フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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特異点『F』 炎上汚染都市『冬木』編 -加わる者、変わる運命-
冬木は燃えているか?


「せ……い、お…て……さい!」

「フォ………キュ……」

 

 

 誰かが呼んでいる声がする。しかし、どうも頭がぼんやりとする。

 

 

「先輩、先輩!!」

キュウ、フォーウ(起きなよ、優作)

 

 

 頬を舐められる感覚も加わり、徐々に意識が覚醒していく。

 目を開けるとマシュとフォウが心配そうに覗き込んでいた。

 

 

「あ…マシュ?」

「良かった、目が覚めたんですね?」

キュウ~(心配したんだからね)

 

 

 優作が体を起こし、無事である事を確認するや心から安堵する様子のマシュ。

 

 

「此処って…レイシフト先?」

「はい、私達は無事にレイシフトに成功したようです」

 

 

 立ち上がって周囲を見てみると、まるで空爆でもされたかの様に瓦礫が溢れ、燃える街が広がっていた。

 

 

「核爆弾でも落ちたのか? ……っていうか…マシュ、その恰好…?」

「あ、これですか?」

 

 

 マシュの格好はカルデアで出会った時の制服とパーカーの姿ではなくなっていた。

 所々プロテクターが付いたインナーのような衣装に常人ではとても持てないような十字型の盾を携えていた。

 その姿を見た途端、優作は硬直してプルプルと震えだした。

 

 

「あ、あ…」

「あ?」

「アウトォォォ!!」

「えぇぇっ!?」

 

 

 ビシリッ! とマシュを指さしアウト宣言を叫ぶ優作。

 

 

「何だその、R-18PCゲーにありそうな“くっ殺姫騎士”ルックはぁぁ!!?」

「はいぃ? え? くっころ…ですか?」

「ボディラインはくっきりでおへそは丸見え、戦闘の風圧でパンチラ不可避なミニスカ……おいちゃん、そんな恰好は撮影以外じゃ許しません事よ!!」

キュー(たまらん格好だよね)

「え…いや、確かに言われてみると戦闘を行うには恥ずかしい衣装かもしれませんが…」

「兎に角、別の服に着替えよう! 話はそれからだ!!」

「ま、待ってください先輩。それよりも周りを見て下さい!!」

「へ?」

 

 

 マシュの言葉に改めて周囲を見ると、何時の間に沸いたのか武器を携えた骸骨が優作達の周りを囲んでいた。

 骸骨達は武器を構え、じりじりと優作達へ近づいて来る。

 

 

「…何、あのチェルノボグのなりそこないみたいなモンスター?」

「言語による意思の疎通は不可能、敵性生物と判断します。任せてください、私が戦い…「駄目です」…っえ!? 先輩!!?」

 

 

 盾を構えるマシュの言葉を遮りながら優作は彼女の前に立つ。

 その手には4本の管が掴まれていた。

 

 

「取り敢えず近接戦闘NGな衣装のマシュは別の服に着替えましょう」

「いや、今それどころじゃないですよ先輩!?」

「モーマンタイ、こいつらに任せりゃ大丈夫…って事で」

 

 

 管を前に出し、叫んだ。

 

 

「叩き潰してやれ、お前達!!」

「「ヒーホー!!」」

「よっしゃぁ! ロックにいくぜぇ!!」

「わーい、皆殺しだー♪」

 

 

 管から飛び出すはジャックフロストにジャックランタンのジャックブラザーズ、オニ、そしてピクシーだった。

 呼び出された4体の悪魔は囲んでいた骸骨達を蹂躙していく。

 

 

「ヒホー、絶対零度!!」

 

 

 ジャックフロストが絶対零度で凍らせ、

 

 

「丸焼けだホー!」

 

 

 ジャックランタンがアギダインで消し炭にし、

 

 

「オラオラ、どうしたぁっ!?」

 

 

 オニが金棒片手に大暴れして粉砕し、

 

 

「えーいっ!」

 

 

 ピクシーが大放電で跡形もなく消し飛ばしていた。

 

 

「あ…あの先輩? あれって管制室にいた…」

「詳しい話は後ね、えぇっとどの服が良いかな?」

フォーウ(マイペースだなぁ)…」

 

 

 4体の悪魔達の蹂躙劇を唖然とした様子で眺めるマシュに対し、優作は何処からともなく出した衣装ケースを開いて中身を物色している。そんな彼の姿にフォウは呆れた鳴き声を上げた。

