BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜 作:ジーザス
そんなことより本編をどうぞ〜
暗闇というほど暗いわけではないが、ぼんやりと光が自分たちを映し出しているような錯覚に陥る。そのなかを一護たちは、前を走る死覇装を着た赤髪の少女の後を追っていた。
足場は喜助の言ったように何一つ無く、霊圧で形成するしかなかった。目の前を走る少女のように見える元虚?は、磨かれたかのように光り輝く足場を霊圧でつくりながら走っている。
「しかしすげぇな。ここまで綺麗に作れるなんて。自信失いそうだ…」
「黒崎の長所は霊圧の高さ。この一点しかない」
「んだとこらぁ!」
感心していたというのに雨竜が、眼鏡の鼻っ面を押し上げながら素っ気なく評価を下すのが無性に腹が立つ。
そう言う雨竜は霊圧で形成された足場を走らずに、隣を併走している。その動きは不思議で足下には鈍く発光する何かがあり、その上に乗っているようだ。
「石田、それなんだ?」
「〈飛簾脚〉の応用だよ。今の僕ならこれぐらい訳無い」
「力を抑えるならここを走ればいいだろ。なんでここを走らねぇんだ?」
「
雨竜が素っ気なく答えると一瞬だけ霊圧が揺らぎ、一部分の道が削れていた。前を走るヤンの心が、瞬間的に揺らいだことをそれは示している。それを感じ取ったのか、一護や後ろを走るチャドが不安そうな表情を浮かべる。
「すまねぇ。石田は悪気があって言ったわけじゃないんだ」
「…気にしなくていい。滅却師がどのような扱いをされたのか雷蔵から知らされているからな。それでも力を貸して貰えることに感謝している。だが石田とやら、何故お前は恨むはずの死神に手を貸す?」
「それと石田、親父さんと約束したと浦原さんから聞いたぞ。『修行をつけてもらう代わりに、死神とは金輪際関わりを持たない』と。ここに来ていいのか?」
2人からの質問に雨竜は若干困ったような表情を浮かべ、素直に言葉を返した。
「茶度くんの言う通り、僕は修行をつけてもらうために誓った。でも黒崎は
「それって屁理屈だぞ」
「契約の穴をついたと言ってほしいね」
雨竜らしい説明に茶度は苦笑を浮かべ、ヤンはどう反応したらいいのかという表情で固まりながら走っていた。
後ろで言い合っている滅却師と死神の少年はどこか楽しそうだ。普通なら相容れない関係であるはずの2人。協力することが不思議でならない。
死神は整の魂魄を魂送し虚を斬ることで〈現世〉を守る存在。
それに対して滅却師は、虚を〈尸魂界〉に送ることはせず消してしまう存在。
滅却師は人間を襲う存在である虚を〈尸魂界〉に送ることを良しとせず、消すこと(第一優先は自分の安全だが)を優先し、それ故に世界のバランスを崩すことになってしまった。
〈現世〉と〈尸魂界〉は複雑なバランスで成り立っている。どちらかに魂魄が多いとその均衡は容易く崩壊し、世界は破滅を迎える。
当時、死神より圧倒的に数の多かった滅却師は、自分達の存在意義と正義感から魂魄の消去を続けた。
相容れない関係により互いに互いを忌み嫌い、そして憎しみあった。そして200年前に死神の手によって滅ぼされた。生き残りがいたことに〈尸魂界〉は驚いていた。
〈技術開発局二代目局長兼十二番隊〉隊長であるマユリは、彼を実験体にしようと画作しているが、各隊長が水際でそれを防いでいる。
と私は聞いている。
王族の秘宝の一つである〈王印〉を狙った当事者に、〈尸魂界〉の情報を回すことを良く思わない隊士がいるのも事実だ。でもその反対に自分の力を認めてくれる隊士がいるのもまた事実。実際、〈三・五共同隊〉のほぼ全員が自分を受け入れてくれている。
席官クラスの実力を持つからなのか。彼ら彼女らは気安く話しかけてくれる。
男の場合は若干下心ある感じで近付いてくるから、桃や雷蔵に助けてもらっている。女性の場合は恋愛事(〈現世〉ではこいばなというらしい)をメインで話している。
例えば桃が雷蔵を好いているとか。〈十番隊〉副隊長の乱菊も少なからず想っていることを聞いている。
桃の場合は九死に一生を得る感じで救われたから、そうなっても可笑しくはないらしい。反対に乱菊は、〈護廷十三隊〈〉に配属される前から同じ屋根の下で暮らしていたから、恋人としてより家族としての愛が強いと聞いた。
