フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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地元のコロナ感染者が3名以上現れて、帰省する時が心配な影鴉です。
皆様も手洗いや消毒は欠かさない様にしましょう。
後、総合評価900達成に感謝感謝。

今回は VS マルタ戦

それだけなのにまさかの1万字越えに作者もおっぱげた。



聖女のイメージ壊れる

「あぁ、もうっ! やってくれるじゃないっ!!」

 

 

 四方八方から射られる矢を時に躱し、時に手に持った十字杖で弾きながらバーサーク・ライダーは悪態を吐いて声を荒げる。

 空中ではエンジェルの矢が、地上からはボーンスナイパーの狙撃がライダー達に襲い掛かり、ワイバーン達が次々と撃ち墜とされていく。

 

 

「天使を使い魔にして迎え撃つとか私に対する皮肉かってのっ!!?」

 

 

 杖から光弾を放つがエンジェル達はヒラリと交わして再び矢を射掛けてくる。周りのワイバーン達も火炎を吐くが当たる様子が無く、逆に矢に因ってハリネズミにされて撃墜される始末だ。

 

 

「このままじゃジリ貧ね……」

 

 

 矢が頬を掠り、口元へと流れる血を舐めとりながらライダーは地上を眺める。

 ジル・ド・レェから優作達が野営している場所を探して貰い、その場所が疎らに木々が並ぶ森林地帯であったと聞いていたのだが、近付いた途端に上空と木々の葉や枝に依って隠された死角から次々と矢を射られた。

 地上から攻めて行ったモンスター達は森に近付いただけでナイトクランの毒矢を雨の様に射られてバタバタと倒れており、生き残りも動けなくなった所をボーンナイトとダークナイトが止めとばかりに襲い掛かっていた。

 地上の戦力は頼りになれないと確信したライダーはせめて自身の目的を果たすべく、目的の人物達がいるであろう場所を探していく。

 すると、木々を抜けて若干明るい場所を発見する。

 

 

「見つけた…」

 

 

 ライダーは生き残っているワイバーン達に自身を守護するよう命令すると共に目的地へと飛び降りた。

 

 

:::::

 

 

 空がワイバーンの悲鳴で騒がしい中、一つの人影が優作とジャンヌの前に落ちて来た。

 

 

「…今晩は、寂しい夜…「親方、空から痴女がっ!!」…って、誰が痴女よっ!!?」

 

 

 上空でエンジェル達に迎撃されていくワイバーン達を抜けて降りて来たのはラ・シャリテ前の草原で戦ったバーサーク・ライダーだった。着地と同時に声を掛けてきたが優作の台詞に声を荒げる。

 

 

「いや、そんな恰好してる時点で痴女以外無いっての。何さね、その露出度の高さは? 本当に聖女かっ!?」

「聖女よっ! 当時はこれが普通だっての!」

「嘘付けぇっ!! ジャンヌちゃんだって露出は御美脚だけだったんやぞ! そんな恰好してたら“聖女(Saint)”じゃなくって“性女(Sexual)”と呼ばれるやろがっ!!

フォウキュ~フォウ(なんていやらしい聖女なのだ)…」

「な、な、な……」

 

 

 優作の容赦無い衣装の指摘にライダーも口をパクパクさせている。

 

 

「っつぅか、マルタっていえっさ(・・・・)本人からその杖を受け取ったと聞いてるけど、そんな恰好じゃあ、いえっさドン引きだろうが! 本当に貰ったんか!?」

「本当にイエス様に戴いたっつぅの!! っていうか“いえっさ”って何よ!? 渾名呼びなんて罰当たり過ぎるわっ!!」

「あの…優作さん、私も流石にその呼び方は失礼過ぎると思います…」

 

 

 優作の指摘にライダーが言い返し、ジャンヌも自身の信仰している者への言い方に問題があると流石に指摘するのだが、優作は何食わぬ顔で言い返した。

 

 

「え? 本人がそう名乗ってブログしてんのに?」

「はぁ!?」

「へ?」

 

 

 優作の言葉に聖女2人が間抜けた声を漏らす。

 

 

「いえっさは世紀末まで働いたご褒美としてブッダと一緒に立川でバカンスしとるんやで?」

「は? えぇ!? 何それ、聞いてないんだけど!?」

「優作さん、それは本当なんですか!?」

「プライベートで休みたいんだから、聖職者達に教える訳無いやろ! 群がられて休む暇が無くなるわっ!!」

キュウ、フォーウフォウ(う~ん、この誤魔化し方よ)

