BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜 作:ジーザス
最終話 終焉 後編
/空座町・防災用地下貯水池/
新しい怪我を複数負った冬獅郎を担ぎながら、分厚い扉を足で開けて、滑り込むように中へと入る。
ここは大雨の際、町が浸水を防ぐために水を溜めておけるように造られた巨大地下施設だ。そのため地下へ下りる階段は底が見えないほどにまで続いている。暗いのが余計にそう思わせているのかもしれない。
「冬獅郎、飛び降りるが大丈夫か?」
「…任せる」
肯定と捉えて、踊り場から手すりを乗り越えて最下層まで飛び降りる。衝撃を可能な限り殺して着地し、所々に水たまりができているコンクリートを歩く。
「…久しぶりだね冬獅郎に雷蔵さん」
柱の陰から現れた仮面を外した男が声をかけてきた。俯いていた冬獅郎は、顔を上げて眼を大きく見開いて驚愕している。
「驚きすぎだよ冬獅郎。俺が生きていたって何も可笑しいことないじゃないか。さあ、今こそあの日の約束をここで果たそう3人で!」
「草冠…」
「〈王印〉を手に入れてまでしなければならないこととはなんだ草冠!王族の宝を強奪し、俺たちの仲間を傷つけたお前に何をする権利があると言うんだ!」
雷蔵の悲しみと怒りの問いかけに草冠は嬉々として答えた。
「この〈世界〉を、〈尸魂界〉を変える!俺が、俺たちがすべてを支配する!ゴミのように扱われ、不良品と見なされれば生きることは出来ない。〈尸魂界〉の在り方に疑問を抱けば危険人物として幽閉される。それが正しいのか!?大義のためだと!?そのためなら魂魄をいくらでも無駄にしていいのか!?俺はそうは思わない!」
〈尸魂界〉と〈中央四十六室〉によって存在を消された男は、間違いなく正しかったはずだ。〈尸魂界〉に忠誠を誓い、魂を捧げると誓ったのだから。
「…俺は〈尸魂界〉に忠誠を誓ったんだ。この命を、魂を捧げると。なのに、なのに〈尸魂界〉は俺を拒絶した!何故だ!?
「草冠…」
草冠は魂から叫んでいる。それが冬獅郎にもわかる。それでもこいつが犯した罪は消えない。自分も大罪を犯して今ここにいる。だから、だから…。
「見届けるんだ3人で。俺たちの夢を叶えに、あの日交した約束を果たすために!」
草冠は〈王印〉を頭上に掲げて叫ぶ。
「さあ行こう。〈尸魂界〉に〈瀞霊廷〉に復讐だ!時は来たれり!」
〈王印〉がすさまじい光量を周囲に放ち、光が草冠・冬獅郎・雷蔵を包み込んだ。
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「申し上げます!〈双殛の丘〉に〈王印〉と思われる霊圧が出現致しました!」
共同隊の隊士が雛森とイヅルに片膝を突いて情報を伝える。
「これが〈王印〉の霊圧…」
「吉良くん、これって」
「うん、隊長と日番谷隊長の霊圧だ」
〈双殛の丘〉に降り立つ雲の中に感じる懐かしい2人の霊圧。そして知らないがとてつもなく大きな霊圧。それを感じた2人は同時に駆け出した。
「吉良副隊長・雛森副隊長、一体何処へ!?」
「「隊長のところだ(です)!」」
2人は自分達の斬魄刀が保管されている場所に《鬼道》で押し入る。自分達と乱菊の斬魄刀を掴み、〈双殛の丘〉へと〈瞬歩〉で向かった。
腕には恋次から渡された大切なものを持って…。
冬獅郎と雷蔵は、目の前にかざしていた腕を降ろす。そして周囲を見渡して驚愕する。
「…ここは〈双殛の丘〉?」
「まさか…空座町の地下にいたはず」
「どうだすごいだろ?〈王印〉は使う者の意思によって、空間・時間を問わず、すべての事象を別の次元に移すことが出来る。今の移動はもとより、敵の攻撃を別次元に移すことも、致命傷もすべてなかったことにできる」
「致命傷がなかったことになる…まさかお前!」
「そうだ!消えかかっていた俺の身体は、偶然こぼれた〈王印〉の光によって〈虚圏〉に移されて再生された。そして〈虚圏〉で力を蓄えながら、〈王印〉の在処を探し続けた。〈瀞霊廷〉に復讐するためになぁ!」
草冠は酔っている。〈王印〉の持つ強大な力を使える自分に。
「さあ、これを斬るんだ冬獅郎!」
「〈王印〉を斬る、だと?」
迷うのは王家について多少なりとも知っている者であれば、至極当然のことである。斬るということは王家を冒涜し、秘宝を消すということに他ならない。
「そうだ!そのときこそすべてが浄化される!」