 

 

「盾持ちなら近接戦闘メインだろうしなぁ…盾だけで戦うなんてキャプテンアメリカか冒険王ビィトぐらいしか知らんぞ。でも、遠距離攻撃も出来た方が良いし……いっそパニッシャーでも…ん? マシュ“重ね掛け”出来そうじゃん! なら」

 

 

 衣装を取り出してマシュに似合うか見比べる事数分、よくよく見ると彼女に“とある才能”が有る事に気付いた優作は彼女に着せる衣装を決める。

 

 

「これに決めた」

 

 

 優作が取り出したのは緑を基調とし黄色のボーダーが入ったジャージ上とスカート&スパッツ、そして至って普通の女子高制服だった。

 

 

「あ、あの…そのどちらかを着るのですか?」

「まぁ、見てて」

 

 

 優作の言葉と共に2着の衣装が光の球体へと変わる。

 

 

「なりきりインストール、『メイン:里中(さとなか) 千枝(ちえ)、サブ:津村(つむら) 斗貴子(ときこ)』」

 

 

 そう唱えると共に優作は光をマシュに押し当てた。光はマシュの身体に吸い込まれ彼女の身体が輝き出す。やがて光が止むと、先程の衣装の1着、ジャージとスカート衣装に変わっていた。

 

 

「服が変わった…? 先輩、一体何をしたのですか?」

「うんうん、千枝ちゃんの衣装も似合うね♪ それにこれならどんなに暴れてもスパッツがあるから見えないし」

キュウフォウキュー(でもスパッツ越しのヒップラインがセクシー)フォーウ(エロい)

 

 

 マシュの姿に満足した様子で頷く優作。そんな彼らの元に呼び出した悪魔達が戻って来た。

 

 

「「サマナー、終わったホー」」

「周囲にはもういないみたいよ?」

「よし、ご苦労さん皆。それじゃあ、ジャックブラザーズは待機、オニとピクシーは一旦戻ってくれ」

「おう、また頼むぜ?」

「じゃあね♪」

 

 

 オニとピクシーを戻し、別の管を出す。

 管からはモンゴルの民族衣装に身を包んだ、長い髪の毛を羽の様に広げ宙を飛ぶ少女が現れる。

 

 

「モーショボー、周辺を偵察してきてくれるかい? 襲撃や狙撃には気を付けて」

「解ったわ」

 

 

 モーショボーと呼ばれた悪魔は優作の指示に頷き、空高く舞い上がっていく。

 モーショボーが偵察している間にマシュの疑問を答えようと口を開こうとした時、腕輪から電子音が響いた。

 

 

「……何か事有る毎に何かに遮られるな…。でもこれってロマンから渡された通信機って事は…」

 

 

 腕輪にはボタンがあり、その1つが光り続けている。優作はそのボタンを押してみるとホログラフが映し出され、ホログラフにはロマニの姿があった。

 

 

【ああ、やっと繋がった! もしもし、此方カルデア管制室だ、聞こえるかい?】

「あぁ、感度良好だよロマン」

「ドクター!」

【マシュ!? マシュなのかい!? それに優作君、僕は避難しろと言ったじゃないか!!】

「済まん、ロマン。どうしてもマシュの事が心配だったから約束を破っちまった。でもこうして彼女は助けられたよ?」

【マシュを? ……そうか、それならこれ以上言わないよ。君は彼女を助けてくれた恩人だ。ところで其処にいるのは君とマシュだけなのかい?】

「こちらAチーム、マシュ・キリエライトです。特異点『F』にシフト完了しました。同伴者は十 優作先輩1名だけで心身共に問題ありません。レイシフト適応及びマスター適応、共に良好。先輩を正式な調査員として登録してください」

【分かったよ…ところでマシュ、その恰好は何だい? いつもの制服とパーカーじゃないし…その盾は…うわっ!? その横にいる変なのはなんなんだ!!?】

 

 

 ロマニに返事をしつつ優作は詫びを入れ、マシュが現状を報告する。そんな彼女の服装についてロマニが質問をしようとした時、彼女の横に現れたジャックブラザーズの姿を見て驚きの声を上げた。

 

 

