フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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遂に彼女が登場

そして遣りたい放題の魔の手が…


相手のペースには乗らないで常に俺のターン、それが十流

「クエー!」

「クエッ、クエー」

 

 

 優作達は次の目的地、『ラ・シャリテ』へと向かっていた。

 チョコボが牽引する馬車の中で少女、ジャンヌ・ダルクは居心地の悪さを感じていた。

 車内の乗り心地が悪い訳では無い。当時の舗装されていない街道を4羽の赤チョコボに依ってスポーツカー並みの高速で牽引されているにもかかわらず、揺れは全く無く、座席もフカフカのクッションが敷かれており快適だ。

 そんな彼女の居心地の悪さの原因は周りからの視線にあった。

 魔女の烙印を押され火炙りに依って死んだ筈の自分が何故か蘇り、立っていた故郷は空飛ぶ竜と黒き衣を纏った“もう一人の自分”が戦果の火を撒き散らしていた。騒乱の故郷を救う為に協力を要請した優作達に了承して貰い、馬車に乗ったのは良かったが、御者台でチョコボ達を駆っている優作以外の面々が警戒した様子を隠す事無く視線を向け続けているのだ。

 

 

「あ、あの…何か気に障る事をしましたか? …大体の想像は付くのですが」

「済まんね、ジャンヌちゃん。でも今フランス(此処)にてホットな話題になっている人物が誰か知ってるなら納得するんじゃない?」

「……フランスを再び戦乱の渦に落としたもう一人の私ですね?」

 

 

 困惑していたジャンヌの問いに優作が返し、ジャンヌが再び質問する。

 

 

「ジャンヌちゃんも見てたであろう砦で軍人の人達にフランスの現状を聞いたからさ?」

「はい。私も応援に向かおうと思っていたのですが、皆さんがあっという間に片づけてしまったので、様子見に徹していました」

「話の人物の衣装と違って青を基調とした衣装だし、敵意を感じなかったからね(ステを見る限り驚異じゃ無いと判断した訳でもあるけど…)」

「有難う御座います。召喚された後、何処へ行っても魔女と呼ばれて追い回されるか逃げられてばかりだったので…」

 

 

 ジャンヌは自身だけでもこの異変の解決を行う気でいたが、情報収集も碌に出来ない状況であった為に、実力も兼ね揃えた優作達が協力してくれるのは渡りに船だった。

 

 

「ごめんなさい、ジャンヌ・ダルク。砦で話を聞いたばかりでいきなり話題の本人が現れたものだから警戒してしまったわ」

「いえ、お気になさらないでください。もう一人の私がいる以上、見分ける事はほぼ不可能でしょう」

 

 

 代表でオルガマリーが謝罪するが、ジャンヌは気にしない様子で返す。

 

 

「しかし、ジャンヌさんは竜の魔女と呼ばれている方を“もう一人の私”と呼んでますけど、只の偽物だとは思わなかったんですか?」

「説明をするのは難しいですが、召喚されてから感じるんです。私にとても近しい存在がいるという確信が」

【ふぅむ…冬木で遭遇した別存在のアーサー王みたいなジャンヌ・ダルクが竜の魔女である可能性が高い訳だ】

「!? えぇっと…これは一体…?」

 

 

 マシュの問いにジャンヌが答え、もう一人のジャンヌに関してロマニが独自の解釈を述べる。

 そんなホログラムに浮かぶロマニの顔にジャンヌが驚く。

 

 

【あぁ、いきなり現れて申し訳ない。僕はロマニ・アーキマン、此処から離れたカルデアという場所からこうしてサポートしています】

「遠見の魔術ですか…?」

「これは技術さね。まぁ、ジャンヌちゃんにとっちゃ魔法みたいだろうけどね」

 

 

 ロマニが自己紹介した事から優作達もジャンヌへ自己紹介やフランスへ来た目的を話していく。

 

 

「未来で世界が焼却される原因が今のフランスにある為に来た訳ですね?」

「そう。ジャンヌちゃんが召喚された原因も同じである筈だから同行していれば目的は達成出来るべ」

「有難う御座います。ですが、オルレアン奪還だけでは未来が危ういというならばその先も是非協力させてください」

「それは有難いのだけれけど、良いの?」

「罪の無い人々が焼き尽くされるなど見過ごせません。フランスを救う為に立ち上がった村娘ですが、お役に立ててください」

「そりゃ有り難いっさ。マリー、契約したって」

「解かったわ。これから宜しくお願いするわね、ジャンヌ」

「はい、こちらこそ宜しくお願いします」

 

