BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜 作:ジーザス
…ということでどうぞ〜
ドカーン!
『あわわわわ!…むぐ!』
ドシーン!
『いたたたたた。ふぬ!ふっ!よいしょ!…また失敗っスね』
別段することがなく〈瀞霊廷〉を徘徊していると、自分の上から爆発音が聞こえてきたので見上げる。
黄色の髪色をした如何にも「悪戯大好きです」と言わんばかりの青年が、気の抜けた声音を発しながら落下してきた。
正面から地面に突っ込んだ顔を、妙な腰の動きで抜き出した男と視線が合ってしまう。互いに気まずく、どう声をかければ良いのかわからない。
『あ~、なんにも見てないんで。俺はこれで失礼します』
『すんませんね。アタシ実験が趣味なもんで、暇あればやっちゃうんスよ』
『いや、人それぞれだから気にしなくていいと思います。俺も似たようなもんですから』
『実験をしてるんスか?』
嬉しそうに聞いてくる青年に、少しばかり圧倒されて引いてしまった。
根は悪い人ではないと思う。
そう思ったのは、瞳の中にある光が歓喜に震える瞬間を待っているように輝いていたからだ。傍目では頼りなさそうな男だが、少し人を観察する趣味があればそれぐらいは見抜ける。
誰もしないようなことをしていれば、不気味と思われてしまう。だが
それを考えると、この青年も唯の趣味で終わるような軟弱者ではないと思いたくなる。
『そういうわけではなく。暇さえあれば〈瀞霊廷〉を徘徊しているから、時間を潰す方法はその人のしたいことだと思ったので』
『へぇ~。あ、アタシ〈二番隊〉第七席 浦原喜助といいます。以後よろしくお願いします』
『〈十一番隊〉第七席 雷蔵です。よろしくお願いします』
『あの〈剣八〉のいる隊の隊士さんなんスね。喧嘩したら負けそうっス』
『そこに配属されたからといって、剣の腕が高いかどうかはわからないよ。そもそも自分が志望届出さなかったから、そこに配属されただけだし』
〈真央霊術院〉を卒業する院生は卒業半年前頃、成績優秀者宛に自分の志望隊を記入して提出する義務が発生する。
100%の院生が記入するが、極稀に記入しない院生が出てくる。希望者が少なかった隊に、自然に配属されることになっている。
〈一番隊〉は成績優秀者の中でもトップ3だけが志望できるが、許可を得られることはそうそう無い。〈一番隊〉の入隊試験に合格できた院生は、過去数百年の中でも片手で数える程度だ。
『貴方が数十年ぶりに、志望届に隊の名前を書かなかった5年前の主席さんなんスね。5年で七席って相当だと思いますよ』
『そう言う君こそ院始まって以来の問題児だって聞いたよ。なんでも実験で、教室丸々一個吹っ飛ばした異端児だってね』
『…それかんなり院長に口止めさせたんスけどね。まだ懲りてないんスかあのヒゲ爺は』
『口悪いな。それを含めても面白い奴と思うけど。じゃあまたどっかで会おう』
そう言って俺は徘徊を再開した。
『雷蔵サンっスか、また会えたら研究手伝ってもらいましょうかね』
『こらぁ!浦原またやりよったな!?今度という今度は許さん大人しくお縄に付け!』
『やっべ逃げますか』
この辺りを統括している地主に怒鳴られて、喜助はその場から変な走り方で逃走した。
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〈穿界門〉を抜けた一護たちは、浦原の遊びが入った回収方法で〈現世〉に帰還した。
「お帰んなさい黒崎サン。…聞いてますよね?アタシのこと」
「…ああ」
振り返って喜助は被っていた帽子を脱ぎ胸に当てる。そのまま深々と頭を下げた。
「…本当にすいませんでした。アタシは何も告げず、あなた達を送り出しました。情報も渡さず自分のことも説明せずに。向こうでどんなことがあったのか。アタシには想像することしか出来ません。アタシの話を聞いて黒崎サンが後悔するんじゃないか、黒崎サンが自分を殺しに帰ってくるんじゃないか。1日1日を怯えながら過ごしてました。でもアタシはそれを心の何処かで望んでいたのかもしれません。黒崎サンたちが帰ってきて喜びと同時に哀しみも感じました。…そんなアタシでも黒崎サン・井上サン・石田サン・茶度サン、あなた達は許してくれるんですか?信じてくれるんですか?」
許しを請う眼ではない。どのような批判も罵倒も受け止める覚悟で見上げる喜助に、4人は穏やかな笑みを浮かべてこう言った。
