フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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休暇が終わってしまった…(絶望)

今回は会話回。
独自解釈注意


堕ちた男が決意をし、優作達は新たな出会いをする

「あぁ、イラつくイラつくイラつくっ! 苛立たしい、腹立たしいっ!!」

「おぉ…お労しや、ジャンヌ」

 

 

 ラ・シャリテ近くの平原にて優作達と交戦し、撤退したジャンヌ・オルタは拠点としているオルレアンの居城『監獄城』へと戻ると辺り構わずに当たり散らし、怒り狂っていた。

 そんな彼女の傍にはローブを纏った痩せぎすのギョロ目男が立っており、彼女の剣幕にホロリと涙を流す。

 

 

「あの男にあの天使っ! ワタシの事を解かった様に偉そうな事を言って…あぁ、怒りで腸が煮えくり返りそう!」

「えぇ、えぇ、そうでしょうとも。ですが所詮、匹夫と貴女様を見捨てた者が送った使いの言葉です。そのようなモノは頭の隅に置いておく価値すらありますまい」

「だとしてもこの怒りを如何にかしないと気が済まないわっ! ジル、如何したら良いの!?」

 

 

 ジルと呼ばれた男、嘗てフランス軍の元帥を務め、ジャンヌが処刑された後に絶望から猟奇殺人鬼と化し『青髭』と呼ばれたジル・ド・レェは荒れるジャンヌ・オルタをあやす様に声を掛けるが、そう簡単に怒りが鎮まる筈が無い。

 

 

「あぁ、ジャンヌ。漆黒の意思を宿して復活した麗しき竜の魔女よ。今はその怒りを力にするのです」

「力に…?」

「そうです。竜の魔女として蘇った貴女は怒りと憎しみを力に出来る。その力を憤怒の炎に変えてこのフランスと邪魔立てする者共を焼き尽くすのです」

 

 

 両手を高々と上げながらジルは演説をする様に語り掛ける。

 

 

「焦る必要はありませぬ。ジャンヌが受けた屈辱は怒りの火種となり、貴女が持つ力と謂う名の薪を燃え上がらせて憎む全てを焼き尽くします。その力に依って万物が焼き尽くされる運命である以上、貴女は火種の原因を気にする必要は全く無いのです」

「気にする必要が無い…」

「えぇ、そうです。戯言を宣う塵芥からは火種のみを貰い、それを集める事で力を蓄え、焼き尽くす事だけを考えるのです。あ奴らはそれだけが存在価値。ジャンヌ、貴女を陥れた愚か者共は火種になるだけが生きる価値であり、その過程は貴女が考える必要は無いのです」

 

 

 ジルは未だ荒く呼吸するジャンヌ・オルタの肩に手を置き、慰める様に語り掛ける。荒れていた彼女は彼の言葉を聞く内に落ち着きを取り戻していく。

 

 

「…えぇ。えぇ、そうねジル。ワタシは魔女、奴らの言葉に意味は無く、唯ワタシの力になる為に存在するだけ。ワタシはその力を以って全てを焼き尽くすだけ…」

「その調子ですぞ、ジャンヌ。ですが敵はあの異邦人達だけではありませぬ。未だ抵抗を続けているフランス軍に我々の進軍を邪魔するはぐれサーヴァント達と敵は多いのです。ランサーとアサシンがいなくなった今、力を蓄えながら無策な行動は控える時なのです」

「力を蓄える…」

「そうですとも。ジャンヌは此度の戦いで幾等か消耗してしまいました。だからこそ次の戦に備えてお休みなさい。我々にはとっておき(・・・・・)があるのですから…」

「そうね…そうよ。ワタシはまだ負けていない。()を出せばあんな奴ら烏合の衆に成り果てる…」

 

 

 落ち着きを取り戻したジャンヌ・オルタにジルはニッコリと笑みを浮かべる。

 

 

「さぁ、ジャンヌ。復讐の旅路は始まったばかりですぞ! 旅の始まりから闇雲に力を込めていては終点まで身は持ちませぬ。力を抜き、今は唯々お休みなされ」

「解かったわ。お休みなさい、ジル…」

「お休みなさい、ジャンヌ。良き夢を…」

 

