BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜   作:ジーザス

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登校と帰宅の合間にしか書く時間がないので投稿スピードはこれぐらいになると思います。

申し訳ありません


20

「てめぇらの治療は受けねぇ!」

「なりません!怪我人が治療しないのは言語道断です!」

「やかましい!俺は…げほぉ!」

「大人しくしてください」

「ナイスですウルル殿!そのまま抑え(オトし)ましょう!」

 

怒号が飛び交うこの場所は、浦原商店の地下にある〈勉強部屋〉である。怪我した乱菊・冬獅郎・そして今ウルルに首を押さえ込まれ呼吸困難に陥っている一角が収容されている。

 

店では安心して治療できず、広い空間で過ごした方がいいという喜助の判断により今に至る。

 

「…どうすればここまで五月蝿くなるのでしょう」

「人の心は簡単じゃないということだな」

「…」

 

乱菊と雷蔵が感想を述べている隣で、約1名が天井を見上げて岩に腰掛けている。普段見せない様子に、微笑むより不安を抱いた雷蔵はその人物に問いかけた。

 

「どうした?冬獅郎」

「…いや、なんでもねぇ。しばらく1人にしてくれ」

「ああ」

 

歩き去る冬獅郎に簡単な返事しかできない雷蔵は、何故そこまで暗いのかが理解できなかった。

 

 

 

俺は松本や雷蔵から程よく離れた場所まで移動し、岩陰に隠れるようにして座り込んだ。脳裏をよぎるのは《第6十刃》との戦闘だ。《卍解》を駆使してでも致命傷は与えられなかった。ましてや《斬魄刀解放》によって、自分は戦闘続行不能になる怪我を負わされた。

 

いくら自分の(卍解)が未完成《・・・・・・》だとはいえ、このような敗北は屈辱以外に他ならない。

 

現在の〈護廷十三隊〉の中で《卍解》を完全会得しているのは、俺を除いて6名。

 

〈総隊長兼一番隊〉隊長 山本元柳斎重國。

 

〈三・五共同部隊〉隊長 雷蔵。

 

〈四番隊〉隊長 卯ノ花烈。

 

〈六番隊〉隊長 朽木白哉。

 

〈七番隊〉隊長 狛村左陣。

 

〈九番隊〉隊長 京楽春水。

 

〈技術開発局二代目局長兼十二番隊〉隊長 涅マユリ。

 

〈十三番隊〉隊長 浮竹十四郎は病気がちなためか解放することは稀であるし、《卍解》を見たことがある人物がいるのかも不明だ。〈四番隊〉隊長 卯ノ花烈も総隊長に次ぐ最古参の死神だ。《卍解》を会得しているだろうが、目にした者はいない。

 

戦闘方法が違うとはいえ〈現世〉に来てからというもの、勝利という一言で終わらせる戦闘は一つもなかった。

 

破面・No.11(アランカル・ウンデシーモ)》シャウロン・クーファンとの戦闘では、【限定解除】した際の霊圧の上昇率に驚いた隙をついて勝てた。だが最初から本気で戦っていれば、勝てたかと言われると微妙である。

 

よくて相討ち。下手をすれば致命傷を与えながらも、自分の負けの可能性があった。今回の戦闘は《十刃》であったという言い訳が通じるはずもない。

 

そのためにあれから2ヶ月の間、斬魄刀との対話を繰り返し実力を上げたつもりだった。だがその苦労を粉砕するかのようにあの《破面・No.6》は姿を現した。

 

《卍解》した自分には手も足も出なかった相手に、雷蔵は圧勝した。新しい力(・・・・)を手にして。あれほどの力をどうやって手に入れたのか不思議だが、そのことを気にしている暇はない。

 

僅かな時間でも無駄にせず修行し、藍染が来るまでに実力を上げなければならない。ならばすることは1つ。

 

「《霜天に座せ【氷輪丸】》」

 

立ち上がり、静かに斬魄刀を解放する。

 