 

 

 目を丸くする聖女2人。しかし、優作の話は漫画『聖☆おにいさん』での話である。

 

 

「それで? 自称痴女で無い聖女さんが何用じゃい?」

「痴女じゃ無いし、自称って何よ!? 好い加減しないと殴るわよ!!」

 

 

 優作の言葉にプルプルと拳を震わせながら怒鳴るライダー、片手に持つ杖の柄の部分がピシリと罅が出来た様な音が聞こえたのは気のせいだと思いたい。

 完全に優作のペースである。

 

 

「…私は壊れた聖女。竜の魔女が掛けた狂化に因って理性が極限まで薄められている。今だって、衝動を必死に抑えている」

「つまり、一人だけで来たのは捨て身の特攻かい? だとしたら無駄・無理・無謀の三段活用やで?」

「無謀か……えぇ、そうね。連れて来たモンスターやワイバーンは全滅して残りは私だけ。でも此処に来たのは破れかぶれになったからじゃないわ……まぁ、好い加減この狂った生き地獄から解放されたいってのもあるけど…」

 

 

 自嘲気味に溜息を吐くライダーだったが、その顔を真剣なモノに変えて杖を構えた。

 

 

「私は如何してもアンタ達を試さなければならない」

「聖マルタ、それは一体…?」

「ラ・シャリテ前の戦いでアンタ達が普通じゃない事は解かったわ。でもあの邪悪な竜に太刀打ち出来るかは別」

「邪悪な竜? ワイバーン以外にいるのですか?」

「アイツは竜の魔女よ。竜殺しの力が無くば、アンタ達は勝つ事が出来ない」

「ふ~ん…竜殺しに拘っているようだけど、ジャンヌ・オルタはとっておきの隠し玉を持っている訳か?」

 

 

 ライダーの話を信じるならばジャンヌ・オルタはワイバーンを遥かに超えるドラゴンを切り札として保有しているらしい。それに打ち勝てるかどうか試す為、彼女は残った理性で以って優作達の元へ来たようだ。

 

 

「そう云う事。私如きを倒せなければ、邪竜とアイツを倒す事は不可能よ。だから、私が全霊を以ってアンタ達を試す!! 愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)っ!!」

 

 

 杖を高く掲げると共に巨大な竜が召喚される。

 巨大な甲羅に6本の太い脚、鋭い爪と牙を持つその竜は大鉄竜タラスク。

 

 

「行きなさい、星の様にっ! タラスク!!」

 

 

 地面を抉り、土煙を上げながら飛びあがったタラスクが回転しながら流星の如く優作達へと突き進む。

 迎え撃つべく杖を構えたジャンヌだったが、そんな彼女の前に優作が立つ。その手には一本の封魔管が握られていた。

 

 

「Let`s、同キャラ対決タイムじゃあっ!! いけぇっ、タラスク!!」

「へ?」

「なぁっ!? 嘘でしょっ!!?」

 

 

 優作の叫んだ言葉にジャンヌは困惑し、ライダーは驚愕の声を漏らす。

 封魔管から緑の閃光が放たれ、優作達の前に巨大な影が現れる。閃光が止むとそこには巨大な甲羅に6本の脚、長い尾を持ったタラスクが立っていた。

 

 

「ふぉっふぉっふぉ、久々に呼ばれたと思ったら面白い事になっておるのぅ?」

「敵は別世界のタラスクさかい、その強さを教えてたって!」

「ほぅ、見るにヤングな頃の儂ぢゃの。どれ、年の功と云うモノを教えてやるわい!!」

 

 

 回転しながら迫るライダーのタラスクに優作のタラスクはその尾を大きく振るった。尾に打ち据えられたライダーのタラスクは弾き飛ばされ、そのまま吹き飛んでいく。

 

 

「タラスクっ!?」

「このままあっちのヤツ(タラスク)を抑えといてぇな。なんなら倒して構わんから」

「了解ぢゃ、若いモンには負けんゾイ!!」

 

 

 優作の指示に頷きながらタラスクはライダーのタラスクが落下した場所へと突き進んでいく。

 

 

「な、何でアンタがタラスクを呼べるのよっ!!?」

「今から対決する相手に言うと思ってんの? 教えて欲しけりゃ、さっさと降参するこったな!」

「い、一々癇に障る言い方をしてくれるじゃない…」

 

 

