BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜 作:ジーザス
25
空間に突如現れた黒い塊が、口を開けたかのように中心部分が開いていく。
「隊長格が勢揃いとはね。歓迎でもしてくれるのかな?〈尸魂界〉。いや違うな。こう言おうか未だに
圧倒的な威圧感を放つ存在。抑えているわけでもなく解放しているわけでもない。ただそこにいるだけだというのに、押し潰されると誤解してしまうほどの圧力。
それを発しているのは、他でもない〈尸魂界〉始まって以来最悪の犯罪者藍染惣右介。
「きよったか藍染」
「久しぶりだね総隊長。いや、山本元柳斎。万全の状態と捉えても良いのだろうか」
「好きにせい。儂らの目的は貴様を殺すことで一致しておる。どうなろうと知らぬのでな」
謎の微笑みを浮かべる藍染。
怒りを抑え込み無表情を浮かべる元柳斎。
どちらが強いかなどどうでもいい隊長格は、既に臨戦態勢に入っている。短期決戦を望む〈尸魂界〉は、被害を最低限に押さえ込み元凶を滅することだけに動く。
「そういうことらしいよ要・ギン。では諸君らが望む短期決戦に敢えて応えよう。スターク・バラガン・ハリベル、おいで」
藍染が名を呼ぶと空に3つの空間が開かれた。面倒くさそうに割れ目から歩き出す長身の男、がたいが良く右眼に傷のある老人、そして露出過多で魅力的なスタイルを持つ女。
そして背後に立つ複数の影。
「それがお主が持つ最大戦力というわけか?」
「総隊長にしては早急すぎる質問だね。僕がそうだと言えば信じるのかな?」
「戯言を。そうではないと踏んで全員がきておるわ」
不愉快極まりないとばかりに、元柳斎が斬魄刀を収納している杖の先を宙にコツン、コツンとぶつけている。その様子に浮竹と京楽が苦笑していた。
「どうすべきなのでしょう隊長」
「戦闘では頭を叩くのが基本だけどなぁ。藍染の能力は未知数だ。効率よく行うなら、《十刃》を叩くのが定石かな」
「だが戦闘中に藍染が介入してこないという確証がない」
雛森の問いに雷蔵が答える。補足として冬獅郎が口にしたことが、《十刃》とその取り巻きを相手している間の危惧事項だった。藍染が介入しないと口にしたところで信用できない。《鏡花水月》の能力が発動している可能性がある以上は、誰であろうと自由には動けまい。
だがそれに影響しない存在がたった1人だけいる。〈現世〉という注釈がなければ、正確には2人だが今は1人だけということにしていた。それを気にする死神は此処にはいない。
「藍染を動けなくすればいいのじゃ。全員退がっとれ。雷蔵は前に話した通りに協力せい」
「かしこまりました」
元柳斎と雷蔵を除き、隊長・副隊長全員が背後にいることを確認すると、2人が斬魄刀を鞘から抜き出す。
「《万象一切灰燼と成せ【流刃若火】》!」
「《蹂躙しろ【雷天】》!」
元柳斎の全身から炎が溢れだし、雷蔵からは雷光が発せられる。炎による熱波と雷による麻痺を、同時に起こさせる余波を全員が感じていた。
「…これはまた凄いね彼は。もしかしたらもう既に技量だけなら負けてるかもよ?」
「彼自身は気付いてないだろうね。僕は病人だから比較対象にはならないけど」
「そんなこと言っちゃってぇ。本当は自分も負けたくないっていう霊圧が漏れ出してるよ~ん」
「そそそ、そんなことないぞ!」
「またまた~そんなこと言っちゃってさぁ」
楽しげに会話している京楽と浮竹を、冬獅郎は微妙な様子で見ていた。対照的に、乱菊と雛森は我が事のように胸を張っている。しかしその景観が対極なのは致し方ない。
暴力的なサイズを誇る乱菊。
控えめで大人しい双丘を持つ雛森。
見る者が見ればだらしなく顔を歪ませることだろう。
「羨ましいんですか?隊長」
「半々だ。羨ましくもあれば悔しくも感じる」
「隊長だってあの時より強くなっていますよ。落ち込む必要はありません」
そうだ俺はあの時より強くなっている。《卍解》の持続時間はこれまでと比べて、比較にならないほど増えている。霊圧も格段に増加した。だが依然として完全会得はできておらず、公言できるほどのものではない。
今日まで手を貸してくれた雷蔵には感謝してもしきれない。しかしその代償として、浦原喜助の住居の地下にある〈勉強部屋〉が、今悲惨なことになっているなど言えるわけない。だがそれを抜きにしても、あの短期間でここまで至れるなど想像していなかった。
〈勉強部屋〉の半分は修復中であるため、入場は規制されている。正確に言えば俺と雷蔵は当面の間立ち入り禁止なので、規制されていようと関係ないのだが。俺の《卍解》が強化されたことで、雷蔵にも眠っていた力が発言したのもまた事実。
