BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜 作:ジーザス
隊長である剣八が呼ばれたにもかかわらず、何故か俺が行くことになり、若干沈んだ気持ち〈瀞霊廷〉を北へと歩いていた。
道中、死神たちが死覇装を着て浅打を腰に携え、楽しげに会話しているのが視界に入る。ここ最近は目立った虚の活動も見られず、平和な世の中が続いている。
91年前に一騒動が起こってからは…。
「…嫌なこと思い出したな」
後ろ髪をかきながら目的地へと歩いていると、よく知った人物が前方10mの角から出てきた。久々に会えたので声をかけてみる。
「日番谷隊長、お久しぶりです」
「雷蔵副隊長…」
笑顔で挨拶したにもかかわらず、無愛想に俺の名前を呼ぶのでついつい苦笑してしまう。
千歳緑の羽織を着て、銀髪に翡翠色の瞳をした少年に見えるこの人物は十番隊隊長 日番谷冬獅郎という。〈尸魂界〉史上最年少で〈護廷十三隊〉の隊長に任命された天才少年だ。
「そろそろ他人行儀はやめて下さい。仮にも日番谷隊長は十番隊隊長なんですから。副隊長の俺に対して、そんな話し方をする必要はないですよ」
「いえ、俺より年上なので目上の人は敬わないと…」
この話は以前に何度もしているものだが、結局は妥協点が見つからず今に至る。いつも律儀な隊長である。癖の強い隊長しかいない中でも、常識人と呼べる人なのだ。
「じゃあこうしましょう。年上と隊長で中和させてお互いタメ語でいきましょう。いいですか?」
「…はい。いえ、わかった」
「よっしゃ、俺も呼ばせてもらいます。冬獅郎はなんでここを歩いてるんだ?十番隊隊舎からは結構離れているけど」
「松本を探している」
「…なるほど」
十番隊副隊長の松本乱菊はマイペースでその性格が災いしてか、デスクワークをサボりがちだ。そのせいで毎度日番谷隊長が苦労しているのだ。
今日もどこかへ職務を放棄して、酒を飲みに行っているようだ。
「苦労してるな冬獅郎も」
「お互いにな」
意見が一致したことで苦笑する。お互いに世話のかかる隊士がいて無駄な労力を強いられているので、疲労の度合いがよくわかる。
「それより何故ここに雷蔵が?この道をまっすぐ行ったら一番隊隊舎しかないが」
「総隊長に呼び出された」
「雷蔵がか?」
「いいや、俺じゃなくて剣八の野郎だよ」
「だが何故更木ではなく雷蔵が来ている?」
「面倒くさいから俺に行けと言ってきやがったんだ。そろそろ行かないと怒られるから行くわ。また飲みに行こうぜ」
《瞬歩》でその場から消えた雷蔵に対して、珍しく冬獅郎は本心からの笑みを薄く浮かべて乱菊の捜索を再開した。
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「十一番隊副隊長 雷蔵、ただいま参上仕りました」
「もう少し前に来い」
「はっ」
一番隊舎の集会室に足を踏み入れ片膝をつき頭を垂れていると、腹に響く声で指示され言われるように前へ歩を進める。雷蔵の前の椅子に座っているのは、〈護廷十三隊〉を創設した護廷十三隊総隊長兼一番隊隊長 山本元柳斎重國であった。
「呼んだのは他でもない十一番隊の在り方じゃ。十一番隊の行動は目に余る。どれだけの被害が出ているか知っておろう?」
「誠に申し訳ないとしか謝罪できません」
「お主は十一番隊副隊長でありながら問題を起こさず、常に物事を冷静に捉え解決する男じゃ。じゃがもう少しまとめてほしい。被害総額は隊長と副隊長の給料70%に相当する。これ以上問題を起こさないよう気をつけてもらいたい」
「可能な限り手を尽くさせて頂きます」
元柳斎は初めから剣八が来ないことを見抜いており、雷蔵がここに来たことを一毛たりとも不自然とは思っていなかった。むしろ雷蔵が来ることを期待していた。剣八が来ていれば、少なからず驚いていたことだろう。
「それから剣八が旅に出たいと言うので許可しておいた。故に貴殿には臨時隊長を務めてもらう」
「謹んでお受け致します」
これで話は終わりかと思っていたが、今度は予想外の人物からのお言葉があった。
「それでね雷蔵君、君は隊長をする気はあるかな?」
「…今なんと仰られました?京楽隊長」
「要するに君を隊長に任命したいと言っているんだよ」
「何故そのようなことを?」
俺自身隊長という役職は、名誉以外の何物でも無いと頭では理解している。だが俺の場合、統率のとれた陣形を整えたり命令を下す能力は少しばかり。いや、大きく他の隊長たちより劣る。
