フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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キャスターへの挑戦!

 元新都の一角、朽ちて並ぶビル群の中で辛うじて崩れ落ちていないで形を保っているビルの屋上から優作達を観察していた男はポツリと困惑の言葉を漏らした。

 

 

「…一体何なんだアレは?」

 

 

 聞こえた戦闘音が気になって来てみれば、其処には黒マントの青年とサーヴァントの気配がする十字盾を持った少女の姿。見た事の無い連中であった事から異邦人であると推理し、現在自身が従っている“彼女”に仇名す相手であるか確かめるべく観察を続けていた。

 すると如何だ? マスターと思われる青年は良く解からぬ戦車を駆り、様々な使い魔を操り、果てはサーヴァントにダメージを与える近代兵器を扱ってランサーを完封する。

 サーヴァントの少女も危ない所は有ったが、使い魔の援護や見た事の無い力を使ってアサシン相手にダメージ無く撃破してみせた。

 

 

「キャスターと合流したのは些か拙いな…」

 

 

 キャスターと会った以上、彼等の敵意が此方に向くのはほぼ確実であろう。となると始末しなければならないのだが、あの青年に対し得体の知れない不気味さを感じた。

 

 

「早い内に始末した方が良さそうだ…ならば“奴”を利用するとしよう。セイバーに因って“回数が軽く”削られているとは云え、十分役に立ってくれるだろう」

 

 

 色素の抜けた白髪、それとは対照的な褐色の肌、そしてそれらを覆い隠すように纏わり付いている黒い靄。シャドウ・サーヴァント、アーチャーの視線は街から遥か離れた森林地帯にポツリと建つ、焼け堕ちた城跡へと向けられていた。

 

 

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 折角だし、話し合うのに良い場所が有るとキャスターに提案され、案内された場所は『穂群原高校』と云う名の学校校舎だった。

 優作達は校舎内の教室の1つに腰を落ち着かせ、キャスターが早速情報交換に移ろうとしたのだが…

 

 

「取り敢えず飯食ってからにしない?」

フォキュー(マイペース過ぎィ)!!?」

 

 

 そう言いながら何処からともなくバッグを出して中から調理器具やら食材を取り出す優作。呆気に取られる面々の中で唯一フォウだけがツッコミの鳴き声を挙げていた。

 

 

「ちょっと!? 今は食事なんてしてる場合じゃ無いでしょう?」

「偉い人は言いました、“腹が減っては戦は出来ぬ”と。それに美味いモノで腹を満たせば気分もプラスになるさね」

「まぁ、坊主の言う通りだけどよ…?」

「マシュも疲れてるし、所長さんも精神的に参ってるっしょ? 美味くて元気の出るヤツをパパッと作るから待ってんしゃい」

 

 

 オルガマリーも遅れてツッコむがなんのその、鼻歌混じりに素早く調理を進めていく優作。

 流れる様な手際の良さは見ている面々が感嘆の声を漏らす程だった。

 

 

「先輩、凄いですね。これも服の力なんですか?」

「うんにゃ、これは自前さね。“効果付け”でなりきったりはするけど、おいちゃんは元々料理得意だから」

 

 

 あっと言う間に切ってみせた根菜と鶏肉を寸動鍋に入れ、煮込んでいく優作にマシュは尋ねた。元々多趣味だった優作は料理もそれなりに出来たのだが、なりきりの力を得てからは店限定の味付けや隠しメニューを再現したりと更に色々と手を延ばし、作れないモノは粗無くなっていた。

 

 

「そういや、キャスターの名前聞いてないや。何処の英雄さんなの?」

 

 

 バターを溶かしたパエリア鍋にライスとみじん切りにした玉ねぎ、角切りのトマトを入れて炒めながら優作はキャスターに尋ねる。

 

 

「おっと、それはまだ言えねぇな」

「名前バレしたら弱点が判るから…ってヤツ?」

「それもあるが、情報交換こそするが坊主達と協力関係を結ぶかはまだ決める訳にいかねぇからな」

「つまり、おいちゃん達が戦力として役に立つか見定めてから結びたい…的な?」

「分かってるじゃねぇか」

「じゃあ、しゃあなしやね。それじゃあ、おいちゃんはキャスターの兄貴、略して『キャスニキ』と呼ばせて貰うゾイ」

「きゃ…キャスニキ…」

キュウ~(良いセンスだ)