乱菊が本当に好きなのは、〈尸魂界〉を裏切った件の市丸ギンという男のことらしい。聞くところによれば雷蔵の親友でもあったらしいが、裏切られた事に対してあまり本人は気にしていないようだ。
内心が読み取りにくかった性格もあって、その事については吹っ切れたようだ。恨みもなければ悲しみもないと言っていた。本心はどうなのかは聞かなければわからない。踏み込んでいい域ではないと直感が囁いているため、自分から聞こうにも聞けない。
今回の件の主犯である藍染は、誰からも慕われる優秀な死神だったらしい。〈護廷十三隊〉に所属する前のことは、雷蔵でさえもまったく知らないらしい。
おそらくその事を知っている人物は、総隊長・京楽春水・浮竹十四郎・卯ノ花烈だけと思われる。
京楽さんや浮竹さんはともかく、総隊長や烈さんには聞けない。総隊長は、地位の関係があり簡単には聞けないためだ。
烈さんだけは根本的に無理だ。
あの人の笑みは優しいはずなのに、寒気を催す謎の恐怖がある。総隊長よりは遥かに若いが、最古参の死神らしくまったくその衰えは見えない。
その美貌の不思議をそれとなく聞いたのだが、あの恐ろしく優しい笑みを浮かべてこう言った。
「その身体にお教えしましょうか?」
あんな風に言われたら首を振るしかない。でも、女性としての憧れは確かにある。正体ががなんなのかわからない自分の寿命は、どれ程なのかまだわかっていない。
長いのか短いのか。
それを調べるために、涅マユリではなくネムに調べてもらっている。
あんなマッドサイエンティストに自分のことを研究されたくないからな。あいつの遺伝子から造られたはずなのに、まったくそんなことを感じさせないからこそ任せられる。
「見えてきたぞ」
物思いに耽っている間にも足を動かしていると、周囲より明るい部分が目の前に見えてきた。その光に体を突っ込み、抜けるとそこはどこかの建物内だった。
「どこだ?ここは」
「建物内もしくは地下空間と見るべきだろう。だが窓がないところを見ると、地下空間である可能性がある」
石田雨竜なる滅却師の冷静な分析をBGMにして、私は到着場所に首を傾げていた。本来であればあの場所の近くに出る予定だった。浦原が開いた〈黒腔〉の質が悪いのか、私の道が悪かったのかはわからない。
ただ言えるのは、面倒な場所に出てしまったということだ。背後から巨大な影が近づいているのが何よりの証拠だからだ。
「なんだよあれ!」
「走れ!」
「戦わねぇのかよ!?」
文句を言いながら走ってついてくる黒崎に振り返らず説明する。
「こんな狭いところででかいやつが暴れてみろ。天井が崩れて埋もれてしまう。最悪圧迫死だ!」
「うおぉぉぉ!それだけは勘弁だ!」
「見ろ、開けてる場所がある。そこで迎え撃つ!」
石田が指差す方向にはかなり巨大な空間がある。あれだけの規模なら、後ろから追ってきている巨体をも倒せるだろう。
足を動かし空間に出て背後に眼をやると、その巨体も入ってきた。改めてその大きさに眼が点になる。下手をすれば4mになるのではないかと思われるほどだ。
背後には上へと繋がるとおぼしき階段がある。
「階段があるぞ」
「相手にするより、上にのぼったほうがよさそうだね」
「戦闘はなるべく避けないとな」
3人の意見が一致したことで階段を上ることが決定した。巨体から逃げるように階段へと走り、もう少しで上がれるといったところで、逃げ道を塞ぐように現れた人影に邪魔されてしまう。
「…っ何処へ行く侵入者よ。ここから先は我々を倒すまで行くことはできん」
「へぇ、じゃあやるしかねえよな!」
黒崎が斬魄刀を抜いて臨戦態勢をとる。一瞬、敵が狼狽を露にしたのは気のせいだろうか。それより黒崎の短気を納めるのが先だ。自分が前に出ることでやめさせる。
「邪魔すんのか?」
「お前はこの中で一番腕がたつ。そんなやつがこいつらを相手に体力を減らすのは、勝気を失うのと同意。せめて3人は戦わずに体力を温存してくれ」
「…彼女の言っていることは正しい。今ここで体力を使うのは得策じゃないね」
「む」
