BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜   作:ジーザス

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今回は少し本編から離れて気分転換にこちらを書きました。

映画の中ではこれが一番好きなので物語をこれにして書いています。

ではどうぞ~


The Diamonddust Rebellion~もう一つの氷輪丸


巨大な長寿の木々が生え、謎の植物が自生する森のぽっかりと空いた空間に少年が1人ポツンと佇んでいる。

 

だがその様子は森に迷い込み、途方に暮れている者のそれではない。何かを待つ、いや現れるのを待っているかのようだ。その空間は不気味に傷跡が多く残っている。新しいものから古いものまで。数多の爪痕が地面や幹に刻み込まれている。

 

【ーーーーーーーーーーーーーー!】

 

言葉に表せないような鳴き声が聞こえ、目の前の木々が大きく揺れ始める。木々をなぎ倒しながら現れたのは四足歩行の獣だった。

 

鋭い爪が生え、逞しく鍛え上げられた強靭で鋼のような筋肉に覆われた手足。碧色の体毛に黒が若干混ざったの体毛が全身を覆っている。

 

長い尻尾は硬く、鱗状の鎧で隙間なく覆われている。

 

そんな獣を少年は恐れることなく見上げていた。その眼の光りは恐怖で立ち竦む軟弱者の眼ではなく、出会えたことに対する歓喜で満たされていた。

 

【我が名は○○。小僧、貴様が従えるというのか?《無双の狩人》と二つ名を与えられし我、雷狼竜を】

 

およそ獣が出すような声ではない、もはや唸りのような声は本能的に危機を感じさせる。いや、それでは生ぬるい。

 

原始的な恐怖を与えるかのような圧力だ。

 

『そうだ』

 

その唸りを聞いても少年は後退らず、なんと一歩踏み出して応えた。それに対して獣は琥珀色の瞳を向ける。

 

【まだ年端もゆかぬ小童が我を持つか。汝に問おう。我を持つ理由はなんだ?斬るためか?殺すためか?戦うためか?】

『護るためだ』

【護るためだと?滑稽滑稽、実に哀れよ。小童は何を護る?】

『仲間を、友人を』

 

それを聞いた《無双の狩人》は黙り込んだ。何故黙り込んだのか。何故何も言わず、少年の黒い瞳を覗き込んでいるのだろうか。

 

何故(なにゆえ)そこに己の命は含まれない?】

『自分の命など、他の価値ある命より安いからだ』

【何を以て生命の価値は変わる?】

『…存在意義だ』

 

僅かに間をとったのは、己のリズムに相手を乗せるためだ。《無双の狩人》の瞳が、少年を鋭く睨みつける。

 

【小童にはないと申すか?】

『この程度の命欲しかったらくれてやる』

【笑止!…だがお前には興味が湧いた。いいだろう小童、お前を主として認めてやる。…呼べ!我が名は…】

『《雷天》!』

 

少年が叫んだ瞬間、彼の差し出した右手には刀身が碧く、柄が黒の混ざった蒼色の美しい斬魄刀が一振り握られていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

第1話 決別

 

 

 

 

 

 

 

瞼を持ち上げるとそこはいつもの隊長室だった。

 

隣では穏やかな寝顔であどけない姿の雛森が寝ている。笑みを浮かべながらずれた掛け布団をかけてやり、そのまま起き上がる。

 

さっきまで懐かしい過去を見ていた。見るのはどのくらいぶりだろうか。何年いや、何十年ぶりかもしれない。

 

『起きたの?雷蔵』

「珍しいな。【具象化】するなんて」

 

声が聞こえた方向に顔を向けると、人間の姿をした《雷天》が、惜しげも無く細いが健康的な脚を見せながら、魅惑的な笑みを浮かべてベッドに腰掛けていた。

 

『ときにはこっちの世界にも来たくなるの』

「相変わらず【マイペース】なことで」

『精神世界ではなくこっちで話すのはダメ?』

「誰もダメとは言っていないだろう?」

 

上目遣いで見てくる《雷天》に苦笑しながら答えると、途端に機嫌を直して鼻歌を歌い始めた。

 