「よっしゃぁ、俺たちが一番乗りだな弓親!」
「そうだね一角。…隊長、本当に裏切ったんですか?」
「…」
突然現れた元部下2人に雷蔵は驚かなかった。弓親の問いには答えず、無表情に雷蔵は見つめ返す。
「無言ってことは敵なんすか?隊長。…隊長を誑かした草冠!てめぇは俺がぶっ殺す!」
《鬼灯丸》を抜刀して草冠に斬り掛かる一角、《藤孔雀》を振り下ろす弓親を雷蔵と冬獅郎が弾く。
「隊長!どうして、どうして庇うんすか!?」
「下がれ一角。これは
「綾瀬川、頼む邪魔をするな」
2人の懇願に2人は腕に込める力を緩めて大きく距離をとる。すると多くの霊圧が丘に集結し始める。各隊の隊長・副隊長・席官。他にも平隊員までもが集まり、広い〈双殛の丘〉とはいえここまでくると少々手狭だ。
「さあ、斬るんだ冬獅郎!それが俺たちの復讐への一歩だ!」
「かかれ!」
砕蜂が命令を下すと、〈隠密機動〉と〈二番隊〉隊士たちが一斉に攻撃を開始する。迎え撃とうとした瞬間、予期せぬ事が起こる。
「《月牙天衝》ぉぉぉ!」
上空から白い斬擊が誰もいない部分に撃ち込まれ、攻撃しようとした者の足を止める。
「あんたらは戦うことしかできねぇのかよ!?冬獅郎は雷蔵さんは裏切ってなんかいねぇ!」
「何を言う!京楽隊長を襲撃した者がこいつらだと判明しているのだ。それでもまだ違うとでも言うのか!?」
「2人が京楽さんを攻撃したかなんて俺にはわかんねぇ!命令だからって斬ることはねぇだろ!」
「黙れ代行の分際で!それ以上言うのであれば貴様も殺す!」
「待てぃ!」
《雀蜂》に手をかけ抜刀しようとした砕蜂だったが、威厳溢れる声音に停止を余儀なくされた。現れたのは元柳斎・乱菊・雛森・イヅル、そして包帯を巻いて伊勢七緒に身体を預けている春水だった。
「京楽、気がついたのか!?」
「まあねぇ。無実の者が処罰されたら、本当の意味での目覚めが悪いでしょ?」
七緒に肩を貸してもらいながら現れた春水に、浮竹がほっとしつつ嬉しそうに声をかける。
「生きておったか草冠宗次郎」
「殺したはずだったのに、か?」
草冠は顔を歪めて笑う。その笑みは悪に取り憑かれた者のそれだった。
「〈王印〉がお主に命を与え、〈虚圏〉が育てたか」
「ああ、そして俺は戻ってきた!冬獅郎と雷蔵さんと新しい世界を創る。そして初代王として永遠に支配するためにな!」
「草冠く〜ん、それはちょいと無理なんじゃない?いくら〈王印〉があっても世界を創るなんて無理でしょ」
たとえ〈王印〉に力があっても、新たなる空間・次元の中で世界を創り出すことなどできるはずがない。〈王印〉は
「確かにたとえどれだけ願おうと、使用者が意志を強く保とうと。それだけは不可能だ」
「なら諦めなよ。今ここで投降したなら禁錮1000年くらいで済むと思うよ?」
「だがそうではない!力を得れば世界を変えられる!俺は、俺たちは3人でここを生まれ変わらせる!さあ冬獅郎、これを斬れ!」
草冠が霊圧を上げると、〈王印〉の輝きも増す。冬獅郎が草冠に近寄る。草冠は自分の思いが通じていると信じているようだ。
「っ冬獅郎!何をする!?」
神速で接近した冬獅郎が振り下ろした《氷輪丸》を、辛くも逆手で抜刀して攻撃を防ぐ。
その様子に〈護廷十三隊〉の面々が驚きの表情を浮かべる。〈王印〉を斬ると思っていた冬獅郎が、首謀者に剣を向けたのだから。
「隊長!」
「来るな松本!これは俺と雷蔵、そして草冠の戦いだ!」
「何故だ冬獅郎…。何故俺に剣を向ける!?」
「俺と雷蔵は、初めからお前の仲間になるつもりはねぇ」
冬獅郎の言葉に、一護・ルキア以外が再び驚愕の表情を浮かべる。
「彼らは〈護廷十三隊〉を裏切ったのではなかったのかネ?」
「俺たちは裏切ってなどいない。首謀者がこいつだと襲撃時に直感していた」
「では何故我らに剣を向けたのだ!?」
「それは…「そうか、冬獅郎。ついてきてくれていると、志は同じだと思っていたのは俺だけだったのか」…」
雷蔵の言葉は草冠の言葉によってかき消された。
「草冠、俺たちはお前の友であり家族だった。お前を殺したのは間接的に冬獅郎だが、それを決定したのは〈中央四十六室〉であって、〈護廷十三隊〉でもない」
「つまり何かネ?君たちは〈護廷十三隊〉としての立場では斬り捨てることはできなかったと?」
独り言を呟いた雷蔵はマユリに返事をせず、冬獅郎と鍔迫り合いをしている草冠のもとへ走り出した。