 

 

 炒め終えたパエリア鍋にサフランを混ぜたスープを注ぎ、海老や貝類を載せて炊きつつ、寸動鍋にミルクと粉チーズを入れてトロミが出るまで煮込んでいく。

 美味しそうな臭いが部屋内に広がる中、料理が完成した。

 

 

「ヘイお待ち! パエリアとクリームシチューの完成じゃい」

「わぁ、とても美味しそうです!」

 

 

 それぞれ皿に盛り分けて配り、食事が始まった。

 

 

「すっごい美味しいです先輩!!」

「御代わりは有るから沢山食べんさい」

「…美味しい」

 

 

 調理中から目を輝かせていたマシュだったが、料理を口に含めばその輝きが更に増していた。オルガマリーもモクモクと料理を口に運んでいく。

 

 

「コレ美味ぇな。こうなると酒が欲しくなるが…坊主、持ってねぇか?」

「戦場だから、酒ぐらい我慢しんしゃい……と言いつつ1杯位はええやろ」

「お、話が分かるじゃねぇか♪」

 

 

 キャスターの頼みにバッグからワインボトルを取り出して手渡したグラスに注ぐ。

 

 

「綺麗だな…だが何だこりゃ?」

「初心者でも飲み易いようにと開発されたスペイン産の青ワインさね。キャスニキの髪の色ともマッチしとるやろ?」

 

 

 透き通る様なコバルトブルーのワインはスペイン・バスク地方の若手クリエイター6名が“過去を打破して未来を創造する”をテーマに、2年近い歳月を掛けて生まれた。これを製作するにあたって面白い話があり、“製作した6名の中で誰も酒造経験が無かった”というのだ。

 ノンカロリーの甘味料を配合しているので、酸味よりも甘みが強くさっぱりとした口当たりであり、アルコール度数も低めな事からワインが苦手でも大丈夫……かもしれない。

 

 ※このワインは実際に存在します。名前は『Gik(ジック)』なので20歳以上の方は飲んでみてね。

 

 

「おぉ、これは美味い美酒だ」

「気に入って貰えて何より」

【うぅ…見ているこっちはお預けかぁ…。優作君、帰って来たら僕にも作ってくれないかい?】

「構わんよ、楽しみにしてんしゃい」

 

 

 現場に居ないロマニはお預けを喰らってしまい、ホログラフ越しから羨ましそうに食事を続ける優作達を眺めていた。

 

 

「あ~、食った食った。美味かったぜ、坊主?」

「御馳走様でした、先輩!」

「こんな所でこういうモノが食べれるとは思わなかったわ…」

 

 

 食事を終え、腹を満たしたメンバーの表情は緊張感が和らいでいた。

 

 

「それじゃあ、腹も満たした事だし情報交換といこうか?」

 

 

 片づけを終え、まずは此処の状況説明から、と表情を真剣なモノに切り替えたキャスターは話し始めた。

 

 

「オレ達が争っていた聖杯戦争は何時の間にか“違うモノ”にすり替わっていた」

「違うモノ?」

「始まりは一瞬だった。突如現れた聖杯から“泥”が溢れ出して街は炎に焼かれ人間はいなくなり、残ったのはサーヴァントだけだった。まぁ、彼方此方に化け物共が湧き出したがな? マスター含めた人間が消えた時点で俺達サーヴァントも消えてしまう…筈が、如何してだかサーヴァントは残り聖杯戦争は続けられた」

「如何考えても聖杯戦争が特異点の原因である件について」

「…予想通りだった訳ね」

 

 

 これまで予想の範囲内でしかなかった特異点発生の原因が聖杯戦争である事が確定した。

 

 

「それで、残ったサーヴァント同士で争った訳ですか?」

「いや、突然の事態に戸惑っていたんだがな…ある1人のサーヴァント以外」

【そのサーヴァントは?】

「セイバーだ。奴さん、水を得た魚みてぇに暴れだしてよぉ。いきなり襲い掛かって来たのもあって、セイバーの手で俺以外の連中は倒された。そして倒されたサーヴァントはお前さん達が戦ったアサシン、ランサーよろしく真っ黒な影に覆われてサーヴァントとしての自我を失った」