「俺は強くなる。雛森を、〈尸魂界〉を、〈現世〉を守れるくらいに強くなる!」

「あまり思い詰めるなよ冬獅郎」

 

誓いを立てていた背後から突如、声をかけられ驚いてしまう。立っていたのは友人であり、今回の戦闘での勝利の立役者である雷蔵だった。

 

「…聞いていたのか?」

「様子が気になって見に来たら聞こえただけだ。別に盗み聞きしようとは思ってなかった」

 

覚悟を聞かれていたのは恥ずかしいが、悪気があってしたのでなければ怒る必要もない。むしろ自分の覚悟を聞いたことで手を貸してもらえるのであれば、羞恥など微塵も感じない。

 

「怒ったりはしない。ただ頼みがある」

「珍しいな冬獅郎が俺に頼みごとするなんて。だが俺にできることならやろう」

 

俺は断られるかもしれないという最悪の事態を想定しつつ、隊長としてあるまじき行為である頭を垂れる。

 

「俺を鍛えてくれ。この通りだ」

 

《始解》を解除し、頭を下げて頼み込む。もしこれを断られれば俺は強くなる方法を1つ失うことになる。自分で己を鍛えることが正しいことなのかは、今回の戦いではわからなかった。

 

己を自分自身で鍛えることは、自分を一番理解していれば効率がいい。自分に不足していることを、補えるように修行すればいいのだから。全体で見れば正しいことだろう。

 

一方、今のように人に頼んで教えてもらうことは、自分だけで修行するより明らかに効率がいい。自分より腕が上の相手であればその人物に追いつこうと思うようになり、一層修行に身が入る。

 

相手が上でなければならないという限定はないが、今の俺に適している師は目の前にいる雷蔵だ。

 

断られる可能性が高いと俺は予測している。今のような緊急事態に、自分ではない他の死神を鍛えることなどするはずがないからだ。それは雷蔵に限ったことではない。多くの隊士に言えることだ。藍染の裏切りの際、狛村が呆気なく倒されていれば尚のこと。

 

《鏡花水月》の能力である【完全催眠】にかかっていたという理由もあったが、それでも力の差を痛感した。俺もその強さを身に染みて覚えている。右腕から肩までを一直線に斬り裂かれた傷は、今でもうっすらと残っている。

 

《卍解》した状態の俺に対して、《始解》もせずに一振りで致命傷を与えた腕は、傲りでもない本当の勝者だった。

 

頭を下げた俺に対して、雷蔵は一体どんな視線を向けているのだろうか。他人に力添えを求める姿勢に、哀れみの表情を浮かべて見ているのだろうか。はたまた己の修行時間を奪うことに対して、怒りを表に出した表情を浮かべて見ているのだろうか。

 

この短い沈黙が何より俺には耐え難い時間だ。断るのであれば冷たくあしらってもらった方が嬉しい。あらゆる理由をつけてやんわりと断るようであれば、感情のまま突き放してくれた方が楽だ。

 

「いいよ」

「え?」

 

お願いしときながら許可をもらえたことに、間の抜けた表情を浮かべ声を出してしまう。

 

「いいのか?」

「別に断る必要もないからな」

「お前にだって修行があるだろう?」

「ないわけじゃないが…。友人の頼みを無碍にはしたくない」

 

自分の時間を削ってでも教えてくれるというのであれば、それに縋っても文句を言われることはないだろう。そう判断した俺はもう一度深く頭を下げた。

 

「ありがとう」

「隊長が頭を下げるなよ」

 

苦笑しながら雷蔵は俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

 

「やめろ!髪が乱れる!」

「冬獅郎は俯くより顔を上げた方が似合ってるよ」

「そ、そんなことは言わなくていい…」

 

顔がやや紅くなっていると自覚する。俺が何かしらの感情を抱いているように見えるだろうが、決してそのような感情はない。ただ褒められて、純粋に嬉しかっただけなのだ。それを理解しているからか雷蔵の表情も明るい。