 

 人理修復を目的としている事を伝えた優作達にジャンヌはこの特異点以降の協力も願い出てくれた上に新たなマスター候補となったオルガマリーがまだサーヴァントを契約していなかったので彼女のサーヴァントとして契約を結んでくれた。

 

 

「ところで、ジャンヌちゃんは戦える訳? ステが異様に低い様だけど?」

「…その件なのですが、私が死んで間も無いからなのか本来得られる筈の聖杯からのバックアップが殆ど使えない上にステータスも大幅に弱体化しています」

 

 

 サーヴァントは本来、聖杯戦争での英霊召喚された際に聖杯からの様々な情報の他、時間軸の概念の無い英霊の座からサーヴァントとして現界した際の記録を得て召喚される。

 しかしジャンヌは生前の記憶はあるが、サーヴァント(・・・・・・)としての記憶を一切持っていない状態であった。

 

 

「そんな状態なのに一人で偽物に挑むつもりだったのか? 十中八九死ぬぞ?」

「それでも私は行かなければなりません。もう一人の私の真意を聞かなければ…」

【流石に無謀だと思うなぁ…】

 

 

 スカウターでの解析ではジャンヌはルーラーのサーヴァントでステータスが軒並み最底辺である事が分かっていた。しかし、彼女の話でルーラー特有のスキルすらも一部使えない状態である事が判明し、これではもう一人のジャンヌが召喚しているであろうワイバーンの群れだけで嬲り殺しになってしまう。

 クーフーリンの指摘に対して強い意志を示す彼女であったが、ロマンすらもツッコミを入れる始末だ。

 

 

「取り敢えずそんなステじゃあワンパンでアウトさかい、強化せんといかんべ。こっちに来んしゃい」

「? 失礼します」

 

 

 優作が御者台へジャンヌを招き、彼女が彼の横に座る。

 

 

「なりきりインストール『英雄の孫娘:ヴァージニア・ナイツ』」

 

 

 取り出した衣装を光の玉に変え、ジャンヌに与える。彼女は白と銀を基調とした軽鎧とスカートの姿から新緑色のコルセットと黒ストッキングにポシェットを付けた濃茶色のホットパンツを履いた姿へと変わった。

 

 

「あ、あの…これは?」

「別世界の英雄さんの服さね。因みにクー兄が着ている服の人物の娘さん」

「お! 俺の服を着ていた奴の娘なのか?」

「リッチが剣と槍が得意武器なのに対し、ジニーの得意武器は剣と杖だべ。力の使い方はイメージしてみてな?」

「は、はい。有難う御座います。でも優作さん、貴方は一体…?」

 

 

 イメージすると脳内に流れて来る服の主の戦い方、話の流れからサーヴァントであるクーフーリンも彼から服の力を与えられているらしい。しかしこのサーヴァントに匹敵するどころか超えかねない力を得る能力を操る彼は一体何者なのだろうか? ジャンヌには疑問が浮かび上がった。

 

 

「説明したいところだけど、到着するさな。続きは街でやる事をやってからだべ」

「え、もうですか!? 馬でもそれなりに掛かる距離の筈なのに…」

「赤チョコボの脚力を舐めてはいかんぜよ」

 

 

 優作の視線の先にはラ・シャリテの街並みが広がっていた。

 この早い到着が正史に於いての悲劇を覆すのだが、それを知る者は此処にはいなかった。

 

 

:::::

 

 

 ラ・シャリテに到着した優作達。チョコボ馬車を入口に停めてこれからの行動を決める事にした。

 

 

「先ずは街で聞き込み調査を行う形で良いかな?」

「そうね。もう一人のジャンヌについての詳しい情報や彼女が持っている戦力を可能な限り調べましょう」

「そんじゃあマリーはマシュと小次郎さんの3人で組んで街中で聞き込み、ジャンヌちゃんはおいちゃんと一緒にこの街の商会の人に情報収集序の商売。クー兄とエミヤんは街の周囲を警戒を頼みます」