『ふふんふふふん、ふふふふふん。ふふふふふふん、ふふふふふふん。ふふふふふふん、ふふふふふん。ふふふふふふんふふふふんふん』

 

久しぶりの《雷天》が【具象化】した姿は、本当に目のやり場に困る。必要最低限しか衣類を身につけていないせいだ。

 

別に乱菊のように特別グラマーというわけではない。何しろ服装が服装なので、誰かに見られたらどんなことを言われるかわかったものではない。

 

出会った頃のような棘のあるなりは姿を潜めている。美人と美少女の間の微妙な容姿の姿がお気に入りらしく、初めて【具象化】させた頃からずっとその姿のままだ。

 

〈現世〉から一護がもってきた喜助お好みの茶を、沸かした湯とともに湯飲みに注いで一口すする。

 

「あ、おはようございます隊長」

 

最悪のタイミングで起きた雛森と雷蔵の視線が交差する。不思議そうに首を傾げた雛森は、自分の近くのベッドに腰を下ろしている人物を見て硬直した。

 

パリーン!

 

雷蔵が頭を抱える。愛用の湯呑みを落として、割ったことさえ気付いていない。

 

「た、た、隊長!?誰ですかこの女性(ひと)は!?はっ、まさか隊長のっ!」

「うおい待て!違う違う違ぁう!こいつは俺の斬魄刀!勝手に【具象化】しただけ!」

 

必死に弁明を図る雷蔵だが、悪ノリした《雷天》が爆弾発言をする。

 

『嘘つき、雷蔵のバカ。昨日、あんなにしたのに(・・・・・・・・)///』

 

顔を真っ赤にしながら(・・・・・・・)胸の前で両手を交差させている姿(・・・・・・・・・・)を見て、雛森の感情は爆発した。

 

「た、た、た、隊長のぉ、バカァ〜!」

「ぶべらぁ!」

 

左頬を涙を流している雛森に、思いっきりビンタされた雷蔵は、奇声を発して大きく吹き飛ぶ。窓を突き破って三・五共同隊隊舎の中庭へと突っ込んでいった。

 

「はぁはぁはぁ、隊長のバカっ!」

 

大きく息を吐いてズカズカと隊長室を出て行く雛森に向かって、《雷天》はヒラヒラと手を振りながら見送る。

 

『久々に雷蔵の面白い顔見れたから良しとしようかな。じゃあね〜雷蔵また会おうね。浮気はダメだぞ☆』

 

中庭で伸びている雷蔵にウインクを残して、《雷天》は【具象化】を解いた。

 

 

 

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「う、痛い…」

「大丈夫ですか?隊長」

「…なんとか。どちらかというと頬より心が痛い」

 

心配されて弱々しい笑みを浮かべた雷蔵を見て、イヅルは大丈夫ではないと余計に心配になった。

 

「何があったのか僕は知りませんけど。雛森くん、相当怒ってましたよ?」

「怒られるようなことしてないんだけど。斬魄刀が勝手に【具象化】して、それを勘違いした雛森に非があると思うんだが」

「原因が【具象化】ですか。隊長のがどんなのか知りませんけど、大事な任務の前に疲れてたらヤバイですよ?」

「雛森のせいなんだけどな…」

 

今日は新しく隊を作ってから最初の大きな任務なのだ。ランクで言えばSクラス。

 

クラスは上からS.A.B.C.Dとなっており、A.B.C.D.はさらに2つの階級に分けられる。つまり全てで9つの階級があるということ。

 

だから今日は最上級に重要な任務だ。それなのに老人のように萎れている雷蔵を見て、イヅルは完遂できるのか心底心配だった。

 

雷蔵は中庭で伸びているところを隊士に保護され、どうにか歩けるぐらいにまでは復活した。窓の割れ方と雷蔵の腫れた左頬を見て、イヅルは何があったのかをある程度まで予測した。

 

おそらく雛森が何か重要なことを言ったにもかかわらず、盛大に勘違いした雷蔵が雛森にパンチされたのだと。イヅルの予測は間違いではないが少しずれている。まあ、目撃していないのだから仕方ない。

