えづらい。
「そんなお伽噺のような魔法でありながら、彼の使う呪文は極めてシンプルだ。トレース、オンという呪文が基本。長くてもI am the bone of my sword.という呪文くらいか。始動キーすらなく、あの短い呪文。興味深い限りだ」
「ウチが気になるのはあの戦闘力やわ~。感じる剣の才能は凡才やのに、積み上げた経験で天才を凌駕する技術。一体どれだけの死闘を重ねればああなるんやろ~」
「彼の剣には才能がないのかい?」
剣術に関しては門外漢なフェイトにとって月詠の言葉はとても興味を惹かれるものだった。
「全くない、という程ではありまへん。でも凡人レベル。もしも経験が同じくらいで試合という形式なら~ウチでも刹那センパイでも余裕で勝てると思います~。あの明日菜っちゅう人でも勝てるんやないやろかね~」
性格に難があるが、剣士としては若くても一級品な月詠が言うのであれば彼女の言葉に間違いはないと思われる。そんな一級品を軽くあしらう凡人にはどれ程の経験を積み重ねればなれるのだろう。
「普通に戦地で戦うだけでああなると思うかい?」
「無理でしょうな~。剣も魔法も入り乱れるような大戦を何度も繰り返せば可能やと思いますえ。ああ、でも士郎はんが見た目通りの年齢とは限らへんし、何百年も戦い続けたら、普通の戦地での経験でもあれくらいはいくんとちゃいます?」
「見た目通りの年齢だったなら、それだけ濃い経験を積み重ねてきたと?」
フェイトが記憶する限り、先の大戦以外で大きな魔法戦争というものはそう多くはなく、かつ士郎の年齢以内では発生していない。士郎がエヴァンジェリンの従者である以上、彼女のような吸血鬼で不死の力を持っているのならば話は変わるが、フェイトとの戦いで負傷した腕の治療に木乃香の力が必要だったのを考えると吸血鬼ではないという結論になる。
「大規模な戦争が起こり、彼ほどの実力がある者が動けば必ず記録として残る。だがそんなものが微塵もないというのは不可思議でならない」
「そういえば~士郎はんの血を採取したって聞きましたけど、何か分からんかったんですか~?」
「ん、ああ、あれか。残念だが何もない。せいぜいが血液型と健康状態が判明したくらいだ。至って健康だったよ」
せめて身元くらいは判明するかと思われていた血液も何の情報も残してくれなかった。麻帆良に来る以前の経歴が無なのだから当然と言えば当然だった。
「まるで突然降ってきたみたいだ」
「それは面白い考えどすな~。この前テレビでやっとった未来からロボットが送られてくる映画みたいや」
「未来……? いやまさか……しかしそう考えると辻褄が合う……」
「ほえ?」
「しかし時間軸が違うだけで魔法がああも変化するか? 数千年単位なら或いは……だが現代への適応の早さをみるに……」
「フェイトはん? フェイトは~ん…………聞こえとらんわ。ま、ええか。考えが纏まったらまた聞きに来ます~」