 ニヤニヤ顔で抜いた刀を構える優作を前に歯噛みするライダー、タラスクを抑えられた以上、ライダー一人で優作達と戦わなければならない。

 

 

「マシュ達も間も無く来るだろうが、それでもやるんか?」

「……それでもやるわ。例え無辜の民を殺戮し、全身に血を浴びて汚れてしまっても…意地があるのよ、聖女にはね」

「…そうかい」

 

 

 ライダーの返答に刀を構える優作だったが、そんな彼の前にジャンヌが立つ。

 

 

「優作さん、ここは私にやらせてもらえませんか?」

「ジャンヌちゃん?」

 

 

 ジャンヌの提案に優作は目を丸くする。まさか、1対1の決闘を望むとは思ってもみなかった。

 

 

「既に聖女ではない身ではありますが、嘗て聖女だった者として私が戦わなくてはいけません」

「…君はまだ万全と言えない状況だよ?」

「そうですね。でも彼女の試練を乗り越えなくては、私はもう一人の私に届きません。それに…」

 

 

 優作の方へ振り返りながら彼女は微笑んだ後、顔を引き締めてライダーへと杖を構えた。

 

 

「彼女が言った通り、意地が有るのです。元聖女だとしても―――っ!!」

「やだ…かっこいい…」

フォウキャウキュッキュ!!(惚れてまうやろ――!!)

 

 

 ジャンヌの力強い言葉にムネキュンする優作とフォウを余所に彼女はライダーと相対する。

 

 

「私はジャンヌ・ダルク、嘗て聖女だった小娘ですが貴女の試練に挑みますっ!!」

「我が名はマルタ! 来なさい、清き聖女よ。私を超えてみなさい――っ!」

 

 

 杖を構えたジャンヌがライダーへと駆けて行く。ライダーが十字杖を掲げて光弾を次々と放つが、横や斜めにステップして回避しながら進んでいく。

 やがてジャンヌの攻撃が届く距離へと近づかれたライダーは十字杖を構え直し、彼女の振り下ろす杖を受け止めた。

 

 

「動きは悪くないわね、ならこれはどうかしらっ!?」

「っ!?」

 

 

 暫しの間杖同士で鍔ぜり合っていた2人だったが、狂化に依って力が増しているライダーに対し、未だステータスが万全でないジャンヌは押し負けて突き飛ばされる。

 距離が空き、ライダーは十字杖から光弾をマシンガンの如く連射していく。

 

 

「アクアバイパーッ!!」

 

 

 目の前に迫る光弾に対し、ジャンヌは空気中の水分を集めて巨大な蛇を形成し、嗾ける。巨大な水の蛇は光弾を飲み込みながらライダーを噛みつかんと口を大きく開いた。

 

 

「っちぃ――!」

 

 

 ライダーは噛み付かれる直前に横へと跳躍して避けるが、そこへ杖を振りかぶったジャンヌが突っ込んで来る。

 

 

「はぁああああ、かめごうら割りっ!!」

「くぅ――っ、なぁ!?」

 

 

 力を溜め、集中に集中を重ねた一撃は防御する為に構えたライダーの十字杖を見事叩き折った。これにはライダーも驚愕の声を挙げる。

 

 

「あの方から授かった杖を折った事は謝ります。ですが、これで私の勝ち…「舐めんじゃないわよ、後輩っ!!」―――なっ!?」

 

 

 武器を破壊した事からこれ以上戦えないと思い、杖を下げたジャンヌだったがライダーは折れた杖を地面に落とすとそのまま彼女へと殴り掛かった。

 咄嗟に杖で防ぐジャンヌだったが、余りに重い一撃に吹き飛ばされて後ろの木に叩き付けられた。

 

 

「あがぁっ!?」

「はぁっ!? 拳ぃ!!?」

 

 

 倒れないまでも全身に走った衝撃で膝を付き、杖で身体を支えて漸く立ち上がった。目の前には拳を構え、ファイティングポーズを取るライダーの姿、彼女は未だ戦意を喪失していないどころかやる気に満ち溢れていた。

 これには優作も驚く。祈りで邪竜を鎮めたという聖女がまさかステゴロで向かって来るとは思ってもみなかった。

 

 

「タラスクと杖が無くなったところでこのマルタが降参すると思ったら大間違いよっ! この程度の逆境に見舞われた位で聖女なんてやってられっかぁ!!」

「!!」

 

 

 姿勢を低くしながらライダーが拳を前にしてジャンヌへと駆ける。

 

