フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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召喚と準備、そして出撃

「それじゃあ、約束通りセイバーの正体を教えてやるぜ?」

 

 

 クーフーリンに実力を示した優作達は約束通り彼から協力を得る事に成功し、セイバーの正体を教えて貰う事となった。

 そんな彼の顔は右頬に赤い紅葉が綺麗に残っていた。

 

 

「先輩、有難う御座います」

「痴漢、セクハラは犯罪やさかい。おいちゃんが居ない時にもしされたらちゃんと報告するんやで? 今度やったら股間のブツをロケット花火にする呪いでも掛けてやるから」

「はい、分かりました♪」

「怖ぇえよ!!? 嬢ちゃんも笑顔で答えねぇでくれ!?」

 

 

 中々にバイオレンスな対応法をマシュに対して言う優作にクーフーリンは悲鳴染みたツッコミをする。

 そして改めてクーフーリンはセイバーについて語りだした。

 

 

「…ぶっちゃけ、宝具を使えば誰でも直ぐに気が付く。それくらい有名で強力な宝具だからな。今回の参加者も、大体はそれでやられた」

「異変で戸惑ってたところを宝具ブッパされたって事?」

「そういうこった」

「強力な宝具ですか…それは如何いう?」

「王を選定する岩の剣のふた振り目。この時代において、もっとも有名な聖剣。その名は約束された勝利の剣(エクスカリバー)、騎士の王と言われている、アーサー王の持つ剣だ」

【なっ!? アーサー王だって!?】

「わーお、神話・伝承モノのビッグネームキタコレ」

 

 

 ブリテン島、今のイギリスを治めた騎士王であり、誰もが知る聖剣の持ち主である。

 セイバーとしては最強と呼ぶに相応しい存在であり、一同は息を呑んだ。

 

 

「現状セイバーは聖杯の大元である『大聖杯』を独占してやがる。お陰様で奴は聖杯のバックアップの下、馬鹿みてぇな力を発揮しやがる。何とかしてぇが、キャスターのオレじゃあ対魔力が高いセイバーに決定打を与える事が出来ない上に他のシャドウ・サーヴァント共に狙われる始末でな? 撤退してほとぼりが冷めた後に各個撃破していこうと思ってた訳よ」

「つー事は、おいちゃん達はセイバーにとってホームグラウンドになる場所へ殴り込み掛けんといかん訳ね?」

「そうだ。アレは何度も避けれるモノじゃないし、防御系宝具持ちの嬢ちゃんでも2、3発も喰らえば耐えきれ無ぇだろ? 1発目を耐えた後か使わせない内に、複数人で一気に叩き潰すのが最善だ。だから悪魔使いの坊主は都合が実に良い」

【大聖杯を独占しているセイバーを倒せば…】

「ああ。聖杯戦争は終わる」

「成る程ね……恐らくこの時代、この時間において大きな出来事である聖杯戦争を終わらせる事が出来れば、この特異点『F』の異常も治まる可能性が高いわね。でも居場所は判ってるの?」

「あぁ、この土地の心臓に当たるあの山の洞窟に奴は居る」

 

 

 クーフーリンの視線は都市部から離れた山に向けられていた。ロマニが調べたところ、この土地で一番大きな霊脈に当たるらしい。

 

 

「それじゃあ、セイバーについては是位にして俺から質問良いか?」

「おいちゃんのクー・フーリンとスカアハの事さね?」

「それと別世界云々だな。つーか、師匠はスカ()ハだろ?」

「スカ()ハやで?」

「いや、スカ()ハだ」

「スカ()ハだって、本人から聞いたもん」

「いいや、違うね。スカ()ハだ、オレだって師匠から聞いてる」

「ちょっと貴方達止めなさいよ! 土地によって発音が違う場合が有るんだから、別世界なら尚更でしょう!?」

「それもそうさね」

「だな」

フォキュウキュー(別所では『スカタ』って呼ばれてるしね)

 

 

 軽い発音に関する言い争いがあったがオルガマリーに止められ、優作は改めて説明を始めた。

 

