BLEACH〜十一番隊に草鹿やちるではない副隊長がいたら〜 作:ジーザス
原作とは流れが変わり一角と弓親が「中央四十六室」の決定に違和感を感じているという状態になっています。いろいろ可笑しくなっていますが原作とずっと一緒では面白くないかなと思ってアレンジしました。
まあ、結局流れは一緒なんですけどね。
9
黒崎一護を花太郎に託し、少しだけ近くの建造物のてっぺんで昼寝をした後、四深牢へ架かる橋の上に向かう。大きな霊圧が、さきほど黒崎一護とともにいた男とぶつかっていた。
〈護廷十三隊〉に所属する死神より霊圧は高いが、今対峙している者には遠く及ばない。次元が違うとも言えるだろう。
〈瞬歩〉でその場に急行し、斬魄刀を振り抜こうとした者の手を掴む。
「物騒だな、朽木隊長」
「雷蔵隊長代理!」
「オッス、朽木ルキア。痩せたな元気か?」
驚きを露わにしながら、「重罪人」とされている朽木ルキアが声をかけてきた。生憎今は手を掴んでいる人物を抑えることが第一である。
「どういうつもりだ、雷蔵…」
「どうもこうも〈懺罪宮〉での斬魄刀解放とか一級禁止条項だ。いくら戦時命令がでているからといって、お前の実力であれば《鬼道》で十分だろう」
目の前には橋に血溜まりを作る、さきほどの男が倒れていた。斬魄刀を解放した朽木白哉の攻撃を、真正面から喰らって息があるのが不思議なくらいだ。
ドン!
突如、ここ一帯を数時間ほど前対峙した者の霊圧が覆った。
さすがの白哉もこれほどの霊圧を持ちながら、知らないことに少しばかり驚いているが。とはいえ、いつもの通り落ち着いた表情でその者が現れるのを待っている。
見たことのある空飛ぶ何かを掴んで、空を飛んできたそれはルキアの側に降り立つ。その瞳はようやく見つけることが出来たことへの安堵、助けることへの覚悟に満ちている。
「俺はお前を倒すぜ、朽木白哉」
「大層な口を利くな小僧」
白哉が霊圧をさらに上げるが、一護は表情を変えず斬魄刀を構えて白哉を見据えている。
「この霊圧の中で顔色一つ変えぬか。随分と腕を上げたようだ」
「ご託はいいんだよ。俺はあんたを倒して帰る」
「大層な口を利くなと言ったはずだ、小僧」
その瞬間、白哉の姿が消えた。少なくともルキアや花太郎にはそう見えただろう。雷蔵はそれをしっかりと視認し、一護も素早く反応した。
ガッ!
「見えてるぜ、朽木白哉」
「…思った以上に腕を上げたと見える。ならばその姿形を残さぬように塵となるがいい」
「待て白哉!」
さすがに雷蔵も〈雷天〉を抜刀し止めようとしたが、それより早く白哉の斬魄刀に布を巻き付けた者がいた。
「四楓院夜一、やはり来ていたか…」
白哉の呟きには目もくれず、夜一は一護の腹部に攻撃を加え気絶させた。〈穿点〉か〈崩点〉のどちらかである強力な麻酔を、内臓に直接たたき込んだようだ。
「治す気か、夜一」
「…雷蔵」
「治させるわけがなかろう。今ここで始末する」
互いに〈瞬歩〉を使って追う、逃げるを繰り返す。幾度目かの攻防の末、夜一が白哉の動きを見切り、四深牢の屋根に一護を肩に担いで現れた。
「3日じゃ、3日でこやつをお主より強くする」
それだけを言い残し〈瞬歩〉で消え去ったのを見届けると、白哉は興味が失せたのか何も言わず何処かに消えていった。
「やれやれこれだから白哉は」
どさ。
背後では緊張の糸が切れたのか、ルキアが倒れ込んでしまった。無理もない。久々に白哉の霊圧を間近に感じ、さらに一護に再会したのだから。
「朽木は俺が牢に戻しておく。花太郎、お前はそのまま〈四番隊〉に戻るんだ。卯ノ花隊長には俺が事情を説明しておくから気にするな」
「はい…」
花太郎は反論せず、そのまま四番隊隊舎へと向かっていった。その後に朽木を牢に入れた雷蔵は、卯ノ花隊長に説明するため、花太郎より先回りをして四番隊隊舎に向かった。