そのおかげで浦原喜助からは、修復費を要求されることはなかった。
「ゆくぞ雷蔵!」
「御意!」
「ふんっ!」
「はあぁぁぁ!」
元柳斎が炎を纏った《流刃若火》を。
雷蔵が雷を纏った《雷天》を。
それぞれが一閃した。
炎と雷が融合した物質が、空間を焦がし妬きながら進む。《十刃》を除き、この場にいる首謀者及びその腹心を包み込む。一瞬にして、出入り不能な〈壁〉を造り上げた。
《城郭炎雷壁》と名付けられたこの技は、今回のためだけに元柳斎と雷蔵が試行錯誤して創られた。簡単そうに見えるがそう易々と発動できるわけではない。炎と雷は対極的な関係なため、接触するとプラズマを発生させ周囲に溶けて消えてしまう。
だが己の霊圧をそれぞれに纏わせることで、接触させることなく火傷と麻痺を同時に起こさせる技が完成する。2人の技量が合って為せるので、誰しもができるわけではない。
「容赦ないな総隊長と雷蔵くんは」
「それだけ2人とも我慢できないんだろうさ。さてと僕たちもやるしかないよね!あんな大技見せられたらさ」
「あっ、ちょっと僕を置いてくなんて酷くないか京楽!?」
「早い者勝ちだよ」
年甲斐もなくはしゃぐ古参であり〈尸魂界〉屈指の実力者2人が、〈護廷十三隊〉の誰より真っ先に敵へと駆け出していく。それを見て、我先にと戦闘へ参加していく血気盛んな死神たちなのである。
「まったく小童共がはしゃぎおってからに。〈尸魂界〉で造り上げた模造品を入れ替えたこの重霊地を壊すつもりかの」
「〈町の四方に柱を建てその柱の力で移動させる〉なんて誰も思いつきませんよ。それを考えつく喜助が異常と言えば異常です。そしてそれを嫌々と言いながらも、嬉々として完成させた涅も同様にですが」
「浦原喜助か。…100数年前の疑いを許してくれるかの?」
藍染の思惑によって冤罪をなすりつけられた浦原喜助と握菱鉄砕は、〈尸魂界〉を永久的に追放された。その判決を下したのは〈中央四十六室〉であり、いかに〈護廷十三隊〉総隊長でも異議を許されない相手なのだから、元柳斎が悔やむ必要はない。
だというのに元柳斎は、気付けなかった自分が不甲斐なく罪があると言っている。雷蔵にだって恨む資格はあるのだが、喜助と同様に藍染とは違い謀反は起こさぬばかりか、忠誠を揺るがせることはなかった。
だからこそ元柳斎は雷蔵に信を置いているのだろう。
「おうおう、そのような大事な話を敵の前でするとはの。うつけかはたまた腕を過信している故か知らぬ。儂からすれば、どちらにせよ潰すことに変わりがないがな」
見れば骨でできた玉座に座っている老人が、不敵な笑みを浮かべてこちらを見ている。その存在感は圧倒的で、雷蔵が羽織っている隊長羽織の裾を雛森が掴むほどだ。だがそれを前にしても元柳斎と雷蔵は、普段通りの表情でいるのが逆に不吉だった。
「その柱を壊せば取り戻せるじゃろうて。そしてその柱が置かれているのは、東西南北と考えて間違い無し」
「頭の回転がはやいの。さすがは《十刃》の1人じゃな。それならばどうするんじゃ?」
「言わぬともわかっているじゃろう?フィンドール!」
「はっ!」
名前を呼ばれた男が口笛のようなものを鳴らすと、空に亀裂が入り巨大な何かが現れ柱へと向かっていく。
だが。
「ほう、一撃でそやつらを倒すか。なかなかの腕前があるとみてよかろう」
4つの柱に向かい破壊を試みた何かが、呆気なく4人の死神に消されたのを見て、驚くより称賛を与えた。
「じゃがまあそれも予定通り。大事な場所に駒を置かぬはずがないのは理解済みじゃ。儂もそうするのでな。うして今の攻撃を見れば戦闘能力はそこそこ。しかし甘い」
「力量まで測られているのは迂闊じゃったな」
「測られて腕を見切られても勝つことこそが、総隊長の求める新たな強さなのさ。どう思うかは知らないけどな〈
雷蔵に〈王〉と呼ばれ、機嫌を良くするより機嫌を害した様子で視線を向ける。何故自身が〈王〉であることを見抜いたのか疑問に感じたのだ。
「…ほう、儂を〈王〉と見抜くか」
「確信があったわけじゃない。玉座のようなものに座り、命令を下している様子からそう呼んだまでだ。では聞こう〈王〉よ」
「言うがいい」
「何故貴方ほどの実力者が、藍染などの悪の下についているのか」
「黙れ!」
自分がもっとも言われたくなかった言葉と現実を突きつけられ、バラガンは本気で叫んだ。怒り・恨み・怨み。それしか藍染に抱いていない自分が言われたくない言葉。それは藍染に負けたという事実。
忠誠など誓うはずもなく、ただ自分の道具にしかならないと思っている存在に抱けるはずもない。