 

「そらそらそらぁっ!!」

「く、くぅ……」

 

 

 杖を構えたジャンヌに対し、接近したライダーは拳の連打を浴びせる。一撃一撃が先程受けたストレートに匹敵する威力に、正直に受けるのは拙いと判断したジャンヌは必死に受け流していく。

 しかし、左からのフックを受け流そうと杖を向けた時、拳を解いたライダーはそのままジャンヌの杖を掴んで振り回せない様に封じ、同時に彼女の腹へと右の拳でブローを叩き込んだ。

 

 

「ハレルヤァ!!」

「ぐふぅっ!!?」

 

 

 そのまま拳を持ち上げてジャンヌを上空へと殴り飛ばす。彼女は空中を舞いながら受け身を取る事無く、地面に叩き付けられる。

 

 

「かはっ!? けほ、こほっ…」

「ジャンヌちゃんっ!!」

 

 

 強烈な一撃に大きく咳き込むジャンヌ。大きなダメージを受けたと判断し、流石に見過ごせないと判断した優作は彼女へ駆け寄ろうとするが、蹲りながらも彼女は手でそれを制した。

 

 

「だ…だいじょう…ぶ…です…」

「ダメージが大き過ぎる。これ以上は――!」

「はぁ、はぁっ……生命の水」

 

 

 ジャンヌは水術で身体を癒し、立ち上がる。彼女の前に立つライダーは拳を構えてこそ、彼女が立つのを待ってくれていた。

 

 

「待って戴き、有難う御座います。聖マルタ」

「別に良いわ、続きをやるわよっ!!」

 

 

 ジャンヌの感謝の言葉に軽く返しながらライダーは再び彼女へ肉薄する。拳の連打を的確にブロックしながらジャンヌも負けじと技を放つ。

 

 

「回し打ちっ!」

「甘いっ!!」

「まだまだっ! 更に海老殺し!!」

「うぐぅっ! 中々やるじゃないっ!!」

 

 

 拳と杖、互いの武器は違いながらも激しく打ち合う様子を優作とフォウが観戦する中、テントへ向かっていたマシュ達が戻って来た。

 

 

「先輩っ!!」

「! マシュ…皆も来たんか」

「ロマニを叩き起こして確認させたら周りの敵性反応は消えてるっていうからまだ残ってる此処へ来たのよ」

【優作君が呼んだ使い魔達の御陰で全滅していて、残りはラ・シャリテで戦ったバーサーク・ライダーだけだったからね】

「それで、如何云う状況なんだ、これ?」

 

 

 オルガマリーとロマニから敵モンスターの全滅を聞く中、クーフーリンからこの場の状況説明を尋ねられる。

 

 

「ジャンヌちゃんがライダーとデュエル中」

「助けなくて良いのかね?」

「ジャンヌちゃんが望んだ以上、彼女が戦闘不能にならない限り無理だよ」

「そんな悠長にしてて良いの?」

「分かっているさね。でも彼女の意志を尊重したい」

 

 

 優作の表情は優れない。ジャンヌはライダーの攻めに必死に喰らい付いているが、徐々に後れを取り始めている。このままでは手痛い攻撃で再び倒れかねない。

 

 

「ほらほら! 動きが遅くなってるわよ!!」

「くっ…うぅ……(つ、強い…狂わされても尚、こんなに…)」

 

 

 疲れた様子の無いライダーの攻撃は更に激しさを増していく一方、ジャンヌは反撃に移る回数が減り、受け流すタイミングも徐庶にズレ始めていた。

 

 

「私に遠慮している訳? 戦っている最中なのに随分と余裕ねっ!!」

「がぁっ!? くぅううっ!!」

 

 

 遂に杖を抜けてライダーの拳がジャンヌの頬を捉える。一瞬たたらを踏みそうになるが、歯を食いしばりながら反撃に出る。

 

 

「私の試練に挑むと言っておきながら、アンタの覚悟はその程度かぁ!!」

「うぐぅ……わ、私は…」

 

 

 再び腹部へ一撃を受けて、よろけるジャンヌにライダーは拳を大きく振りかぶる。

 

 

「アンタの聖女の意地ってのは堕ちた聖女に折られる程度のモノなのかぁ!!!」

「ぐぶぅ―――っ」

「ジャンヌさんっ!!?」

 

 