 

 

 各々行う事が決まり、散開して行動を開始した。

 

 

:::::

 

 

「うおっ、何だありゃ鳥か!?」

 

「あんな馬みたいに大きい鳥、初めて見たぞ!!」

 

「乗っているは騎士か?」

 

「隣の娘、胸が大きくてい…「アンタ、どこ見てんだいっ!」…あでででっ!?」

 

「あの娘、見た事ないか? 復活した竜の魔女に顔が似ている気がするんだが…」

 

「馬鹿! 魔女が街中をのうのうと入って来るかよ。鳥が曳いてる荷車を見るに商人の娘と護衛の騎士かなんかだろ」

 

「そりゃそうか、魔女だったら竜を嗾けて火の海にするもんな」

 

「でも確かに聖女様の顔に似てるよな?」

 

「外から来たのかねぇ? 何にしろ、此処じゃあ勘違いされたりして苦労しそうだ」

 

 

 街の大通りを進むチョコボ馬車に街の人々は視線を向けていく。馬で無く馬並みの大きさの鳥が曳いてるのに加え、優作とジャンヌの姿も中々特徴的なのだから仕方ないだろう。

 

 

「み…見られてますね…」

「まぁ、チョコボはこの国じゃいないしね~」

 

 

 視線を集めている事に優作は平然としているのに対し、ジャンヌは少しぎこちなさそうである。

 

 

「後は“ジニーちゃん”のスタイルもグンバツだから男性陣の視線を集めちゃうわな? ま、ちょいと大胆な衣装のお陰で聖女に繋がらないだろうからモーマンタイ」

「はうぅ…ちょっと恥ずかしいです…」

 

 

 コルセットの上から主張する大きな果実の北半球を片腕で隠しながらジャンヌは恥ずかしそうに顔を赤くする。因みに街中において住人達に勘違いされない様、ジャンヌは着ている服の主であるヴァージニアの愛称であるジニーを偽名として名乗らせている。

 

 

「でも、元の衣装のスリットスカートも大分大胆だったんちゃう?」

「そうですか?」

「馬に跨ったら御美足丸出しだから目に毒よ? 敵味方問わず釘付けになるべよ」

「与えられた衣装だったので気にした事無かったです…戦時は戦闘に夢中だったのでそういった視線には気付かなかったので」

「肖像画だと薄めのプレートメイルで全身覆っていたけどなぁ…髪も短めだったし」

 

 

 更に彼女は本来の衣装に指摘される。街までの移動中に戦闘は腰に下げていた剣よりも旗を使った打撃だと聞いて優作は頭を抱えていた。旗という空気抵抗を大きくする物を付けた長物を振り回すなどゲームで無いのだから、どう考えても非効率極まりない。

 また彼女の髪も非常に長く、綺麗な金髪を後ろに束ねて大きな三つ編みにされていた。乱戦時に敵に引っ張られそうである。

 

 

「ところでその衣装の力の使い方は理解できた?」

「はい。でも剣と杖とでどれを使えば良いか迷っています」

「ジニーちゃんは旗で戦っていたなら杖系が一番合うと思うよ。『プリムスラーブス』がお薦めかな?」

「分かりました」

 

 

 会話している内に商会に到着した優作とジャンヌ。外国から旅をしながら商売している行商人と自己紹介し、商談を交わしながら竜の魔女について聞き込みを行っていく。

 因みに扱った商品は瓶詰の食料に医薬品、そして武器として大型連射弓『アルバレスト』。瓶詰自体はナポレオンが活躍した19世紀の発明だが、特異点が解消されれば元に戻る為に問題無いと判断して用意した。

 商品の代わりにお金や美術品を購入した優作達。尚、聞き込み調査の結果、竜の魔女が率いる超人の様に強い人物が幾つかの街に点在して守護している事を知り、特異点に対するカウンターサーヴァントがジャンヌ以外にも存在している事が判明した。

 

 

【マスター、招かざる客が来たようだ】

【皆、複数のサーヴァントの反応がこの街に向かっている!】

 

 

 会話を続けている内に町の周りを警戒していたエミヤから念話が入ると同時にロマニからも連絡が来る。

 

 