「5体のサーヴァントを倒してしまうなんてどれだけ規格外なのよ…」

 

 

 たった1人でキャスター以外のサーヴァントを撃破したと云う、規格外の実力を持つセイバーにオルガマリーは戦慄する。

 

 

「因みにアーチャーかライダーで女性はどっち?」

「女はライダーだが…もしかして倒したのか?」

「うむ。移動中に襲って来たからマシュが星にしたさね」

「そうなのか? なら残りは3人になるが、バーサーカーは無視して良いぜ。奴はこっちから仕掛けない限り襲っては来ねぇ。だが、アーチャーはセイバーの先兵として動き回ってやがる」

【セイバーに挑む為にはアーチャーとの戦闘は避けれない訳か…】

「キャスターさんはセイバーの正体についてご存知なんですか?」

「直接戦えば直ぐにでも判るぜ。なんせ、余りに有名な奴だからな」

「今此処で教えてはくれないの?」

「それに関しては条件がある。坊主にも言ったが、お前さん達の力を俺に示して見せろ。俺を認めさせる事が出来れば真名だって教えてやるし、仲間にもなってやるぜ?」

 

 

 不敵な笑みを浮かべながらそう答えるキャスター。内心、優作達と戦ってみたいという願望が混じっている様に見えた。

 

 

「な、何でよ!? 橋での戦いで私達の力を認めたから姿を現したんじゃないの!? ……私は何もしてないけど…」

「あの戦いだけじゃ足りねぇな。あれだけじゃあ駄目だ、最低限の力が無いとセイバーには絶対勝てねぇ」

「なら、キャスニキにおいちゃん達の実力を見せ付けてセイバー討伐に行くって事が今後の目標かな? ならじゅ…「あの、先輩」…どうしたん、マシュ?」

「私が宝具を使える様にする事は出来ますか?」

 

 

 キャスターの自分達の実力を見せる為の準備に入ろうと優作が腰を上げた時、マシュから自身の宝具に関する提案が挙がった。

 

 

【マシュは責任感強いから気にしてたんだね。でもそこは一朝一夕でいく話じゃないと思うよ? だって宝具だし。英霊の奥の手を1日、2日で使えちゃったら、それこそサーヴァント達の面目が立たないと言うか】

「何だ、嬢ちゃん宝具が使えてないのか? …ん? だったらアサシンと殺り合っていた時に使ってた精霊みたいなのと蜘蛛の足みたいな武器は何だったんだ?」

「それは服の力さね」

「服?」

 

 

 優作はキャスターに己の能力について説明した。

 

 

「…つまり、今オレが着ている服を着たら坊主はオレの力が使えるって事か!?」

「理論上は可能らしいわよ?」

「……坊主、本当はサーヴァントじゃねぇのか?」

「おいちゃん、まだ死んでないから。能力持ちなだけの一般人だから」

キュウ、キュー(“逸”般人ですね、分かります)

 

 

 キャスターが優作の能力に驚愕しながら疑惑の目を向けるのに対し、優作は肩を竦めてみせた。

 

 

「兎に角、宝具が使えない。このままでは私は只の欠陥サーヴァントです」

「正直言って名前を教えてくれなかった英霊が悪いと思うんだけど」

【僕も調べてはいるのだけど、中々見付からないよ。御免よ、マシュ】

「先輩、ドクター…有難う御座います。ですが、やはり宝具が使えないというのは心許無いです」

 

 

 現状マシュの戦い方は優作から与えられた服の力頼りになっている。宝具の内容が如何あれ、自身に宿った力を使いこなせる様にしたかった。

 

 

「つぅかよ、宝具なんて直ぐに使えるに決まってんじゃねぇか。英霊と宝具は同じもんなんだから。お嬢ちゃんがサーヴァントとして戦えるのなら、もうその時点で宝具は使えるんだよ。なのに使えないって事ぁ、単に魔力が詰まってるだけだ。何つーの? …やる気っつぅか…いや弾け具合? 兎に角、大声を挙げる練習をしてないだけだぞ?」