「「「「もちろん
「…皆さん優しすぎます。これじゃあ泣いちゃうじゃないですか」
喜助は言葉通り眼から涙をこぼして泣き崩れる。そんな普段見られない喜助の様子に鉄裁も雨もジン太も、どう声をかけたら良いのかわからないようで、困惑した表情をしているだけだ。
「俺たちはあんたから戦う術と強くなることを教えてもらった。たとえあんたのしたことが間違いでも、俺たちにしてくれたことに変わりねぇ。それに俺たちはあんたがしたことが悪いことだなんて思っちゃいない。だから浦原さんは前向いて顔上げていつものように軽い感じで生きていけば良いと思う。…ここで追い打ちかけるようで悪いけど伝言があるんだ。『伝えるべきことは伝えろ』だってさ」
「…一体誰からっスか?」
「雷蔵さんから。親友のあんたに伝えたいって言ってた」
「…何も告げずに去ったアタシのことを、まだ
喜助は嗚咽を漏らして少しの間、喜びによる男泣きを続けた。
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雷蔵はようやく腹部の傷が癒えて自由に行動することが許されると、一角と弓親を〈十一番隊〉の隊長室に呼び出した。
自由に行動することを許可されたといったものの、激しい運動は制限されている。《卍解》はおろか《始解》することも許可されなかった。
もちろん模範稽古も白熱する可能性があるので自らすることはなく、隊士たちの素振りの指摘程度に控えていた。
「それで用とは一体なんでしょう?隊長」
稽古中に呼び出された2人は、訝しげに眉をひそめて雷蔵に聞いている。訝しげにしているのは呼び出されたことだけではない。隊長が普段羽織っているべき、
「隊長、なんで隊首羽織着てないんすか?」
「それも含めて今から話す。できるだけ落ち着いて聞いてくれ」
雷蔵は少しばかり長い沈黙の後、衝撃の言葉を発した。
「俺は
「「…は?」」
まさかの隊長辞任の言葉に、2人は何を言ったのか理解できず、間抜けな顔をさらしていた。
「一体何を言ってるんすか!?隊長が辞めたら誰が代わりを務めるんすか!?」
「…言っては失礼ですけど、今の〈十一番隊〉に代わりを務められる死神はいません」
「わかっている。それを踏まえて俺は言っているんだ。一昨日、総隊長に『隊長辞任届』を提出して正式に受理された」
「そんな…」
よほどショックだったのだろう、一角はその場に崩れ落ちてしまった。弓親はいなくなるのが嫌だが、本人が決めたことに口を出してはならないと必死に自分に言い聞かせている。
「俺はもともと
「隊長、それはどういう意味ですか?」
「『隊長辞任届』を提出前に言われた。
『
と」
「それで隊長はなんと仰ったんですか?」
「もちろんお受けしたさ。雛森とイヅルを放っておくわけにはいかないからな。修兵は狛村がどうにかしているから含まれてはいないが」
主犯である藍染の所属していた〈五番隊〉・右腕のギンの〈三番隊〉・そして東仙の〈九番隊〉は、他の隊士から酷い差別的扱いを受けている。特に〈十一番隊〉によって。
それは仕方の無いことでもあるが、彼等には罪は一切無い。彼等もまた犠牲者なのだから。それを理解しているとはいえ、裏切りの隊長が所属していた隊の隊士を攻撃しなければ、自我を保てないほどに精神的ダメージを受けていた。
彼等もしてはならないとわかってはいるものの、そうしなければ気が済まない。
これらから彼等を守りショックから立ち直らせること、そして何より力を付け、きたる藍染との全面戦争に備えるために雷蔵へ下された指令だ。
「俺は〈十一番隊〉から離れるが、お前らと志が変わるわけじゃない。それから俺がいなくなった後はお前らが隊をまとめろ。弓親は書類整理が出来るし、一角は今の〈十一番隊〉で一番強い。
隊首羽織を一角と弓親に渡して横を通り出て行く。
「「隊長!」」
「…なんだ?」
2人が声をそろえて俺雷蔵の名を呼ぶ。
「俺は隊長の下で戦うことができて嬉しかったです!」
「僕も一角と同じです。隊長、隊長は
涙を流しながら俺に問いかける2人に、雷蔵は背を向けたまま答えた。
「それは俺が決めることじゃない。俺の意思だけではなく誰かの想いがそこへの道を作る。…だがこれだけは言っておこう。お前らは俺にとって自慢できる部下だ」
振り向かないので2人がどんな表情をしているのかは見えない。だが声と雰囲気からして、雷蔵は2人が涙を流しながらも笑顔を浮かべているのではないかと思った。
