BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜   作:ジーザス

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砕蜂の追走から逃げおおせた雷蔵と喜助は、四楓院夜一の部屋でお茶会をしていた。〈瀞霊廷〉で四大貴族の一角、四楓院家22代目当主の自室でお茶会をするなど普通であればできないはずである。

 

しかし、自由奔放な当主故か、はたまた幼馴染の喜助がいる故か簡単に上げてもらうことができた。

 

喜助が訪ねた際、「なんじゃ喜助か。上がれ上がれ」とほぼ命令するかのように言い放ってきたので、背くわけにもいかず雷蔵も上がらせていただいた次第である。

 

『俺なんかが上がらせてもらっていいんですかね…』

 

貴族でもない。ましてや〈護廷十三隊〉の副隊長及び隊長でもない雷蔵が上がっていいはずがない。さらに高級菓子と高級なお茶を出してもらうなど身に余る光栄。

 

隣では菓子をパクパク食べて、カスを口周りに付けながら夜一と話しているので、幼馴染というのは身分を気にせず付き合えるのだろう。

 

『そんなことでこの30分間悩んでおったのか。肝が小さい男よのう』

『そりゃビビりますよ。ここ四楓院家ですよ!?四大貴族の家でお茶会なんて、気が休まるはずないじゃないですか!』

『喜助よ、お主の友人はお気に召さないようだぞ』

『ふぁにふぇんでいいんでふよ』

 

大量に頬張っているからかまともな言葉を発せていない。

 

『ああ美味かった〜。雷蔵サンは気にしすぎなんス。自分の家だと思って過ごせばいいんスよ』

『四大貴族の家を自分の家だと思って過ごせだと?できるかんなこと!お前は幼馴染だから気にせず過ごせるだろうけど、俺は流魂街出身なんだ。気にするなという方が無理な話だよ』

 

少しばかり寂しげな雷蔵に2人は訝しげに眉を潜めている。ここまで暗くなれば心配するなという方が難しいだろう。

 

『喜助の友人は儂の友人、ではダメか?』

『…え?』

『身分なんぞ気にしていたら生きていけぬ。それなりの敬意は払わなければならんじゃろうが、儂はそんなこと気にせん。むしろ邪魔じゃ。四大貴族という肩書きだけで、色眼鏡を使われてきた儂の気持ちがわかるか?何をしても四大貴族の次期当主だからという理由で済まされた。成績が良くとも四楓院家の次期当主だから。当たり前なことができなければ、一族の恥と思われてきた。儂はそんな生活が嫌なのじゃ』

 

夜一の言葉にはこれまでの怒り・哀しみが、溢れんばかりに含まれていた。

 

〈護廷十三隊〉二番隊隊長そして隠密機動総司令官及び、同第一分隊〈刑軍〉総括軍団長を任されているこの女性(ひと)でも悩むことがあるらしい。

 

『じゃがそのような苦しい生活をしている間、唯一儂の救いだったのが喜助じゃった。四楓院家次期当主と死神という立ち位置ではなく、ただの女と男として友人として接してくれた唯一の存在じゃ。じゃから、喜助に親友と呼べる存在ができたことが儂にとって最高の褒美じなのじゃ』

『喜助には人を引き寄せる何かがありますから』

『確かにそうじゃが、喜助が大きく変わったのはお主に会ってからじゃ。今まで儂といても死んだ魚のような目をした男が、水を得た魚のように活き活きと研究に没頭するようになった。お主のことを初めてわしに話したときのことを今でもよく覚えておる。『夜一さん、アタシ親友ができました。また連れてくるんでよろしく頼んます』と笑顔で言いに来たのじゃ』

 

喜助は気恥ずかしいのだろうか。左頬を人差し指でぽりぽりとかいている。

 

『そんな笑顔を見て儂は嬉しかった。じゃから、お主には儂にも喜助と同じように接して欲しいのじゃ』

『…善処します』

『その返事だけで充分じゃ。それに個人的興味もあったのでな』

 

雷蔵の返事に心底嬉しそうに微笑むので、つい目を逸らしてしまう。ここまでお礼を言われると、さすがに気恥ずかしくこそばがゆく感じるのだ。

 

でも嫌な感じではない。ここまでお礼を言われたことが一度としてなかったのだから、嬉しいに決まっている。

 

『そういや夜一サン、アタシ『浦原喜助ぇぇ雷蔵ぅぅぅ!どこだあぁぁぁ!」…なんか言う気なくなったっスね…』

『砕蜂に何かしたのか?』

『喜助の試作品を試したら、最悪の事態になったと理解してもらえたらいいです』

『また喜助の仕業か…』

 

夜一もどうやら喜助の才能の無駄遣いには、何度も出くわしているらしく、額に手を当ててやれやれとばかりに首を振るだけだ。

 