 

「おいちゃんが召喚してる面々はデビルサマナーの服の主である『葛葉 ライドウ』が使役していた悪魔達さね。まぁ、+αが含まれてるけんど」

「おい、オレや師匠が悪魔扱いなのは何でだ?」

「ライドウの世界じゃ悪魔は一神教のそれでは無くって超自然的な存在の総称を呼んでる訳。だからその分類は精霊や妖精、英雄や神など多岐に渡っているべ」

「纏めて悪魔呼びしてんのか…」

「…ちょっと待ちなさい。精霊や神ですって!?」

【つまり、優作君は神霊すらも呼び出せるのかい?】

 

 

 新たに飛び出した『精霊』や『神』の単語にオルガマリーとロマニは驚く。

 

 

「可能やで?」

「例えば、どの様な神様を呼べるんですか?」

「色々呼べるからなぁ…例えば『ヒノカグツチ』とか『トール』とか」

「日本神話の火の神に北欧神話の雷神…どれも有名じゃないの!?」

【その神すらも優作君はあの妖精達みたいに使役出来るのかい?】

「悪魔との契約は単純さね、実力で屈服させるか宝石や魔力を挙げる事で仲魔に出来る訳。話が脱線したけど、おいちゃんが召喚した2人はそんな世界出身さね」

「それで、そんな世界を何で坊主が知ってんだ?」

「創作物だから」

「…は?」

 

 

 優作の回答に呆気に取られる面々。それに対し、優作は実物を見せた方が早いとバッグからゲームソフトが入ったパッケージケースを取り出す。

 

 

「『葛葉ライドウシリーズ』、架空の時代、大正20年を舞台にしたデビルサマナーである葛葉ライドウの冒険活劇。まぁ、詳しくは実際にプレイしてみて、どうぞ」

キュウフォウ(ダイマ凄いですね)

【その服はゲームのキャラクターだったのかい?】

「せやで? 因みにおいちゃん達が移動に使ってる戦車も他のゲームが出典で、マシュに着せてるのもメインがゲームでサブの方は漫画になる」

「…架空の人物までなりきる事が出来るなんて…」

「戦闘向けは殆どサブカル由来よ? 元々一般人だったんだから現実系の服は基本、日常生活でしか殆ど使えんさね」

「……ゲームじゃ俺達ってあんな姿なんだな…」

 

 

 優作がなりきる事が出来る範囲の広さを知り、オルガマリーとロマニは改めて驚愕し、クーフーリンは別世界の自身と師匠の姿に納得するのだった。

 

 

「ところでロマン、此処も霊脈に当たる土地なん?」

【そうだね、この土地は彼方此方に霊脈が点在していて此処もその一つだよ】

「なら、アーサー王討伐の為に戦力確保として召喚しようずぇ?」

 

 

 優作の手元には聖晶石が3つある。これを使って英霊を召喚しようと提案した。

 

 

「召喚するにはマシュの盾と聖晶石の他に、何が必要なの?」

【本来の英霊召喚には召喚の為の詠唱が必要なんだけど、カルデアでは召喚サークルに必要数の聖晶石を置くだけで召喚を行えるんだ】

「但し、その弊害か概念礼装が召喚される場合もあるから余り期待しない方が良いわ」

「簡単で良いね。う~む…やっぱ、召喚するならアーチャーかアサシンのクラスでシモ・ヘイヘかな? いや、ライダーでルーデルも強いだろうし…あぁ~、迷うんじゃ~」

「言っておくけど、呼びたい英霊の媒体が無ければ狙って召喚するのは無理よ。貴方と性質が合っている英霊が一番召喚され易いわ」

「そうなん? ならコスプレ趣味の英霊が呼び出されるんか…」

 

 

 召喚サークルに聖晶石を置くと、魔力の奔流が渦巻いてゆき、眩い光が放たれる。

 目を閉じないければならない程に輝いていた光は次第に収まってゆき、光があった場所にはフードを纏った妙齢の女性が立っていた。

 

 