 

「じゃあ、始めようか。やることはただ1つだ。《卍解》同士で力尽きるまで戦う。いいな?」

「望むところだ」

 

俺たちは互いに距離を取り叫ぶ。

 

「《卍解 帝破明神雷天》!」

「《卍解 大紅蓮氷輪丸》!」

 

爆発的に迸った霊圧が、浦原喜助作の〈勉強部屋〉一帯に広がり、巨大は空間を揺るがせる。

 

「はあぁぁぁぁ!」

「せあぁぁぁぁ!」

 

〈瞬歩〉で互いに相手の懐に入り込み斬魄刀を一閃した。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

〈勉強部屋〉に2人を置いて地上に戻った乱菊と喜助は、〈尸魂界〉から与えられた情報に眉を潜めていた。

 

「井上織姫 断界にて霊圧消失 同行した死神2名重体 何者かによる拉致の可能性有」

 

映像で総隊長直々の説明を聞き終えた2人は、重い空気に落ち潰されるような錯覚に陥っていた。

 

「〈断界〉内でそのようなことが可能なのですか?」

「《破面》の一部、強いて言えば《十刃》ですネ。彼らには《黒腔(ガルガンタ)》と呼ばれる、我々が使うような〈穿界門〉と同じ原理の空間を移動する能力があるのでしょう。誰がそのようなことをしたのかはわかりませんが、非常にマズイことになりましたネ」

「織姫を攫った理由は〈能力〉でしょうか?」

「大半の理由はそうでしょうネ。ですが少し気がかりなことあるんス」

「なんでしょう?」

 

喜助の深い謎の能面の表情に、乱菊も耳をすませて言葉を待つ。〈能力〉以外も拉致する必要があると言いたいのだろうか。言い方は悪いが、彼女にはあれ以外に取り柄と言えるものはない。

 

体力は人間の女性と比べると、〈尸魂界〉に侵入するために鍛えたことがあるからか多少高い。だがそれは、人間という規格内に収まるものだ。

 

あるとすれば折れない心の強さと仲間を信頼する想い。だがそのためだけに、拉致という面倒なことをするはずがないというのが乱菊の考えだった。

 

「時期ですよ」

「時期?」

 

予想外の言葉に乱菊は聞き返してしまった。

 

「はい。何故今のような時に拉致ということをしたのかということっス」

「油断していると踏んだのではないしょうか」

「それもあるのでしょうけど、アタシには他の理由があるんじゃないかと思うんス。拉致であれば〈断界〉ではなく、独り暮らしをしている〈現世〉で拉致すればいいはずなんスよ。なのに今回はこちらではなく、あちらとの境界で拉致した。つまりあそこでなければならない理由があった。もしくはあの時にしなけれはならない理由があったんじゃないかって」

 

喜助の説明に乱菊は深く納得した。確かにこちらでする方が安全で素早く拉致できる。なのに空間の境目でしたということは、何かしらの理由があるのだ。

 

「さすがは雷蔵さんの親友ですね」

「いやぁ、褒めても何にも出ないっスよ。アタシは自分の罪を償うために言っているだけであって、それ以外には何もありません。強いて言うなら、雷蔵さんに全てを終わらせてほしいという願いですかネ」

「それでもいいんです。雷蔵さんと親友でいてくれるだけで、私は嬉しいです。ところで【旅過】の少年や一角はどこへ?」

「黒崎サンなら昨日の夜、自宅に戻りましたよ。一角さん一行は事後報告ということで、〈尸魂界〉に戻りました」

 

つまり一護は安静にするために家へ、一角たちは今回の戦闘報告と、次の戦いのための作戦を聞くために戻ったようだ。喜助は既にいくつか策を考えているようだが、今はまだ明かすつもりはないらしい。

 

「織姫のことはすぐにお仲間にお伝えした方がいいでしょうね」

「アタシもそのつもりだったんスよ。今から3人に連絡しますのでアタシはこの辺で」

 

