BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜 作:ジーザス
どなたか時間をください…
「やあ、ウルキオラ。ちょうどいいところに来てくれた」
〈崩玉〉を操作していた藍染は、ヤミーを連れたウルキオラが現れたことに驚かず、振り返らないまま声をかけた。それに対してウルキオラは静かに返事をする。
「状態はどうですか?」
「予定通りだよ。僕の予想と同じように機能してくれている」
〈崩玉〉に触れた指から霊圧を送り込むと空間が割れた。
「名を聞かせてもらおうか新たなる同胞
「ワンダーワイス…ワンダーワイス・マルジェラ」
「ワンダーマイス…ワンダーマイス・マルジェラ」
名前を告げた2体に藍染は笑みを深める。
それは新たに戦力となる僕が増えたことに対する歓喜か。それとも死神を滅することができることが、より容易くなったことに対する歓喜か。
「〈護廷十三隊〉、永遠に葬ってくれよう」
藍染の呟きを横に並んだギンは、いつもの内心を読ませない能面の笑みを浮かべながら見ていた。
それを気にせず藍染は振り返って告げる。
「ウルキオラ、1ヶ月前に話した例の作戦を実行に移してくれ。それと好きな者を連れて行くといい」
「…わかりました」
「君も行くかい?グリムジョー」
ウルキオラの返事を目で受けた藍染左腕を失い、背中の
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〈
「ふぅ〜」
息を吐いた雷蔵はその場に座り込む。身体中から汗をこれでもかというほど噴き出させている様子を見ると、どれほどのしんどい修行をしたのかと不思議になる。
それを遠くから見つめる喜助の右腕や額は、大量の血に染まっている。よく見れば雷蔵と喜助の間の地面は大きくへこみ、尋常ではないほどの壊れ方をしているため、何が起こったのか想像もできない。
「雷蔵サン、やっぱダメっスよ。【血霞の盾】があってこれだけのダメージはあり得ないっス」
「それを使われても気にしない程度まで上達したかったんだが。さすがに1ヶ月じゃ無理か」
喜助の怪我の具合を心配するより、己の未熟さを嘆いている様子をはたから見れば人でなしと言われるだろう。だが喜助はそのことを気にしていないし、むしろそれでこそ雷蔵とばかりに頷いている。
「反射的に《鬼道》使いましたけど、それでもこれっスからね。愕然とする必要はないんじゃないっスか?」
「予定だったらお前の首飛んでたはずなんだけどな。おしいな」
「アタシを殺す気だったんスか!?」
悪びれる様子もなく告げられた現実に憤慨した喜助は、怪我している腕で雷蔵を指差す。その様子にヘラヘラとしてまともに取り合わない雷蔵は喜助の反応がとても面白いらしい。
普段から周りがこのような目に遭っていることを教えているのだが、本人は気づいていないらしい。喜助自身がマイペースなこともあり、そのことに気付いていないのかもしれない。
「アタシが何かしたと言うんスか?」
「気付いてないのか?」
「何をっスか?」
やはり喜助は気づいていないらしく首を傾げている。その時パサッと音がして喜助が被っていた帽子が地面に落ちた。左半分が吹き飛んでいるところを見ると、雷蔵の攻撃によって攻撃を受けていたようだ。
「お気に入りの帽子…壊れちゃったっスね」
「その程度気にしてたら腕の傷はどうなるんだよ」
「浦原殿!雷蔵殿!」
話をしていると、鉄裁が猫状態の夜一を連れて焦ったような表情で駆け寄ってくる。後ろにはウルルとジン太も怯えた表情で駆け寄ってくる。
「鉄裁サンどうしたんスか?夜一サンまで連れて」
「余程のことがあった…っ!この霊圧はまさか《破面》!?」
鉄裁が作り出していた結界が解除されたことで、周囲の様子が空気を伝って〈勉強部屋〉に流れ込んできた。
それは《破面》と対峙する死神たちの霊圧だった。
「そういえばもう2ヶ月だったな。…この様子じゃかなり追い込まれているみたいだ」
「アタシも行きましょう。おそらくこの霊圧は初めてやってきたときの巨体の人でしょうから。残りはわかりませんが」
「無茶をすればわしが許さんからの」
凄みのある声で言われては、喜助も雷蔵も苦笑するしかない。全部で4つの《破面》の霊圧を感じるが2つは知らない。
おそらく藍染が〈崩玉〉を使用して、生み出した新しい《破面》なのだろう。かなりの霊圧を発しているようだが取り乱すほどではない。さきほど取り乱したのは来ていることに驚いた結果だった。
《解放状態》なのかは確認しなければわからないが、救出を優先するべきだろう。
