フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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決戦前のスカウト回ですが、字数が15000字突破したので分割。

今回はリヨン防衛後の夜会話及び、ドラ娘スカウト(エリちゃん回)
そして捕らえていた彼女を…?

後、独自解釈注意。


願いを知る

「オルレアンで妙な反応があった?」

【うん、強大な魔力反応と共にジル・ド・レェとジャンヌ・オルタからは霊基の反応が一瞬変質したのが観測されたんだ】

「強大って事は…ファヴニールクラスの奴でも召喚したん?」

【サーヴァントやワイバーンを召喚する時の反応に近かかったんだけど、測定された魔力値が数倍以上のモノだった。優作君の言う通り、ファヴニールクラスと考えておかしくないよ】

「ほむ…そりゃあ、戦力をゴッソリ削ってやったんだし、補充はするだろうさな。それに…霊基の変質か…ロマン、反応とやらが起きた時間は?」

【ジャンヌ・オルタ達がオルレアンへ撤退後、1時間位の頃だよ】

「うぅむ…」

 

 

 夜、ジル達と明日オルレアンへ攻め込む計画を立てた後で優作はロマニにモニタリングしているオルレアンの様子や明日の予定を話し合おうと思っていたのだが、そこへ街の住人達が料理やら酒を持って挙って集まってきた。

 当然ながら、ラ・シャリテの時と同じ様に優作達は街を救ってくれた英雄である。況してや前回と比べて敵はファヴニールやモンスターの軍勢を引き攣れた総力戦を挑んできており、それを打ち負かしたのだ。

 街の住人達にとっては正に救世主である。

 酒を酌み交わしながら料理を楽しみ、歌って、踊って、笑い合う。皆で盛り上がり、解散となったのが夜の10時頃である。

 

 

「オルレアンからリヨンに向けてなんか変な反応とか無かった?」

【う~ん、調べた限りじゃ反応は確認はされなかったけど、何かあったのかい?】

「おいちゃん自身が何かに集中して見られた様な感覚があったんべ」

 

 

 優作の言葉通り、リヨン防衛に成功後住民達から感謝の言葉と共に迎えられていた時に自身の全身を舐め回すような嫌な気配を感じた。

 が、そこは優作。バトルモノのサブカルチャーに於いて洗脳や魂干渉と云ったネタは是迄多くの作品で扱われている為にそういった対策を取っていない筈が無い。

 

 

【見られた? …監視されたって事かい?】

「正直視線的な感覚だったんけど、若しかしたらおいちゃんに干渉しようとしてたかもしれぬ」

【優作君はそういった対策は取っているんだったよね?】

「せやで。だけんど、飽く迄も干渉を防ぐだけでそういった干渉の内容を調べる術式は設定していなかったさね…」

 

 

 前もって干渉等の攻撃を防ぐ対策は取っていたが、攻撃の内容を知る手段を用意していなかった。更に追加するなら今回、優作が着ている衣装自体には干渉対策を施して無く、優作本人が着ている状態で干渉された為に詳しい干渉対象を確認出来なかったのである。

 そのツケは明日に理解するのであるが…

 

 

「何にせよ、おいちゃんの準備不足さね。でも、もしもカルデアの方で何か分かった事があったら改めて報告してな?」

【解かった。新たな事が分かり次第、また連絡するよ】

 

 

 優作の謝罪にロマニが返事をして連絡は切れた。

 通信が終わり、一息吐く優作の元にジャンヌが現れた。

 

 

「優作さん」

「お~、ジャンヌちゃん。如何したん?」

「いえ、一人で夜空を眺めていたので気になって」

「ん、ロマンと話をしてたとこっさ」

「ロマニさんとですか?」

 

 

 ジャンヌの問いに通信機である腕輪を指さしながら答える優作。

 

 

「明日は最終決戦になるだろうしさ、色々打ち合わせをね?」

「なんだかんだで優作さんはしっかりしているんですね?」

「なんじゃそりゃ? おいちゃん、頼りなく見えるん?」

「くすっ、先程迄の宴会で一番騒いでいたのは優作さんですよ?」

「ん~、これでもおいちゃんはやる時はやる男だべよ?」

 

 

 明日への備えをしていた事にジャンヌが意外そうな言葉を告げたので優作が抗議の声を挙げるが、彼女は笑いながら一番ハメを外していたのが彼だったと告げる。それを受けて優作は困った様子ながらも反論してみせる。