 渾身の右ストレートがジャンヌの顔面を捉え、血を飛び散らせながら彼女は吹き飛ばされる。

 杖も手放してしまいながら殴り飛ばされたジャンヌをマシュが受け止める。ジャンヌはぐったりしており、顔はマルタに殴られた事に因って痣と鼻血で酷い見た目になっていた。

 

 

「ジャンヌさん、しっかりしてくださいっ!」

「こりゃ、良いの入っちまったぞ…」

 

 

 マシュがジャンヌへ呼び掛けるが反応が無い。

 

 

「……これまでやね。後はおいちゃんがやる」

 

 

 ジャンヌが戦闘不能だと認識した優作はクラウスの衣装へ切り替え、ライダーの元へ向かおうとする。

 

 しかし…

 

 

「待って……くださ…い」

「ジャンヌさん!」

 

 

 小さいながらも聞こえたジャンヌの声に優作は足を止める。

 驚いて振り向くと、気絶していた筈の彼女の目が薄っすらと開いている。

 

 

「ま、だ…やれ……ます」

 

 

 マシュの腕の中でジャンヌはゆっくりと体を起こしていく。

 

 

「ジャンヌさん、これ以上は無理です」

「今の貴女じゃ力量差が大きすぎるわ。ここは優作に…」

「お願い、です……やらせ…てくださ…い」

 

 

 マシュの肩を借りて立ち上がるジャンヌ。マシュとオルガマリーの制止の言葉を聞きながらも彼女はそれでも、と願い出る。

 

 

「私、が…私がやらない…といけません…皆さんとこれから戦って…いくと決めた以上、ここで負ける訳には…いか、ないんです…」

「………それも、聖女の意地ってヤツかい?」

「はい…お願いします…」

「………はぁ」

 

 

 ジャンヌの願いに優作は溜息を吐く。彼女の真剣な眼差しに改めて聖女の強さを再確認し、封魔管を2本取り出した。

 

 

「せめてこれだけはさせて? ティターニア、ジャンヌちゃんを回復して。ヨシツネはヒートライザを」

「うふふ、任せて♪」

「おうよ」

 

 

 呼び出された妖精女王『ティターニア』がディアラマを掛けてジャンヌの傷をある程度癒し、ヨシツネが彼女の力量をライダーと並べる様に強化する。

 

 

「優作さん…有難う御座います」

「本当は止めたいけど……負けないで?」

「――! はいっ!!」

 

 

 優作の言葉にジャンヌは笑顔で返し、ライダーの元へ向かう。

 

 

「お待たせしました」

「……まだやれる訳?」

「はい。みっともない姿を見せてしまい申し訳ありません、聖マルタ」

 

 

 ジャンヌの雰囲気が変わった事にライダーは気付く。

 

 

「…私は気後れしていました。あの方から杖を授かり、邪竜をも鎮めた聖女に田舎娘だった私などが、と……でもそんな事は関係無かった」

 

 

 そう言ってジャンヌは真剣な面持ちで構える。

 

 

「聖女だからとか以前に私はこの国を救いたいっ!! だから私は貴女に勝ちますっ!!」

「…っふ、良い面になったじゃない。さっきまでとは大違いだわ」

「有難う御座います、聖マルタ。貴女のお陰で気付く事が出来ました」

「貴女は立派な聖女よ。過去にやった偉業なんて関係無い、大事なのはその意志。だから…」

 

 

 ジャンヌの決意に薄っすらと笑みを浮かべた拳を構えたライダーは彼女へと再び駆けて行く。

 

 

「その意志を、貴女の聖女の意地を見せてみなさいっ!!」

 

 

 ジャンヌへと迫るライダー。ジャンヌは杖を構え、そして…

 

 

 その杖を横へと投げ捨てて拳を構えた。

 

 

「ハートブレイクッ!!」

「なっ!? ……があぁっ――っ!!?」

 

 

 突如己の武器を投げ捨てジャンヌに流石のライダーも仰天する。その一瞬に生じた隙にジャンヌは己の拳を彼女の胸元へと叩き込んだ。

 

 

「ゴホッ……こ、拳ですって?」

「優作さん! この服の、ジニーさんの力を、本当の意味でお借りしますっ!!」

「!? 身体が痺れる…――うぐぅっ!!?」

「せいっ、はぁっ! 熊掌打ぁ!!」

 

 

 ジャンヌの放った拳技『ハートブレイク』に因って麻痺の追加効果を受けたライダーは身体を上手く動かす事が出来なくなる。そこへ彼女は更なる追撃を加えていく。

 