 

「…やるか。全員配置につけ。任務開始だ」

「「「「「「はい!」」」」」

 

立ち直った雷蔵が命令を出すと、隊士たちは自分たちの持ち場へと散っていった。

 

「まったく金をかけやがるな王族は」

 

遠くに見える影を見ながらボヤく。半ば本気の呆れが含まれているのは、気のせいではないだろう。

 

「権威には飾りが必要だからな」

「言い過ぎじゃないか?冬獅郎」

 

隣に立つ友人の辛辣な言葉に苦笑しながら言うと、自分の言い方に悪意を込めすぎたことに気付いたのだろう。同じように苦笑する。

 

ここへ来るまでに〈十番隊〉は、すでに配置を終了させている。〈三・五共同隊〉が遅れたのは、雷蔵が立ち直るのに少し時間がかかったからである。

 

「〈王印〉か。一体どんなものなのやら」

「俺たちには知らされない王家の重要な何かなんだろうさ」

「少しぐらい教えてくれてもいいのにな」

「機密事項まで漏らすわけにはいかないさ。藍染のことがあったばかりだからな。今は特に」

「…そうだな」

 

あれからまだ3週間しか経っていない。反逆者の藍染・市丸・東仙が去ってからわずかな期間。〈護廷十三隊〉への信頼は回復しているとは言えない。

 

それでもショックを受けた者たちも、ようやく元の生活に戻り始めている。

 

「だからって数十年に一度、こうして保管庫を遷移させなくともいいだろうに。さらにはあの事件の直後と来た。嫌みかよ」

「あまり大きな声を出すな。聞かれるぞ?」

「はん、それぐらい屁でもねえわ」

 

どうやら雷蔵はやけになっているらしく対応が杜撰になっている。

 

「そういうわけでは…!」

「っ!何か来る!」

 

冬獅郎と雷蔵が同時に微かな霊圧を感じて、視線を僅かに行列から眼を離した瞬間だった。

 

赤と白が混ざり合った光の束が、矢のように神輿に突っ込んだ。閃光と爆発音が起こり衝撃によって担ぎ手が吹き飛ばされ、神輿が大きく傾く。

 

「冬獅郎!」

「わかってる!」

「「「隊長!」」」

 

駆けつけた乱菊・雛森・イヅルは、何が起こったのか理解できていない様子だったが、指示を仰ぐためにここへやってきていた。状況理解よりも、指令を受けるのを優先した結果だ。

 

そしてその行動は結果的に正しかった。

 

「松本、鎮火作業の指揮を頼む」

「雛森は負傷者の治療と救護、イヅルは他の襲撃に対しての防衛を頼む。指揮はお前たちが出せ」

「「「はい!」」」

 

3人の返事を聞いた後、冬獅郎と雷蔵は〈瞬歩〉でその場から離れる。神輿に突っ込んでいった2つの光球を探し出そうとしていた。

 

「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」」」

 

神輿を囲んでいた鬼道衆たちが火球と雷球に飲み込まれ、瞬時に灰と化して消え去った。

 

彼等は〈王印〉の遷移を任される鬼道衆であって、そこらの鬼道衆とは比較できないほど鍛え抜かれている。そしてその中から選び抜かれた精鋭である。

 

そんな彼等の肉体を容易く消失させる威力とは如何ほどなのか。

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!」

 

近くにいた鬼道衆が雷球に飲まれ、また1人が消え去った。

 

「下がれ!冬獅郎は火球の方を頼む」

「ああ!」

 

遠くで暴れている火球を冬獅郎に任せて雷球へと接近する。

 

鬼道衆の間を抜いていると、前方にいた鬼道衆を薙ぎ払った雷球から鞭のようなものが伸び、《雷天》に絡みついた。

 

「死ね」

 

雷球が人間のような姿をしたものに変化すると共に、鞭から高圧の電撃が伝ってくる。

 

「させるかよ。《雷伝流し》」

 

電撃に対して同じように電撃で対抗する。

 