 実際、優作は街の人々と関わりながらも一番酒を飲んでいた人物だった。

 

 

「皆が笑顔で笑っていました、私ではあんな事は出来ません…」

「なんじゃい、おいちゃんを揶揄った後で褒めるんか?」

「ふふっ、優作さんの歌はとても素敵でしたよ?」

「そりゃあね。歌う事はおいちゃんの趣味の一つさかい、人前で恥ずかしくないレベルで鍛えた練習してるさかいな」

 

 

 テンションアゲアゲだった優作は大いに飲み、笑い、騒ぎ、歌って周りを盛り上がらせ、挙句にはアマデウスとセッションしながら歌ってみせ、周囲を大いに沸かせた。

 彼の周りは…否、集まった人々は笑顔で笑い、喜び、同じく騒いだのだった。

 

 

「…優作さん、有難う御座います」

「うん?」

「優作さん達の御蔭で多くの人を護る事が出来ました……私だけでは如何する事も出来なかった…」

 

 

 ジャンヌが優作へと頭を下げながら礼を言う。頭を上げた彼女の表情は少し悔しそうな、悲しそうな表情が浮かんでいた。

 

 

「あの時にクーフーリンさんやロマニさんが言った通り、無謀でした。私一人で立ち向かったところでワイバーンに喰い殺されるか、住民達に因って火炙りの二の舞…「は~い、ネガティブ禁止~」…ふぇ…ゆうひゃくひゃん!?」

 

 

 ジャンヌの言葉を遮って彼女の両頬を詰まんで引っ張り上げる優作。

 

 

「“もしも”の事なんて考えても良い事無いっしょ? こうしてジャンヌちゃんはおいちゃん達と共に街を護れたんだし、ね?」

「優作さん…」

「そもそも、自分の偽物が暴れているせいで味方がいない上に不完全召喚でステが底辺な状態で国を救えとか無理ゲーにも程があんべ。こんなのが神の試練とか宣ったら、おいちゃんはその神を殴りに行かにゃならん」

「優作さん…それは流石に不敬ですよ?」

「別においちゃん、いえっさは尊敬するけんど唯一神は信じてないもんよ~」

「もう…ふふっ」

 

 

 優作の言葉にジャンヌが少し怒った様に咎めるが彼は何処の吹く風。そんな彼の仕草に彼女は軽い怒りは消え失せて笑い出した。

 

 

「んお、漸く笑った」

「え?」

「ジャンヌちゃん、宴の席でもそこまで笑ってなかったっしょ?」

「そう…でしょうか?」

「出会った時から思ってたけんど、ジャンヌちゃんは気を張り詰め過ぎやで?」

 

 

 ジャンヌの笑みに優作も笑みを浮かべる。

 

 

「気楽にいこうなんてそうそう言えたモノじゃないけどさ? 此処の異変を解決してもまだまだ異変が起きた国があるんだし、先は長いっさ。締める時は締める、緩めれる時は緩めるでいかにゃ疲れちゃうよ?」

「気を張り詰め過ぎてますか?」

「英霊としてだけど、こうして蘇ったんだ。云わば第2の人生を送れる訳なんだし、今迄やれなかった事をしたり新しい事とかしていこうや?」

「やれなかった事…ですか…」

 

 

 英雄は大半が寿命を迎える事無く亡くなっている者が多い。況してや、戦時の英雄はその人生の大半を戦いに使い、真面な青春など送る事は出来ていないだろう。

 当時無かった事を体験したり、過ごす事が出来なかった日々を送って欲しいと優作は考えていた。

 

 

「人生楽しまなきゃつまらんよ? まぁ、ジャンヌちゃんやマル姐みたいな敬虔な信徒は信仰が全てかもしれんけど…」

「そうでもありませんよ? 確かに主様を信仰する事を大事にしていますが、羊を追い掛けて遊んだり、訪れた街や村の方々と笑い話をしたりしてました」

「そう? でもおいちゃんの時代、もっと色々出来る事が増えているさかい、遣りたい事を見付ければ良いさね」

 

 

 暫くは雑談を続けていた優作達。

 優作が主体で話していたのだが、ジャンヌが意を決した表情で優作に問い掛けてきた。

 

 

「優作さん…」

「何?」

「もう一人の私を…救う事は出来ないでしょうか?」

「ほぅ?」

 