 

 ジルの言葉にジャンヌ・オルタは頷き、自室へと向かう。

 彼女の部屋へ続く扉が閉まるまで、彼は深々と頭を下げ続けていた。

 

 

「……さて、何用ですかな、バーサーク・ライダー?」

「あら、気付いていたのね?」

「これでも嘗ては元帥だった身です。暗殺される可能性を常に気にしていなくては務められませぬ」

「それもそうね」

 

 

 ジルが頭を上げながら彼しかいない筈の空間へと問い掛ける。すると、彼の後ろで霊体状態で立っていたライダーが姿を現した。

 

 

「それで、ご用件は?」

「連中の襲撃を任せて欲しいの。良いかしら?」

「ほう?」

 

 

 ライダーの用件は優作達へ襲撃する為の依頼だった。

 

 

「しかし、あの異邦人のマスターはランサーとアサシンを無力化して捕らえられる程の実力者。勝算はあるのですか?」

「それに関してはワイバーンとモンスターを幾等か貸して欲しいわ。そいつらを率いて深夜頃に夜襲を掛けるつもりよ」

「成程、深夜帯なら幾等かは警戒も緩んでいるでしょう。ですが、周辺に罠を仕掛けている可能性があるのでは?」

「だからこそのワイバーンよ。モンスター達が暴れている間に敵の真上から私が襲撃を仕掛けるわ」

「成程、理が叶っています。ですが、貴女も幾等か消耗しているでしょう? 万全と行かずとも休まれてくだされ。現状、残りは貴女とセイバー、そして監獄城に待機させていたアーチャーと自由行動中のアサシンだけなのですから」

「………」

「今回で多くのワイバーンを損耗してしまいました。補充するにも魔力が必要ですので、今暫くは待ちなされ」

「……分かったわ」

 

 

 ジルの言葉にライダーは頷き、再び霊体化して去って行く。彼女がこの場から完全に去って行った事を確認するとジルは溜息を吐いた。

 

 

「…狂化を掛けているとは云え、流石は聖女。その理性を完全に奪われる事無く抵抗していらっしゃる。此度の襲撃も我々に可能な限り牙を剥きたいからなのでしょうな…」

 

 

 ライダーが去って行った後を睨みながらジルは呟く。

 聖女の意志の強さは自身も痛い程に理解している。イングランドから自国の領土を取り戻す為に聖女(ジャンヌ)と共に駆け巡ったあの日々。彼女の破天荒さに驚き、振り回されながらも戦い続けた。彼女は如何なる時も決して諦めずに鋼の意思の如く進み続けたのだ。

 たかが田舎の村娘な筈なのに、貴族の自分が惹かれてしまうようになった。聖女とはここまで強いのか、気高く美しいのか、と…

 

 

「ですが、我々は…いえ、私は止まる事は出来ない…」

 

 

 国の為に戦い続けた彼女をあっさりと裏切った国。彼女を救う為に尽力したが教会の手が加わっていては如何し様も無かった。国と教会の言葉に流され暴言を垂れ流す民衆達に囲まれて焼かれる彼女の姿を自身は血の涙を零しながら見送るしか出来なかった。

 国の未来の為……彼女を殺した理由を調べて行った内に彼女を犠牲にした理由が明らかになったがそんな事で納得できる筈が無かった。

 

 

「ラ・ピュセル*1は天に召される事無く、地獄に墜とされた。何の罪も犯していないというのに…」

 

 

 国の為なら犠牲にして良いのか?

 

 純粋無垢だった彼女を汚して良かったのか?

 

 国の為に戦った彼女を生贄にして迄、生き残りたいのか?

 

 少女一人救えぬ国に未来など有るのか?