「ヒホー! 変なのとは失礼なヤツだホー!!」

「そうだホー! オイラ達は『ジャックブラザーズ』、しっかり覚えとけホー!!」

【じゃ、ジャックブラザーズ…? 魔物とは違う構成反応だし…一体何なんだい彼等は?】

「取り敢えずおいちゃんの使い魔と思って構わんよ。因みにマシュの格好はおいちゃんが持ってる衣装を着せたから」

【優作君の持っている服を着せた? それにしては女性物の服…もしかしてコスプレ衣装を着せたのかい?】

「まぁ、かねがね合ってるさね。なんせ、さっきまで余りにもアカン服だったから」

【へ? 制服姿で無かったのかい?】

「こんなのだった」

 

 

 ロマニの変なの発言に異議を申し立てるジャックブラザーズだったが、そんな彼らとマシュの格好に簡単に説明し、レイシフト直後の彼女の格好を取り出したスケッチブックで描き上げてロマニに見せ付ける。

 

 

【描くの早っ!? ……って何だいその衣装は!? ハレンチすぎる! 僕はそんな子に育てた覚えはないぞ!?】

「まぁ、おいちゃんも何でこんな格好だったのか疑問なんだけど…説明してくれる?」

「分かりました。レイシフトの際、私は”デミ・サーヴァント”に変身しました」

「デミ・サーヴァント? 普通のサーヴァントとは違うん?」

【英霊と人間の融合……デミ・サーヴァント。カルデアの6つ目の実験だ……。確かに身体能力、魔力回路、総てが人間のスペックを超えている。しかもエクストラクラスのシールダーだって!?】

「え!? マシュ、英霊と融合しちゃったの!!? フュージョンしたの?!」

「はい。今回の特異点Fの調査と解決の為にカルデアでは事前にサーヴァントを用意していました。そのサーヴァントも先程の爆破でマスターを失い、消滅する運命にありましたが、彼は私に契約を持ちかけて英霊としての能力と宝具を譲り渡す代わりにこの特異点の原因を排除して欲しいと……」

「……で、あの成人向けゲーム宜しくな恰好にされたと? とんだ変態趣味な英霊がいたもんだ」

「ええ!?」

【そうだ、そうだ! いたいけな年頃の女の子にそんなハレンチは服を着せるなんて、許せないぞ!!】

フォウフォーウ(でも可愛さとエロさが際立ってたので)キュウッ(星3つです)

 

 

 デミ・サーヴァントとなったマシュの説明から彼女をあられもない格好にさせた英霊へ2人の非難が浴びせられる。2人に続いて鳴いているフォウは全く関係ない事を言っている気がするが…

 

 

「あ、あの…力を貸してくれた方なのですから余り悪く言わないで欲しい…かな? と」

「いやだってさぁ…女性だったら痴女だし、男だったらとんでもない変態野郎じゃん?」

【優作君の言うとおりだよ、ところでマシュはその力を貸してくれた英霊の正体は知ってるのかい?】

「いえ、力は託してくれたのですが英霊の自我は融合したと同時に消滅してしまい、名前は教えてくれませんでした。ですので、能力や宝具の力も解からずじまいです」

【うぅむ…マシュをハレンチな姿にした挙句、名前も名乗らなかった時点で怪しいとしか言えないなぁ…ザ、ザァ…あれ? 急に通信が乱れ……ザァッ……電力がまだ安定……してないから……】

「おい、大丈夫かロマン?」

【こ…れは、いつ切れるか分か…ザザァ……い…優作君、マ…シュ、そこから2キロ先に霊脈が確認出来た…ザ……君達は其処へ向……て貰いたい。其処なら…ザザ…通信も安定…今座標を送……ザッ…此方も出来るだけ急いで電力を…ブツッ】

 

 

 ロマニが言い切らない内に通信は切れ、ホログラフも消えてしまった。

 

 

「消えちまった…」

「幸いにも座標のデータは無事に送られてきました。霊脈のポイントへ向かいましょう?」

「そうだ…「サマナー!」…お帰りモーショボー」

 

 

 マシュの意見に従い移動を始めようとした時、偵察に出ていたモーショボーが帰って来た。

 

 

「何か見つけたかい?」

「あのね、此処から東の方で骸骨の群れに追われてる女の人を見つけたわ」

「何と!? この焼け野原に生存者が?」

「助けに行きましょう先輩! 丁度霊脈のポイントと同じ方向ですし、情報が得られるかもしれません」

「合点了解さね、ならさっさと移動するゾイ…って事でカモン! 『メタルスラッグ』!!」

 