「意外とあっさりしてんのな? でもキャスニキ、マシュの場合契約を求められたとは云え、正体が判らん奴の力をいきなり宿す事になってんやで? 運転免許持ってない人に特殊な操作方法の車をマニュアル無しでいきなり運転してみろって言ってるようなもんだと思うんだけど?」

「そう言われてもなぁ…」

 

 

 優作の意見にキャスターは頭を掻きながら困った表情になっていた。

 

 

「良いか? 宝具ってのは本能だ、本能が呼び起こされる様な事が起これば自ずと目覚める」

「つまり、命の危機に陥れば目覚めると?」

「ま、そんなとこだな。若しくはマスターが危機に瀕すればだ。オレに実力を見せる際が丁度良いだろ? 但し、使えなきゃ御陀仏だがな」

「う~む…マシュの宝具って盾に関したモノで合ってるのかね?」

「多分そうじゃねぇか? さもなきゃ盾だけ装備してねぇだろ?」

「盾…防御系………うぅむ…」

 

 

 御陀仏と云う言葉にマシュの表情が強張っていくのを横目で見ながら優作は考える。キャスターはセイバー打倒の為の戦力として生半可な者は連れて行く気が無い。となれば彼が示す試練を乗り越えなければならない訳だ。その際にマシュが宝具を使えるようになるのが最適なのだが、失敗すれば待っているのは死だ。命を賭けた殺し合いをしている状況下で甘い事と言われるだろうが、余りマシュに無茶をさせたくなかった。

 

 

「ちょいと実験してみたい事があるから良いかな?」

 

 

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 校庭に出た優作達。衣装ケースをから中世の騎士が着ていそうな鎧を取り出し、光の玉にする。

 

 

「なりきりチェンジ『イニシエダンジョンの冒険者:戦士(ファイター)』」

 

 

 光の玉をマシュに入れると共に別の光の玉が2つ出て来た。それを優作が掴むと、レイシフト後にマシュに与えた里中 千枝と津村 斗貴子の服に戻り、マシュの衣装は優作が取り出した鎧姿へと変わった。

 

 

「さて、今マシュに与えた服は伝説の秘宝『不老不死の水』を手に入れる為にダンジョンを探索した冒険者の中で戦士の職業を持った者の力。他にも職業はあるけど、どれにも共通した能力を持っている」

「共通した能力ですか?」

「彼等は武具を装備した際、“自身の魔力を消費して装備した武器の力を引き出す”事が出来た」

「力を引き出す…」

「例えば炎の剣なら火柱を巻き起こし、雷の杖なら雷を落とすといった感じさね。そんな中で戦士職は仲間を守る為に巨大な盾を装備する場合があった」

「盾でも力を引き出せるんですか?」

「そう。そしてその盾がこれだ」

 

 

 そう言って優作が出したのはマシュが持つ十字盾よりも大きい2つの盾だった。

 

 

「フォートレスとギガントシールド。盾から引き出せる力には2種類あるんだけど、今回参考になるのはこっちのフォートレスかな?」

 

 

 優作からフォートレスと呼ばれた大楯を受け取るマシュ。自身が持っている十字盾より2回りほど大きい盾を掴んだ瞬間、この盾から引き出せる力の使い方が脳内に流れて来た。

 

 

「…分かります、力の名は『ストロングホールド』」

「うむ、分かったなら後は実践あるのみ。マシュ、使ってみて?」

「はいっ! いきます、ストロングホールドッ!!」

 

 

 意識を集中し、力を引き出す工程をイメージする。己の体内を巡っている魔力が持っている盾へと流れていく事が分かる。

 技の掛け声と共にマシュの周りを守る様に防壁が立ち昇った。

 

 

「やった、出来ました先輩!!」

「うむ、力を引き出す際に自身の魔力の流れはちゃんと感じれたかな?」

「はい!」

「英霊についてはド素人なおいちゃんだけど、話を聞く限りこの力を引き出す事と宝具の使用は同じ気がするんよ? だからこの力の使い方を参考にしてマシュに宿った宝具の力を引き出してみんしゃい」

「解かりました。やってみます」

 

 