どうやら納得してくれたらしく私から3人が離れる。敵であったはずの存在にこうして信を置いてもらえることが嬉しい。
草冠の下についていたときには味わえなかったこの感情。雷蔵に救われたことで、私は今のように新しい感情を感じることができる。
感謝してもしきれないくらいに雷蔵には感謝している。
「私たちはここの番人。女相手に戦うのは私の流儀ではないが、命令故に処断する。デモウラ、手を出すな。私一人で十分だ」
「アイスリンガー、そこは俺が行く!ここまで追い込んだのは俺だ!」
「…わかった。お前に任せる」
鳥のような仮面をつけた《破面》は、高速移動でその場を離れ、壁際まで移動した。代わってズシーンと音がするように足を、床に踏みつけた背後の《破面》は、舌舐めずりするように私を見てくる。
共同部隊の男どもとはまた違った不快感を感じる。私を舐めきっているのか。奴の眼には戦闘意欲があるようには見えない。
「俺の名前はデモウラ・ゾッド。愛でてやるよ」
…不快感この上なし。肌がざわつくように腹立たしく、嫌悪感が沸き上がってくる。こんな敵と戦わなければならないことが不愉快だ。
だが個人的な感情で戦いをやめることは、藍染捕縛又は処断のための計画に穴を開けることになる。そうすれば私を部下にした雷蔵の信頼を失うことになる。雷蔵が私に向ける信頼を。ではなく〈護廷十三隊〉が雷蔵に向ける信頼がだ。
「我が名はヤン。貴様らを殺す敵の名だ」
言い終えるかどうかというところでデモウラは、腕を振り下ろしてきた。振り下ろされた腕によって床は大きく波打つ。
掌が傷ついていないのは〈鋼皮〉がよほど硬いのか、または特殊な効果によるものなのか。私の頭では判断を下せないがやるべきことは変わらない。
「はははははは!手も足もでないか哀れだ!」
うるせぇな。ただ相手の出方を伺っているだけなのにアイスリンガーはそれを、大口を叩いた癖にまともな戦いができない奴と認識しているようだ。
相手の考えを理解しようとしない輩が私は嫌いだ。自分の考えが何より正しいと、自分に溺れているような存在が気にくわない。
「ガアアァァァァ!」
デモウラが振り下ろした右腕がヤンを叩き潰した。
「おい!」
黒崎がその様子に驚いて声をあげる。石田や茶渡もさすがのことに声をあげるまではしていないが、驚きが表情に表れている。
「ふはははは!…アアァァァァァ!」
笑い声をあげていたデモウラが、いきなり右腕をおさえて叫び始めた。見れば手首から先がなくなっている。まるで鋭利な何かで切り落とされたかのように。
「潰すつもりだった?残念。その程度では潰れないよ」
砂煙の中から、死覇装がところどころ破れた無傷の姿で現れる。あれほどの攻撃を喰らっても、服以外に怪我は特にない。短期間で鍛えられて成果だろう。
「なるほどな。掌に霊子を集めて威力を上げるか。まともに喰らってようやく理解できた。でもその程度じゃ殺せないな。これ邪魔だから脱ぐし」
私はボロボロになった死覇装を脱ぎ捨て、彼らと初めて出会った頃の服装になる。
「やっぱこっちの方がしっくりくるな。さてと、終わらせてもいい?」
「ガアァァァァ!」
私の問いに言葉ではなく行動で示したデモウラに、冷静にその行動を見つめた。猛禽類のように虹彩が鋭く細めると同時に、私は後頭部にさしていた短刀を引き抜き、デモウラを一閃した。
アイスリンガーや黒崎たちが何が起こったのかを把握したのは、デモウラが炎によって燃やされ、姿がなくなってからだろう。
「…何が起こった?」
「斬った、のか?」
「まるで手足のように無駄な動きがない…」
3人は目の前で起こったことが現実なのか理解できずにいる。斬られたことで消えたのは理解できたが、何度斬られてどこを斬られたのかはわからない。
わかったのは、私の腕前が無視できるものではないこと。そして仲間として必要な戦力になること。
それだけの腕前を私は示せたはずだ。
「あとはお前だけだな」
「…ふ、ふはははは!デモウラを倒せた程度で傲るか?私はあいつより遥かな高みにいる!故に貴様らを倒すのは不可能ではない!私はアイスリンガー・ウェルナール。喰らえ、《
振り向き、投降を促す発言したがアイスリンガーは意に返さず、敵対することを続行した。背中から生える爪のようなものから、針のような鋭利なものを大量に撃ってくる。