 

 ジャンヌがジャンヌ・オルタを救いたいと云う言葉に優作は意外そうな声で返事する。

 

 

「あの時、ジルから彼女を生み出した理由は聞けませんでした。でも、もしも彼の復讐の…復讐の為だけに生み出されたのならば…余りにも救いが無い」

「………」

「私は…彼女を救いたい」

(救うか…ジャンヌちゃんのレプリカとして生み出れた存在…漫画やゲームだけで十分だっての、そんな展開は…)

 

 

 ジルによって生み出されたジャンヌ・オルタ。ジル本人から理由を聞いていない以上、彼女がどんな理由で生み出されたかは不明だが、彼の復讐を賛同してくれる神輿として生み出された可能性は高い。

 

 

「…敵のボスと思われた人物が幹部に因って生み出された存在で主人公達が助けるってのは創作物じゃあ見かけるネタさね…良いんじゃない?」

「! じゃあっ」

「ジャンヌちゃんの妹みたいなもんだし、助けない選択は無いさね」

「優作さん…有難う御座います」

「礼は助けてからやで?」

 

 

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翌朝

 

 

「それでは、ジルさん。先に送ります」

「うむ、任せたまえ」

「先に仕掛けないでくださいよ?」

「安心したまえ、一番の戦力が君達なのだ。無茶はしないよ」

 

 

 優作が巨大なゲートウェイを開き、ジルが率いる軍勢がゲートを潜ってオルレアンへと向かっていく。リヨンの住民達に見送られながら軍勢がオルレアンへと向かった事を確認すると共に優作は新たなゲートウェイを開く。

 

 

「それじゃあ、おいちゃん達も行きますか」

「先ずは何方に?」

「ティエールやね。角を生やした少女が滞在している街なんやけど、何かゴタゴタが起きているって連絡が来たから先にいくべ」

 

 

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 ティエールを訪れた優作達が目にしたのは街の中央から立ち昇る火柱であった。

 

 

「な、何事!?」

「おぉ、サマナー。丁度良かった…」

 

 

 すわ、襲撃かと驚く優作達の元にティエールを守護していた白のマネキンに羽と天使の輪を付けた様な大天使『クシエル』が困った様子で現れた。

 

 

「クシエル、アレ何なん?」

「この街に滞在しているサーヴァント達なのですが、喧嘩を続けていまして…」

「は?」

 

 

 困惑した声を漏らす優作達一同にクシエルが説明をする。

 何でもこの街は元々1名だけいたのだが、竜の魔女が率いていたあるサーヴァントを追って、村や街を転々としていたもうサーヴァントが訪れてからずっと喧嘩を続けているのだという。

 クシエルがこの街に着いた時からこの状況は続いており、街の住民にとってはワイバーンを撃退してくれるので有難いながらも、喧嘩を続けているので迷惑な存在として参っていたという。

 クシエル自身も説得を試みたのだが、糠に釘な結果に終わっており、ほとほと困っていた。

 

 

「街に被害は?」

「住民達へ飛び火は無いのですが…喧嘩をしている中央の広場は酷い有様で…」

「な~る、取り敢えずはその面を拝みに行きますか」

 

 

 クシエルに案内され街の中央広場へと向かう優作一行。

 そこで待ち受けていたのは…

 

 

「このっ! このこのこのこのぉ―――っ!! 好い加減目障りなのよ、アンタはぁ!!」

「うふふ、目障りなのは一体どちらでしょう? 貴女の様な駄竜如きが真の竜たる私に勝てるとお思いで? ねぇ、エリザベートさん?」

 

 

 コケティッシュなフリルドレスで着飾った桃色ツインテールの少女が無数の連突を手に持つ槍から放ち、それを長い銀髪の和服少女が扇子で軽くいなしながら火炎で反撃している。

 罵倒と挑発を互いに繰り返しながらぶつかり合っている2人だが、特徴的なのは2人共頭から角を生やしている事だった。尚、ドレス姿の少女はスカートから尻尾らしきモノも伸びている。

 

 