「そうでもしないと決心がにぶると思ったんだ。〈護廷十三隊〉隊長としてではなく、唯の友人として斬ることしかできなかった。冬獅郎と雷蔵さんは哀しみを自分だけで抱え込もうとしてる。それが周りを傷つけていると知らずに」
一護の言葉に、乱菊・雛森・イヅルがその通りだというように決心した表情を浮かべる。
「草冠を救えなかったことを悔いている。だから〈護廷十三隊〉隊長としての座を自ら捨てて、かつての因縁に決着をつけようとしてるんだ。たとえそれで自分たちが処刑されることになっても」
「しかし一護、それは正しいことなのか?部下を傷つけてでも成し遂げなければならないほどのことだとしても」
ルキアは仲間をとても大切に思う死神であるから、冬獅郎と雷蔵の決心が間違っていると言いたいのである。
「ここで終わらせなきゃ部下・部下の家族・友人、そして流魂街の住民まで巻き込むことになる。それだけは避けたかった。全てを失うぐらいなら部下を見放し、自分たちの魂で終わらせる。それが自分たちにできる最大の償いだって思い込んでる」
一護の視線の先には、草冠と2対1の勝負を繰り広げている冬獅郎と雷蔵がいる。攻撃を交互に繰り出しながら追い詰めていく。
怪我をした冬獅郎では、草冠には勝てないが雷蔵が介入することで互角の戦いを続ける。《卍解》を会得していない草冠に雷蔵が本気で挑めばすぐに終わるだろうが、雷蔵は本気を出さない。
それは剣の腕だけで勝敗をつけるためともう一つの理由があった。
「久しいな、3人で斬り合うのは」
「あの頃は木刀や浅打でだったけどな。…それにしても腕がかなり上がったな。あの頃とは比べ物にならないほどに」
剣を交えながら草冠と雷蔵は言葉を交わす。冬獅郎は背後で呼吸を整えるために、今は2人の動きを眼で追いかけている。
「俺は魂が復活してから〈虚圏〉へ飛ばされた。生き残るために俺は〈虚圏〉で己を鍛え続けた。〈虚圏〉にきたときは生き残れる気はしなかった。だが数多の虚を殺し続けた俺は、奴らの血に含まれる霊圧を吸収することで力が増すことを知った」
「虚の血には力を高める効果があると?」
「ああ、だがそれは〈虚圏〉でだけ作用する。〈王印〉の光を浴びた俺にしかない能力。つまりそれは復活した俺の《氷輪丸》が手に入れた新たな力、その名も【クリムゾン・ボーナス】!」
誰が予測しただろうか。復活した死神が新たなる能力を得ることがあるなど。
「君たちは最初から俺を…」
「「そうだ」」
「…俺は見誤っていたのか。ならば俺1人で成し遂げる!」
爆発的な霊圧が溢れ出し、至近距離にいた雷蔵を吹き飛ばした。辛くも態勢を立て直した雷蔵は、隊長格をもかくやと思われる霊圧を放つ草冠を見つめる。
〈王印〉自体が持つ霊圧が、草冠に触発されて高まっていく。
「俺に応えろ〈王印〉!」
光も霊圧も際限なく増していく。限界など有りはしないと。〈王印〉自体が語っているかのように。
〈王印〉が草冠の手から離れ、宙に浮いていくのを驚愕の表情で誰もが見ていた。
「何をする気かネ?」
「《卍解》を使えない今までの俺では解放することはできなかったが。今の俺なら…!」
「ならぬ!」
元柳斎の制止を無視して、草冠は宙に留まっている〈王印〉《氷輪丸》を振り下ろす。〈王印〉が砕かれる金属音が周囲に響いた。
それはここが地獄と化されることへの警鐘であるかのように、〈瀞霊廷〉一帯へ響き渡る。
光の洪水が押し寄せる。眼を開けていられない。瞼を閉じても灼けつくような痛みを与える光量に両腕で顔を庇う。解放された霊圧が光とともに突風となって一同に吹き付ける。
「「草冠ぁぁぁぁぁぁ!」」
飛び出して光の渦に飛び込もうとした冬獅郎と雷蔵の前に、一護とイヅルが立ちはだかる。
「2人だけで苦しむんじゃねぇよ。みんなが2人の指示を待ってんだ」
「…俺はもう隊長じゃない。唯の裏切り者だ」
「そんなことありませんよ。隊長は誰よりも優しくて、格好良くて、誰からも憧れるほど強い方です。でも弱い部分もあります」
イヅルは振り返って雷蔵の眼を見ながら言葉を続ける。
「1人で抱え込もうとするところです。何もかもを1人で背負おうとする。苦しみも覚悟も。僕たちに受け止めさせてください」
「裏切った隊長のをか?」
雷蔵は一度、部下を全員を切り捨てた。己のやるべきことがそれよりも重要だと思い込んで。そんな隊長の全てを受け止めたがるわけが…。
「隊長!」
1人が近寄ってくる。
「「「「「隊長!」」」」