 

 優作の呼び出す声と共に、戦車が空から降って来た。

 

 

「せ、戦車!? 先輩これは?」

「話は後! ……おいちゃんも話すべき事を後回しにしてるけど、兎に角乗って! ジャックブラザーズは管に戻ってモーショボーは先導してくれ」

「「また呼んでホー」」

「任せて、こっちよ!」

 

 

 戦車の出現に目を丸くするマシュを車内に乗せて、優作はエンジンを起動する。

 

 

「エンジンフルスロットル、さぁ行くぞ!」

フォフォーウ!(パンツァーフォー!)

 

 

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「はぁ、はぁ……何なの、何なのコイツら!? 何だって私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないの!?」

 

 

 燃え盛る街の中、瓦礫散らばる台地をカルデア所長ことオルガマリーは息を切らしながら必死に骸骨の群れから逃げ回っていた。

 カルデアの中央管制室にてファーストオーダーが開始された時、突如の爆発に巻き込まれたかと思えば目を覚ますと燃える街中に1人。途方に暮れていたところに追い討ちを掛けるように骸骨が襲いかかってきた。

 初めこそガンドで撃退していたが、余りにも数が多く撃退しきれず逃げる事に専念したのだが、幾ら逃げても相手は追跡を辞めてくれなかった。

 

 

「もうイヤ、来て、助けてよレフ! 何時だって貴方だけが助けてくれたじゃない! どうして…どうしてなのよ!? どうして…… 何で誰もいないのよ……」

 

 

 オルガマリー・アムニスフィアは常に1人であった。

 先代である父、マリスビリーが亡くなってからは父の遺志を継ぎ懸命に1人努力してきた。

 そんな彼女にとって、レフ・ライノールは特別な存在だった。

 彼女には何時だって彼が側にいてくれて助けてくれた。それは彼に依存してしまう程に…

 しかし、今ここに彼はいない。

 

 

「あうっ!?」

 

 

 彼女は優秀な魔術師ではあったが、肉体的な鍛練など微塵もしていなかった。徐々に走る速度は落ちてきており、更に履いている履物がヒールであったのが拙かった。瓦礫の一部に足を取られて扱けてしまい、立ち上がる前に遂に追い付かれてしまった。

 

 

「い、嫌…死にたくない…」

 

 

 怯えるオルガマリーに骸骨の1体は容赦無く其の手に持った剣を振り被る。が、

 

 

「轢き逃げアタァーック!!」

 

 

 オルガマリーの目の前を戦車が通り過ぎ、剣を振り被っていた骸骨は木っ端微塵に轢き潰された。

 

 

「……へ?」

「くたばれオルルァ!!」

「喰らえ~!」

 

 

 彼女の目の前を通り過ぎた戦車が旋回すると車体横にあるバルカン砲が火を噴いて骸骨達を粉微塵にしていく。更には鳥人らしき魔物が竜巻を巻き起こしてバラバラに吹き飛ばしていくのだ。

 突然の事態にオルガマリーは呆けた声を零してしまった。

 あっと言う間に群れていた骸骨達は消え去り、残るは静寂。焼けたバルカン砲が煙を微かに上げる中、戦車のキューポラが開いて搭乗員が姿を現した。

 

 

「何だ、所長さんじゃないか」

「あ、貴方は…」

 

 

 戦車から降りて駆け寄って来る黒いマントを纏った学生服の青年、管制室でマスター候補達へ行った説明会にて自分の目の前の席で欠伸を十数回もしてみせた男だった。

 しかし、彼に続いて戦車から降りて来た人物が衝撃的だった。

 

 

「マシュ…?」

「オルガマリー所長、ご無事で何よりです」

 

 

 青年に続いて駆け寄って来るのはファーストオーダーに挑むAチームのメンバー、マシュ・キリエライトだった。何故か何時もの制服にパーカー姿で無く、緑を基調としたジャージにスパッツとスカートという姿であったが…

 

 

「な、何でマシュがこの男と一緒にいるの?」

「何でと言われても、マシュと一緒にレイシフトしたからとしか言えないんすけど」

「レイシフトって…貴方はあの時居なかったでしょう?」

「所長、あの時レイシフトの直前に謎の爆発が発生、私は瀕死の重傷を負ったのですが駆け付けた先輩が助けてくれたのです」

「そのまま行き成りレイシフトしちゃってさ、結局マシュ以外の生存者を確認出来なかったさね。所長さんも管制室に居たんだっけ、よく無事だったね?」

「え…」

 

 

 優作の疑問にオルガマリーはふと気付く。自分はあの時どうなったのか…

 

 

「言われてみれば、怪我をしている様子も無いですし所長の服は綺麗なままですね?」

「あの……えぇと…」

 

 

 2人の疑問にオルガマリーは思い返す、“自分はあの時どうなったのか?”