【ロマン、規模はどんな感じ?】

【無数のワイバーンと5騎のサーヴァント反応がある。これだけの戦力だと優作君達がいる街をあっという間に灰塵に出来るよ】

【マスター、ワイバーンに乗るサーヴァントにジャンヌと酷似した者がいる。十中八九、竜の魔女だろう】

 

 

 ロマニに接近中の敵勢力の規模を確認するとエミヤから新たな情報を得る。どうやら目的の人物も敵勢力に加わっている様だ。

 

 

【おっけ、敵さんと街の間に平原はある?】

【ある。我々が暴れる分には十分な広さだ】

【ならそこで迎え撃つべ、この街には一歩も踏み込ませないさな。ロマン、マシュ達に指定の位置へ行くよう連絡よろ】

【分かった。本来なら逃げろと言うべきなのだろうけど、優作君なら問題無いから安心できるよ。でも無茶はしないでくれよ?】

【エミヤん、連中を平原手前で足止め頼める? ワイバーン共を混乱させれば良いっさ】

【混乱かね? ………成程、『パニックメーカー(あの弓)』を使えば良い訳か、任せたまえ】

 

 

 ロマンの通信及びエミヤとの念話を終える頃、建物の外が騒がしくなっていた。

 

 

「竜の魔女が来たぞ――――――ッ!!」

 

 

 慌てた様子で馬に乗った見張りの兵士が街道を駆けていく。どうやら街からも見える距離まで近づいて来ているようだ。

 街中がパニックに陥り我先に街から脱出しようと住民達が持てる物を持って街道を走って行く。

 

 

「ところで最後の商談なんですが、会長さん?」

「あ、あんた、さっきの声を聞いてなかったのか!? 早く逃げないといかんのだぞ!?」

 

 

 当然、商会も蜂の巣を突いた様な騒ぎになり道具を纏めて逃げ出す準備を始めるのだが、優作は平然とした様子で会長へと声を掛ける。

 

 

「飛び切りの傭兵はいらんかね?」

 

 

:::::

 

 

「お、来たか?」

「クーフーリンさん、敵は?」

「あそこだ」

 

 

 聞き込みを行っていたマシュ達が指定した場所へ辿り着いた時、クーフーリンが既に立っていた。マシュの問いにクーフーリンが指を向けた先にはワイバーンの群れが暗雲の如く広がっていた。

 

 

「…凄い数です」

「砦で戦った数の倍以上はいるわね…」

「まぁ、暴れ甲斐はあるだろ?」

「それに今度はサーヴァントもいるのだろう? 挑み甲斐もあるものよ」

 

 

 ワイバーンの大群を前に緊張を隠せないマシュとオルガマリー。一方のクーフーリンと小次郎は近づく戦いを非常に楽しみにしている。

 ワイバーンの群れは待ち構えるマシュ達へとどんどん近づいて来るが、そこへ幾本かの矢が天へと飛んでいく。矢が放たれた方を向くと、高い建物の屋根にエミヤがピンク色の弓を構えて矢を放っていた。

 放たれた矢は一本一本が無数の矢へと増殖し、ワイバーンの群れへと降り注いだ。

 正に豪雨の如く降り注ぐ矢はワイバーン達を貫いていく。ワイバーンに乗っていたサーヴァント達は其々武器で矢を防いでいたが、それだけで多くのワイバーンが墜ちていく。しかし、それだけでは終わらなかった。

 絶命しないまでも矢を受けたワイバーン達は突如、他のワイバーンやサーヴァント達を襲い始めたのだ。

 突如始まったワイバーン達の同士討ちにマシュ達はポカンと呆けた表情になってしまう。

 

 

「い…一体何が起きてるの?」

「エミヤんの弓の御蔭さね」

 

 

 オルガマリーの疑問の声に答えながらチョコボに乗った優作とジャンヌが遅れながら合流した。

 

 

「先輩!」

「エミヤんが使っている弓は射抜いた相手を混乱させる効果があるさね。おまけに一本の矢で広範囲を攻撃出来るから集団相手にはクッソ強いんよ」

「宝具クラスの武器をああもポンポンと…」

 

 

 優作の説明にオルガマリーが驚愕の声を漏らす。

 斯くして、ワイバーンは同士討ちで全滅した為にサーヴァント達は街に辿り着く事無く、地上に降りるのを否応無くされた。

 

 