すると次々に、我先にと雷蔵の周囲に集まってくる。10mほど離れたところでは、冬獅郎も同じように囲まれている。
「隊長…」
「雛森…」
儚げな表情で歩み寄る雛森の腕の中には、隊首羽織が綺麗に折りたたまれた状態で握られている。そしてわざわざ雛森の隣に移動したイヅルの手の中には紫色の帯が。
どちらも裏切ることを決心した際、気絶した一護にかけて置いてきた。誰かによって2人の元に戻されたものが今目の前にある。
哀しげに顔を歪めた雷蔵は草冠に向き直る。
「「隊長!」」
「構えろイヅル・雛森。くるぞ…」
草冠を取り巻いていた光を帯びた白い風の渦が瞬時に晴れる。雷蔵の言葉を聞いて、斬魄刀に手をかけていた2人が眼を見張る。
渦の中から現れたのは氷の竜。閉じられていた翼が広げられ、その全体像が露わになる。異形の怪物と化した草冠宗次郎が、凍えるような冷気を撒き散らしながら吠える。
『フハハハハハハハハハ!ついに、ついに手に入れたぞ。これが〈王印〉か!』
不透明な紫の混じった青白い氷でできた竜に似た化物が、そこに鎮座している。高さは優に5mは超えており、多くの隊士たちが後退る。
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ 《破道の三十一【赤火砲】》!」
雛森が完全詠唱の破道を撃ち込み、草冠の脇腹を貫いた。がしかし、すぐに氷で修復される。
「超速再生かネ!?これは困ったことになるヨ…」
〈護廷十三隊〉きっての頭脳派であるマユリが苦い顔をするとは、どれだけあり得ないことが起こっているというのだろうか。
『素晴らしい!素晴らしい力だ!』
草冠が吠えるたびに膨大な霊圧が嵐となって吹き荒れる。風をきって飛び去っていく草冠に誰も攻撃できない。高さのある屋根の上に舞い降りた草冠は雄叫びをあげる。
『グオォォォォォォォ!』
草冠の足元から氷がとめどなく溢れ出し、柱を覆い始める。氷の噴出が止まったのは、巨大な氷柱を創り上げてしばらく経った頃だった。
草冠の頭上では鈍色の空に暗雲が立ち込め、雷鳴が轟いている。草冠が放出する膨大な霊圧に触発されたのか。雷鳴は激しさを増していくばかりである。
霊圧によって発生した暗い雲から雪が舞い降りる。すると雷雲の隙間から何かが降りてきた。雷雲の中から現れたのは火球と雷球であり、草冠の創り出した氷の宴に降り立つ。何故か草冠は2人の頭の上に手をかざし霊圧を送り込む。
氷柱に閉ざされていく2人は成す術もない。瞬く間に氷像にされた2人は動きを止めた。
「臆すでない!引いてはならぬ!重罪人草冠宗次郎を斬り捨てよ!」
腹に響く元柳斎の言葉に、後退りしていた隊士たちが奮い立つ。席官や隊長格などが駆け出し、草冠であった竜が生み出した極太の氷柱を駆けていく。
〈瞬歩〉で踏み出した雷蔵を追って、イヅルと雛森が続く。だが雷蔵は気付かなかった。もう2人が楽しそうな笑みを浮かべて付いてきていることに。
『邪魔だぁぁぁぁ!』
氷柱を伝って攻撃を仕掛けようとした全員が、草冠の腕が作り出した衝撃波によって吹き飛ばされふ。その風圧に耐えかねて、氷柱までも破壊していく。
氷柱を駆けていた雷蔵一行は、足場の崩壊とともに草冠の霊圧によってえぐられた深い地面に落下していった。
『フハハハハハハハハハ!グオォォォォォォォ!』
最後はもはや人の声ではなかった。
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気がつくとそこは見たこともない場所に思えた。潰れた家屋や建造物が瓦礫と化して辺りに散乱している。
だが可笑しいのは瓦礫に埋もれていないことだ。振り返ると2人で抑えには不可能であろう大きな岩を、2人がかりで抑えているイヅルと雛森がいた。
「お前ら…」
「大丈夫です…くっ」
「このくらいどうってこと…っ」
慌てて逆方向に押し倒すと、イヅルと雛森がその場に膝をつく。それを見れば、2人がどれだけ無理をして支えていたのかわかる。
「…何をしている?」
「隊長の背中を守るのは、副隊長の仕事ですから」
「もう1人では行かせませんよ」
まったく思い通りになってくれない困った部下である。笑みを浮かべながら雷蔵を見るイヅルと雛森には、雷蔵が苦笑しているのが見えた。
遠くでも冬獅郎・乱菊・一護・ルキアが、瓦礫の中から立ち上がっている。澱んだ霊圧によって周囲が覆われている。それを目にした雷蔵が呟いた。