「うぅぅう――――っ、極東のド田舎リスの癖してムカつくったらありゃしないっ!! カーミラの前にアンタを叩き潰してやるぅ、このドロッドロのド変態ストーカーッ!!」

「ストーカーではありません、言うならば“献身的ながらも精密性を持った、隠密的な後方警備”です。この清姫、愛に生きてます故にこの程度出来て当たり前なのです」

「はっ! 何が献身的な後方警備よ!? 人様の領域にズカズカと勝手に足を踏み入れている人権侵害の蛇女!」

「拷問の挙句に血を浴びていた傾倒性癖で精神異常者の変態には言われたくありませんね、この拷問フェチ?」

 

 

 売り言葉に買い言葉、挑発、罵倒を口から放ちながら2人は暴れ続けている。お陰様で石畳の床は砕け、近くで生えていたであろう木々は根元から圧し折れているか炭となっており、中央の噴水こそ、無事ではあるが、所々罅が生えていて何時砕けてもおかしくなかった。

 

 

「…なぁにこれぇ?」

「この通り、朝から日暮れまでずっとこの調子です」

「い、一日中喧嘩しているんですか…?」

 

 

 困惑を超えた声を漏らす優作にクシエルも肩をすくめて目の前の様子を説明する。暴言と共に武器のぶつかり合う音や火炎が炸裂する音、ドレス衣装の少女からは何故か鼓膜を突き破りかねないキンキンな金切り声のデスボイスが放たれている。

 この地獄絵図が朝から夕暮れ迄行われている事にジャンヌが呆れた様子の言葉を零す。

 

 

「キィ―――――ッ!! 拷問フェチですってぇ!? このアオダイショウ!!」

「おやおや、図星を指されて悔しいですかぁ? このエリマキトカゲッ!」

「ヤマカガシの癖にぃっ! アンタは絶対に串刺しにして、ホルマリンの中に漬け込んでやるから―――!!」

「はっ、小娘が! ならこの化生の火焔が、ヤモリ娘を返り討ちにた末に焼き滅ぼしてあげましょうっ!!」

「何ですってぇ――――っ!?」

 

 

 互いに沸点やら煽り耐性が無いのか暴言のドッジボールと攻撃を繰り返す両者に皆が呆れ顔になる中、アマデウスが両耳を押えながら苦しそうに優作へ助けを求めた。

 

 

「う~ん、凄い様に見えてしょうもねぇ争いだ…」

「ゆ、優作…そろそろ何とかしてくれないかい? あの槍娘の声で耳が腐る処か爆発四散しそうだ…」

「せやね、取り敢えずあの騒音槍娘にゃ聴かにゃならん事があるし…っつうか、何で同一人物が異なる年齢でいるの? コレアリ?」

 

 

 音楽の才能に溢れるアマデウスの耳では常人でも長居したくないこの騒音現場は拷問レベル苦痛であり、その耳を抑えても尚辛い様子だ。

 和服の少女も言ったが、スカウター越しに表示されたドレスを着た少女の真名は『エリザベート・バートリー』。ラ・シャリテにて密封した筈のカーミラが若い姿? で目の前にいるのだ、疑問を浮かべない筈が無い。

 

 

【多分だけど、ラ・シャリテで遭遇したエリザベート・バートリーはカーミラとして識別されていた事から彼女の所業から吸血鬼扱いを受けた存在だったんだろう。彼女のスキルに吸血鬼が埋め込まれていたのが関係していると思うよ?】

「って事は目の前の奴は吸血鬼化してない存在かいな?」

【そうだと思うよ?】

「潰す! ゼッタイに潰してやるっ! ナンバーワンはアタシだぁっ!!」

「ふふふふふ…消し炭にして差し上げましょう、シャアアアアァァァアッ!!」

 

 

 ロマニから説明を受けて納得する優作。しかし、話を聞く為にはこの馬鹿馬鹿しい喧嘩を止めなければならない。因みに、和服少女の方は和歌山伝承の『安珍清姫伝説』で有名な清姫本人であった。

 優作は懐から2丁のランチャーを取り出した。ラ・シャリテにてジャンヌ・オルタの顔面にぶっ放して彼女を泣かせた水鉄砲、インパルスだ。

 

 

「ヒャッハー! ダイナミックエントリィィィィィィイイイイイイッ!!」

 

 

 ゲス顔ダブルインパルスな状態で優作は高く飛びあがり、無駄に綺麗に回転を決めながら喧嘩する両者の横に着地した。

 

 

「なぁっ!?」

「はぇっ?!」

 

 

 突然の乱入者に手を止める両者。

 しかし、優作は既に彼女達の顔面へインパルスの咆哮を向けていた。

 