「っく…、ワイバーン達が同士討ちを始めるなんて」

 

 

 現れた5体のサーヴァント達、一人は黒い貴族服を纏った男、一人は刺々しいドレスを纏い仮面をつけている淑女、一人は随分と露出度が高い修道服を着た女、一人は羽帽子を被った中世的な顔立ちの剣士、そして最後に中央に立つ少女。手に持つ旗こそ竜が描かれていて異なっているが、その姿は最初であった時のジャンヌの衣装を黒く反転した衣装そのものであり、髪が白く、肌が若干青白い事を除けば顔も鑑写しの様にそっくりであった。

 

 

「あのカラー的見た目、冬木のアルと似てね?」

【予想通り、ジャンヌ・ダルクの“IF”な姿なのかもね。ジャンヌ・オルタと仮称しておこう】

 

 

 冬木で戦ったアーサー王はメディア達の話からオルタナティブ(もしもの存在)な立場で呼ばれた姿と知った優作達。目の前の黒き衣を纏ったジャンヌ・ダルクも似た見た目と雰囲気であった為に同じ存在ではないかと推測していた訳だがどうやら当たりの様だった。

 

 

「…成程、貴方達の仕業だったのね。マスターと思われる天使使いと謎の騎士、そしてデミ・サーヴァントとサーヴァント達。ジルが教えてくれた忌々しい異邦人共…でもそれよりも…」

 

 

 優作達を忌々しげに睨むジャンヌ・オルタ。しかし、その視線がジャンヌを映すと侮蔑に満ちた笑みを浮かべた。

 そしてけらけらと笑いだす。 

 

 

「くすっ、あはははは! ねぇ、誰か私の頭に水を掛けて頂戴! 拙いの、ヤバいの、本気でおかしくなりそうなの。だってそれぐらいしないと滑稽で笑い死んでしまいそう! 何、アレ? ネズミ? ミミズ? ムシケラ? あははははははっ! あまりにもちっぽけで笑っち…「欲しけりゃくれてやるよ」…ヘブゥッ!?」

 

 

 ジャンヌに対して蔑む様に笑っていたジャンヌ・オルタだったが突如、水の塊が彼女の顔面を直撃して吹き飛んでいった。

 吹っ飛ばされたジャンヌ・オルタはひっくり返り、ゴロゴロと転がりながら倒れ、スカートは捲れているわ、脚は大きく広げてしまっているわ、おかげでショーツが丸見えだわで酷い絵面になっている。彼女の近くにいた2人のサーヴァントが慌てて介抱する為に駆け寄っていた。

 

 

「Foo~、気持ち良ぇ~♪」

「あ、あの…先輩、何を?」

「水を欲しがっていたからついやっちゃったZE☆」

 

 

 ジャンヌ・オルタを吹き飛ばした犯人は片手に大型水鉄砲『インパルス』を笑顔で構えた優作だった。余りに突然の出来事だったので、マシュ達は目を丸くしている。

 

 

「皮肉だと解っててやっただろう、坊主?」

「うん」

キャウフォーウ、キュ~(黒地のレースぱんていとは、セクスィ~)

 

 

 クーフーリンのツッコミに笑顔で応える優作。一方、フォウは現在進行形で御開帳になっているジャンヌ・オルタのショーツをガン視していた。

 

 

「い、いきなり何すんのよアンタはぁっ!!?」

 

 

 起き上がったジャンヌ・オルタがプルプル震えながら怒鳴り散らす。優作を睨み付けているが、髪は乱れ、叩きつけられた水で顔は赤く、痛さからか涙目になっているのであまり怖くない。後、地味に素が出ていた。

 

 

「何って、水を掛けて欲しいって言ってただルルォ!?」

「だからって本当にかける訳!? 馬ッ鹿じゃないの!!?」

「え、何? もう一発喰らいたいって?(難聴)」

「ヒィッ!? そんな事、一言も言ってないわよぉっ!!」

 

 

 ゲス顔で再びインパルスをジャンヌ・オルタへと構える優作に対し、彼女は怯えた様子で修道服を着たサーヴァントの後ろにそそくさと隠れる。そんな姿に相手サーヴァント達が彼女へ向ける視線が何か可哀そうなモノを見る目になったのは気のせいだろうか?