それを刀を振るうことで私はすべてを弾いていく。発射速度も装填速度も遅い。これなら桃の《鬼道》の方が格段に速く感じる。
「ほう、すべての《爪弾》を弾こうというのか!?単純明快な回答だ!無理・無茶・無謀を知っていながら向かってくるとは良い心掛けよ!だがせいぜい足掻くといい!私の《爪弾》の連射弾数は102。いつまで保つか根比べといこうじゃないか!」
「…うるせぇよ」
長ったらしい台詞にイラついてつい本音を口にしてしまった。雷蔵からは口の使い方を直せと言われているが、無意識で素の性格が表れてしまうことは誰にでもあるはずだ。
それは雷蔵も例外ではないはず。ならば少しは許してくれるだろう。
「何?」
「うるせぇって言ったんだ。格好つけて長ったらしい言葉使って自分の方が強いって示したいんだろう。だが私はそれを否定する」
「貴様!」
「その言葉を使えるのは、相手より自分が強いときだけ。相手の実力を計れないようじゃ番人失格だ」
次第に私の剣速がアイスリンガーの《爪弾》の発射速度を越えていく。越え始めると私の足はアイスリンガーに近づいていく。
「私はここにくるまでに戦う術を叩き込まれた。そもそも私は近接戦闘を得意とする。遠距離からの攻撃に弱いことは、始めから自覚していた。雷蔵がその穴埋めを教えてくれた。それが私がこうしてお前の攻撃を防いでいる現実だ!」
短刀を。いや、《
「馬鹿な…」
「馬鹿でもなんでもない。これが現実だ」
燃えながらも負けたことを認めようとしないアイスリンガーに、私は冷めた視線を向ける。負けたことを認めないのは、未だに自分が未熟である証だ。
あの日、雷蔵に拾われた私はこの戦いに負けたのだと認識した。ここにいる滅却師の石田と謎の力を使う茶度によって。
草冠の命令で殺せと命じられながら、その役目を果たせなかった。だが今ではそれで良かったのだと思える。あの時、私とインが2人を殺していたら今こうして会うこともなく、協力して戦うこともなかった。
そして100%ではないだろうが、ある程度は信頼してくれることに嬉しさを感じる。そしてそれは〈尸魂界〉に住む者、関わりがある者にもそうだ。
失いたくない、失わせたくない。そう思って拾われた日から力をつけようと必死で鍛えた。恩を仇で返さないように、期待に添えるような腕前をつけると。
最初は忌避するような視線を向けられたが、期待以上の成績を残すと次第に向けられる視線は変わっていった。〈十番隊〉の隊士から向けられる視線は未だに微妙だが、隊長が親しげに話してくれるので今は落ち着いている。いつかは仲を改善したい。
親しげといえば、桃が雷蔵と楽しそうに話しているのを見るとなんだかもやもやとするのだ。何故か羨ましくなって、雷蔵にかまってもらえると落ち着く。そして落ち着くのと同時に、胸にじんわりと温かい何かが流れ込むような感覚に苛まれる。
その訳を聞きたいのだが、なんとなく恥ずかしくて聞けなくてずっとこのままの状態だ。原因を解明できる時がくればいいのだが。
話が逸れた。ようするに私が言いたいのは、さっさと敗北を受け入れて地に沈めということだ。
「崩れてるぞ!」
「この程度の振動で崩れるはずがないのに!?」
「…解けたのだ」
「解けた?一体何がだ?」
アイスリンガーの言葉に、茶渡は不思議そうに問いかける。
「私とデモウラはここの番人。我々の存在理由は、侵入者の排除または(
「…愉快じゃないな。出るぞ!」
天井が崩れ始める前に、私は3人を連れて階段をかけ上がっていった。
走り去る4人を見送りながらアイスリンガーは呟く。
「私は貴様らを恐れた。恐怖から生まれたにも関わらず恐れた。だが忘れるな。
主が去っていった階段へ、残りわずかな力を振り絞って伸ばす。だがその腕は崩落した岩によって潰されてしまった。
「我が主に勝利を…」
最後に生涯初めて仕えたいと思わせてくれたヤンに、
次の瞬間に22号地下通路は砂と岩に埋もれ、二度と使い物にはならなくなった。
「あれ?予定外なんやけどええかな。気付いてほしかったんやけどまだ無理か」
今回はヤン視点でいっています。流れは原作と変わっていませんが楽しんで貰えたら嬉しいです