 ファーストオーダー開始の声でレイシフトする為にコフィンに乗り込むマスター候補達。人類を救う為に集められた彼等は、人類を救う為に2004年の地方都市冬木へレイシフトする筈であった。その様子を自分は眺めており、いざレイシフトが開始されようとした瞬間、轟音と共に視界は炎混じりの閃光に潰された。

 最後に感じたのは自身が焼かれ、骨は砕かれ、全身を粉々になっていく瞬間。

 あの時自分は……

 

 

「―――――っ!?」

「所長、大丈夫ですか?」

 

 

 悪夢のような情景を思い出し、オルガマリーは頭を振る。

 アレはきっとレイシフトの影響で起きた記憶障害だ、自分は此処にいて生きている。

 

 

「え? えぇ、大丈夫よ。…残念だけど、如何やって自分がレイシフトしたかは分からないわ」

「ふ~ん、まぁ無事だったしそれで良いんじゃない? それじゃあ、所長さんも連れて霊脈に行くがてらおいちゃんの事とマシュに着せた服について説明していこうかね。盾で殴るだけの戦闘方法なんて危険極まりないし」

「そう言えば、マシュの持っている盾は何なの?」

 

 

 優作の言葉にオルガマリーは改めてマシュが巨大な十字盾を持っている事に気付く。

 

 

「所長。信じがたい事だと思いますが、私はサーヴァントと融合し、デミ・サーヴァントになってしまいました」

「なんですって!?」

「見た目では分からないと思いますが、融合した際に着ていた衣装は…ちょっと露出が多かったので先輩が持っていたモノを貸して頂きました」

「そうなのね……ま、まぁ分かってたわ。サーヴァントとの融合、デミ・サーヴァント。見れば直ぐに判るわ!」

キュウ、フォウフォーウ(嘘付け、絶対分かって無かったゾ)

「言われて気付いたって、ハッキリ分かんだね」

「煩いわね! 大体貴方、何でマスターになっているのよ!? マスターは選ばれた優秀な魔術師しかなれないモノなのよ!! 一体この子に何したの!!?」

「何でって知らんがな、それに優秀な魔術師しかなれないなら所長さんはなれるんか?(返す刃)」

「うぐっ…そ、それは…」

「つーかおいちゃん、マシュのマスターになってんのな?」

「はい、先輩とパスが繋がってます。多分、手の甲に令呪がある筈ですよ?」

「おぉ、本当だ」

 

 

 オルガマリーが詰め寄って来るのを軽く返し、右手の手袋を外して確認すると模様が刻まれていた。

 

 

「そういや、サーヴァントの説明は説明会で聞いたけど、令呪ってどんなモノなの?」

「令呪は契約したサーヴァントへの絶対命令権で3回まで使用可能よ」

「サーヴァントに魔法に近い奇跡の力を発揮させたり、サーヴァント自身の力を高めるブーストスキルなどにも使用出来ます。また、言う事を聞かないサーヴァントに対しては強制的に命令を聞かせる事も可能です」

「強化や奇跡の発動は兎も角…命令を強制させるって……ヤバくない?」

「しょうがないわよ、中にはマスターを裏切ったり殺そうとする反英霊もいるのだから保険が無いと危険よ」

「…世知辛いなぁ」

 

 

 令呪についての説明を終え、優作達はメタルスラッグに乗り込み霊脈のあるポイントへと移動を開始した。途中、骸骨こと竜牙兵と遭遇するがバルカンで粉々にしていく。

 

 

「…こんな戦車如何やって用意したのよ?」

「手持ちから召喚しました。魔術師ってこういう事出来ないの?」

「使い魔の召喚なら兎も角、近代戦車なんて……いえ、ゴーレム召喚をアレンジすれば出来なくない、のかしら…?」

「少なくともこれまで戦車を召喚した魔術師は存在しません」

「そっかー」

「それより先輩、そろそろ先輩の事や私の着ている服について説明をお願いします」

「そうね。この戦車と云い、先導している使い魔といい貴方は一般採用だった筈よ? 何者なの?」

 