 

「喧嘩両成敗っ!!」

「はぶぅっ!?」

「ほぶしっ!?」

 

 

 インパルスから放たれる高圧縮の水鉄砲は少女達の顔面を直撃。ラ・シャリテにてジャンヌ・オルタを吹き飛ばした様をまんま再現し、2人共回転しながら宙を舞う。

 クルクル回りながら2人の少女達は噴水の溜池へと綺麗にダイブした。

 

 

「ナイスショットォ!」

 

 

 2丁のインパルスを構えながら器用にガッツポーズを決める優作。暫く犬神家状態で頭から池に突っ込んでいた2人であったが、溜池の水面から気泡がブクブクと溢れ出し、顔を水面から出すと叫び声を挙げた。

 

 

「「いきなり何すんのよぉ(するんですか)!?」」

「え? 街で喧嘩を続けて住民に迷惑かけてる輩がいると聞いたんで頭を冷やしてやろうかと」

「余計なお世話よ、子ジカ! ってか顔がヒリヒリして痛いんだけど!?」

「喧嘩を売ってるのですか? 隣のイグアナ娘より先に燃やしますよ?」

 

 

 溜池から上がって来るも、びしょ濡れ状態の2人。

 

 

「誰がイグアナよ!? この白蛇女っ! でもアンタの考えには賛成ね…びしょ濡れにしてくれたお礼はしてやらないと」

「貴女の事ですよ、赤トカゲ? しかし、理解して貰えるとは喜ばしいですね」

 

 

 互いに槍と扇子を構えて優作へと敵意を飛ばす2人。

 

 

「ほむ、おにゃのこを濡れ鼠の儘にしているのはアカンか…それっ」

「「はぇ!?」」

 

 

 2人の姿に優作は指をスナップさせると濡れていた筈の衣服や髪の毛が忽ち乾いてしまった。

 

 

「服があっという間に…」

「こ、こんなので許してもらえると思ってないでしょうね?」

「別にバトルしても良いんやけど、こっちは時間が無いさかいな。それに…」

 

 

 優作の行動に困惑する2人だったが、彼が自身の背後に立つメンバーに指を向けながら問い掛ける。

 その数15名とフォウ1匹及びチョコボ4羽と天使1体、2人が武器を構えたので応戦すべく皆が構えている。

 

 

「喧嘩売るなら、おいちゃんの連れ全員纏めて相手する事になるべ?」

「「……………迷惑掛けて御免なさい」」

「理解が速い子は好感持てるで?」

 

 

 絶望的な戦力差に頭が冷えた2人は素直に謝り、優作は笑みを浮かべる。

 

 

「まぁ、遣り過ぎた事に関してにゃ謝るべ。こっちはおまいさん達をスカウトに来たのが目的さかい」

「え? スカウト!? アタシのアイドルデビューの第一歩目到来っ!?」

「あ、アイドル…?」

 

 

 優作のスカウト発言に目を輝かせる槍娘こと、エリザベート・バートリーに優の顔が引き攣る。演技でも無い本心を現した表情に困惑の声が漏れた。

 

 

「え、何? オタク、アイドル志望なん?」

「アタシはサーヴァントきってのトップアイドルよ! ……デビューした訳じゃ無いけど」

「ふふふ。それでよくもまぁ、トップアイドルなんて堂々と言えますね?」

「うるさいわね! こうしてスカウトが来たのだから一気に駆け上がるわよっ!!」

 

 

 清姫の言葉に噛みつくエリザだったが、優作は困惑した表情を浮かべたままであった。

 彼にとってエリザベート・バートリーは格下の者を甚振る事に快感を覚え、果ては若さを保つ為に拷問の果てに数多くの命を奪った異常者であると認識している。

 サーヴァントは全盛期の姿で召喚されるので若かい姿であるのが殆どらしいが、それでもその命を終える迄の人生を記憶しており、その性格や本性も変わっている訳では無い。

 クシエルの話ではエリザベートの方も街にワイバーンが襲撃して来た際に迎撃を行っていたと言う。カーミラとして敵対した存在と同存在である彼女がそのような事をするのが不思議であった。

 

 