 

「くうぅぅっ、この程度でぇっ!!」

「うぶぅっ!!」

 

 

 暫く殴られ続けていたライダーだったが、不可能を成し遂げるスキル『奇蹟』を発動し、痺れる身体を無理矢理動かしてジャンヌへ殴り返す。

 再び顔面を殴られたジャンヌだったが、飛び散る鼻血を気にする事無くライダーへ殴り掛かる。

 

 

「はあぁあああああっ!!」

「でりゃぁああああああ!!」

 

 

 最早、防御や避ける事無く互いに殴り、時に蹴りも混ざってぶつかり合っている状況。美女、美少女同士で行うにはあるまじき、漢臭い景色が優作達の目の前で繰り広げられていた。

 

 

【聖女って清らかなイメージだったけど、随分男らしいんだね…】

「あぁ…拳が肌や骨にぶつかる音はグチャグチャと生々しいから好きじゃないんだよなぁ…」

 

 

 夕焼けの砂浜は土手の下でやるべき光景が続く中、ロマニとアマデウスがポツリと呟く。

 

 

「……もしかしてタラスクは祈りじゃなくて、拳で沈められた(・・・・・)のかしら…?」

「はわぁ…聖マルタはモンク僧でもあったんですね…」

 

 

 オルガマリーとマシュが語られていなかった歴史の真実にしみじみと呟いた。

 

 

「……おいちゃんの中にあった聖女のイメージがガラガラ崩れていくわ~、HAHAHA …」

フォウキュー(でも見て下さい)キャーウフォウキュウ(見事におっぱいぷるんぷるん)

 

 

 ジャンヌを心配そうに見守っていた優作も遠い目になっており、足元のフォウはしっぽを振りながら殴り合う2人のある部位をしっかり眺めていた。

 

 

「三角蹴りぃ!」

「ごぶっ…良い蹴りじゃないっ!!」

「まだまだぁ! あびせ倒しっ、せいやぁ!!」

「うぐおぅっ」

 

 

 近くの木々を利用した三角蹴りをライダーの顔面に叩き込むジャンヌ。よろめく相手へ組みかかり、全身の体重を乗せて圧し掛かる様に地面へと叩き付けた。

 しかし、ライダーから何度も殴られているジャンヌも限界に近い。視界は霞んで視えており、身体もフラフラとよろめいていて何時倒れてもおかしくない。

 

 

「はぁ、はぁ…」

「ぺっ! げほっ、ごほっ……こっちもそろそろ限界ね…」

 

 

 肩で息をするジャンヌにフラフラと立ち上がりながら口の中に溜まった血を吐いてライダーは震える拳を構える。

 

 

「聖マルタ、私は…」

「その意志を忘れないで、聖女ジャンヌ。さぁ、これが最後よ。歯ぁ、食い縛りなさい!」

 

 

 両者共に満身創痍。

 目元が大きく腫れて見え難い視界の中、お互い拳を構えて駆けだす。

 

 

「うおりゃぁあああああああああああ!!」

「はあぁああああああああああああっ!! 」

 

 

 互いの拳が交差し、それぞれの頬を打ち抜く。

 

 暫しの静寂の後、倒れたのはカウンターを決められたライダーだった。

 

 

「ゴフッ…良い拳だったわ、やるじゃないの…」

「聖マルタ!」

「私の負けよ…、タラスクもお疲れ様…」

 

 

 倒れたライダーを抱えるジャンヌ。互いに顔は見ていられないぐらいに血と痣だらけになっている。ライダーの視線の先には離れた場所で戦っていた優作のタラスクが戻って来る姿が映っていた。

 

 

「ヤングな分、勢いはあったが数と質を熟している儂には勝てんぞ?」

「グルルルゥ…(姐さん、済みません…)」

 

 

 勝ち誇る優作のタラスクの後ろで、ぐったり倒れているライダーのタラスク。ライダーへ申し訳なさそうな唸り声を零しながら金の粒子になって散っていった。

 

 

「私も限界ね…一つ伝えておくわ」

「聖マルタ…」

「リヨンに向かいなさい。竜の魔女が使役している邪竜に今の貴女達では勝てない。竜を倒すのは騎士でも聖女でも無い、古来から竜殺し(ドラゴンスレイヤー)と決まっている。リヨンと呼ばれる都市に向かえば邪竜を打倒できる手段が待っているから…」