『夜一様、奴らを知りません…え?』

『どうも〜お邪魔してますぅ〜』

『お邪魔してます』

『貴様らぁぁ!ここで何をやっている!?』

 

余程機嫌が悪いのだろうか、今にも斬魄刀を手に取りそうな形相だ。

 

『なんでって言われてもわかんないっスよね?雷蔵サン』

『お前が連れて来たんだろ。俺は何も知らん 』

『またまたぁ〜照れちゃって〜』

『照れてねぇ』

 

喜助が冗談交じりで雷蔵の頬を指でつつくので、砕蜂も怒りをどこに向ければいいのかわからないらしい。

 

『やめておけ砕蜂。お主では喜助はともかく雷蔵には勝てんぞ』

『夜一様直属の護衛団に籍を置くこの私が勝てぬと?』

 

地位を考えれば、三席である雷蔵が副隊長である砕蜂に勝てるはずもない。

 

『雷蔵は真央霊術院卒業前に《始解》を会得していた猛者じゃ。聞いたところによると、《卍解》のコツを掴み始めているようじゃぞ』

『そ、そんなまさか!私でさえ《始解》に至るまで10年をかけたというのに!それを既に会得していたというのですか!?』

『事実じゃぞ。それに喜助も《卍解》を完全会得してもいい頃だと思うんじゃが?』

『よしてくださいよ夜一サン。アタシは雷蔵サンほど能力はないですから、完全会得までの道はまだまだッスよ。…それよりアタシのカンでは、年内に雷蔵サンが《卍解》会得すると思いますけどね』

 

まさかの発言にこの場にいる3人が息を詰める。

 

《卍解》は、死神として頂点を極めた者のみに許される斬魄刀戦術における最終奥義。死神として他とは隔絶した超然たる霊圧を持って生まれる四大貴族といえど、そこに至れる者は数世代に一人といわれている。

 

まず《始解》と《卍解》を会得するには、《具象化》と《屈服》が必要である。

 

《具象化》とは、斬魄刀本体をこちら側の世界に呼び出すこと。

《屈服》とは、その名の通り力で従えさせること。

 

《具象化》に至るまでには最低でも10年以上、《屈服》させるには何十年何百年という時間が必要となるとも言われている。

 

《卍解》を発現できた者は、1人の例外もなく尸魂界の歴史に永遠にその名を刻まれる。それほど名誉なことであるのだが、《始解》を〈護廷十三隊〉入隊前に会得し、そして僅か5年で《卍解》を会得するなど異例である。

 

まあ、例外として冬獅郎は真央霊術院入学一年目に《始解》を会得しているが…。それでもこの若さで会得など普通であれば有り得ない。

 

今は春であるため残りは8ヶ月程度。本当にこの短期間で会得できるのだろうか。

 

『喜助、それは本当か?』

『こんな大切なことを嘘として言えるわけないでしょう。それに彼はそれだけの腕前がありますから』

『だが、誰も彼の《始解》を見たことはないのじゃが』

『その通りっスね。アタシもまだ見たことないですし』

『簡単に見せてしまえば対応策を考えられるかもしれないからな』

『誰に?』

『誰にでもだ。例えばここにいる3人とかね』

 

夜一は舌で唇を舐め、喜助は研究対象にしたいとでも言うような眼をしているし、砕蜂からは嫉妬のような視線を向けられている。

 

夜一の場合はいい好敵手になりそうだという思いもあるのだろうか。

 

『じゃあ、アタシはこれで』

『それじゃあ俺も。夜一さん茶菓子美味かったです、またよろしくお願いします』

『二度と来るなっ!』

『またいつでも遊びに来い』

 

約1名から酷いことを言われたが、嫉妬なので無視が一番だ。

 

『ああ、それと砕蜂さん』

『な、なんだ?』

 

突然名前を呼ばれて素に戻った砕蜂だったが、予想外の言葉を聞いて赤面する。

 

『もう少し香水強くした方が魅力的ですよ。それでは』

『んなぁ!』

 

右手でひらひらと手を振りながら四楓院家を後にする2人に、砕蜂は顔を真っ赤にさせて悪態をついている。

 

『これだけ仲良ければこの先楽しそうじゃな』

 

夜一の楽しげな表情を目にした者は1人もいなかった。

 

『よし、砕蜂修行じゃ。あやつらに負けぬよう鍛えるぞ!』

『はい!』

 

2人は互いを鍛え上げるために練習林へと移動を開始した。

 

 

 

だが夜一の願いは虚しくも9年後に儚く、叶わない夢へと変わる。それが起きようとは誰も予想だにしていなかった。

 

〈護廷十三隊〉隊長・副隊長。ましてやそれを統括する総隊長でさえも…。

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