 フォートレスから十字盾に持ち替え、マシュは再び意識を集中する。自身の魔力を十字盾へと巡らし、守りの奥義をイメージする。

 

 

(先輩は強い、それでも私は先輩の足手纏いになりたくありません…)

 

 

 初めてあった時、マシュは優作を不思議な人だと思った。

 カルデアで生まれ、一度も外に出た事の無いマシュにとって、カルデアの中だけが全てであった。家族と言えるのは自分を気に掛けてくれるドクターとフォウだけ。他は時折、実験動物を見るかの様な視線を向けて来た。そんな限られた変わらない日々だった中、今迄会った事の無い性格である優作との出会いはマシュにとって初めてであり、新鮮なモノであった。

 そして中央管制室の爆発で重傷を負ったマシュは優作に助けられた。炎を消し、重傷だった自分の容態を瞬く間に治して見せた悪魔達を操る彼の姿は、何時ぞや読んだ英雄譚の英雄そのものだった。

 だからこそ、レイシフト時に英霊の力を譲り受けてデミ・サーヴァントになった時、これで先輩の役に立てる、助けて貰った恩を返す事が出来ると思っていた。

 ところが如何だろう? 彼は悪魔を使役するだけじゃ無く、自身でサーヴァントと渡り合えていた。

 確かにライダーやアサシンを倒したのは自分だ。だがそれは、優作がくれた服の力が殆どだ。自分一人の力では無い。自分が居なくてもきっと彼は仲魔達と共に撃破出来たであろう。

 宝具が使えず落ち込んでも労わって励ましてくれた。

 そして今の状況も死にかねない危険な状況での覚醒を心配した上で考えてくれたのだ。

 自分はこれ以上、先輩の手を煩わせたくなかった。

 

 

「(守られるだけなのは、御免ですっ)守れるだけの力を! はあああぁぁああああ―――――っ!!」

 

 

 先輩(優作)を守れる力を、マシュの叫び声と共に十字盾を起点に十字架を模した魔法陣の様なモノが展開されていき、遂には巨大な光の盾が聳え立った。

 

 

「パーフェクト! 見事、己の宝具を使えた訳だ♪」

「はぁ、はぁ…先輩、やりました! 私、宝具を使える様になりましたっ!!」

「しかし凄かったよ、マシュ! メギドラオンクラスはまだキツそうだけど、あれだけの防御技はそうそう無い」

 

 

 効果時間が終わったのか徐々に消えていく光の盾を眺めながら、優作は興奮した様子で笑顔を浮かべている。そんな彼の表情を見ながら、マシュも笑みを浮かべる。

 

 

【驚いたな……こんなに早く宝具を解放出来るなんて】

「優作の補助の御蔭と云うのも有るのでしょうけど…、“ただマスターを守る”その想いで宝具を発動させたのね、マシュ」

「ドクター、所長。私はまだ宝具の真名も英霊の真名も解かりません。でも、先輩を、皆を守れる様になりたかったから無我夢中でした」

「純粋な想いだからこそ、宝具が応えたのかもしれないわね…。兎に角、宝具を使える様になったのは喜ばしいわ。でも真名が無いのは不便でしょう? 良い名前を考えてあげるわ」

 

 

 オルガマリーは一旦、コホンと咳払いし、

 

 

「宝具の疑似展開なんだから……そうね、『疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』と名付けなさい」

「ロード・カルデアス……」

「カルデアは貴女にも意味のある名前よ。霊基を起動させるには通りの良い名前でしょう?」

「はいっ! 所長、有難う御座います!!」

「ロード・カルデアス、良い名前じゃない」

フォーウ(ナウい)!」

 

 

 マシュの宝具の現状名をオルガマリーに付けて貰い、マシュの服を外した服へと戻した。

 

 

「さぁて、嬢ちゃんの宝具は使える様になった訳だ。なら今度はオレにお前らの力を示してみろ」

「おいちゃんは構わんのだけど、宝具が使えるだけじゃ駄目なん?」

「足手纏いにならない事を見せてくれねぇとな、それに仲間になる相手とは実際に手合わせして仲間足り得るか実力を測る。それが“ケルト流”だ」

「ケルト…?」

「…あ」

 

 