今振り向けば、ここで育てた2人との思い出が溢れて覚悟が揺らぎそうになる。覚悟したなら曲げない。それは喜助がいなくなってから決めた自分への戒めだ。
雷蔵は新たな希望を胸に一歩足を踏み出した。
「よーし、じゃあ今から
「「隊長、よろしくお願いします!」」
隊舎前の入り口に立っている
「〈護廷十三隊〉史上初の共同部隊の隊長になった雷蔵だ。藍染とギンのことで落ち込んでいるかもしれないが、それを含めて俺がなんとかする。だから俺に全部預けろ」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
嫌がらせを受けていたとは思えないほど穏やかで覚悟に満ちた隊士たちの声を聞いて、雷蔵は己の選択が間違っていなかったのだと深く実感した。
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『雛森、イヅル。時間があればいいか?』
そう言って俺は書類整理をしていた2人を、〈瀞霊廷〉の端にあるのどかな丘に連れてきて寝転んだ。
『えっと、雷蔵隊長?』
『いいから俺と同じように寝転がれ。今は心を癒やすのが一番だ』
そう言うと2人は俺を挟んで寝転ぶ。左に雛森、右にイヅルという位置で。
『雷蔵隊長、藍染
『始末されるだろうな。あれだけの事件を起こした主犯なのだから』
『ということは市丸
『藍染よりはマシだろうけど、どちらにせよ生半可な刑で済まないだろうな』
2人の疑問に俺は率直に答える。遠回しな言い方では余計な希望や願いを与えることになる。それを考慮してストレートに答えた。
『あたし、藍染
『知ってるよ。確か藍染の剣技と《鬼道》に魅了されたんだったね?』
『はい、でもまさかこんなことになるなんて…』
『「憧れは理解から最も遠い感情」とあいつは言うだろうが、俺はそう思わない。〈憧れ〉ほど自分を高めるきっかけを与えてくれる感情はほとんどないからね。負けたくない、乗り越えてみせるといった向上心も、自分を高めるきっかけにはなる。だが、〈憧れ〉は、その人と同じような存在になりたいという感情から発生する。どの感情よりいいものだ」
『僕も雛森くんと同じように市丸
2人は空を見上げながら、自分の想いを素直に述べてくれる。
それはこうして周りを何にも囲まれず、開放的な場所でのんびりと自然を感じられるからだろう。
そうなるとわかって俺はここに2人を連れてきていた。
『昨日、俺は〈十一番隊〉隊長を辞めた』
『…何故ですか?』
『今までの俺は仮の隊長だったからな。それにやるべきことができたのもあった。総隊長直々に言い渡された「三番隊と五番隊をまとめあげろ」と。2人は俺がまとめあげてもついてきてくれるか?』
『だから新しく隊舎が建てられていたんですね?もちろん付いていきます!…でも〈十一番隊〉はどうなるんでしょうか?』
雛森の疑問はもっともだ。俺が抜ければ一角と弓親しか支える隊士はいなくなる。それでも俺はこちらを優先すると決めた。
『一角と弓親がまとめあげるさ。あの2人は仲が良いし、書類整理も遅いが出来ないわけじゃないからな』
『そのことはいつお伝えするんですか?』
『明日だ。明日2人に告げて俺は〈十一番隊〉を去る。…そんな申し訳なさそうな顔をするなよ2人とも。お前らが悪いわけじゃないんだ。それに俺が自ら望んだのもある。お前らを放っておけないんだなんだか
優しく2人の頭を撫でてやると、嬉しいのか僅かに涙を浮かべて微笑んでくれた。笑わせるためにこうやって2人をここに連れて来たのだ。こうでもないと辛い。
『明日から頼むよ雛森
『『よろしくお願いします雷蔵
こうして〈三番隊・五番隊共同部隊〉が正式に発足したのだった。
書きながら声優さんの声を使って脳内再生していると涙出て来ました。作者が涙脆いだけです。某超絶大ヒットアニメ映画を見てから涙腺崩壊しやすいんですよなんででしょうね〜誰か教えくれぇ〜!
はい、ということで尸魂界救出編これにて終了となります。
雛森とイヅルは原作では藍染が使えるとして自分とギンの部下にしたと言っていますが作者の方では自ら望んでそこにいったということにしています。すみません。
さてさてさ〜て、次話はどうしようか悩んでいる作者です。破面編を書くのかちょこっと番外編を書くのかまあ、書いたとしても「あれ」を使うだけなんですけどね〜。
ではまたお会いしましょう〜