「これは霊圧の壁か…。〈王印〉はこんなこともできるとは予想外だ」
「雷蔵!」
空を見上げていると夜一が砕蜂を連れて現れた。
「事態は一刻を争うぞ。総隊長及び2名の隊長格が三方向からこの空間、〈霊壁〉の膨張を抑え込んでいる。その間に草冠を斬れとの命だ。いくら隊長格が3人で抑え込んでいるとはいえ、相手は〈王印〉を吸収した元死神。あまり猶予はない」
確かに隊長格とはいえ、王族の宝を相手にして長時間抑え込めるとは思えない。だからこそここで何もせずに動かないわけにはいかない。
短期決戦で向かうべきである。
「隊長、これを」
雛森に呼ばれて雷蔵が振り向くと、笑みを浮かべながら隊首羽織を差し出していた。
「隊長、これも忘れてはダメですよ」
イヅルの差し出した手の中にあるのは、紫色の腰帯。
〈三・五共同隊〉結成時に雷蔵・イヅル・雛森の3人で、一から素材を決め、色も話し合って作った一品。
紫には効果が色々とあり、心理効果では心と身体の回復を促す。
藍染とギンが抜けたことで、精神的ショックを受けた2人を少しでも気楽にさせたいとして雷蔵が提案したのだ。2人の顔を順に見る。着ることが当たり前であり、そうでなければ雷蔵ではないかというように眼が言っている。
雷蔵は2人の眼を見て頷いた。
イヅルから腰帯を受け取り素早く締める。
雛森から羽織を受け取り袖に腕を通す。
左腰に《雷天》を差し込んで草冠を見据える。
雷蔵の背中に刺繍された【三・五】の文字を見て、イヅルと雛森は思った。
あるべきところに戻った
帰ってきたのだ
と。
「イヅル・雛森、…後ろを頼む」
「「はい!」」
「ちょっと待ったぁ!」
2人の返事に感謝して動こうとした時、懐かしい声によって足踏みを余儀なくされる。
「こんなおもしれぇ祭りに参加しないわけにはいかねぇよな?弓親」
「そうだね。僕たちを置いていくのは許せないかな」
「ということで俺たちも行きますよ
「…相変わらずやかましい奴らだ。死んだら容赦しないからな」
神経を少しだけ逆撫でることで同伴を許可する。砦を見ていると人型の塊が、猛スピードでこちらに向かってきているのが見えた。
人型ではあるが人としての意識はなく、ただ目の前の形あるものを破壊するだけの存在となったインとヤンの末路である。
「奴等はわしらにまかせろ。行くぞ砕蜂!」
「はっ!」
「「〈瞬閧〉!」」
走り出した2人の背と両肩の布が弾け飛ぶ。〈白打〉と〈鬼道〉を練り合わせた戦闘術を発動させ、変わり果てた姿となったインとヤンへと向かっていった。
「冬獅郎、二手に分かれよう。敵の戦力を分散させる」
「わかった。俺たちは左側の塔を登る。松本・黒崎・朽木・阿散井、行くぞ!」
塔を目前にして雷蔵が提案すると、冬獅郎は素直に従い一番手で塔を登り始めた。
「さてとぉ。暴れてやろうじゃねぇか!」
雷蔵よりも先に登り始める一角を、弓親が楽しそうに追いかける。その様子にイヅルと雛森が苦笑いを浮かべている。
「やる気満々ですね」
「あいつら2人はお祭り気分なのさ。一発喰らって頭冷やしたほうがいいかもな、っと!」
塔を登りながら話していると、背後から大型の虚の複数個体が迫ってきた。それを雷蔵が霊圧を纏った蹴りで消し飛ばしながら上を目指す。
虚それぞれの個体の強さは雑魚なのだが、途切れることなく攻撃され、足場の悪い場所で戦っているとなかなか前へ進めない。
「隊長、先に行ってください!ここは僕と雛森くんで片づけます!」
「隊長が行かなくて誰が行くんですか!?それにこのくらいの虚、
雛森は雷蔵と初めて会ったときのことを話している。藍染から信頼を得るために命を遂行していたときに出会った。だがそのことを雛森は知らない。
いや、知ってはならない。雷蔵が自らの口からそれを言うまでは。
「無茶するなよ」
「「はい!」」
2人の想いを理解して、一角・弓親を追って塔を垂直に登って行った。
頂上付近に辿り着くと目の前の光景に驚愕する。
〈
と表せるように幾百もの虚が集まって生じる《大虚》が、分刻みで一体、生み出されて行く。
「〈王印〉は《大虚》まで操れるのか…厄介にもほどがある」
呆然と呟いた瞬間、一体の《大虚》がこちらを向いて大きく口を開けた。口腔内に光が生まれ始める。
「《雷伝》!」
《
「…どうやって抜ける?」
「《卍解》で一気に抜けるしかないな。一角!」
「呼びましたか?隊長!」