 

 

「…そんな国などいっそ、滅んでしまえば良いっ!」

 

 

 ジルの言葉に荒々しさが混じり、大きな声が零れる。

 

 

「フランスも、世界も、彼女を救わなかった者共は皆、死に絶えてしまえば良いっ!!」

 

 

 怒号に近い声が部屋に響き渡る。

 

 

「私は決して認めぬぞ、彼女を救わなかった世界の未来なんぞ…」

 

 

 嘆き、憎悪、憤怒、あらゆる負の感情を混ぜ合わせた怨嗟の声。自身のこの声をヤツ(・・)が拾ってくれた。どこの馬の骨かも知れぬが、力は確か。ならば利用するまで……たとえ自身が利用されていようとも…

 

 

「私は地獄の深淵へと堕ちる事でしょう、それは構わない。ラ・ピュセルがいる地獄に行くのならそれが本望なのだから。しかし、我らがラ・ピュセルは清き儘でこの地に再び現れた。貴女はまだこのような国を救おうと云うのですか?」

 

 

 一瞬、脳裏に笑顔を自身に向けるジャンヌの姿が映った。あの時の、裏切られる前の彼女が今の自分を見たら何と言うのだろう? “こんな事は止めろ”と叱責するのだろうか? 犠牲になった者達を想い、嘆くのだろうか?

 

 

「あぁ、お許しください聖処女よ。貴女が何を言おうとも私はもう止まれないのです…」

 

 

 窓から見える青い青い空へ、ジルは懺悔する様に呟いた。

 

 

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::

 

 

 時間はジャンヌ・オルタがオルレアンへと戻る少し前。

 ラ・シャリテに戻った優作達は住民達から熱い歓迎を受けているところだった。

 今迄、竜の魔女が現れた村や街は如何な抵抗も空しく徹底的に滅ぼされており、その姿を見たら即座に逃げなければ命が無かったのだ。

 そんな連中を撃退したのだから街を救った英雄と称えない筈が無い。

 街の人達に揉みくちゃにされながら優作は商会から街防衛の報酬を貰い、話し合いが出来る場所を求めた。

 そんな訳で優作達は酒場を貸し切り状態にして貰い、一同が集っていた。

 

 

「エミヤん、援護射撃有難うね?」

「なに、ただ狙って矢を射るだけの仕事だ」

「それでもマシュ達に被害が無かったのはエミヤんのお陰さね。後、フォウ君も見張り有難うな?」

フォウキャウ(エミヤ氏のお陰で)キャーウキュ~(ボクの出番は無かったけどね)

 

 

 建物の上から遠距離サポートしてくれたエミヤと同じくラ・シャリテに向かって来るワイバーン迎撃用に残していたフォウに感謝の言葉を告げ、今後の予定を相談する。

 

 

「次の目的地はディジョンで決まりね?」

「ラ・シャリテから近い街が其処らしいしな」

 

 

 街の住民達の話からこのラ・シャリテから近い街はディジョンであるらしい。オルレアンから離れるが取り敢えずは次の目的地を其処にする事にした。

 

 

「結局、この街では新しい情報は得られませんでした…」

「次の場所で期待しましょう?」

 

 

 情報収集でめぼしい情報が得られずしょんぼりするマシュをジャンヌが慰める。ディジョンはこの街より栄えているという、ならば新たな情報を得る事も可能だろう。

 

 

【次の場所ではぐれサーヴァントについて詳しい情報が得られれば良いけどね?】

「それに関しては運に任せる形になるかもしれんけど、行く価値はあるかんね」

「そういえばロマニ、ジャンヌ・オルタに聖杯の反応があったのですって?」

【はい。彼女が率いるサーヴァント達と比較しても彼女からは聖杯の反応が強くありました】

 

 

 移動先で求める情報ははぐれサーヴァントについてが割合が大きいが、聖杯の居場所に関しても調べなければならない。今回の戦闘でカルデアの調査班からジャンヌ・オルタには聖杯の反応が大きくあったと結果が出た。

 

 

「つまりはジャンヌ・オルタが聖杯を持ってるって事でおk?」

「それも考えられるのだけど、第三者が聖杯で願って彼女が生み出された場合、その人物が持っている可能性もあるわ」

「その場合はジャンヌ・オルタの後ろにいる黒幕を調べる必要がありますが、誰なのでしょうか? ジャンヌさんは判りますか?」

「…そうですね、私を魔女とした裁判を不服と思った方々は多くいると思います。ですが、一番に動こうとするのは…」

「ジル・ド・レェ元帥…かしら?」

「…でしょうね」

 