「スカウト目的で来たが、おまいさんには一つ聞きたい事がある」

「あら、何かしら? 3サイズは教えないわよ?」

「んなもん、如何でも良いわ! おまいさんが如何してフランスの民を護る側にいる?」

「………」

「おいちゃんが知る限り、エリザベート・バートリーと云う人物は拷問で他者を甚振って殺す快楽殺人鬼さね。ならば、おまいさんは竜の魔女の陣営に就いて、殺戮の限りを尽くすと思ったんやけどね?」

「……ぐうの音も無いわね、確かにアタシの生前の所業はアンタの言った通りよ。…理由の一つはもう一人のアタシが竜の魔女側にいるから。アイツはアタシが倒さなきゃ気が済まない」

 

 

 未来の姿であるカーミラを倒す為にジャンヌ・オルタ陣営と敵対していると答えるエリザベート。確かに、ワイバーンと共に村や街を襲撃していた彼女達に会いたいならば、敵対していれば何時か会えるであろう。

 

 

「カーミラを探して転々としてたんか?」

「アンタ、カーミラを知っているの!?」

「知ってるも何も、おいちゃんが密封したわ」

「へ? みっぷう?」

「ほれ」

 

 

 カーミラの単語に食い付いたエリザベートに優作が彼女の末路を説明しながら封じた十字架を見せる。

 

 

「…そ、それにカーミラが?」

「せやで。つぅか、倒したいのは何故や?」

「…コイツはアタシの罪の象徴、幾人もの人々を拷問の果てに殺し、その血を浴び続けた逸話から吸血鬼として名を遺した。『血の伯爵夫人』としてね…」

 

 

 カーミラが封じられた十字架を前にして複雑そうな表情を浮かべながらもエリザベートは説明を続ける。

 

 

「コイツは変わり果てたアタシ、そして罪の結晶。目を背けてはならない真実であり、向き合わないといけない存在なの。だからアタシはコイツの不始末を止める為に動いてた」

 

 

 エリザベートの言葉に優作は目を見開く。

 自身の思っていた人物像とまるで違うのだ、彼女は自身の行いを理解、後悔し、そして向き合おうとしている。

 

 

「…それで、他の理由は?」

「……信じないかもしれないけど、アタシは別の時代で行われた聖杯戦争に召喚された事があるの。まぁ、その時に色々あってね? その時に思う事があったし、こうして覚えているから竜の魔女達…未来のアタシみたいな事はしたくないだけよ」

【マスター、彼女の言葉は本当だ。私もその聖杯戦争に呼ばれて彼女を見て、話を聞いている】

「………」

 

 

 彼女の言葉に嘘は見られない。クーフーリン達が並行世界での聖杯戦争を覚えているのだから彼女もまた別の聖杯戦争に呼ばれたのだろうし、エミヤから彼女の言葉を肯定する念話が届く。その時の体験が彼女に影響を与えたのだとしたら、彼女の過去の所業とカーミラの言動でしか彼女の人物像を掴めていない自分では彼女の本質は解からない。

 

 

「…アイドルはスキャンダル一つでも致命的だが、おまいさんは自身が行った所業を理解しながらもアイドルを目指すんか?」

「目指すわ。どんなに後ろ指を指されて罵倒されても、自らの罪を背負いながらでもアタシはアイドルになりたい。だってアタシは他の誰かにアタシ自身の歌を届けたいと決めたから…」

「……こりゃ参ったね、確認せにゃならん」

「確認?」

 

 

 エリザベートの言葉に優作はカーミラの本心を聞きださなければならないと理解する。

 元が人格破綻者ならば狂化が付与されても大して変わらないかと思っていたが、彼女達が同一人物ならば本質に大きな違いは無い筈である。

 

 

「メディ姉、聞こえる?」

【聞こえているわ、私の力が必要?】

「カーミラのパスを解除して欲しいっさ」

【あら? 特異点攻略後に吸血鬼対策のサンプルにするつもりだったのではなかったの?】

「若い姿の彼女の話を聞いたら、如何しても問い質さんといかん事が出来たさね。サンプルにするかは答えを聞いてからだべ」

【分かったわ、今向かうから】

 

 

 カルデアで待機しているメディアに連絡し、狂化解除と回復用のデスペルの薬とエリクサーを用意する優作。そこへエリザベートがおずおずと尋ねてきた。

 

 