周囲の虚を蹴散らしながら、一角が弓親と共に駆け寄ってきた。それを横目に、冬獅郎と雷蔵が爆発的な霊圧を放出させる。
「《卍解 大紅蓮氷輪丸》!」
「《卍解 帝破明神雷天》!」
2人の隊長格が《卍解》したことで、爆発的な霊圧が周囲に吹き付けられる。その霊圧に気づいて、《大虚》が大量にこちらへやってくる。
「やれ、一角!」
一角に合図を送る。
「よっしゃぁ!みんなには黙っててくださいよ?ここいる全員が対象っす。《
一角の霊圧が急激な勢いで上昇していく。
霊圧の竜巻から現れたのは、三節に分かれた各部がそれぞれ身の丈ほどの巨大な刃物に変貌した《鬼灯丸》だった。
否…。
「《龍紋鬼灯丸》ぅぅ!」
一角の《卍解》は、〈十一番隊〉らしい直接攻撃専用である。だが直接攻撃だけではなく、その破壊力が《龍紋鬼灯丸》の本来の能力だ。
「一角が溜め終えるまで援護しろ!」
そう言って雷蔵は周囲に接近してくる《大虚》を潰していく。
「《
雷が地面を這うように進み、多くの《大虚》の足元に辿り着くと小さくスパークを起こす。雷は《大虚》の身体を駆け上り、麻痺させる。
「今だ!」
「《
「《唸れ【灰猫】》!」
雷蔵の合図を聞いて、冬獅郎と乱菊が麻痺して動けない《大虚》を一掃する。
「溜まりましたぜぇ隊長!」
見ると《龍紋鬼灯丸》に描かれている龍の紋様が紅く輝き、解放した頃より遥かに上の霊圧を放つ一角がいた。
「これが《龍紋鬼灯丸》本来の力だ!オラアァァァァァァ!」
一角が《龍紋鬼灯丸》を《大虚》に放つ。切り裂かれた《大虚》は直後に再生するが、何度も切り裂かれるたびに再生が追いつかなくなる。ついには、切り裂く速度が再生速度を超えたことで消滅した。
「「「行ってください!」」」
「雷蔵!」
「任せろ!」
翼を広げた冬獅郎が伸ばす手を掴み、《大虚》が一時的に消え去った空間を普段の何倍もの速度で飛翔する。
《雷進》の効果で速度が格段に上昇し、ありえない速度で駆け抜ける。人の筋肉は電気信号で動くため、電気を加速させれば動きが早くなるのは必然。
翼を直接羽ばたかせているわけではないが、脳から指示を出しているので、《雷進》も効果を現す。
あまり加速させすぎると、神経を傷付けてしまうので加減は必要だ。
〈大虚の壁〉を抜ければ、あとは高い氷柱を登るだけだ。
「来やがった」
見ると上から氷の竜が何匹もやって来ている。
「雷蔵は先に行ってくれ」
「大丈夫か?《卍解》を会得していないとはいえ、〈王印〉を取り込んだ草冠が使う《氷輪丸》だぞ?」
「…氷の竜を破るのは氷の竜だ。もう一度俺が示さなければならない」
冬獅郎は何をとは言わなかったが、雷蔵はそれを理解していた。
「無理はするなよ?」
「わかっている」
互いに手を離し、雷蔵は氷の竜を避けながら巨大な氷柱を登っていく。
「《大紅蓮氷輪丸》!」
《卍解》した冬獅郎の氷の竜と数多の氷の竜がぶつかり合い、周囲に氷の破片を撒き散らす。それは季節外れの雪さながらだった。儚くも美しい氷の破片は日の光を浴びて、落下しながら時たまにキラリと輝いている。
「待ってろよ草冠…」
登りきり、草冠を見上げる。意識があるのか不明だが、敵意を感じるのか視線だけはこちらに向けてくる。
《雷進》で縦横無尽に動き回ると攻撃を回避するためか、それとも攻撃を加えようとするためか。大きな両腕を振り回している。だが、俊敏に動き回る雷蔵にはついてこれないらしく、攻撃は宙を舞っていく。
鉤爪は雷蔵の残像を捉えていくばかりである。
「てりゃぁぁぁぁ!」
攻撃を避けた流れで、頭蓋を貫通させるかのように脳天へ、《雷天》を突き刺す。
「《雷伝》!」
接触点から雷を放出させると、雷は氷の竜の額を貫き、頭部を破壊した。それにより氷の竜は無へと還っていく。〈霊壁〉・虚・《大虚》が消えていき、何もかもが元に戻っていく。
〈瀞霊廷〉の地面に突き刺さっている氷柱も、空気に溶けていくかのように先端部分から順に消えていく。《卍解》を解いた冬獅郎が雷蔵の隣に降り立つ。
見据える先にいるのは、氷の竜の残骸に埋もれている草冠。
「行ってやれ冬獅郎。あいつもそれを望んでいるはずさ」
「…ああ」
友に背中を押されて歩み寄る。〈王印〉を失って人型に戻った草冠は、《氷輪丸》を杖代わりにして立ち上がる。冬獅郎は剣道のように《氷輪丸》を構える。
草冠も冬獅郎の気持ちを察したのか同じように構えた。
「…終わりにしよう草冠。何もかもを」