「あら、随分と可愛らしいマスター…可愛くは無いわね…」

「20歳迎えたおっさんに可愛いと言われても困るんすけど?」

「ま、まぁ良いわ。キャスター、魔女メディア。宜しくお願いするわ。でも20歳でおっさん?」

「自分、“20歳超えたらおっさん”って考え方なんで」

「まだ若々しいのだから卑下するのは止めなさい」

「美人さんがそう言ってくれると嬉しいですな。ところで…コスプレが趣味だったりします?」

「コスプレ? …そうね…趣味と云えば趣味ね。但し、女の子に可愛らしい服を着せて楽しむ方だけど」

「おぉ~。所長さん、確かにおいちゃんと性質が合ってる人が出たで?」

「コルキスの魔女がコスプレ趣味…」

【キャスターか…、でも優作君とマシュが前衛寄りだから実に頼りがいがある後衛役が来てくれたね】

 

 

 召喚されたキャスターことメディアが優作と同じくコスプレ趣味という事実にオルガマリーは唖然とする。

 

 

「それにしても…」

 

 

 一方、メディアはオルガマリーの横に立っていたクーフーリンの姿を物珍しそうに眺めた。

 

 

「まさか貴方がキャスターのクラスでいるなんて、何の冗談かしら?」

「うっせ。オレが望んでこんなクラスで呼ばれるかよ魔女」

 

 

 メディアの言葉に噛みつく様に答えるクーフーリン。

 

 

「お2人さん、知り合いなん?」

「知り合いっつぅか…」

「此処、冬木の聖杯戦争で争った元敵同士よ」

「過去に呼ばれて争った訳?」

「いや、なんつぅか…何故か並行世界での記憶が残っててよ、何度か召喚されてるのを覚えてんだわ。そん時はランサーだったが、マスターに恵まれなくて勝つどころか死にまくってたぜ。…主に自害で」

「その時は私がキャスターで呼ばれてたのよ」

 

 

 並行世界の話がクーフーリン達が出て、ジョジョのD4Cが使えるんやなと内心納得する優作。

 上手くいけば前世と思っていた自分が元居た世界へも渡る事が出来るかもしれない。前世にて優作は母親こそ病気で先に亡くなってしまったが、父親は未だ健在だった。この転生で自分が前世にて消滅したのか、コピーでも残っているのかは確かではないが、もし消滅したのなら別の世界で無事にいる事を報告したい。まぁ、それをするのは現在の問題を解決してからになるだろうが…

 

 

「そういや、クー兄に槍をプレゼントしようと思うのですが…」

 

 

 平衡世界での自身の末路に遠い目になっていたクーフーリンへ優作が新たな話題をあげる。

 

 

「何だよ、勿体ぶって」

「その前にクー兄もなりきってもらいます」

「俺に服の力を与えるって事か?」

「然様、今のクー兄は魔術メインで武器を使った技らしい技を使えないっしょ?」

「まぁな」

「なんで、色々術を使えながら剣と槍の技も使える服を与えようと思います」

「ほぅ…」

 

 

 そう言って衣装ケースから取り出したのは首回りと袖口にファーが付いた茶色のジャケットに灰色のアンダーシャツ、柚葉色のズボンは皮で出来た大きめのベルトで留められていた。

 

 

「なりきりインストール『ディガー:リチャード・ナイツ』」

 

 

 服を光の玉へと変えてクーフーリンの身体へと押し当てると、ローブ姿だったクーフーリンはジャケットとズボンの姿に変わっていた。

 

 

「おぉ! こういう服は初めてだが、中々良いじゃねぇか!!」

「なりきった以上、クー兄はリチャードの力を使いこなせるべ。取り敢えずイメージしてみ」

「どれどれ…」

 

 

 優作の言葉に従い、クーフーリンはイメージすると彼の手には戦斧に似た槍が具現した。

 

 