 話の中でキャスターはうっかり自身の出身を漏らしてしまった。

 

 

「ケルトって云えばもしかして…クーフーリン?」

「…………」

「その表情且つ沈黙は肯定と受け取るべ?」

「バレちまったか」

「え? マジでクーフーリン? 何でランサーじゃなくってキャスターなん?」

「仕方ねえだろ、オレを呼んだ奴がこの姿で呼んだんだからよ?」

 

 

 自身の失態に不貞腐れた様子のキャスターもといクーフーリン。話を聞く限り彼自身はランサーとして呼んで欲しかったらしい…

 

 

【太陽神ルーの息子でクランの猛犬だって!? “ケルトのヘラクレス”と呼ばれる程の大英雄じゃないか!!】

「アイルランドの光の御子だったのね…。必中の突きであるゲイボルグが有名だから本来はランサーで呼ぶべき英霊なのだけど…」

 

 

 キャスターの正体が判った事で各々のコメントを零すロマニとオルガマリー。

 

 

「そんじゃあ、真名知っちゃった詫びとして彼等でも呼びますかね」

「彼等?」

「あ、おいちゃん今デビルサマナーだから仲魔呼んで良いよね?」

「そりゃ構わねぇけどよ、彼等って何だ?」

「見てのお楽しみって事で…」

 

 

 そう言ってニヤニヤしつつ2本の封魔管を取り出す優作。

 

 

「来い! クー・フーリン、スカアハ!!」

「はぁ!?」

 

 

 優作の言葉に目を丸くするクーフーリン。

 封魔管が輝き飛び出してきたのは白銀の鎧を纏い、槍を携えた黒髪ストレートの美男子と大きなツバの黒い帽子を被り、真っ白な肌を際どい漆黒の装束と帽子と繋がっている黒マントで隠してる絶世の美女。

 

 

「と云う事で別世界のクー・フーリンとスカアハです」

「ちょっと待てぇ!! え? 別世界のオレと師匠!?」

 

 

 あんぐり開いた口を塞ぐ事無く、クーフーリンは目の前の仲魔を見比べている。

 

 

「これはサマナー、如何いう事ですか? 目の前の男、姿形こそ違いますが紛れも無く私自身だ…」

「面白いサマナーだと思っていましたが、まさか別世界の弟子と会わせくれるなんて…ふふっ」

 

 

 一方の仲魔であるクー・フーリンとスカアハもキャスターのクーフーリンを珍しそうに眺めていた。

 

 

「目の前の兄貴はこの世界のクーフーリン。訳有って、魔術メインのキャスターとして呼ばれてるから槍は使えないっぽい?」

「槍は有れば使えるぜ? …宝具は使えねぇがな」

「なら後で貸そうか?」

「それは有り難ぇが…あぁ、別世界のオレと師匠を使い魔にしてたり、その別世界云々聞きたい事が沢山出来ちまったが…それらは後に置くとして…」

 

 

 クーフーリンは杖を構える、困惑していた表情は綺麗に切り替わり獰猛なモノになっていた。

 

 

「兎に角、始めようや?」

 

 

 構える優作達、最初に仕掛けたのは仲魔達だった。

 

 

「いきますよっ、マハザンダイン!!」

「弟子なら耐えてみなさい。コンセントレイト、そしてマハブフダイン」

「うっ、うをおおおおぉおっ!?」

 

 

 クー・フーリンが巻き起こす竜巻とスカアハが放つ極冷の氷塊が互いに混じり合い、極寒の吹雪となってクーフーリンを襲う。真面に喰らえば大橋でのランサーの様に氷像と化すだろう。

 比較的吹雪の弱い所を見定め、そこへ炎の魔術を自身の周囲に展開しながら突っ込んで切り抜ける。それでも身体は風の刃と氷塊の礫で少なくないダメージを受けた。

 

 

「テメェ、槍持ってんのに魔術を使うのかよ!?」

「これは異な事を、戦士ならば武器と魔術両方使ってこそでしょう?」

 

 

 持っている杖で突いてくるクーフーリンにクー・フーリンは槍で応戦する。

 

 