 

 

「あ、あの~優作さん、そろそろ話をさせて欲しいのですが…?」

「あいあい、ペースはこっちのもんだし会話フェイズどうぞ」

 

 

 ペースを完全に奪われたジャンヌ・オルタ陣営にニヤニヤ顔の優作。そんな彼にジャンヌ・オルタと対話をしたい為におずおずと声を掛けるジャンヌ。そんな彼女に優作はインパルスをしまうと彼女の後ろに下がった。

 

 

「…貴方は何者なのですか、竜の魔女?」

「ふ、ふんっ! この期に及んでまだそんな問いを投げるというの? ……ですがそうですね、そちらより上に立つ者として答えてあげましょう。ワタシはジャンヌ・ダルク。この地で処刑され、蘇った救国の聖女ですよ、もう一人のワタシ?」

「今更取り繕っても手遅れだぞ~?」

「うっさい! アンタだけは絶対に焼き殺してやるっ!!」

「…優作さん、話が進みませんので…」

「サーセン」

 

 

 鎧とドレスに付いた砂埃を落とし、乱れた髪を直しながら忌々しそうにジャンヌの問いに答えるジャンヌ・オルタ。しかし出してしまった地を隠そうとしている様子を優作に指摘されて再び喚きだし、これに対してジャンヌが優作を叱る。

 

 

「貴女は聖女ではありません。私がそうであるように…それにもう過ぎた呼び名です」

「そうね、確かにワタシは聖女じゃない。何故ならジャンヌ・ダルクなのに奇跡を信じていないのだから!」

 

 

 竜が描かれた旗を高々と掲げ、ジャンヌ・オルタは名乗る。

 

 

「今のワタシは竜の魔女。ドラゴンと幾万のワイバーン、そしてサーヴァント達を率いれ、フランスを焼き尽くすために復活した存在です!」

「何を馬鹿気た事を……いえ、それよりも私が知りたいのはただ一つ。何故祖国を戦乱の炎に包むのです?」

「何故? 何故ですって? 逆に聞きますけど、態々貴女が既に理解している事をワタシに言わせようとするのです?」

 

 

 そんな事も解からないのかと呆れを交えた嘲笑を浮かべるジャンヌ・オルタ、そんな彼女にジャンヌは声を荒げた。

 

 

「解る訳無いでしょうっ!? 何故罪の無い国の民を襲っているのです?」

「……あぁ、白々しい。それとも属性が変転しているとここまで鈍くなるのでしょうか? そんなもの、単にフランスを滅ぼす為に決まってるでしょう。ワタシはサーヴァントなのですから政治的に、経済的に、そんな回りくどい事をせずとも物理的に潰して行くだけでこの国を滅ぼせるもの。当然でしょ?」

「馬鹿な事を―――!」

「ジャンヌ・ダルク、お綺麗な心をお持ちの聖女様? 馬鹿なのは、愚かなのはワタシ達でしょう? 何故、こんな国を救おうと思ったのです? 何故、こんな愚者達を救おうと思ったのです?」

「それこそ決まっているでしょう!私は人々の為に…「人々!それはただ裏切り、唾を吐いたニンゲンと言う名の屑共でしょう!?」…っそれは――!」

 

 

 ジャンヌの答えにジャンヌ・オルタは怒りの言葉で遮った、そして憎悪を滾らせながら宣言する。

 

 

「ワタシはもう騙されない! 裏切りを許さないっ!! ……そもそも、もう主の声も聞こえない。“主の声が聞こえない”と言う事は“主はこの国に愛想を尽かした”と同じ事でしょう? ならワタシがこの私が滅ぼします、主の嘆きをワタシが代行します」

「なっ!? それのどこが代行なのです!!?」

 

 

 無茶苦茶な話だ、しかしジャンヌ・オルタの目が本気だと語っている。

 

 

「主に愛想を尽かされ見放されたこの価値の無い国を死者とドラゴンの国へと作り変える。それが死んで新しいワタシになったジャンヌ・ダルクの救済方法です。……まぁ貴女には理解できないでしょうね! 何時迄も聖人気取りで憎しみも喜びも見ないフリをして人間的成長を全くしなかったお綺麗な聖処女さまには!! ワタシは違う! ワタシは成長した!! だからこそ死に依って救済するっ!!!」

