士郎さんのアーティファクトについてまほネットで調査をしています。どうも、茶々丸です。士郎さんが我が家にやってきて早3日が過ぎました。士郎さんは私達が学校に行っている間は基本的に別荘にいるそうです。別荘はマスターの造った特殊な空間で、別荘内での1日が外での1時間となります。そこで鍛練をしている士郎さんから聞いたアーティファクトの性能なのですが、これがかなりおかしなものでした。
まず士郎さんの基礎能力を爆発的に上昇させます。運動能力は勿論、魔力、魔術の精度すらも高めてしまいます。また鎧自体の耐久性も非常に高く、マスターの魔弾の射手が簡単に弾かれてしまいます。しかし代償はこれまた大きなもので、今の士郎さんでは連続使用時間が10秒だそうです。何もしなくても1分が限度で、それ以上は死の危険性があるとの事です。自身のリミッターを解除する鎧と考えれば聞こえはいいですが、危険性があまりもの大きすぎます。それでも士郎さんは今それを扱う為に別荘にて鍛練を行っているようです。
私は私でそのアーティファクトについての情報があれば士郎さんの手助けになると考え調査をしているのですが、一切の情報がありません。誰かが過去に同じアーティファクトを手にしていたという事はなく、そもそもこの世界のものかも怪しいです。士郎さんの世界のアーティファクトかもしれません。
「茶々丸、買い物に行ってくるけれど、欲しいものあるか?」
「醤油、みりん、それと白味噌も残りが少なくなっていますのでお願いします」
「了解。チャチャゼロ、落ちるなよ?」
「ケケケ、ソレハ居候ノ動キ次第ダロ」
士郎さんはよくよく姉さんを頭に乗せています。姉さんことチャチャゼロはマスターが古くに造った人形で、長年マスターの相棒を務めていました。今ではマスターの魔力が少なくなり喋る事しか出来ないのですが……
どうにも姉さんと士郎さんは相性がいいらしく、士郎さんと刀剣談義に花を咲かせています。あまりに楽しそうなので少し羨ましくも感じます。
士郎さんが用務員として働くという事ですが、どうやら明日からになりそうです。元々早くて1週間後という予定で、それすら短いと感じていたのに更に短くなって士郎さんも驚いていました。逆にマスターはサボり先が増えると喜んでいました。きっとこれからは用務員室に入り浸るのでしょうね。
あ、もうこんな時間。マスターを起こして学校に向かいましょう。
ーーーーーー
人形を頭に乗せて歩く190近い男の姿はかなり目立つのか、道行く人がチラ見をしていく。士郎はそんな人々の目を気にする事もなく淡々と買い物をしていたが、あるところで止まってしまった。
「ドーシタ居候。服ノ悩ミカ?」
「作業着をどうするか悩んでな」
女子中等部の用務員という事であまり汚れた格好は出来ないので作業着もいくつか数を用意しておこうと士郎は考えたものの、これが想像以上に種類豊富だった。
「こっちは洗濯が楽だな。汚れも落ちやすい。でも色が派手で汚れが目立つよな。これは暗い色で汚れが目立ちにくいけど、機能性に難があるか……」
服に悩む士郎の姿を笑いながら見ていたチャチャゼロだが、選ぶ時間がかなり長く暇になってきた。自身では動けないのでやれる事も少ない。精々士郎をおちょくる程度だ。
「居候、暇ダ。早ク終ワラセロ」
「もう少しだけ。この2つのどっちかにするんだ」
「ナラ黒ニシロ。妹カラ買イ物頼マレタナラ、ソッチモサッサト終ワラセチマエ」
「むっ、そうだな。すみません、この黒の作業着を……5着お願いします」
自分の買い物を済ませ、次は食材を買う。今晩の献立を考えながら食材とにらめっこをしていると、外が騒がしくなってきた。どうやら下校時刻になったらしい。自分には関係ない事と再び買い物を始めた士郎の背後から声がかかる。
「士郎さん? 夕飯しとるん?」
「木乃香か。そっちも同じか? 学校帰りにお疲れ様」
「うん。最近新しいルームメイトが増えたからいっぱい料理作らないとあかんのよ。士郎さんは今晩はどうする?」
「今日は鮭のグラタンかな」
「ええねグラタン。手間の割には量も作れるし、うちもそうしよっ。士郎さん、一緒に回ってもええ?」
「勿論」
基本的な材料は変わらないので同じような売り場を回る。しかし士郎はどうやらホワイトソースから作るようだ。
「士郎さんは手間掛けるんやね。うちホワイトソースから作ったことないわ」
「暇がある時にでも挑戦してみるといいよ。慣れるまで難しいかもしれないけれど、じっくり時間を掛けて覚えていけばいい」
「ほなら今度の休みにでもチャレンジしてみようかな。そういえば士郎さんは何で頭にお人形さん乗せてるん?」
「……頼まれたからかな」
ーーーーーー
思ったよりも荷物が多くなってしまった。やはり作業着がかなりかさ張ってしまう。重さは問題ないけれど、人とすれ違う時にぶつかってしまいそうだ。まあもうすぐ森に入る。そうすれば人を気にする必要もない。
「よし到着」
「オイオイ、マダ家カラダイブ離レテッゾ」
「チャチャゼロ、分かってて言っているだろ。そこの君、出てきてくれ」
「……いつから気が付いていた?」
木陰から出てきたのは木乃香と同じ制服を着たサイドテールの少女。しかしながら彼女の気配は戦士のもの。背中の長い竹刀袋に入っているのは真剣か。
「木乃香と買い物をした時に視線を感じてな。俺を狙っていると確信を持ったのは木乃香と別れた直後だ」
「そうか。ならば端的に貴様が何者か、何故お嬢様に近づいたのか答えてもらおうか!」
あと1話か2話書いたらネギ君が出ます