 

 この時代がジャンヌが処刑された後である以上、何者かに因ってジャンヌ・オルタは召喚された事になる。調査の結果から他のサーヴァントと違い、聖杯の反応が高い事から聖杯に依って生み出された可能性が濃厚である。

 となるとジャンヌ処刑を不服とするものか停戦を望まない者に因る事になるが、後者だとフランスだけ荒れてイングランドに動きが無いのはおかしい。となると、前者になるのだがジャンヌは自身を支えてくれたジル・ド・レェを可能性の人物に挙げた。

 

 

【可能性は高いんじゃないかな? ジャンヌが処刑されてから黒魔術に傾倒して『青髭』って後世で恐れられる程、猟奇殺人を起こしたんだし】

「そんな…ジル…どうして…」

 

 

 ダ・ヴィンチの言葉にジャンヌが悲痛な声を漏らす。神の啓示に従って立ち上がったものの、所詮は田舎の村娘。右も左も分からない戦場で、または様々な場所で支えてくれた人物がこの様な惨劇を招いたと信じたくはなかった。

 

 

「まぁ、フランス王家や教会連中に対しての復讐だろうね。一般市民を襲わせてる時点でアウトやけど」

「でも私はそんな復讐など望んでいませんっ!!」

 

 

 優作の予想にジャンヌが否定の声を挙げる。

 そんな彼女に優作は思っていたことを問い掛けた。

 

 

「……ジャンヌちゃんは後悔とか無かった訳?」

「後悔、ですか?」

「恨み云々を抱かないってのは納得は出来なくても理解は出来る。ジャンヌちゃんは敬虔なキリスト信者だし、信仰の果てにある己の役割が囚われた時迄だったと考えているなら理解出来るさね。でも…」

 

 

 一旦、間を置いて優作は再び問い掛けた。

 

 

「家族に会いたいとか、護ったフランスの姿を見たいと思わなかった?」

「それは…」

 

 

 優作の問いにジャンヌは言い淀む。最後が自身の破滅だったとしてもそれを含めて己が選び望んだ人生であり、後悔は無いと思っていた。

 しかし、彼の言葉で家族の顔を思い浮かべた時、その思いは違うと理解する。

 

 

「…そうですね。確かに家族の顔を見たかったですし、別れの言葉を告げれなかった事は後悔しています」

「その後悔の原因はジャンヌちゃんを裏切った連中のせいだよ?」

「だとしても…私は恨みません。フランスと一緒に家族も護れたのだから…後悔はあっても、それだけです」

「そっか」

 

 

 偽り無いジャンヌの言葉に優作は頷く。

 彼女は復讐心を抱いてない。自身より遥かに年下なのに清き意思を通せるその姿に対し、これが聖女なのかと敬意を抱いた。

 

 

【お話し中に悪いのだけど、サーヴァント反応が2つ此処に向かっているよ】

「それって、ジャンヌ・オルタと戦闘中に遠くで見ていた反応と同じ?」

【そうだね。街中に平気でいるって事は敵じゃ無いと思うけど…】

「なら招きましょ。流石にあの戦闘を見て殴り込みを掛けようと思う命知らずはいないっしょ?」

「…アサシンならやりそうだけどな。坊主が捕まえちまったが」

【反応はライダーとキャスターだからその心配はいらないよ。もうそろそろ入って来る】

 

 

 ロマニからサーヴァント反応があるとの通信が入り、彼の言葉が終わるや否や店の扉が開いた。

 

 

「ごめんなさい、お話し中に失礼するけど宜しいかしら?」

「はい、何用で…す……」

「先輩?」

 

 

 入って来たのは紅く派手なドレスを着た少女と黒い服を着た青年。

 人懐っこい笑みを浮かべる彼女に用件を聞こうと優作が席を立ったのだが、彼女の姿を見た途端その目が釘付けになった。

 

 

「あら、そんなにまじまじと見られちゃうと恥ずかしいわ? 私の顔に何か付いていて?」

 

 