【…サーヴァントに人間的成長ってアリなのか? いやでも優作君のサーヴァントになった彼等は成長出来るんだったな…】

 

 

 ジャンヌ・オルタの言葉に対し、ロマニが思わずホログラム越しに何かブツブツ呟いていたが誰も聞いていなかった。

 

 

「………貴女は本当に“私”なのですか?」

「……呆れた。ここまで言っても理解出来ないなんて、なんて醜い正義心なのでしょう? この憤怒を理解する気がそもそも無いのね? ですがワタシは貴女を理解しました。今の貴女の姿でワタシと謂う英霊の全てを思い知った。所詮貴女はルーラーでもなければジャンヌ・ダルクですら無い、ワタシが捨てた単なる残り滓よ!」

「………」

「ええそうよ、貴女は単なる田舎娘。何の価値もない、唯過ちを犯す為に歴史を再現しようとする亡霊に過ぎないわ! バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン、その田舎娘を始末しなさい。他は残りのサーヴァントを相手なさい。あぁ、そこの男は絶対に逃がさないで頂戴。ワタシの手で灰も残らず焼き尽くしてくれる」

「っ先輩、来ます!」

 

 

 ジャンヌ・オルタの命令と共に向こうのサーヴァント達が得物を構え殺気を放ち始める。マシュが迎え撃つべく盾と剣を構え、他の面々も構える。

 

 

…が、

 

 

「あ~、ちょいと良いかね?」

 

 

 いざ開戦と言える空気の中で優作が待ったを掛けた、今回3回目の空気ブレイクである。

 

 

「なんです、今更命乞いですか? 許す気など更々ありませんが」

「まさか。唯、おいちゃんもちょいとダーク♀ジャンヌに聞きたい事があるだけさね」

「ワタシに? ……って“ダーク♀ジャンヌ”って何よっ!?」

「黒くて反転した属性になっているジャンヌだからダーク♀ジャンヌさね」

「ものすごく侮辱された気がするから止めなさいっ! 今直ぐ燃やすわよっ!!」

「この会話、どっかで聞いた事がある気がするのだけど…」

「奇遇ですね所長、私も数週間以内に聞いた事が有る気がします」

フォウキュウ―キュ(容赦無くペースを奪い返す優作)キャーウ(嫌いじゃないわ)!!」

 

 

 鬱陶しそうに答えるジャンヌ・オルタに対して渾名を付ける優作。それにキレて地が再び出ている彼女の姿にオルガマリーとマシュ他がデジャブを感じていた。

 

 

「ジャンヌ・ダルクの送った人生を知っている身としては復讐に奔るのは理解出来るんよ? 神の啓示に従って奮闘していたのに最後には国家間の政治的理由で殺された訳だし」

「先輩!?」

「優作さん!?」

 

 

 優作の復讐肯定にジャンヌ・オルタは目を丸くし、マシュとジャンヌは驚きの声を上げた。

 ジャンヌがイングランドに捕らえられた当時、フランスとイングランドは両国とも疲弊し切っていた。何か手を打って講和なり休戦をしたかったのだが、それにはジャンヌ・ダルクの存在が邪魔になっていた。

 神の啓示でイングランドとの戦いに参加したジャンヌ。つまりこの形だと、イングランドは神に敵と見なされている事になる訳である。宗教の力が強いこの時代、神の敵となった国は針の筵処で無い扱いになるのは必定であり、イングランドはこのままでは滅ぼされるか戦い続けるしか道が無いのである。

 一方のフランスも疲弊している現状、イングランドと戦い続ければ国自体が崩壊しかねない。そこでジャンヌ・ダルクを魔女とすれば神の啓示も嘘となり、休戦をすんなり結んで互いに国力の回復に力を注げる様になる。

 結果、ジャンヌ・ダルクは国の安寧の為の生贄にされたのだ。

 

 

「少なくともおまいさんは政治取引した連中とか認めた王様や教会連中を奥歯ガタガタ言わせる権利はあるさな」

「………まさかアンタみたいなヤツが理解してくれる事に驚いてるわ。それで? 理解者であるアンタは何が言いたい訳?」

「ジャンヌ処刑の原因になった王族や教会連中を殺したまでは良かったけどね、民を殺すのは駄目でしょ?」

「話を聞いていなかったの? ワタシを裏切って唾を吐いた連中なのよ?」

「全ての国民がそうだった訳じゃないっしょ?」

 

