学生達が待ちに待った学園祭が遂に開催された。学園都市が丸ごと祭りを開いているのだ。全国を見てもこれほど大規模な祭りは皆無だろう。
折角休みを貰ったので今日から暫くはこの学園祭を堪能させてもらおう。でも堪能出来るのは昼過ぎなんだけどな。
「炒飯大盛3つとラーメン2つ! 餃子5人前出来たぞ!」
「はい! こちら追加オーダーです! よろしくお願いします!」
朝から約束していた超包子での手伝いをしているんだが、開店と同時に満席になるほどの来客があり、そこからも客がどんどん押し寄せてくる。回転率は相当いい筈なのに席は一向に空く気配がなく、注文も止まらない。学園祭期間中に何千万円もの稼ぎを出すサークルがあるというのも頷ける。
しかしそれ以上に驚いたのは店員の動きだ。みんな無駄なくてきぱきと働いている。とても普段学生をやっているとは思えないほどだ。そしてこれほどの来客で一切の休みなく調理をしているのに全くクオリティが落ちていない。接客も同様だ。麻帆良の生徒恐るべし。
「ンー、そろそろピークも過ぎたカナ。士郎サン、助かったヨ」
「ピークが過ぎたって、まだ全然席が空いてないぞ」
「ここからどんどん減っていくヨ。とは言っても普段のお昼時くらいのお客は来るけどネ。それくらいなら増員した店員で事足りるヨ。士郎サンは学園祭を楽しんでくるヨロシ」
オーナーからこう言われては断れない。それに学園長から貰った休暇も学園祭を楽しむためのものだ。ここは2人の好意に甘えさせてもらおう。
「ありがとう。また忙しそうだったら声を掛けてくれ」
「ふふ、気持ちは受け取っておくヨ」
さて、これからどうしようか。正直予定は手伝いのみだったから、今後の計画が一切ない。学園祭を楽しむといってもむやみやたらに歩き回っていては広い麻帆良を効率的には歩けない。何か目標を立てていくのがいいんだけれど…………いくら規模が巨大でもあくまで学園祭は学園祭。各クラス毎に出し物がある筈。3ーAにでも行ってみよう。
おっ、ネギ君がドラキュラの格好をして看板を持っている。教師自らが客引きとは感心感心。狼男姿の小太郎もよく似合っている。あいつの場合種族が狗族とかいうのだからコスプレという感じが薄いな。
「調子はどうだ?」
「士郎さん! 今日は色々とお世話になりました。ありがとうございます!」
「? 何の話だ?」
俺は朝から超包子の手伝いをしていた。ネギ君と会ったのも今が最初だ。だというのにネギ君はまるで1日が終わったかのような挨拶をして来た。
よく分からないという雰囲気を醸し出していると何かに気が付いたようにネギ君はポンッと手を叩いた。
「そっか。士郎さんはまだ何も知らない士郎さんなんですね。混乱させてしまったようですみません」
「何も知らない? 説明してもらえるか?」
「はい。小太郎君、士郎さんと少し話すから、1人で客引きお願い」
「ん、その兄ちゃんは何も知らんのか。ええで、やっといたる」
小太郎も何の話か理解しているようだ。ネギ君は簡易的な防音結界を張った。
「これから話す事は突拍子もない、嘘のような話ですが、事実です。まずはそこを理解して下さい」
「ああ、分かった」
「僕は今日という日を4度繰り返しています。もっと噛み砕いて言うと、3回タイムスリップしています」
「タイム、スリップ!!!?!? ……それはこっちでは普遍的な魔法なのか?」
驚きの声をあげてしまうが、深呼吸をして落ち着いて訊ねる。タイムスリップ。時間移動。魔術の世界でも数少ない魔法に分類されるもの。それをネギ君が行っている? にわかには信じがたい。
「これは魔法ではなく、超さんから貰ったこのカシオペアという時計によるものです」
「なんだって? ならそのタイムスリップは科学技術によるものなのか?」
「僕の魔力も使うので正確には魔法と科学のハイブリッドになるかと。僕も最初は驚きました。タイムスリップなんてSF小説くらいでしか読んだ事がなかったですからね」
「だが事実なんだろう。超が天才なのは知っていたが、想像を遥かに上回っていたな。こんな魔法の領域に到達するなんて…………」
茶々丸の生みの親というだけでもノーベル賞ものだ。超の技術には畏怖すら感じる。遠坂といい超といい、どうにも俺の知り合いには常識はずれが多いように思うよ。
「この後何があるかは秘密にしておきます。もしかしたらここで話す事で色々と変化してしまうかもしれませんから。タイム、パラドックスでしたっけ? そういうのが起こっても困りますし」
「こうして話しているのは問題ないのか?」
「はい。他の周回の時に士郎さんは既にカシオペアについて知っていましたのできっとここで僕に聞いたんだと思います。他の僕に会った時はどうかよろしくお願いします」
どうやらこれから俺は不思議な体験をするらしい。今日は一体何人のネギ君と会う事になるのだろう。
「話はこれだけです。この後予定がないなら僕のクラスのホラーハウスを見ていきませんか? 面白いですよ」
「ああ、元々それが目的だからな。見学させてもらうよ」
ホラーハウス内
学生の作ったホラーハウスにしてはなかなか雰囲気があるな。装飾品も手作りなんだろうが、遊園地のアトラクション内に飾ってあってもおかしくないクオリティだ。流石は3ーAだ。目が良すぎて暗闇の中でもはっきりと見えてしまうのが惜しいと感じてしまう。脅かし方は年相応の可愛らしさがあるけどな。
「ひゅ~どろどろ~、お化けですよぉ」
…………はて、3ーAにこんな娘はいたかな? 幽霊役だろうか。脚が見えないとは本格的だ。
「こんにちは。君も3ーAの生徒なのかな?」
「えっ、あっ、こ、こんにちは。相坂さよといいます。3ーA生徒兼地縛霊です」
「地縛霊? 道理で脚が見えないわけだ。用務員の衛宮士郎だ。よろしく」
「はい、ネギ先生からも話は伺っていますし、校内でも何度もお見掛けしました。衛宮さんはわたしが見えるんですね。ネギ先生の予想通りです」
「目が良いのが自慢だからね。霊体との遭遇経験も人よりはあると思う」
「凄いんですね! これからもよろしくお願いします! あ、お帰りはあちらになります」
ホラーハウスに本物の幽霊とはな。本当に3ーAの生徒はバリエーション豊かで
「ってなんでさ!!」