 銀糸の様な美しい髪をツインテールにし、オルガマリーと同じくシルクの様に綺麗な肌、幼さを残す可愛らしい顔にぷっくりと瑞々しい唇は綺麗なピンク色。優作がじっと見ている事を不思議そうに首を傾げる仕草も愛らしく嫌味になってない。

 優作のモデルセンサーにクリティカルヒットした瞬間であった。

 

 

「ティン! と来た」

「へ?」

 

 

 ポツリとそう呟くと優作はツカツカと彼女の前まで歩き出し、跪くと彼女の手を掴んで言った。

 

 

「是非とも我々カルデアの専属モデルになって頂けないでしょうか!」

「ちょっと、優作っ!!?」

「先輩!?」

キャウ、キューフォウ(う~ん、これは一目惚れですね)フォ~ウ(間違いない)

 

 

 突然のスカウトに一同が驚く中、スカウトされた彼女は興奮した面持ちで隣の青年に語り掛ける。

 

 

「まぁ、凄いわ! 聞いた、アマデウス? モデルのスカウトよ! しかも専属なんて素敵♪」

「ちゃんと聞いてるよマリア。君ならモデルもしっかり熟せるだろうさ」

「うふふ、嬉しいわ。モデルのお仕事なんて初めてだけど頑張るわ、是非任せて頂戴♪ 私はマリー。アントワネットの方を名乗った方が解かるかしら?」

 

 

 可憐な笑顔で自己紹介するマリーに優作達は目を丸くする。スカウターを外していたから判らなかったのもあるが、まさか目の前の少女がかの有名な『マリー・アントワネット王妃』とは思ってもみなかった。

 更に言うなら優作が受けた衝撃は更に大きかった。教科書等で見た肖像画やマリーが登場する少女漫画『ベルサイユの薔薇』でイメージしていた姿と大きく違っていたのだから…

 

 

「な、ん、だと……?」

「アントワネット!? 貴女はかの有名なマリー・アントワネット王妃なのですか!?」

【フランス王家の象徴とこんな所で出会えるなんて! そんな彼女をスカウトしてOKを貰える優作君も凄いけど…】

キャーウ、キュウフォウ(う~ん、サーヴァントは全盛期の姿で)フォーウキャウ(召喚される筈なんだけど、)キュ~ウフォウ(胸が全盛期じゃないぞぅ)*2

 

 

 マシュやロマニも驚く中、優作はマリーの隣に立つ青年へと視線を向ける。王妃である彼女に付いている彼は一体何者なのか…?

 

 

「それで…隣の方は? アマデウスと聞こえたけどもしかして…」

「君がどのアマデウスを知っているのかは判らないけど、僕はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。魔術を少し齧っていた音楽家だよ」

「も、モーツァルト…? あ、あの『俺の尻を舐めろ』を作曲したあの…?」

「うん、そのモーツァルトだよ。良く知ってるね?」

 

 

 優作、本日3度目の衝撃。音楽室に必ず肖像画が飾られているであろう有名な音楽家本人が目の前にいる。掴んでいたマリーの手を放し、アマデウスの傍へと赴くと彼の肩に手を置いた。

 

 

「カルデアで専属の音楽家として働きませんか!? 音楽云々についても色々お話が聞きたいし、好待遇をお約束しますよ?」

「おぉう…まさか僕もスカウトされるなんて思わなかったよ…。マリアが了承したし、僕も構わないよ」

「マジすか!? キャッホーイッ♪ 王妃様と伝説の音楽家に出会えた上に仲間に出来るなんて今日は最高や! ヤフー!!」

 

 

 マリーとアマデウスからカルデアに来る事を約束され、優作は歓喜で飛び跳ねる。

 

 

「こんなに喜んでくれるなんて…、こうも喜ばれると私も嬉しくなっちゃう♪」

「ははは、僕も有名人になったものだな。ところでマリア、そろそろ本題に入らないかい?」

「あらいけない。私ったらうっかりね! ちょっと宜しくて、不思議な騎士様?」

 

 

 嬉しさの余りブレイクダンスを始めていた優作にマリーが声を掛ける。

 