 

 国民すべてがジャンヌ・ダルクを裏切った訳でないのでは? と優作は問い掛ける。

 

 

「おまいさんの傍に仕えて護っていた騎士や兵士達は?」

 

「魔女という報告に嘘だと唱えた人々は?」

 

「おまいさんの処刑を止めようと奔走した人々は?」

 

「そして何よりおまいさんの家族は?」

 

 

 優作の最後の問いに対し、ジャンヌ・オルタの目が大きく開かれた。

 

 

「か、ぞく……?」

「おまいさんの両親は魔女と蔑んだんか? 兄弟は唾を吐きかけて“死ね”と言ったんか?」

「両親…兄弟……あ、れ?」

「魔女の烙印を押された事にそんなの嘘だと怒らないんか? 火炙りされた事に泣かないんか?」

「な…んで? おか…し、い……」

 

 

 先程迄の雰囲気は何処かへと消え、ジャンヌ・オルタは頭を抱えだす。優作の問いかけに答えられない、いやそれ以前に自身の家族を思い返そうとしているのに何故(・・)か浮かんでこないのだ。

 遂には黙りこくって俯いてしまった。

 突然の事態に4体のサーヴァント達も動揺している様だ。

 しかし、その静寂も終わりを告げる。

 

 

「……うるさい」

「んあ?」

「うるさい、五月蠅い、煩い、五月蝿い、ウルサイ――――――ッ!! アンタなんかに何が解かるのよ!? 何も知らない癖に、あの熱さも、痛みも、苦しみも!!」

 

 

 ガバリと顔を上げて喚き立てるジャンヌ・オルタ。それは何か(・・)を考えない様にしようと必死になっている様に見えて痛々しかった。

 

 

「もういいわ。バーサーク・サーヴァント達、此奴らを殺しなさいっ!! そして街の連中も皆殺しよ!!」

 

 

 ジャンヌ・オルタの新たな命令に再び得物を構えるサーヴァント達。

 今度こそ戦いは避けられない。




元ネタ
>ヴァージニア・ナイツ(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』の登場人物。
原作の主人公の一人でウィル・ナイツの孫娘にしてリチャード・ナイツの娘。
祖父のウィルに育てられ自身もディガーとなる事を望み、家を出た祖父を追って家出同然で旅に出るお爺ちゃん子で2人譲りの豊富な行動力は確実に受け継がれている。
技と術両方バランスよく使いこなすオールラウンダー。
尚、初登場時は14歳である…若い。

>プリムスラーブス(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する杖武器。
杖武器の中で唯一のクヴェルで星の術『メガボルト』が使用出来るようになる。

>アルバレスト(出典:イニシエダンジョン)
『イニシエダンジョン』に登場する弓武器でクロスボウの上位互換的武器。
使える技は魔力が続く限り矢を連続で放ち続ける事が出来る『マシンガンアロー』。
プレミアムで『かず』、『かんつう』、『スタン』、『ノックバック』が付くと妨害を含めた強力な殲滅兵器になる。

>パニックメーカー(出典:イニシエダンジョン)
『イニシエダンジョン』に登場する弓武器。
ロングボウをベースにしたユニーク弓で序盤から手に入る。
使える技は狙った場所周辺へ矢の雨を降らす『レインアロー』。
プレミアムの『こうげきりょく+80%』、『こんらん+20%』、『かず+12』によって密集している敵に対して強力な殲滅力を誇る。

>インパルス(出典:九龍妖魔學園紀)
アトラスのジュブナイルアドベンチャーシミュレーションRPG『九龍妖魔學園紀』に登場するショットガン・ランチャー系武器。
圧縮した水を放つ水鉄砲で射程は2mと短めだが弾数無限且つ命中時にノックバックを発生させる。また、聖水でも使っているのか破邪属性である。
作者は壁際まで追い込んだ敵に何度も撃ちまくって遊んでいる。


Q、ジャンヌは旗で戦えるでしょ?
A、優作はあくまで一般的知識から考えてるから仕方ない。

Q、ジャンヌ・オルタの一人称、原作と違くね?
A、ジャンヌと差分したい為に変えてます。


次回は3月22日投稿。
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