「ねぇ、サンプルって聞こえたんだけど…未来のアタシを如何するつもりだったの…?」

「今後、吸血鬼が敵として現れた際に確殺出来る様に血やら細胞片やら採取して色々調べようと考えていたさね」

「解剖する訳では無いのね…」

「そこまでスプラッタな事はせんわ…と、来た来た」

 

 

 優作の答えに安堵した様子のエリザベート。

 そこへカルデアからメディアが召喚されて現れる。

 

 

「そんじゃメディ姉、頼んます」

「はいはい、破戒せる全ての符(ルールブレイカー)!」

 

 

 優作が密封状態を解除すると同時にデスペルの薬とエリクサーを掛け、姿を現したカーミラの胸元へとメディアが短剣を突き立てる。

 密封解除で放たれた赤い輝きが消えると、呆けた様子で座るカーミラの姿があった。

 

 

「うぐぅっ……こ、ここは…?」

「よぅ、2日ぶり」

「ヒィッ!?」

 

 

 何が起きたのか判らない様子のカーミラに優作が声を掛けると怯えた声で後退ろうとするが、周りを皆が囲んでいる為にそれは叶わない。

 優作に対する恐怖や囲まれている焦りで頭が一杯になっていたカーミラであったが、ふと自身の様子に気付く。

 

 

「…? パスと狂化が消えている?」

「おまいさんの密封を解除すると共にそれらも消した」

「…どう…して?」

「聞きたい事があるさね」

「聞きたい…事?」

 

 

 困惑した声を漏らすカーミラに優作が答えながら尋ねる。

 

 

「おまいさんの望みって何なん?」

「望みですって…?」

「おまいさんが何を望んで英霊の座に居ついたか、それが知りたい」

「……そんな事を知るが為に態々開放した上でパス云々を解除したというの…?」

 

 

 優作の質問に怪訝そうな声を零すカーミラ。

 

 

「…私は反英霊よ。ヒトを、血を、何もかもを呑み込む存在、ラ・シャリテで貴方が言って通り、私の…そこの過去の姿をした私を含めて行ってきた所業を知っているのでしょう?」

「まぁね。血塗られた所業が吸血鬼のスキルとなり、カーミラとしておまいさんの姿を作ったんやろ?」

「そう…私の望みは若さを保ち続ける為に血を啜り続ける事。其の為なら万物すら呑み込んでいくわ」

「………」

「殺しなさい、異邦人のマスター。私は血を啜るバケモノ、その望みも人間には受け入れられる事の無い存在なのだから…」

 

 

 仮面を着けている事からその表情を伺う事は出来ないが、何もかもを諦めている…そう感じる声と言葉。

 確かに吸血鬼らしい願いではある……が、聞きたい事はそれ(・・)では無い。

 

 

「はぁ…おいちゃんは望みを聞いたんやけどな?」

「何を言っているの? 今言った…「これ邪魔」…っな!?」

 

 

 優作が彼女が着けていた仮面を奪い取る。仮面を外されカーミラの素顔が露わとなった。

 

 

「如何なったらあっちの若い頃の姿からこうなるんか疑問でしかないけんど…綺麗な顔やね。モデルするのにピッタリだわさ」

「か、返してっ!」

「やなこった」

 

 

 奪われた仮面を取り戻そうと腕を伸ばすが、届かない高さに仮面を掴む手を上げる優作。最後には仮面を放り投げて、仮面は噴水の溜池へと落ちていった。

 

 

「もう一度聞くべ、おまいさんの望みは?」

「さっき言ったでしょう!? 私は全てを…「おまいさん、エリザベート・バートリー自身が心から望んでいる事は何だ!!?」…っ!?」

 

 

 優作の問い掛けに答えは変わらないと返そうとするカーミラの言葉に声を荒げながら遮る。

 

 

「女性なら永遠の若さを求めるのは解かる、でもそうじゃない! おまいさんが、その命終える時に抱いていた、後悔の先にあった願いを聞いている!!」

「私の…後悔……そんなの…願いなんて変わらない…「あぁ~っ!! じれったいっ!!」…ヒッ!?」

 

 

 優作の荒げた問い掛けに動揺しながらも尚、同じ返事をしようとするカーミラに優作は自身の衣装をクラウスの服へと切り替えながら拳を振り上げた。

 ラ・シャリテでのトラウマが蘇り、小さな悲鳴を上げるカーミラ。優作はそのまま拳を彼女の目の前の床へと叩き付けてから言葉を続ける。

 

 