「『精神的肉体的強制を受け、【旅禍】に従わざるを得えない状況であったと考えられる。よって卯ノ花四番隊隊長の寛大なご処置を期待する』と〈十一番隊〉隊長代理 雷蔵から言付けをいただいています。しかしながら貴方の協力を得た【旅禍】によって、〈尸魂界〉が受けた被害は甚大です。貴方の行動は地位的責任から考えても、決して看過できるものではありません。いいですね、〈第十四上級救護班〉班長及び〈四番隊〉第七席 山田花太郎」
落ち着いた容姿で、言動共に静かで穏やかな女性は花太郎に厳しく言い放つ。
「しかし、彼らは悪い人ではないと思われます!黒崎さんはただ朽木さんを助けたい一心で…」
「黒崎、それが【旅禍】の首謀者の名前ですか。しかし、彼らの行動が正当だとしても、〈中央四十六室〉の決定は絶対です。私たちにはどうすることもできません」
その言葉に花太郎は口を閉ざすことしか出来なかった。
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一護は夜一に気絶させられた後、白哉に勝つための修行をしていた。
死神最高戦術、《卍解》を会得するために…。
「ふぅぅぅぅぅ~」
夜一の秘密の訓練場の隅に湧いている温泉に浸かると、無意識のうちに口から息を吐き出す。傷口にかかった湯によって塞がっていくのを見て、湯に潜り全身を治す。
すると猫の姿で温泉に浸かりに来た夜一に声をかけた。
「夜一さん、ここって浦原商店『勉強部屋』に似てないか?」
「まあ、そうじゃろうな。あそこはここを真似て作られたものじゃから」
一護が言っているのは、自分を鍛えてくれた場所にそっくりということだ。死神の力を手に入れさせ、そして〈斬月〉を目覚めさせてくれた場所に。
「ここはわし・喜助・
「…この巨大な空間をコッソリとか?」
「…喜助はコッソリと悪いことをするのが病的に上手かったからの」
「その通り」
「誰だ!?」
2人で話していたはずなのにどこからともなく声が聞こえ、一護は〈斬月〉を持たずに狼狽を露わにする。
「まったく数時間前に戦っていた奴の声も忘れたのか。脳みそは〈十一番隊〉以下だな」
「なんだ〈十一番隊〉隊長代理かよ…じゃねぇ!なんであんたがここにいんだよ!」
「ここの温泉が好きだからだが?」
「答えになってねぇ!」
ひょうひょうとする雷蔵に、一護は右手に握り拳を作ってかなり怒っている。
「そう怒るな一護。雷蔵は敵ではない」
「んなこと言ったって、俺の身体斬ったんだぜこいつ」
「そうしなければならなかったのじゃ。もし本当に殺す気で来ていたならば、お主は雷蔵の姿を見ずに息絶えておったわ」
それを聞いた一護は、立ち上がっていたにもかかわらず座り直した。夜一の言葉が痛いほどわかったのだ。自分がどれだけ全力でぶつかろうとも本気を出さず、笑みを浮かべていられるほど余裕な表情をしていたのだから、力の差がわからないわけがなかった。
「じゃあなんでここにいるんだよ。あんたは【旅禍】の俺たちを倒さなきゃなんねぇんだろ?隊長代理ともあろう人が仲良しこよしでいいのかよ」
「それなりに俺にも理由があってな。っと、そういうわけで俺はおいとまさせてもらう。急用が入った」
湯煙の中に消えていこうとする雷蔵に一護は声をかけた。
「待てよ、いや待ってくれ雷蔵さん!なんであんたがここにいるのかだけ教えてくれよ!なんで夜一さんと知り合いなんだよ!」
「時が来れば話そう。それまでに《卍解》を会得しておくことだ」
「雷蔵さん!」
「黙れ餓鬼が。同じことを何度も言わすな」
怒気のはらんだ声音と押しつぶされそうな霊圧に、一護は生唾を飲み込んだ。
「…あやつ、また腕を上げよった」
「前に会ったときより上なのか?」