「…そうだな冬獅郎」
2人は呼吸を合わせて足を前に出した。
「はぁっ!」
「たぁっ!」
鏡に映し出したかのように、まったく同じ動作で《氷輪丸》を互いに突き出す。
「…天才だよ、やっぱり…お前、は。2度も…俺を、殺す…んだ、か…らな」
草冠の手から刀身の半ばから折れた《氷輪丸》が滑り落ちる。
冬獅郎の《氷輪丸》は草冠の身体を貫いていた。
「俺は、ただ…俺、の…存在、…を」
「忘れたりしない。俺は、俺たちはいつまでもお前の友達だ…」
「あまいよ…敵の俺、に…情け、かける…な…んて」
草冠の身体が霊子に分解されていく。天に昇るような様子は、草冠の罪を咎めずに神が許しているかのようだ。
草冠自身は、ただ自分が理不尽な理由で殺されたことが理解できなかった。処刑を命令した〈世界〉に復讐するだけで、砕かれた自尊心と心は満たされたはずだ。
だが冬獅郎を仲間にすることで、その後も生きていけるよう願った。だが冬獅郎は自分にはついてこなかった。自分を再び殺して2度とこのようなことをさせないために…。
わかっていたのだ。冬獅郎が自分についてこないと。誰よりも冬獅郎の友で居続けた草冠だからこそ、冬獅郎の覚悟がわかる。それでも信じたくなかった。
何より冬獅郎と剣を交えることをしたくなかった。
これ以上冬獅郎の手を汚したくなかった。
だから…。
「なあ、冬獅…郎。もし、俺が《氷輪丸》、じゃ…なく、て他の、だっ…たら、どう…なって、た?今…まで通、りに、いら…れた、か?」
「当たり前だ。草冠は俺にとって誇るべき友人だから」
「俺と、お前…が、逆だ…った、ら……」
草冠は最後まで言うことなく消えていった。空に昇っていく草冠であった霊子を見て、冬獅郎は口を開く。
「…同じだったはずだ草冠」
草冠の言葉を理解して餞のように呟いた。
金色の光がどこからともなく集まり、〈王印〉になった。雷蔵が地面に落下したのを拾い上げる。
「こんな小さなもんが〈王印〉なのか…。今回の元凶か…」
「雷蔵、ありがとう。俺は救われた」
隣にはいつの間にか冬獅郎が並んでおり、礼を述べてくる。
「礼は必要ないさ。あいつはあいつなりの信念を持って戻ってきた。それに対して冬獅郎は冬獅郎なりの信念で戦った。それでいいだろう?」
「ああ」
「礼は乱菊にしっかりと言うんだな。お前が裏切ったと聞かされても、お前が裏切っていないと信じ付けていたんだからな」
「ああ」
同じ返事しかしない冬獅郎の頭を乱暴に撫でる。
「何しやがる!?」
「暗いんだよ。明るく行こうじゃないか。この戦いはもう終わったんだから」
冬獅郎は軽く笑みを浮かべて歩き出した雷蔵の隣を歩む。
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崩れる塔を降りていく。〈王印〉の力を借りて、草冠の霊圧で成り立っていた城だ。供給源がなくなれば、崩れ去るのは道理。チラリと視界に入った何かを見る。赤髪の女が瓦礫の下に埋もれているのが見えた。
「悪い冬獅郎、先に行っといてくれないか?」
「?…わかった」
冬獅郎が先に降りて行ったのを見届けて瓦礫に近寄る。
「〈王印〉が消えたのに生きているのか?」
「…もともと我らは草冠様に仕えていただけだ。〈王印〉と関係は何もない」
「何故草冠のもとに集った?」
「…〈虚圏〉にいた頃、その力に屈服させられたのだ。《氷輪丸》によってな」
つまり本当の意味で部下になっていたわけではないらしい。だからといってこいつらの罪が消えるわけではないのだが。
「生きたいか?」
「何を言う?」
「お前が生きたいと望むなら、俺がその道を切り開いてやる。お前が死にたいと望むならここで殺してもいい」
「あまい男だな。敵に機会を与えるのは」
確かにあまいだろうが無理に命を奪う必要もない。雷蔵に影響は出ていないし、あの場にいた鬼道衆以外は無事なのだから。
「それでもいいさ。草冠がお前らを利用していたとしても、俺は草冠の友だ。そして友の部下は仲間ということではダメか?」
「…拍子抜けだな。インがいなくなってこの先どう生きていこうか悩んでいたところだ。許されるとは思わないが、居場所を作ってもらえるなら願ったり叶ったりだ」
「冬獅郎が凍らせて消してしまったからな。それに女の子がそんな雑な言葉を使うもんじゃないぞ」
「なっ!?////」
ヤンが顔を真っ赤に染めて雷蔵を見上げている。女として見られたことがなかったのだ。初めて言われたことに羞恥心が爆発していた。