 

「いやはや、申し訳ありません。余りの嬉しさでフィーバーしとりました…」

「うふふ、気にしないで? そんなに喜んでくれてこちらも嬉しいもの」

「それで、此度我々に会いに来てくださった理由は?」

「そうね、先ずはお礼を言わせて頂戴? 私の愛した国の人々を守ってくれたのだもの、この街と砦の人々を!」

 

 

 フィーバー状態から戻った優作の問いにマリーはニコニコしながら彼等へ感謝の言葉を捧げてくれた。

 

 

「? 砦の事を知っているのですか?」

「えぇ、知っているわ。私達はマスターがいないサーヴァント、呼ばれてからふらふらと彷徨っていて砦へと辿り着いたの。そこの兵隊さん達に話を聞いてみたら、商人なのに御伽噺の勇者の様に竜を倒していったと言うじゃない。行き先がこの街だと聞いたから追ってみたら、貴方達はまた街を守る為に戦っていたわ」

「援護するつもりだったのだけど、その必要も無かったからね。落ち着いたところでこうして来た訳さ」

 

 

 王妃からの感謝の言葉に驚きながら問い掛けるオルガマリーに答えるマリーとアマデウス。

 

 

「とても凄かったわ。まるで勇者の英雄譚、沢山の竜を率いた魔女に恐れる事無く立ち向かい、追い払ったのだもの!」

「有難う御座います。えぇと…私の名前はオルガマリー・アムニスフィア。一応、この此処の責任者とマスターをしてます」

「おいち…コホン、自分は十 優作。言うなら特攻隊長兼マスターって感じです」

「私はマシュ・キリエライトです。デミ・サーヴァントで先輩をマスターにしています」

「クーフーリン、そこの坊主がマスターだ」

「私は佐々木 小次郎。隣の槍使いと同じく彼をマスターにしている」

「エミヤだ。マスターは右に同じく」

「…ジャンヌ・ダルクです。竜の魔女とは別に召喚された身で、オルガマリーさんをマスターにしています」

 

 

 今迄の優作達の戦いに感動しているマリーへと自己紹介していくカルデアメンバー達。最後にジャンヌが自己紹介するが、マリーが嬉しそうに彼女へ駆け寄った。

 

 

「まぁ! 貴女がそうなのね? オルレアンを、フランスを救い戦った旗の聖女、ジャンヌ・ダルク!」

「…私は最早聖女ではありません。今此処にいるのは、唯の田舎娘であるジャンヌです」

 

 

 そんな彼女にジャンヌは少し悲しそうに首を横に振る。しかし、マリーは気にする様子無くニコニコ笑顔で問い掛ける。

 

 

「あらあら、だから鎧を纏っていないのね? でもその衣装も素敵だわ。そうだ! 聖女でないのなら、ジャンヌと呼んで構わないかしら?」

「え? は、はい、構いませんけど…」

「有難う、ジャンヌ♪ 私の事もマリーと呼んで頂戴!」

「ふぇ!? い、いや…そんな恐れ多いですよ、マリー王妃っ!!」

「もう、王妃なんて付けちゃ駄目よ? マリーよ? マ・リー?」

「あ、あの…せめて“マリーさん(・・・・・)”で許してください…」

「マリーさん? まぁ、素敵♪ そんな風に呼ばれた事は今迄無いから新鮮だわ!」

 

 

 呼び方で呼び捨てして欲しいが恐れ多くて出来ないと一悶着あったが、ジャンヌの“マリーさん”呼びに満足するマリー。他の面々にもそう呼んで欲しいと願う中、優作が手を挙げる。

 

 

「あ~、申し訳ないんですがね。自分はオルガマリーをマリー呼びしてるからややこしくなるんですよ」

「あらそうなの? なら彼女はマリー、私はマリーさんで良いのよ?」

「いやいや、流石にこの先戦闘時なんかに勘違いする事が有ったら拙いですよ。ですので“姫さん”で勘弁してくれませんか?」

「姫さん……?」

「あ~、やっぱ拙かった…すか?」

 

 