《雷天》から発せられた電撃は、敵が放った電撃と衝突して大きな爆発を起こした。だが雷蔵の電撃は威力も速度も衰えることなく、敵へと鞭を伝って接近する。

 

「ちっ!」

 

眼を見開いて舌打ちをした敵は、数歩距離をとってこちらを見てくる。

 

「お前は何者だ?虚…ではないな。《破面》か?」

「虚だと?あんな下種と一緒にするな!」

 

敵は鞭を自在に操りながら攻撃してくる。このような武器を得意とする人物を、雷蔵は今までに1人しか見たことがない。だが目の前の敵はそいつとは違う。もっと異質で霊圧は澱んでいる。

 

殺めることを忌避しない。むしろ好んでするような血を欲する化け物だ。

 

「正体を聞かせてもらおうか」

「我らには正体などない。我らは()の命に従う唯の道具にすぎないのだ」

「主だと?上は誰だ!?誰の命令だ!?」

「ふはははははははは!」

「ちっ!待て!」

 

アクロバットな動きで煙の中に逃げ込んでいく青い髪の女を、雷蔵は恐れる様子もなく追い掛ける。

 

煙の先では、冬獅郎が仮面を被り死覇装を着た男と剣を交えている。普段の冬獅郎なら気後れすることなく圧倒できるはずだが、今の動きはあまりにもノロい。

 

何があったのかはわからないが余程のことがあったとしか思えない。

 

それより気になるのは仮面の男の霊圧だ。どこかで感じたことのあるような懐かしいもの。だがそれと同時に寂しさのようなものも伝わってくる。

 

「死ね」

 

煙の中から現れた女の攻撃を見ずに《雷天》だけで受けきる。攻撃自体は特に強くはなく、危険性も感じられないが。その正体が謎が故に、雷蔵は攻撃を渋っていた。

 

「我らの主のもとに来い」

「だからお前の上が誰かって聞いている。話してくれるまではついて行く気にはなれないな」

「貴様が素直についてくればいいだけのこと」

 

そしてもう一度煙の中へ消えていった。

 

そちらを見ていたが霊圧が消え去ったことで、ここからいなくなったと結論づけた。

 

冬獅郎を見るとその仮面の人物を追い掛けていくところだった。冬獅郎を呼び止める乱菊だが、冬獅郎は振り返って僅かな瞬間ためらいを見せた。だがすぐにあの仮面の男を追い掛けていく。

 

「あの馬鹿!1人で行きやがって!」

 

同じように雷蔵も追い掛ける。

 

「「隊長!」」

 

跳ぼうした瞬間に2人に呼び止められ、顔だけ振り返る。そこには必死な想いで呼び止めているイヅルと雛森がいた。

 

「すまない…」

「「隊長!」」

 

2人に心から謝罪する。何も言わずに去る自分の無責任さに。仮面の男を追い掛けていった冬獅郎を追い掛けるため、〈瞬歩〉でその場を去った。

 

 

 

 

冬獅郎を見つけたのはそれからすぐだった。男を見失ったのか、疲労したのか。木の根元に背を預けて座り込んでいる。

 

「…雷蔵か」

「見失ったのか?」

 

冬獅郎は返事を口ではなく首を縦に振ることで言葉を肯定した。鼻腔をくすぐるのは木々と土の匂い。だがそれ以上に鼻をつくのは血臭だ。それは冬獅郎の方向から流れてくる。

 

「冬獅郎、お前怪我をしているのか?」

「ああ、あの仮面の男に腹を突かれた。だが気にすることはない。これぐらいすぐに、っ!」

「…どこが気にすることないって?どうみても無理しているだろうが」

 

冬獅郎の息は浅く、速い。この寒さと出血によって身体は悲鳴を上げているのだろう。それに加えて、任務の失敗という三重のミスが心の疲労を加速させている。

 

「クソ!…」

「冬獅郎!?しっかりしろ!」

 

倒れ込んだ冬獅郎に声をかけるが返事はない。口に手を当ててみると浅い呼吸を速く繰り返している。特に命に別状はなさそうだ。

 

背負ってどこか安静にできる場所に移動しようとすると、知った霊圧が近付いてきていた。

 