だから戦果を上げ対価を口にする。配下に下ることさえ不満極まりない今、口にするのはただ一つだけ。
「儂は〈王〉だ!〈虚圏の王〉!自称ではなくそれが事実じゃった!だが今は自身がなるはずもない使い捨ての道具。許さぬ!死神風情が口にするな!貴様らまとめて儂が葬る。儂は《十刃》が1人、《
「我が名はチーノン・ポウ」
「シャルロッテ・クールホーン」
「アビラマ・レッダー」
「フィンドール・キャリアス」
名乗りながら東西南北へと散っていく《破面》に攻撃を加えることもなく、雷蔵と元柳斎はバラガンを見据えていた。
「儂は貴様らを相手取るとしようかの」
「させると思うか?」
「た、隊長!」
現れたのは、小柄でありその華奢な体格を生かした戦法が得意の〈二番隊〉隊長 砕蜂。普段から菓子ばっかりを食っている副隊長 大前田稀千代。その現れ方は、自分が戦うべき相手と認識していたようにも思えるものだった。
「総隊長に手は出させん。総隊長こそ我らが要。故に危機まではどのような手を使ってでも貴様を倒す」
「…俺は?」
「知らん。それより死んでおけ」
「辛辣すぎる…。いいさ俺は俺の戦いをするだけだ。行くよ雛森」
「は、はい!」
敵であると評されたことで、雷蔵はここにいる意味を失った。そして最前線へと雛森を連れて行くのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2人が移動している間にも戦況は変わっていく。
イヅルside
「うおぉぉぉぉぉ!やってやる、やってやるぜぇぇぇ!」
「…どうすればいいんだろうね僕」
相手のテンションについていけないイヅルは、今の状況からどう抜け出せば良いのか悩んでいた。
それもそのはず。
テンションの高い相手は、普段から物静かなイヅルからすれば戦いたくない相手の1人だ。それに自身が所属していた隊の隊花に影響されているのもあった。
「こらぁ!てめぇもやれよ!神聖なる戦士の舞を侮辱すんな!やる気のない顔もすんなよ!」
「別に侮辱しているつもりはないよ。やる気が微塵もないのは事実だけど」
「シケた面しやがって。とんだフヌケに出会っちまったもんだ。まあいいさ。俺はバラガン陛下の従属官が1人、アビラマ・レッダーだ。死神、お前の名は?」
「〈三・五共同部隊〉副隊長 吉良イヅル」
名前を聞いてアビラマと名乗った《破面》は口角を上げにやつき、イヅルを下に見る。そして禁句を口にする。
「元隊長 市丸ギンの手下かよ。置いていかれた理由がわかったぜ。何故なら…」
「その名を口にしないでもらいたいな。君程度が口にして良い物ではないし、僕には必要のないものだ。それに僕はあの頃の僕じゃない。その過去は価値がないただの汚物だからね」
抜刀して納刀を終えた状態で、アビラマの背後に立つイヅルの顔は以前のイヅルではなかった。
〈三番隊〉の隊花は《金盞花》。花言葉は〈絶望〉。英雄的な勝利を必要とせず、爽快的なものであってはならない。戦闘に恐怖し、死することに畏怖する。それはイヅルが身を以て知った真実。
「もう聞こえていないだろうけど餞として置いていこうか。僕はもう
霊子として空へと消えていく戦士に眼を向けることなく、イヅルはその場を去った。もう一言だけ言葉を残して。
「君という存在を消してしまった以上、僕を許さないでほしい」
弓親side
「はいはいはぁ~~~~~~い!ちゅうもぉ~~~~~~く!バラガン陛下一の従属官シャルロッテ・クールホーンが来ましたよぉ~~~~~~!てかこっち見なさいよぉ!」
変態が目の前に現れたことで弓親は眼を閉じている。
「断固拒否するよ。汚物なんか見たく…ブヘラァァァ!何するんだ!」
頬をぶん殴られた弓親が逆ギレを開始。
「何するんだはこっちのセ・リ・フ!人が自己紹介してるっていうのに眼を閉じるとは何事よ!しかも汚物ですって!?」
「汚い物は眼にしたくない主義なんだよ僕は!汚染されたくないからね!」
「汚染って何よ汚染って!」
罵り合いが始まっていた。
「どっちが強くて美しいのかこれで決めてあげるわ。〈ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン'sミラクルスウィートry...ギロチン・アタック〉!」
「ぐわぁぁぁ!」
名称不明の強烈な攻撃を喰らった弓親は眼下の空座町の模造品へと落下していった。
修兵は圧倒的な実力差で勝利。
だがここで予定外の事故が起こる。それは一角が護っていた柱が破壊されていた事だった。
オリジナルは難しいですね。書ける人が凄いといつも思わされます。