東方繋想札   作:紅みかん

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プロローグ
楽園に誘われし者


-夢を見ていた。

11年前、私が”あの子”と一緒に遊んでいた夢。

 

「僕のターン、ドロー」

 

目の前に広げられているカードは遊戯王のものだった。

私はフィールドに【真紅眼(レッドアイズ)の・黒竜(ブラックドラゴン)】が1体、ライフは900。

”あの子”のフィールドにはカードが存在せず、ライフは800。

 

お互いに手札は0。

”あの子”のターンが始まり、カードを引く。

 

「私の場には【真紅眼の黒竜】がいる。

……に勝ち目は無いんじゃない?」

 

私の意思とは関係なく喋り始める幼い私。

 

その声は自分のものなのに、”あの子”の名前と思しきところには不明瞭なノイズが掛かる。

 

「そうだね。

…でも、引けたら面白いよね?」

「っ!」

「【E(エレメンタル)HERO(ヒーロー) バブルマン】は自分の手札がこのカードだけの時、手札から特殊召喚できる!」

 

ATK:800

☆4

 

「【E・HERO バブルマン】の効果発動。

手札が0、自分フィールドのカードが他にない時、デッキからカードを2枚ドロー!」

 

引いた2枚のカードを見て、”あの子”はニヤリと笑ってみせた。

 

「【O-オーバーソウル】発動。

墓地の【E・HERO ネオス】を特殊召喚!」

 

ATK:2500

☆7

 

【E・HERO ネオス】。

”あの子”のお気に入りにして、切り札。

 

「バトルフェイズ!

【E・HERO ネオス】で【真紅眼の黒竜】を攻撃!

『ラス・オブ・ネオス』!!」

 

ライフ:900→800

 

「【E・HERO バブルマン】でダイレクトアタック!

『バブル・シュート』!!」

 

ライフ:800→0

 

「…負けちゃった…」

「楽しいデュエルだったよ、瑞!」

 

”あの子”は満面の笑みでそう言った。

 

 

 

 

 

「津奈木さん、津奈木さん」

「ん…んぅ…?」

 

 

肩を揺さぶらながら、女の子の声で目が覚める。

いつの間にか、寝ちゃってたみたいだ。

 

「もう下校の時間よ、いつまで寝てるつもり?」

「えっ、もうそんな!?」

「火曜日は決まって用事があるんでしょう?

早く行ったら?」

「そうだ、行かないと…!

ありがとう、また明日!」

「あっ、待って」

 

机の横に提げたカバンを取って教室を出ようとすると、引き止められた。

 

「学校裏の神社、神隠しが起こるって噂。

気を付けてね」

「あっ…うん」

 

…そう言えば、なんであの子は私が火曜日に用事があるって知ってるんだろう?

まともに話した事さえ少ないのに…。

 

 

 

 

 

 

学校からさほど距離の無い山の、更に奥にある誰も管理していない1つの神社。

そこが昔からの私達の基地。

でも、今はもう”あの子”はいない。

そして何時からか、”あの子”の事を鮮明に思い出せなくなってしまった。

名前も、姿も、好きな食べ物も。

昔一緒に遊んだと言う事だけが、今私が覚えてる”あの子”の存在だ。

それでも、夢でだけは”あの子”と遊ぶ事を通じて、思い出せる。

 

「っと…」

 

神社のお賽銭箱に5円玉を入れて、二拍、一礼。

週の火曜日に毎日来ているし、雨であろうが風であろうが、それを欠かした事は無い。

 

「じゃあね、また来週」

 

神社とあの子に別れを告げて、後ろを振り向いた、その時。

ピキッと音を立てて、空間にヒビが入る。

 

「え…えっ?」

 

音もヒビも止まらない。

困惑している間に、空間の侵食は進んで行く。

 

「ッ…!」

 

とにかく、ここから逃げないと。

そんな思いが私を突き動かす。

けれども、いくら走ってもどこにも空間の侵食が迫っていない場所が来ることは無い。

 

「いや…なんでっ…!?」

 

迫る未知に恐怖を覚える。

空間の侵食から離れるどころか、むしろ侵食の速度の方が速いようで、逃げる事は出来ない。

諦めて走る事を止めたその瞬間、最後に入ったヒビが私諸共、空間を切り裂いた。

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