それは2週間前に手を取り合った【旅禍】の少年のものだった。

 

「…俺ではこの傷は治せない。【旅禍】に任せるのが適当だな。…黒崎一護、少しの間任せた」

 

雷蔵は自分のいた痕跡である霊圧を消して、怪我をした冬獅郎の側から離れた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

/尸魂界 一番隊隊舎 隊首会議場/

 

〈護廷十三隊〉総隊長の山本元柳斎重國の前には、全ての隊の隊長が集まっている。

 

だが不自然なのは空いている空間が3つあること。〈三・五共同隊〉・〈九番隊〉・〈十番隊〉の場所である。

 

「周囲をくまなく捜索しましたが、〈王印〉の痕跡は発見できませんでした。おそらく襲撃者が持ち去ったものだと思われます」

 

砕蜂の報告に全隊長が顔をしかめる。〈王印〉を奪われたとなれば、それは重大な問題だ。

 

〈王印〉。それは王族にある宝の1つである。それを奪われたとなれば、〈護廷十三隊〉といえど1つや2つの隊の隊士の命では、償えないほどの問題である。

 

「なお、対象を追跡したとの報告を受けている護衛隊責任者 日番谷十番隊隊長及び雷蔵三・五共同隊隊長ですが。自ら霊圧を消した形跡が残されておりました」

 

隊長たちの間に片膝を突いて俯いていた乱菊・雛森・イヅルがハッと顔を上げる。

 

「お待ち下さい!お二方が職務を放棄したかのような発言はいささか早急すぎませんか!?」

「では、何故そのようなことをした!?これは明確な法規違反だ」

「そ、そんな…」

「〈十番隊〉及び〈三・五共同隊〉に全員蟄居を申しつける。場合によっては《廃絶》も覚悟しておくことじゃ」

 

《廃絶》。隊自体を取りつぶす最悪の罰則である。

 

そのことを聞いた3人は、絶望に近い表情を浮かべている。

 

「副隊長の命3つで事が終息するなど甘い考えをもたぬことだ。逃走した〈十番隊〉隊長と〈三・五共同隊〉隊長、日番谷冬獅郎、雷蔵以上両名の身柄確保を最優先とする。これは《緊急特令》である!」

 

元柳斎の重々しい発言に、3人は途方に暮れるしかなかった。

 

 

 

副隊長3人と他の隊長格が出て行ったあと、京楽と浮竹は元柳斎に異議を申し立てていた。

 

「山ジイ、今回は少しやりすぎじゃない?確かに護衛には失敗したけど、取りつぶす必要はないと思うよ?」

「元柳斎先生、僕も同意見です。2人が襲撃者を追い掛けていったことには、何か深い意味があるのだと思います」

「職務を放棄してまで知らねばならぬ事柄があると申すか?十四郎」

「…ないとは言えないかと」

 

頑固な元柳斎だが、京楽と浮竹の言葉は比較的考慮する。とはいえ王族の秘宝〈王印〉を奪われたとなれば、黙って見過ごすわけにはいかない。

 

「ならぬ。先に申したとおり両名の身柄確保を優先させよ」

 

何を言っても無駄だと感じた2人は、元柳斎に一礼して一番隊隊舎をあとにした。

 

「…雷蔵よ、何故(なにゆえ)お主は己を戒め続ける?」

 

元柳斎の疑問は儚く一番隊隊舎隊首会議場に響いた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

乱菊・雛森・イヅル以下の隊士は、〈一番隊〉副隊長 雀部長次郎に謹慎を言い渡され、十番隊隊舎の前で恋次、ルキアと話をしていた。

 

雛森とイヅルは深く落ち込んでいるため、一足早くに新設された隊舎の自室でふさぎ込んでいる。

 

「…というところかな。だからどうして2人が襲撃者を追い掛けていったのかわからないのよ」

「なんにもわかっていないのに反逆者の烙印をつけられているんですか!?」

「それだけ〈王印〉が秘匿されるべき物体ってことでしょうね」

 

2人に力なく笑みを浮かべる乱菊に、どうしようもない傷が増えたのだと2人は理解した。

 