「ならおまいさんは! 化物として最後は再び閉じ込めらて死ぬ事を望んでいるんか!?」

「!? …い、嫌…」

 

 

 若干、脅しが混ぜた優作の言葉にカーミラは怯えた声を漏らす。

 カーミラこと、エリザベート・バートリーの最後は扉と窓を漆喰で塗り塞いだチェイテ城の自身の寝室での孤独死であった。彼女自身が高貴な家系であった為に死刑に出来ないゆえの処置であったが、本来は死刑に処せられるべき重罪人である事を示す為に城の屋上には絞首台が設置されたという。

 1日1回食物を差し入れる為の僅かな小窓だけを残し、扉も窓もすべて厳重に塗り塞がれた暗黒の寝室の中で彼女は過ごし、1614年8月21日に食物の差し入れ用の小窓から寝室を覗いた監視係の兵士に依って彼女がひっそりと死亡している事が確認された。

 3年半もの間、暗闇の中で生きていた彼女の心境は本人しか分からない。だが、他者との触れ合いや刺激すら無い漆黒の闇の中で3年半も生き続けたその軌跡は普通に発狂しかねない状況であるのは確かだ。

 そして暗闇の中で願った事は…

 

 

「もう、嫌なの…光が届かない暗闇の中で独りぼっちなのは…独り孤独に朽ち果てるのは…嫌…嫌なの…」

「………」

「どんなに蔑まれても良い、それだけの事をしてしまったのだから……でも、それでも私はもう独りでいるのは嫌…」

「アンタ…」

「…何だよ、ちゃんとあるじゃん」

 

 

 カーミラが零していく本音に同存在であるエリザベートは複雑そうな表情をしている。

 2人共本質は同じ、エリザベートとして召喚された方は新たな願いを抱き、その罪を背負いながらも進もうとし、カーミラはその罪にを受け入れながらも救われる事を半場諦めていた。

 

 

「おいちゃんは裁定者じゃないし、多くの命を奪った事に関してどうすれば償えるかは分からない…でも、罪を背負って、償って生きていく意思があるのならそれで良いんじゃないかとは思う。そっちの、アイドル希望はそのつもりなんやろ?」

「えぇ、許されるなんて思っていない。それでも、アタシは罪を背負いながらでも歌い続けたい。これからね」

「だってさ、おまいさんは?」

「私は…」

 

 

 優作の問い掛けにエリザベートは強く頷く。

 そしてカーミラは…

 

 

「光の下で生きたい。どんなに忌み嫌われようとも…暗闇の孤独でなく、光の中で生きて死にたい…」

「そうかい」

 

 

 カーミラ…エリザベートの本心を聞いた優作はクラウスの服からシドの衣装へと戻す。

 

 

「何を如何すれば償い切れるかは判らんが…おまいさん達の被害者遺族の子孫達がおいちゃんの時代まで生きているのなら…彼等を救う事が幾等かの償いになるとは思う」

 

 

 そう言いながら優作は2人に右手を差し出す。

 

 

「おいちゃん達に協力してくれるならアイドルのプロデュースやら日の元での一生を送るくらいの事はサポートして叶えるさね」

「アタシは構わないわ、アイドルデビューの第一歩が叶うのだもの。宜しくプロデューサー♪」

「ん、しくよろ♪ で、そっちは?」

「好きになさい……奥底に秘めていた願いを言ったのだもの、約束は守ってもらうわよ」

「任せんさい、おいちゃんは約束は守る男さかい」

 

 

 笑顔で答えながら握手を交わすエリザベートに対して、本心を語った恥ずかしさからかそっぽを向きながらも応じるカーミラ。

 何はともあれ、新たな仲間が2人増えた。




元ネタ
>クシエル(出典:女神転生シリーズ他)
アトラス作品に登場する悪魔。
“厳しき神”の名を持つ処罰の7天使の一人。
燃え上がる炎の鞭に依って、神に背いた国家を罰する役目を担う。


Q、カーミラも仲間にするの?
A、本作に於いて数少ない同一人物で仲間にする枠。

Q、カーミラに対して脅し入っていない?
A、そう簡単に本音を吐かないと優作は判断したので、仕方なく。

Q、そういや、リヨンでの加入組はなりきりしているの?
A、次回新規加入メンバーと纏めてなりきりさせる予定。


次回は6月21日投稿予定(五割の確率で6月14日)
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