居間から出て行った喜助を見送った後、乱菊は振動で激しく揺れる机から湯のみを持ち上げて、ウルルが淹れたお茶を味わっていた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

数日後、一護は浦原商店の地下にある〈勉強部屋〉に来ていた。仲間の雨竜・チャドがいることに驚いていたが、救出のために来てくれたことに感謝して何も口にはしなかった。

 

浦原が開いた穴は不気味に鈍く輝きを放っている。不吉な予感しかしない穴を見ても、3人は表情をひとつも変えなかった。

 

「暗がりに向かって、霊圧を使いながら足場をつくって進んでください。暫く行けば〈虚圏〉に着く筈です」

「この先に井上が…」

「気をつけてくださいね。この中は霊子の乱気流が渦巻いています。足場から落ちて入り口を見失えば、二度とこちらにもあちらにも戻れなくなります。それでも行きますか?」

 

喜助の脅しは、それだけの覚悟があるのかという問いかけでもあった。生半可な心意気では命をむやみに捨てることになり、〈尸魂界〉の戦力を著しく損なうことになる。それだけは避けなければならない事案なのだ。

 

例え、井上織姫の奪還が成功しなくとも。

 

「今さら覚悟を聞いても(こたえ)は変わらねぇ。俺たちは井上を助けるためだけに行くんだ」

「そうだね」

「む」

 

どうやら喜助の脅しは必要なかったようだ。

 

3人の覚悟を聞いて足を踏み入れようと思った瞬間。隣の岩が粉砕されて、人影が3人の目の前を通りすぎていった。

 

「何!?」

「この霊圧は冬獅郎?なんでここに」

「ん?黒崎一護とその仲間たちか」

 

死覇装をボロボロにして流血している雷蔵が、《卍解》した状態で岩の上に現れた。

 

「雷蔵さんもかよ。一体ここで何してるんすか?」

「修行だよ。少しでも強くなっておかないと戦いに勝てないからな」

「クソ!」

 

瓦礫の中から現れた冬獅郎の背後にある氷の華の一片が割れる。それと共に、《卍解》が解除された。

 

「持続時間は大幅に伸びたな。だがまだ使いこなせていない。続けるか?」

「当たり前だ。《卍解 大紅蓮氷輪丸》!」

 

爆発的な霊圧が冬獅郎を覆い、氷でできた翼と尾を持った竜がそこにいた。

 

「黒崎一護、行くならヤンを連れていけ。〈虚圏〉のことを熟知している」

「雷蔵の頼みだから仕方なく行くんだ。勘違いするなよ?」

 

雷蔵の背後から現れた赤髪に緋色の瞳をした少女らしき人物に、3人が目を見開く。

 

「雷蔵さん、そいつは…」

「ああ、草冠の手下だった。だが今は俺の部下だから気にするな。イヅルと雛森が井上織姫が拉致されたと聞いて、すぐに送ってくれたんだ。今や藍染は〈虚圏〉を根城にしている。そこを知っているヤンをよこしたというわけだ」

「納得だな」

「む」

 

ヤンが〈黒腔〉に飛び込むと、一護たちもそれに続いて入っていった。それを見送る喜助・雷蔵・冬獅郎の眼は、珍しいことに不安に染まっている。

 

それは敵しかいない地に、僅か4人だけで飛び込まざる負えない状況まで追い込まれた、こちらの不手際を背負わしてしまっていることへの謝罪も含まれている。

 

「あいつらならやってくれるさ。まだまだ延び白が余るほどあるからな。隊長格が向こうへ行くことを禁止されている状態では、〈現世〉でもっとも力のあるあの3人が行くのは必然だ」

「ですがあちらの実力は未知数なので何が起こるかわかりません。その時になったら背いてでも行くんスか?」

「行くのは俺たちではない誰かだろうな。さてと冬獅郎、やろうか」

「ああ!」

 

霊圧を高めて冬獅郎は雷蔵へと斬り掛かった。

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