「必ずお二方は戻ってきます。それだけは確実です!」

「…もちろんよ。2人はギンと違うもの。ここを守るために追い掛けていったんだとわかっているから」

「斬魄刀の回収終了しました!松本副隊長は自室へ。阿散井副隊長、お時間です!」

「ああ、わかった」

「待って!」

 

離れようとした恋次の腕を必死の表情で掴んだ乱菊は、声を落として頼んだ。

 

「2人が追い掛けたのには何か理由があると思うの。2人と何か共通する何かが。だから調べてくれないかしら?でないとあんな必死な様子で追い掛けるはずがないから…」

「わかりました。微力ながらお手伝いさせて頂きます」

 

恋次はしっかりとそのお願いに答え、十番隊隊舎を出て行った。

 

{隊長・雷蔵さん。私はこんなところでくじけません!ギンのようにならないとお2人を信じています!}

 

『もうちょっと捕まっとっても良かったのになぁ。さいなら乱菊、ご免な?』

 

 

 

雛森とイヅルは同じような蹲った体勢で同じ言葉を呟いていた。

 

「隊長、帰ってきてくれますよね?藍染隊長(・・)みたいにはならないですよね?」

「隊長、帰ってきてくれますよね?市丸隊長(・・)みたいにはならないですよね?」

「勘違いでビンタなんかしなきゃよかった…」

「沈んでる隊長を笑わせておけば良かった…」

 

 

 

〈十二番隊隊長及び2代目技術開発局〉局長の涅マユリは、珍しくハッスルして猛然とキーを叩いていた。

 

「マユリ様、関連文献をお持ちしました」

 

副隊長 涅ネムは、両手に何十冊と積み上げられた書籍を無表情で運んでくる。

 

それを無造作にマユリはネムから本を取り上げ、片っ端からとてつもないスピードでページを開いていく。

 

「〈王印〉とはネ…。一体如何なる材質か?制作過程は如何なるものか?」

 

ネムに読み終えた書籍を片づけるよう指示して、マユリはマッドサイエンティストもかくやとばかりの歓喜に満ちた笑みを浮かべている。

 

「久しぶりにワタシの脳細胞がフツフツと煮えたぎっているヨ!ホーホッホッホッホッホ!」

 

その後ろでは、ネムが男物の下着に頬づりしながら匂いを嗅いでいる。

 

「…ネム、今すぐその汚物を処分するんだネ。ここら一体に菌が繁殖しそうだヨ」

「…承知しましたマユリ様」

 

ネムは右手をノコギリに変化させて、男物の下着を千切りにして口から吐き出した炎で焼却処分した。

 

そしてマユリが読み終えて知識を吸収した書籍を両手に抱えて、元の場所へと返しに行く。

 

その頭には新たなる男物の下着を被っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ブルッ、ん?なんだか悪寒が。冬獅郎によるものでも寒さによるものでもない。俺の何か(・・)が誰かに奪われている。そんな気がしなくもないな…」

 

その人物が自分の下着をネムに奪われていることに気付く日は、もう少し先の話である。




ネムが変態化していますね。そうしないと面白みがないかなと思ってキャラ改変しています。

それとマユリも少しアレっぽくしています。声優が一緒ですから使っても可笑しくはないかと思いました。

ところであと2話ぐらい続くかもしれませんがそれはどうなるか予測不可能です。

なんとか映画に沿っていきながら2人が彼とどのような生活をしてきたのか、どのような関係があったのか書ければいいなと思っています。



雷蔵の斬魄刀の入手方法や具象化した姿がどのようなものだったか、お楽しみいただけたでしょうか?

本来、映画の小説版では冬獅郎の入手方法が書かれており映画の方も冬獅郎メインですが、この作品においては雷蔵が主人公なので雷蔵を書いてみました。正直、作者の遊び心というのも無きにしも非ずという感じですが。




雷伝流し・・切っ先から放つ雷伝とは違い、刀身全体から放つことが出来る。また虚閃のように光線を発するのではなく稲妻ような爆ぜるような電撃である。
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