「槍も無く、剣も無い。これじゃあドルイドの魔術師ね…戦士の矜持は如何したのかしら?」

「キャスターで呼ばれたんだからしょうがねぇだろ!! オレだって、槍が欲しかったわ!!」

 

 

 スカアハが呆れた言葉を言いつつ放つ魔術を避けながら噛みつく様に言葉を返すクーフーリン。この世界のクーフーリンは余程前線で暴れたがる性格らしい。

 

 

「せいやぁ!!」

「いきますっ! トモエ!!」

 

 

 クーフーリン同士が打ち合う中、横から優作とマシュが躍り掛かる。優作の斬撃をクー・フーリンの槍を弾いた杖で受け流し、トモエの突きを飛んで避ける。が、宙に飛んだ所をマシュが蹴り込み、クーフーリンは敢えてそれを受ける事で彼等から距離を離した。

 

 

「初めこそ驚いたが、中々面白いじゃねぇか。ならこれは如何だ?」

 

 

 瞬間、クーフーリンの振るった杖の軌道から燃え盛る火の玉が出現し、それが徐々に巨大化していく。

 

 

「アンサズ!」

 

 

 ジャックランタンのアギダインクラスの大火球が優作達へと飛んで来る。真面に喰らえば消し炭に成り兼ねない攻撃だが、優作には仲魔とマシュがいる。

 

 

「スカアハ、ブフダイン。マシュは防御を」

「任せて頂戴」

「分かりました!!」

 

 

 優作の指示でスカアハが火球へ冷気を叩き込んで勢いを殺し、相殺しきれなかった残り火をマシュが盾で弾く。

 

 

「アンサズを防いだが…「チェストォォ!!」…うおっと」

 

 

 防いで見せた事に感心するクーフーリンに優作が再び切り掛かる。斬撃を避けるが優作も流れる様に斬撃と突きを繰り出していく。

 仲魔とマシュも援護をする中、出来た隙を突いた優作の回し蹴りがクーフーリンの胴体に叩き込まれた。

 

 

「けほっ……坊主も中々やるじゃねぇか!」

「おいちゃんを舐めたらアカンぜよ!!」

「…本当、キャスターの枠で呼ばれたのがもったいねぇな」

 

 

 しみじみと呟きながらクーフーリンは再び優作達と距離を取った。

 

 

「お前らの力は良く解かった。だから、これで最後だ。受けてみろ」

 

 

 そう言いながらクーフーリンは杖を前に向けて魔力を集中していく。これまで使っていた火球の魔術とは一線を遥かに越える魔力の奔流が感じ取れる。つまり、英霊の切り札である宝具を使うつもりなのだ。

 

 

「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社……倒壊するはウィッカーマン! オラ、善悪問わず土に還りな――!」

 

 

 クーフーリンの詠唱と共に無数の木の枝を組み合わせた集合体が轟々と燃え盛る、炎の巨人が召喚される。

 

 

「こ、これは!!」

「あら、向こうの弟子は面白い魔術を使うのね?」

「先輩!」

「あれがクー兄の宝具か、かっけぇな!」

 

 

 炎の巨人に対し各々の感想を零す優作達。

 

 

「とっておきをくれてやる。焼き尽くせ、木々の巨人! 『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!」

 

 

 ウィッカーマンはズンズン地響きを立てながら優作達へと向かって来る。

 

 

「どうします、サマナー?」

「同キャラ同士の技のぶつかり合いとか胸アツだけど、ここはマシュにお願いするさな」

「私ですか?」

「この戦いの目的はおいちゃんとマシュの実力を見せつける事。折角、宝具使える様になったんだ、あの巨人を打ち負かしてマシュの実力をしっかりと見せつけたれ!!」

「…解かりました。マシュ・キリエライト、全力でいきます!!」

 

 

 仲魔達を一旦下がらせ、マシュが前に出る。

 ウィッカーマンは既に優作達の目の前まで迫っていた。

 

 

「真名、偽装登録。宝具、展開します!」

 

 

 優作達を叩き潰そうと腕を振り上げるウィッカーマン。

 

 

「仮想宝具、『疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』ッ!!」

 

 

 ウィッカーマンの燃え盛る拳とマシュの光の盾がぶつかり合う。一撃では打ち破れないと悟ったウィッカーマンは両腕を使って2発、3発と何度も殴り続けるが打ち負けたのはウィッカーマンの方だった。