「鉄裁サンはお二人をお願いします。雷蔵サン、手を貸してもらえますか?」
「愚問だな。聞かなくても返事はわかっているはずだけど」
笑顔で質問を返すと喜助は苦笑を漏らして走り出した。その様子に雷蔵は喜びを感じながらその背中を追いかけた。
2人が走り去るのを見ている鉄裁は、ジン太の声で我に返った。
「店長、大丈夫かな?」
「大丈夫ですとも。しかしあれほど嬉しそうにしている浦原殿を見るのは初めてです」
そう、黒崎殿を鍛えていた頃よりもっと楽しそうな。何より嬉しそうな浦原殿は見たことがない。
楽しそうにしていても、それは自分の顔に貼り付けた偽りのような笑みの仮面。しかし今浮かべた表情は、心の底から雷蔵殿と戦うことができる歓喜。
{それほどにまで雷蔵殿と背を預けて戦えることが嬉しいのですかな?浦原殿。雷蔵殿、浦原殿を頼みましたぞ}
鉄裁は駄菓子屋を守るため、周囲を結界で覆う作業を始めた。
喜助と浦原が駄菓子屋を出た頃。一角・乱菊・冬獅郎は、窮地に追いやられていた。
「なんだぁ?手応えまったくねぇじゃねぇか!来て損したぜ!」
「同感。これが〈護廷十三隊〉の隊長と副隊長の実力?正直、期待はずれだね」
《解放状態》になり、六本の腕を生やした《破面新No.6》は乱菊を掴み、どうしようか悩んでいるようだ。今いる中でもっとも強い冬獅郎の姿がないのはやられたからだろうか。霊圧を感じるがいつもほどの圧力は感じない。
「やらしい体つきしてるねお姉さん。本当にセクシィー。そんなやつをボロボロにするのか僕の趣味なんだ。これで刺したらどんなことになるかな?」
「くっ!」
腕で捕まえている乱菊に、一本の腕に形成された無数の針を近づける。あれにやられれば自分がどのような姿にされるのか予測したのだろう。
乱菊に焦りの表情が垣間見える。
「じゃあ始めようかな。いえーい!」
針が乱菊を貫く瞬間、その腕が針ごと斬り落とされた。木々の枝葉を切り落とすかのように、少しの抵抗もなく切り落とされた。
「何!?」
何が起こったのか確認しようとするが、今度は乱菊を捕まえていた腕が斬り落とされる。
「うわあぁぁぁ〜!」
痛みからか驚きからか、判別はつかないが斬られた腕を周囲に振り回しながら《破面》が叫ぶ。ついでに一角を捕まえている腕を移動して斬り落としておいた。
「これが《十刃》の〈鋼皮〉?期待したほどの硬さじゃないな」
「雷蔵さん…」
腰を持たれて担がれている乱菊が呟くと、雷蔵は穏やかな笑みを浮かべる。その笑みを見て乱菊は助かったことへの安堵と、助けさせてしまったことへの後悔を感じていた。
だがそれ以上にそれらを押しのけるように湧き上がったのは、安心という感情だった。自分・一角・冬獅郎がまともに戦うことができなかった相手の腕を、容易に斬り落とす技量に対する感情だった。
「喜助、そのでかいの頼むわ。俺は乱菊をボコボコにした奴に仕返ししないと気が済まない」
「復讐っスか?」
「その程度で済むならいいけどね。《十刃》さん、名前を聞いておこうか」
八本(正確には六本)の腕を生やした《破面》は不機嫌極まりない表情で告げる。喜助は「了解っス」と言って、図体のデカい破面へと向かって行った。
ちなみに喜助の薬で、2人は《破面》との接触前に怪我と体力を回復させていた。
「…《破面No.6》ルピ・アンテノール。腹立つなぁ。僕、大して強くもない奴が、正義の味方気取ってるのが一番気にくわないんだよ」
雷蔵はそんな風に言う《破面No.6》ルピに《雷天》を向けて言う。
「大して強くもないかどうかは、やってみないとわからないだろう?それとも手を全部斬り落とされないと、力の差もわからないか?」
「…いいね君。存在した破片を残さないくらいに潰してあげるよ」
そう言ったルピから爆発的な霊圧が発せられ、周囲に広がっていく。霊圧が風圧となって2人を襲い、乱菊が腕で顔を守るようにかかげた。
一方、雷蔵は冷静に発生源にいるルピを見据えている。
「乱菊、冬獅郎と一角の状態を見てくれないか?残りの2体は喜助が相手をしているから、派手に動かなければ狙われることはないはずだ」
「わかりました。雷蔵さんもお気をつけて」
「ああ」
乱菊が降りていくのを見送る間にも、ルピの霊圧は高まっていく。色で例えるならば一護のように紅黒く見える。だが唯1つ違うのは、霊圧に含まれる感情だ。
一護の場合は、仲間を護りたいという想いが含まれているが故に強く・重くて心地いい。
だが眼前の《破面》の場合はどうだろうか。敵意と殺意しか見て取れないからなのか。不快で触れるのを躊躇うような感じである。