 優作の“姫さん”呼びにきょとんとするマリー。流石に不敬だったかと内心冷や汗をかく優作であったが、彼女の顔が咲き誇る花の様に綻んだ。

 

 

「姫さん…、いいえ、良いわその呼び方! だって姫と付いているのにとっても親しみ易い響きだもの! 姫さん、うふふ、素敵な呼び方を有難う、ユーサク♪」

 

 

 クルクルと踊る様に回りながら喜ぶマリーの姿に優作は安堵する。王妃なのにとても人懐っこく、惹かれてしまう程に親しみ易い女性だ。しかし、だからこそ国民に愛されたのであろうと納得する。

 

 

(こういった娘を本当のアイドルというのだろうな…)

「それじゃあ、仲間になってくれるという事なので姫さんとアマさんはマリーと契約してくださいな?」

「僕の呼び方はアマさんかい? 呼びやすいから構わないけどね」

「良いじゃない、アマデウス? 貴方の呼ばれ方も親しみ易いわ」

 

 

 マリーとアマデウスがオルガマリーと契約した事に依り、彼女の契約サーヴァントがジャンヌを合わせて3名となった。3名とも本来は戦闘向きではないが、優作の力を加えればバランスが整ったチームになれるだろう。

 

 

「宜しくお願いするわね、素敵な天使使いさん? 砦の人達からお話を聞いた時、聖女様かと思ったわ」

「そ、そんな…私が聖女なんて烏滸がましいですよ…」

 

 

 契約を結んでマスターとなるオルガマリーへとマリーが微笑む。そんな彼女達の会話を聞いて優作がある案を思い浮かべるのだが、それはまた別の話。

 

 

「私達、お礼もあるのだけど貴方方の御話が聞きたくて会いに来たの。このフランスまで旅してきたのでしょう?」

「え? あぁ…その、私達は実は…「説明しよう!」……っ優作!?」

 

 

 マリーの質問になんて説明しようかと言葉を選ぶオルガマリーだったが、唐突に優作が口を挟んできた。

 

 

「実は行商人とは仮の姿! そしてその実態は…」

「そ、その実態は…!?」

 

 

 優作のやたら芝居がかった発言に一同が唖然とする中、唯一マリーが息を呑みながらも尋ねる。

 

 

「時代のピンチに其の姿有り! 時間(とき)を駆け巡って、悪を裁く! 人理保証機関、カルデアたぁ、我々の事よっ!!」

 

 

 声高らかにポーズを決める優作。これが漫画ならオノマトペが「ババーン!!」とでっかく描かれているだろう。

 そんな彼に一同は未だに呆気に取とられている中……

 

 

「…素敵!!」

《はぁ!?》

「マリア!?」

 

 

 目を輝かせながらそんな感想を零すマリーに他のメンバーが同時に声を挙げる。

 

 

「なんて素敵な自己紹介かしらっ! まるで演劇か御伽噺に出て来る様な勇ましく優雅な挨拶だわ!!」

 

 

 挙句には拍手までするマリーの姿に一同は王妃の意外な好みを知ったのだった。

 何はともあれ、今後の目的も決まり、新たな仲間が加わった。

 優作達は次の目的地、ディジョンへとチョコボを奔らせる。

*1
フランス語で『乙女』や『使用人』を意味する単語でジャンヌ・ダルクの異称の1つ

*2
アントワネット王妃のバストは残されたドレスを調べたところ、当時の女性では珍しくボインであったらしい




元ネタ
>ティンときた(出典:アイドルマスター)
ナムコ(現・バンダイナムコ)の育成ゲーム『アイドルマスター』にて登場する台詞。
アイドルマスターのデモ画面にて765プロの高木社長が発言する台詞で本来は「ほう、何と良い面構えだ。ピーンときた! 君の様な人材を求めていたんだ!」と発言しているのだが、如何来ても「ピーン」が「ティン」としか聞こえない為に「ティンときた」と扱われており、公式でもそう扱われる様になった。


Q、ジルがなんかしっかりしてる…
A、独自解釈の結果こうなりまんた。


次回は4月5日投稿。
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まだまだ活動報告にてアンケートを行っていますので宜しく。
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