「比べることが出来ないほどにじゃ」
「…そうか」
一護は事実を聞いても怖じ気づくことなく、むしろ前向きにそのことを捉えていた。今まではルキアを助けることが目標だったが、今新しい目標が目の前に現れたのだ。
《卍解》を会得した暁には、その腕前をあの人に見せたいと思うようになった。
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「弓親、これ見ろ!」
普段見せない何かに疑問を感じているような表情で、自分に駆け寄ってくる一角を見て、弓親はなんとも言えない表情を浮かべていた。
「どうしたの一角?珍しい表情してるけど…」
「そんなことはいいんだよ!それよりこれを見ろ!何がどうなっているのかわかんねぇよ!」
「何をそんなに慌てている、の、…ん?」
一拍の間が空いてから。
「ええええええ!!!」
十一番隊隊舎の縁側でお茶を口にしていた弓親は、一角から渡された文に書いてある文字を読んで叫んだ。
「…隊長は何を考えているのかな。これは罰則を受けるとかそういう次元の話じゃないよ」
「俺もそう思った。けどよ、隊長がなんの考えもなくこんなものを送りつける理由はないはずだ。命令を聞くか聞かないかは俺たちに任せるみたいだが。…どうにもきなくせぇ」
「何が?」
「【旅禍】が侵入して副隊長 阿散井恋次がやられただけで、戦時特例っていくらなんでもやりすぎだ。それから朽木ルキアの処刑も異常だ。それはお前も薄々感づいてるはずだろ」
一角の勘の良さに呆れるより称賛したくなった弓親である。
「…まあね。あれだけの罪状だけに、〈殛刑〉だなんて正気を失っているようにしか見えない。隊長格以外への《双殛》の使用に義骸の即時返却。どれも異例づくめだよ」
「それだけじゃねぇ。隊長に教えてもらった藍染隊長殺害事件だが、【旅禍】という証拠もねぇのに断言されてやがる。もはや誰かの陰謀にすぎねぇとしか言えねぇよ。そこは隊長と同じ意見だな」
「そうだね、藍染隊長を殺すのは容易じゃない。藍染隊長を殺せるほどの実力を持っているなら、もうすでに朽木ルキアを奪い返していても可笑しくないはずだ。いくら〈瀞霊廷〉を翻弄する気があるとしても余計なことをしすぎだよ」
「一護は生きてる。そうだろ
一角が声をかけると、襖を開けて井上織姫が顔を覗かせた。
〈十一番隊〉平隊員 荒巻真木造によってここに連れてこられた織姫は、直後は緊張した面持ちでいた。自分が一護の仲間ということを知ると、優しく話しかけてくれたり生活を見てくれることに嬉しさを感じ、数日間〈十一番隊〉に保護してもらっていた。
その時に別れた石田雨竜とは連絡も取れていないが、無事だと確信している。
「確信はないですけど生きていますよ。絶対に」
「そりゃそうだろうな。たとえ俺の隊長に負けたとしても、その場で死ぬような奴じゃねぇと俺も戦ったから理解できる」
「黒崎君は絶対に負けない!」
「気持ちはわかるがあの人には絶対勝てない。それだけは決定事項なんだ織姫ちゃん。いくらあの野郎が強くても、《卍解》を会得していない。ましてや会得していても勝てない。それが俺らの隊長だ」
「そんな…」
落ち込み始めた織姫に、一角は乱暴な手つきで頭を撫でて慰める。
「安心しろ。一護の野郎は無事だって、隊長からの手紙に書いてある。今は修行中で会えないが、必ず会わせるって書いてあるから落ち込むな」
「それで一角、どうするの?」
「俺は隊長についていくぜ。少々〈瀞霊廷〉のやり方に疑問があるからな。それに一護ともう一度戦いてぇし、今度は俺が勝つ。お仲間の救出は明日だ。なあに〈震点〉を使えばすぐ解放できる」
「即答か。いつも通りだね一角は」
頼もしい2人の楽しげな会話に、少しばかり沈んでいた心が温まるのを感じた織姫であった。