遠くでは一護とこの前の《破面》の霊圧を感じる。奴と眼前の破面の数字は同じ。一体どういうことだろうか。
《十刃》と数字持ちは、《大虚》の中でも特に優れた殺傷能力を持つ《破面》の名称であったはずだ。それなのに6を持つ《破面》が2体存在している。
いつから数字が被るような事態が発生したのだろうか。まさか同じ数字を持つ《破面》が、どの数字にも2体ずついるというのだろうか。
《十刃》という名称は、10体という意味ではなくなるのだろうか。
もしそうなれば〈護廷十三隊〉では決して勝つことはできない。《最上級大虚》が10体いれば、世界が終わりだと冬獅郎が言っていた。
「死ねぇぇぇぇ!」
思考中にルピが腕を伸ばして攻撃を繰り出してきた。それを〈瞬歩〉で避けた後、その腕を一刀両断する。
痛みを感じないらしく、斬られても腕を抑えるような真似はしていない。おそらく先ほど腕を斬られて声をあげたのは、意図も容易く斬られたことに対する、恐怖からのものだったのだろう。
腕を斬られた瞬間、遠距離では分が悪いと理解したのだろう。近距離戦で勝負を決めに来たらしく、距離を詰めてくる。
「…《十刃》ってのは、どの数字持ちも2人いるのか?」
「何言ってんの?んなわけないじゃん」
「じゃあ何故お前が6を背負っている?遠くで戦っているグリムジョーも6だったはずだ」
腕と鍔迫り合いをしながら問いかける。腕を斬り落とせないのはらその腕に〈鋼皮〉とやらを集中的に集め、硬度を高めているからだろうか。
よく見れば他の腕より色が濃く、幾分か太い。
「ああ、彼は
「違うな」
「はっ?」
否定されたことにイラついたのか表情が黒く(暗くではない)なり、押し込む力が強くなる。
「あいつが失ったのは腕と数字だけじゃない。信念と仲間の期待。そして誇りだ!」
「っ腹立つなぁもう!僕らにそんなのあるわけないだろ!ちっ!」
雷蔵が語尾を強めるとともに腕に加える力を増やすと、ルピの硬化した腕が斬り落とされた。それを見たルピはあり得ないとばかりに驚愕の表情を浮かべる。
《第6十刃》としての実力は十分なはずだ。実際、席官である死神3人を《解放状態》になった自分が圧倒していた。なのに目の前のこいつは、《解放状態》でもまったく歯が立たない。
しかも《卍解》さえ。いや、その手前の《始解》とやらをしていない。それなのに自分を相手にして互角ではなく、先ほどの自分のように圧倒している。
何故だ!?何故そこまでの力を死神程度が持っている!?
「お前は俺の大切なものを傷付けすぎた。お前にあるのは死だけだ」
雷蔵が《雷天》を天に掲げながら冷酷な声を発した。
「これを見せるのはお前が初めてだ。冥土の土産として持っていけ。《卍解》!」
雷蔵から圧倒的な霊圧が溢れ出し、ルピの身体に吹き付ける。その霊圧の高さにルピは目を見開いた。
「な、なんだよこれ…。これが《卍解》…だと?ありえない…」
「《卍解》程度の霊圧で怯えるなよ。
雷蔵が
「そ、それは仮面?…ありえない!ありえない!死神風情が虚の力を得ただと!?僕たちの力と同じものが使えるだと!?」
『見ればわかるだろう。ありえるからこうしてお前の前に立っている。お前の罪を洗うとしよう』
「くっ!」
雷蔵が発する声はもはやいつもの雷蔵ではなく、副音声のように獣の唸りが入り混じっていた。
雷蔵が霊圧をさらに上げると、ルピは恐怖の表情を浮かべ、後退りを始める。その様子を雷蔵の仮面の奥にある黒い眼球に黄色の瞳が、憂いを帯びながら見ていた。
雷蔵が爆発的な霊圧を発した頃、乱菊に治療されていた恋次・一角・冬獅郎が目を開けた。
「雷蔵隊長?けど霊圧は…」
「隊長?」
「雷蔵か?この霊圧は。だが…」
「この霊圧は雷蔵さんの?でもなんだかいつもより重い」
乱菊に応急手当てをしてもらった4人は、雷蔵が《
《虚化》した雷蔵の霊圧の高さは、一護とグリムジョーのところにまで届いていた。
「なんだよこれ!藍染の野郎に匹敵しやがる!」
「…雷蔵さん、
2人もその霊圧の高さに驚愕し、一時的に戦闘をやめて、異質な霊圧を感じる方角ををみていた。
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雷蔵の突き刺すような視線にルピは動けなくなっていた。
『動けないのか?《第6十刃》もこの程度。じゃあな』
雷蔵が《帝破明神雷天》を、《虚化》した状態でルピに上段から振り下ろした。
無理矢理的な感じですが一応空座町決戦編にて彼の実態を説明できたらいいなと思っています。
辻褄が合っているか不安ですが頑張ります…