「そんなに強い竜を従えているのですか?」

「えぇ、私のタラスクを遥かに超越する竜と言う幻想種の頂点。使い魔や只のサーヴァントを幾ら率いようとも勝てる相手では無いわ」

 

 

 ライダーの言葉にジャンヌと新規加入した3人こそ息を呑んでいるが、他のメンバーはというと…

 

 

(竜の頂点ねぇ…坊主なら同等以上の存在をアホみたいに使役してそうだけどな)

(聖女マルタには申し訳ないけど、幻想種の頂点くらいで優作が負ける姿が想像できないわ)

(そもそも主殿が竜殺しになりきれば問題無い話でござるからなぁ…)

(…邪竜にも様々な存在がいるけど、優作君ならどれも笑いながら蹴散らしそうなんだよなぁ…)

(そういえばこの服ならドラゴンキラーも扱えたな…この服でそうならマスターなら…考えるのはよしておこう、頭が痛くなりそうだ)

(竜種の頂点…緊張しない訳では無いのですが、先輩がいるので全く怖くないです…)

 

 

 全く緊張らしい緊張をしていなかった。寧ろ、この先で現れた際に如何様に倒されるか予想する始末だ。

 

 

「私の言いたい事はそれだけ、全く…聖女に虐殺なんてさせるんじゃないっての…」

 

 

 ライダーの身体が徐々に薄れてゆき、金の粒子が舞っていく。タラスクに続き、彼女も間も無く消滅するだろう。

 

 

「貴女達が勝利する事を祈っているわ…次はマシな奴に召喚され…「そのまま消滅しようなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ?」…は? ――モガっ!!?」

 

 

 薄っすらと微笑みながら消滅しようとするライダーの口に優作は容赦無く薬瓶を突っ込む。突然の事な上にジャンヌとの殴り合いのダメージで動けないライダーはそのまま瓶の中身を飲んでいく。

 

 

「ゆ、優作さん…?」

「ジャンヌちゃんもエリクシールを飲んでね。メディ姉、夜勤出動ですがお願いします」

【はいはい、また捕まえたのね?】

 

 

 ジャンヌに同じ薬瓶を手渡しながら優作が端末越しに連絡すると、応答に従って再びメディアがカルデアから召喚されてライダーへ破戒せる全ての符(ルールブレイカー)を使用する。これにてライダーはジャンヌ・オルタとのパスが無くなり、優作の飲ませた薬で傷は癒され、狂化も解除された。

 

 

「よっしゃ! これで聖女マルタ、ゲットだぜ!!」

「ゲホ、ケホッ…な、何で狂化やパスが切れてるの…?」

「優作さんの用意した薬とそちらのメディアさんが持つ宝具のお陰です」

「……………」

 

 

 困惑しているライダーことマルタに自身もエリクシールを飲んで完全回復したジャンヌが説明する。

 ヴラド三世を捕まえて仲間にしたので彼女も戦った後に仲間にするのだろうとジャンヌも薄々理解していたのだが、優作の容赦無い空気ブレイカーっぷりにジャンヌも顔が若干引き攣っていた。

 

 

「近~中距離戦が出来る彼女はマリーがマスターになって貰いましょ、マリー契約よろ!」

「わ、解かったわ。それじゃあ聖女マルタ、宜しいかしら…?」

「………」

 

 

 上機嫌の優作に勧められオルガマリーがマルタへと契約を依頼する。すっかり回復したマルタは立ち上がっており、顔を俯かせてプルプル震えていた。

 

 

「あの…聖女マルタ?」

「アンタ…優作って言ったかしら?」

「なんじゃらほい?」

「一発殴らせなさい」

「ファッ!?」

 

 

 掲げた右拳を震わせてマルタが優作を睨み付ける。

 その顔は真っ赤になっており、若干涙目だった。

 

 

「竜の魔女から解放してくれたのは感謝してる。御陰でお礼参り出来るし、そっちの天使使いのサーヴァントになるのも構わない…でも!!」

 

 

 そのまま優作に殴り掛かるマルタだったが、彼がそう簡単に殴らせてくれる訳無く、ヒョイと簡単に避けられる。

 

 

「散々揶揄ってくれた挙句にこの仕打ち!! 魔女から解放するのにも、もうちょっと良いタイミングがあったでしょうがっ!!」

「んなもん知らんがな、倒れた瞬間に解除しろってか!?」

「えぇ、そうよ! 後輩に先輩面した状況で消えようとしてたのに、消える事無くこの状況って…如何いう面すれば良いのよっ!!」

「笑えば良いと思うよ?(シンジ並感)」

「んな訳あるかぁっ!!!(全ギレ)」

 