そもそも自分は虚なのかさえわからない。何故〈虚圏〉にいたのかさえわからない。自分の過去を捨て、新しい道を歩くことを許されるならば、それも悪くないかもしれない。
「夜一と砕蜂の〈瞬閧〉を喰らって生きているとはな」
瓦礫を撤去しながら問いかける。
「超速再生のおかげだ。今は〈王印〉から与えられた力を失っているから、今は使うことはできない。これからも」
「気にするな。おまえは元はといえば、自我を持つ虚なのかもしれない存在だ。それがなくても一般の死神より回復速度は上だろうと思う」
「死神として生きていくことになるとは。運命とはわからぬ」
その言葉を了承として受け取り、瓦礫から引っ張り出したヤンを連れてみんなの元へと戻っていった。
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/三・五番隊隊舎 隊長室/
草冠の襲撃から数日。ヤンの入隊の許可が下りたことで、ようやく彼女を地下牢から出すことができた。万が一、暴走されては困るためということで牢に入れられていたが、本人はまったく気にしていない。
むしろ警戒されることが当たり前かのように受け止めていた。敵として戦った人物が、今度は仲間になるのだから疑っても仕方あるまい。
「ここが隊長室か?」
「ああ、俺か俺の許可したやつしか入れ…ナイ…」
「?」
雷蔵の言葉が尻すぼみになったことに、ヤンは疑問符を浮かべている。気になって雷蔵の脇と扉の隙間から中を覗き、その光景に赤面した。
何故なら…。
「…何故ここにいる?」
「おはようございます雷蔵隊長」
「挨拶はいいから問いに答えてくれ。何故ここにいる?」
「気分です。スーハースーハー」
「やめんかぁ!」
当の本人は満足そうな顔をして窓から逃走した。雷蔵の下着を持って…。
「待てこらぁ!返しやがれぇ!」
雷蔵もその人物を追いかけていく。それをヤンはどうしたらいいのかわからないらしく、入り口で佇んでいた。
「どうしたの?ヤン」
「桃、これはどうしたらいい?」
「どうって何を?…っ!?/////」
雛森は散乱している雷蔵の服や下着を見て思わず赤面した。好きな人のそれを見るのは、若干望んでいたシチュエーションであったが、如何せん刺激が強すぎた。
「どうした桃?顔が紅いが」
「な、な、なんでもないよ!?」
「何故疑問形?」
そう聞き返しながら雛森が雷蔵の服を片付けていく。それを真似てヤンも片付けを手伝い始めた。
「まったくやかましいことだネ。研究に集中できないじゃないか。一体誰が騒いでいるのかネ?…雷蔵かい。なんとも予想外の客人だヨ」
マユリは何もなかったかのように監視カメラを切って、研究に没頭し始めた。
一方その頃、雷蔵は十二番隊隊舎の中を走り回っていた。
「返せ!」
「これはサンプルですので返却不可です」
「なんのサンプルだこらぁ!あれか?マユリの実験のためとかいうあれか!?」
「私の○○○○のためです」
「真顔でそんなことを口にするなぁ!聞いた俺の方が恥ずかしいわボケェ!」
なんとも聞いていて恥ずかしいやり取りなのだが、〈十二番隊〉隊士たちは気にせずそれぞれが仕事をこなしている。
彼の人物が雷蔵の服をダシにしているのを知っているから…。
「ではいっそのこと2人で致しますか?」
「…は?」
「要求にはなんなりとお答えできると思います。雛森副隊長にはできないようなことも」
「何故そこで雛森がでてくる?」
「…鈍感なのですね。そこもまたポイント高ですが。それより如何ですか?」
「なんだネ?この悪寒は。…まるで自分の身に何か危険が迫っている感じだヨ。直接自分のではなく間接的な何かに。…根拠のない疑問は後回しだヨ、それよりこの材料で何か面白いことを始めようじゃないか。ほーほっほっほっほっ!」
「…もうやるよ。なんか疲れた」
疲弊した雷蔵は自舎に帰ろうとする。
「ありがとうございます。常時携帯させていただきます」
「やっぱり返せこらぁ!」
雷蔵とネムの追いかけっこが再開された。
「隊長遅いなぁ〜」
「どこで道草食ったんだろうね。せっかく桃と2人で片付けたのに」
ネムを追い掛けている雷蔵とは違い、雛森とヤンの愚痴は穏やかなものだった。
これで番外編は一時終了です。次話からは本編に戻りますのでよろしくお願いします
雷龍地走り・・雷が地を這うように伸びて触れた敵を麻痺させる