 

 マシュの質問にオルガマリーも同意する。近代戦車を召喚するといい、悪魔を使役するといい一般人とはとても言えない。

 

 

「一応は一般ピーポーよ? とある特殊能力持ちだけど」

「特殊能力?」

「“なりきり”とおいちゃんは呼んでる。簡単に説明すると着た服の役職に完全になりきる事が出来るさね」

「なりきる、ですか?」

「例えば医者の服を着たらあらゆる医療行為が出来る様になるし、軍服を着たら兵器を使いこなせる様になるとかね」

「む、無茶苦茶だわ…服を着ただけでその職業にカテゴリーするあらゆる技術を行使出来るというの!?」

「“ある条件”を満たした服でないとなりきる事は出来んけどね。因みにおいちゃんが今着ているのは『デビルサマナー:葛葉 ライドウ』の服」

「デビルサマナー…つまり、その服のお陰で悪魔を使役出来るのですね?」

「そういう事」

 

 

 優作の能力の凄まじさにありえないとブツブツ呟くオルガマリー。条件を満たした服でしかなりきる事は出来ないとは言ったが、もしも魔法行使者が着ていた服を着たのなら魔法すらも行使出来るという事になる。魔術協会に知られたら封印指定待った無しであろう。

 メタルスラッグを走らせる事数分、ロマニが指定した霊脈が存在するポイントに到着しようとしていた。

 

 

「あそこが目的の場所か」

「でも竜牙兵がたむろしてます」

「丁度良いや、マシュの訓練相手としてサンドバックになって貰いましょ。所長さんは戦車の中で待っててね」

「ちょっと!?」

「モーショボー、周囲を警戒しながら所長さんの御守を頼むよ」

「任せて」

 

 

 ポイント手前でメタルスラッグを止め、外からのに出る優作とマシュ。竜牙兵も彼らに気付いたらしく、此方に向かって来ていた。

 

 

「マシュ、用意は良いかい?」

「はい! 頑張ります!!」

「マシュに着せた服は『ペルソナ使い:里中 千枝』と『錬金の戦士:津村 斗貴子』。なりきりはその服の人物の力を発揮する事が出来る」

「でも先輩、私はその2人の事について何も知りません」

「なぁに、力を宿すと頭に情報が流れるからモーマンタイ。まずはメインでインストールした千枝ちゃんの戦い方をイメージしてみて」

「はい」

 

 

 マシュは目を閉じてイメージする、するとローファーだったマシュの履物が重厚な具足へと変化した。

 

 

「先輩、履物が変わりました!」

「千絵ちゃんの戦闘スタイルは蹴り。でもペルソナ使いである彼女の一番の特徴はペルソナ召喚が出来る事だ」

「ペルソナ…ですか?」

「ペルソナとは心の底に潜む”もう1人の自分”が実体化したモノであり、”困難に立ち向かうための人格の鎧”。今回は千枝ちゃんのペルソナではあるけど、マシュはなりきりによって彼女のペルソナを問題無く使えるから試してみて」

「分かりました…」

 

 

 再び意識を集中して里中 千枝のペルソナをイメージする。

 

 

「来てっ、『トモエ』!!」

 

 

 目の前に現れた青いカードを回し蹴りで砕いた瞬間、マシュの背後にペルソナが顕現する。

 トモエと呼ばれたペルソナは黄色いトラックスーツで身を固め、烏帽子を模した白いフルフェイスヘルメットから長く黒い髪が零れている。そしてその手には薙刀が得物として握られていた。

 トモエが薙刀を前に突き出すと、近寄って来ていた竜牙兵達を氷漬けにした。

 

 

「や、やった…やりました先輩っ!!」

「お見事! 後は慣れだ、やったれマシュ!」

「はいっ!! マシュ・キリエライト、突貫します!!」

 

 

 サムズアップする優作に見送られながらマシュ氷漬けになり動けなくなった竜牙兵達に突撃する。走った勢いを使い、目の前の1体を飛び蹴りで砕く。

 

 

「やあっ!!」

 

 

 十字盾を横に構えて切り裂く形で固まっていた3体を引き裂き、それにより発生した遠心力で更に別の1体を回し蹴りで砕く。

 