 

 拳を避けながら逃げる優作を追い回すマルタ。先程までの空気は何処へやら、シリアルな空間がそこに出来ていた。

 

 

「こらぁ、待てぇ! 一発殴らせろぉっ!!」

「だが断る!!」

 

 

 この逃走劇はオルガマリーがまだ契約していなかった事からマルタ本人の魔力不足で倒れる直前まで続く事になるのだが、如何でも良い事なので割愛する。




元ネタ
>いえっさ(出典:聖☆おにいさん)
講談社の漫画雑誌『モーニング・ツー』で連載している中村光作の漫画『聖☆おにいさん』の登場人物。
皆様ご存知、神の子であるあの方。
天界でもブログをしていたが、地上でも『いえっさ』のHNでアニメの感想等をレビューしたブログを立てている。

>タラスク(出典:女神転生シリーズ他)
アトラス作品に登場する悪魔。
フランス中部にあるローヌ河に住んでいたとされる邪龍で6本の足を持ち、巨大な口と長い牙で人間をひと呑みにしたという。

>アクアバイパー(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する水術。
『水』+『獣』の組み合わせで発動し、術者の正面を起点としたカエルモンスター特攻の蛟を放つ。

>かめごうら割り(出典:サガシリーズ)
『サガフロンティア2』に登場する杖を使った派生技。
『ためる』+『集中』+『集中』+『叩く』の組み合わせで発動し、防具に依る回避不能且つ防御力低下の追加効果を与える。

>生命の水(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する樹術。
『樹』+『水』の組み合わせで発動し、対象となる味方1人のHPを回復し、能力値変化もリセットする。

>海老殺し(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する杖を使った派生技。
『振り回す』+『けん制』+『振り回す』の組み合わせで発動し、エビ・カニモンスター特攻のダメージを与える。

>ティターニア(出典:女神転生シリーズ他)
アトラス作品に登場する悪魔。
妖精の女王で、イングランドの妖精王『オベロン』の妻。
ローマ神話の女神ダイアナに由来すると謂われる。
花の妖精達をお供に付け、月明かりから魔法を紡ぎだすという。

>ディアラマ(出典:女神転生シリーズ他)
アトラス作品に登場する回復魔法スキル。
下位互換にディア、上位互換にディアラハンがある。

>ハートブレイク(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する体術を使った派生技。
『集中』+『つかみ』+『パンチ』の組み合わせで発動し、攻撃対象にマヒの追加効果を与える。

>熊掌打(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する体術を使った派生技。
『ためる』+『つかみ』の組み合わせで発動する。

>三角蹴り(出典:サガシリーズ)
『サガフロンティア2』に登場する体術を使った派生技。
『けん制』+『キック』+『キック』の組み合わせで発動し、攻撃対象に回避不能の攻撃を行う。

>あびせ倒し(出典:サガシリーズ)
『サガフロンティア2』に登場する体術を使った派生技。
『パンチ』+『つかみ』+『キック』の組み合わせで発動し、攻撃対象にスタンの追加効果を与える。

>カウンター(出典:サガフロンティア2他)
『サガフロンティア2』に登場する体術系反撃技。
攻撃してきた対象に防御力無視の反撃を行う。

>エリクシール(出典:リアル他)
人間に不老不死の永遠の生命を与える霊薬であり、エリクサー、エリクシア等とも呼ばれる。
大体のゲームでは体力と魔力を全回復するアイテム扱いである。
実は「通例、甘味及び芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の内用剤である」、エリクシル剤やリキュールのエリクサーと云ったリアルでもこの名前の液体が存在していたりする。


Q、何故に殴り合いへと810(発展)してんの?
A、これもステゴロ聖女だの殴ルーラーだのそんな設定にした公式と他SSが悪い(責任転嫁)

Q、ジャンヌ単身でマルタに勝てるの?
A、タラスク離脱+杖で戦っていた時に溜めたダメージ+優作のサポート+麻痺状態付与でギリギリ勝利した感じ。

Q、邪竜に対するカルデアメンバーの反応が軽過ぎない?
A、既に優作の遣りたい放題に汚染されているからね、しょうがないね。


次回は4月19日投稿。
感想コメント、意見・質問お待ちしております。
活動報告でのアンケートは今週を以って終了しますので宜しく。
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