そのような未熟者が隊長を担うなどあってはならぬことだ。
「君は自分を少し過小評価しすぎているようだね。山じいも君が担えるほどの実力者であると認識しているし、浮竹も同じ意見だよ」
「しかし《鬼道》が使えない者が隊長となってもよろしいのでしょうか」
俺が所属している十一番の隊長 更木剣八以外の隊長は《鬼道》を操ることが出来る。つまり、剣術と《鬼道》ができないと隊長になれないというのが俺の中での意見だ。
剣八は特例として隊長になっているが、それはこの際関係ない。
「《鬼道》が使えなくとも、部下を重んじる気持ちと心があれば隊長にはなれなくないよ。それがあれば必然的に隊士達はついてきてくれるからね」
「…考慮させて頂きます」
「良い返事を期待しているよ。時間はたっぷりとあるからね」
「失礼します」
雷蔵が集会室から退出した後、元柳斎・京楽・雀部が3人で話し合っていた。
「春水はどう思う?」
「あまり乗り気じゃないと思えるねぇ~。山じいの推薦したい気持ちはわからなく無いけど、あの気の持ちようでは無理かな」
「雀部はどうじゃ?」
「京楽隊長と同意見ですな。何かきっかけがあればいいのですが」
「そのきっかけが何になるかじゃな…」
3人は僅かながらの希望に託して、集会室を後にした。
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一番隊隊舎をあとにした雷蔵は、遠くに見える技術開発局を見上げている。技術開発局が設立されたのは今から100年前であり、親友と呼べる人物がいた頃だ。
その親友が追放されたのを今でも昨日のことのように覚えている…。
110年前…。
『浦原喜助、貴様待たんかぁぁ!』
『あははははは、捕まえてごらんなすって』
〈瀞霊廷〉の中を大声で黄色の髪のひょろい男を追い掛けているのは、若干やせ形な体型で俊敏な動きをしている女性だ。
どちらも俺にとっては無視できぬ間柄だが、面倒事に巻き込まれるのは目に見えていたので、他人の振りをしようと決めたのも束の間。
『あれぇ、雷蔵サンじゃないっスか。こんなところで何してるんスか?』
妙に鼻の効く喜助の問いかけに殴りたくなる。しかしそれどころではなくなってしまう。
『む、貴様雷蔵か?成敗してくれる!』
『なしてぇ!?』
喜助と話をしていただけでターゲットにされてしまい、共に逃げざるをえなくなる。
『何で喜助が追い掛けられてるんだ?』
『わかんないっスよぉ~。歩いていたらいきなりこうなったんですから』
この男が砕蜂を怒らすのは、喜助から何かをしでかすことが半分、彼女の敬愛する
今回もどちらかなのだろうが、砕蜂が顔を紅くしているところを見ると、喜助が何やらやらかしたと察する。
『あの様子じゃお前が何かしでかしたようにしか見えないぞ』
走りながら隣をふざけた走り方で追走している喜助に尋ねる。
『いやぁ、新しく作ってみた簡単に服を脱げる煙【脱衣煙玉】の試作品を試してもらったら、全部脱げちゃって。それを見ちゃったんスよ』
『そりゃ怒るわな…』
彼によると死覇装だけが脱げる仕組みだったらしいが、手違いなのか材料の配分ミスなのかはわからないらしい。そんなんなで予想外のことになってしまったようだ。
何も知らない身体を見られれば、一部分を除き正気でいられる女性死神はいないだろう。
『無駄な才能だな』
『そんなこと言わないで下さいよぉ~。これでも真面目に研究してるんスよ?』
『あんなものを作って何処が真面目な研究だ?もっとマシなことに時間を割け…おわっ!』
『うひょ!?』
2人して可笑しな声を出したのは、後ろからクナイが飛んできたからだ。背後を振り返ると堪忍袋の尾が切れたのか。両手に10本のクナイを持って、今まさに投げつけようとしている砕蜂がいる。
『…喜助、ヤバくないか?』
『さすがにヤバいっスね、あれは…』
『使っちゃう?』
『使っちゃいましょうか…それ!』
『な、こ、これは!』
喜助が死覇装の懐から取り出した問題の試作品を砕蜂に投げつける。爆発した瞬間、《瞬歩》を使い2人してその場を去った。
「喜助・雷蔵、覚えてろよぉぉぉぉ!」
誰もいない〈瀞霊廷〉の端の方で、一糸まとわぬ姿にされた砕蜂は、大事な部分を両手で隠し地面に座り込む。赤面して2人への恨みを空へと吐き出していた。
原作では100年前ですが事情があって110年前になっております。