 

「もう一度お願いします、トモエ!!」

 

 

 離れていた為に氷漬けにならなかった数体の竜牙兵がマシュへ近付いていたが、トモエを呼び出し薙刀の一閃でバラバラに吹き飛ばす。

 

 

「これで最後です!!」

 

 

 最後の1体を前にマシュは高く跳躍し、その頭上に踵落としをお見舞いした。落下速度に手持ちの十字盾の重さも加わった一撃は竜牙兵の頭蓋骨を木っ端微塵に粉砕し、そのまま真っ二つに切り裂いた。

 

 

「敵性生物の全滅を確認、戦闘終了です♪」

 

 

 最後にバク宙を華麗に決めてみせたマシュに優作は拍手を送った。




登場人物
マシュ・キリエライト
本作ヒロイン? 兼魔改造候補。
出自及び設定は原作と変わらず、優作というカルデア内に居なかった存在に興味を抱く。
中央管制室の爆破に巻き込まれて瀕死の重傷を負うが、優作の手によって完治。レイシフト時にデミ・サーヴァント化し、彼をマスターにした。
なりきり能力を持つ優作の強さに驚きながらも彼を守れる様に奮闘する。
多分本作では彼女が一番魔改造されると思う。


元ネタ
>ジャックフロスト ジャックランタン オニ ピクシー モーショボー
アトラス作品の『女神転生シリーズ』、『デビルサマナーシリーズ』、『ペルソナシリーズ』に登場する悪魔。
この作品における悪魔は一神教のそれでは無く、超自然的な存在の総称であり、その分類は精霊や妖精、英雄や神など多岐に渡っている。

>里中 千枝(出典:ペルソナ4)
アトラスのRPGゲーム『ペルソナ4』に登場するペルソナ使い兼主人公の彼女候補。
靴や具足を用いた蹴りが武器であり、扱うペルソナ『トモエ』は攻撃と速度に特化している。
肉が大好物でカンフーマニアだったりと女らしく無い事を悩んでいるが、作者的にはめっちゃ可愛いと思う。
尚、この作品では敵がダウンすると仲間が追撃をするシステムがあり、彼女の場合ダウンした敵を蹴っ飛ばして星にする。つまり相手は死ぬ(強い)

>津村 斗貴子
次話で紹介

>メタルスラッグ(出典:メタルスラッグシリーズ)
SNK(旧社)の横スクロール型アクションシューティングゲームの『メタルスラッグシリーズ』に登場する1人乗りの高性能小型戦車。
武器はキャノン砲と2門のバルカン砲で、高性能と言われるだけあってジャンプや砲塔部分の下降も可能。また、険しい地形に対しての踏破性も高く、崖の縁であっても登ることが出来る。
本作では優作の空間拡張の魔改造により大きさは変わらないものの、最大3人まで乗れる内装になっている。

>葛葉ライドウ(出典:葛葉ライドウシリーズ)
アトラスのRPGゲーム『デビルサマナー葛葉ライドウシリーズ』の主人公。
「大正20年」という架空の時代の帝都・東京を舞台にし、悪魔召喚師・14代目の彼が帝都守護の任を請け負い、表向きは探偵見習いの学生として暮らしつつ、裏の顔はデビルサマナーとして悪魔の関わる怪事件を解決していく。
因みに彼は刀で巨大戦艦をぶった斬ります(強い)
本作では魔改造によって使役する仲魔が他アトラス作品登場の悪魔も含まれている。


Q、本作で主人公君とロマニが某騎士を非難しまくってるけど、作者は嫌いなの?
A、知り合いの女の子がいきなりあんな衣装にされたら鼻を伸ばす前にドン引くやろ?

Q、何でマシュに千枝ちゃんとつむりんの服を着せたの?
A、似合うと思ったから(だから誰か千枝ちゃんコスのマシュを描いてください)

Q、何で主人公君はライドウの服を着てるのにメタスラ出してんの?
A、重ね掛けでライドウの服以外にメタスラキャラの力を宿してるから。

Q、“重ね掛け”って何?
A、本作のオリジナル要素。基本1着の服しかなりきる事が出来ないが、重ね掛け出来る者はメインの服に更に別の服の力を宿す事が出来る。FFTシリーズのメインアビリティとサブアビリティみたいな感じ。


次話は執筆が捗ったので明日9月9日投稿
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