 木の枝を組み合わせた腕がボロボロと崩れ落ちると共に現界時間が過ぎたのだろう、その姿が薄れていき消滅していく。

 

 

「はぁ、はぁ…」

「やったな、マシュ!」

「はぁ…先輩……やれました…」

「これを食べんしゃい。魔力が回復するから」

「有難う御座います…あ、美味しい♪」

 

 

 短い期間での宝具展開で魔力を多く消費したマシュは疲労が大きい様だった。

 優作は彼女にチャクラドロップを渡して魔力を回復させた。

 

 

「まさか、あの攻撃を無傷で耐え凌ぐとはなぁ…」

「これで合格かいな?」

「あぁ、認めてやるよ。セイバーを倒すのにしっかり協力してやる」

「先輩っ!」

「やったぜ」

 

 

 クーフーリンから認められ、喜び合うマシュと優作。

 

 

「ハハッ、しかし良い女じゃねえか?」

「ひゃんっ!?」

「おぅ、良い身体してるじゃねえか♪ 役得役得っと……ん? 如何した坊主?」

 

 

 マシュのお尻を撫で回しニヤニヤ顔のクーフーリン。逆にセクハラを受けたマシュは顔を真っ赤にしながら慌てて彼から離れた。

 そんな様子を眺めながら優作はニッコリ顔でクーフーリンの肩に手を置く。顔はニッコリ笑っているのに目は全く笑って無く、むしろ威圧感を感じる程だった。

 

 

「セクハラ禁止ィッ!!」

「へぶらっ!!?」

フォウ~(やりますねぇ)!!」

 

 

 優作の怒号と共にブチ噛まされたビンタを喰らい、錐揉みしながら宙を舞うクーフーリン。

 何とも締まらない空気になってしまった…




元ネタ
戦士(ファイター)(出典:イニシエダンジョン)
miya_omaru氏製作のブラウザゲーム『イニシエダンジョン』で登場する職業の一つ。
戦士は剣や斧をメイン装備とし、HPや攻撃力が高いので斬り込み役や壁役として有能。

>フォートレス(出典:イニシエダンジョン)
『イニシエダンジョン』で登場するユニーク両手盾。
低階層でも手に入れる事が出来る。
使える技は『ストロングホールド』で、使用者の周囲に使用者のHPと同値の体力を持つ防御壁を設置する。
因みに“ユニーク”とはレアドロップアイテムの事を表す。

>ギガントシールド(出典:イニシエダンジョン)
『イニシエダンジョン』で登場する両手盾。
ダンジョン最奥層で入手可能で、最高クラスの防御性能を誇る。
使える技は『ギガプレス』で、指定の方向に短射程ながら幅広のノックバック兼スタン効果を持った衝撃波を放つ。

>メギドラオン(出典:女神転生シリーズ他)
アトラス作品に登場する万能属性の魔法スキルで下位互換にメギド、メギドラがある。
MP消費は激しいが、あらゆる防御相性を貫いて大ダメージを与える。
しかし、作品によっては反射出来たり、上位互換の存在があったり、属性を突いた方がお得だったりと不遇だったりする。

>クー・フーリン スカアハ(出典:女神転生シリーズ他)
アトラス作品に登場する悪魔。
作者はこの作品の2人を先に知っていたのでタイツケルトを観た時はひったまげた。

>チャクラドロップ(出典:女神転生シリーズ他)
女神転生シリーズに登場するMP回復アイテム。


Q、青ワインを宣伝したのは何故?
A、美味しかったから(批判は認める)

Q、主人公君が作った料理のメニューは何か意味が有るの?
A、実はテイルズシリーズ由来の効果持ち(テイルズシリーズではMPではなくTPで表示)。
  ・クリームシチュー(HP30%、MP63%回復)
  ・パエリア(食事したメンバー全員のステータス一時上昇)

Q、何故キャスター戦にクー・フーリンとスカサハを呼んだの?
A、別世界の同一人物バトルって燃えるやろ?


おまけ

【挿絵表示】

描いてくださった maya 様にひたすら感謝!


次回は9月23日投稿。
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