「『ビーストランス』か、お目が高い」

「何となくで選んだが凄い槍なのか、これ?」

「ビーストランスは『クヴェル』……簡単に説明すると“壊れない道具”さね。これより強い槍はあるけど、壊れる可能性が有ったり、壊れないけど魔術関係の技能にペナルティが入る場合があるから、術を併用するならそこを考えた方が良いぜよ?」

「お、おう。良い事ばかりじゃ無ぇんだな…」

 

 

 優作の説明の後、脳内に浮かぶ武器や技・術の特徴を確認しながら、クーフーリンは自身にあった戦闘方法を構築していく。

 

 

「次はメディ姉ですな」

「服が変わった瞬間に霊基が変わったけど何をしたの?(私はメディ姉呼びなのね…)」

「メディ姉にも説明せんといかんかったな」

 

 

 今後は自身の能力について簡単に纏めた冊子でも作って渡そうと思いながら、優作はメディアになりきりについて説明する。

 

 

「…やろうと思えば神にすらなりきる事が出来るのね、無茶苦茶だわ…」

「なろうとは思わんけどね。そんで、希望とか有る?」

「いきなり言われても困るわ?」

「そうかいな? メディ姉ってまんま魔術師って感じやから近接戦闘は出来んとちゃう?」

「そうね。まぁ、近接戦闘が出来たならキャスターとして呼ばれないわ」

「そこで魔法剣士とか魔法闘士なんかになりきれば魔法は使えるし、敵が接近しても近接戦でボコれるで?」

「う~ん…」

 

 

 優作の勧めにメディアは考える。嘗て冬木で行われた聖杯戦争の中で自身より劣る魔術師の赤いあくま(・・・・・)に近接戦でボコられて敗れた過去を思い浮かべてしまう。結局アレが原因で、マスターである愛しき人を失う結果となってしまった。

 

 

「なら、お願いするわ。でも素人でもちゃんと動けるのよね?」

「モーマンタイ。なりきった後は脳内イメージで動きは解かるさかい、後は思い切りが大事さね」

 

 

 メディアの了承を貰い、優作が取り出したのは赤いとんがり帽子に赤い衣装、そして黒のロングブーツ。帽子とブーツは兎も角、衣装の下は腰まで届くスリットになっていた。

 

 

「ちょ、ちょっとマスター? この衣装は恥ずかしいのだけど…」

「ちゃんと対処はしてるから安心しぃ。なりきりインストール『ヴィエラ族:赤魔道士』」

「えぇ!?」

 

 

 取り出した衣服を光の玉へと変え、メディアに押し当てる。メディアの姿は顔を隠したローブ姿からとんがり帽子に赤い衣装そして、黒いブーツ姿になった。因みに、腰から下の太ももが見えてしまうスリット部分はスパッツで隠されていた。

 尚、フードで隠されていた顔は帽子となった事で見えており、綺麗な銀髪を靡かせた美しい顔が露わとなっていた。(因みに耳はエルフ耳だった)

 

 

「ちゃんと隠してくれているのね…(それでもスパッツとブーツの間の肌が見えるのは恥ずかしいけど…)」

「撮影オンリーなら兎も角、戦闘で動きまくる以上は丸見えは許しまへんで」

「それで、この服の特徴は?」

「赤魔道士は攻撃と補助の魔法を兼ね備える魔法使いさね。使える魔法は基礎系統ばかりだけど何よりの強みが『連続魔法』。因みに今の会話に於いては魔法=魔術と捉えて頂戴」

「……連続魔法ね…えぇっと……っ!? え? 2つの魔法を同時発動!?」

「尚、メディ姉が着ている服はヴィエラ族の服さかい、他に白魔法、緑魔法、精霊魔法、召喚魔法も連続魔法の対象さね。勿論、メディ姉自身の魔術も含めて」

「…む、無茶苦茶ね…」

「但し、魔力消費は2回分になるから注意……と言いつつこれをプレゼント」

 

 

 そう言ってメディアに3つ星がキラキラと浮かぶ飾りを手渡す。

 

 

「これは?」

「これは『スリースターズ』つって、魔法行使の際に消費する魔力を1にするアクセサリーやで」

「……1?」

「数字的な表現と捉えて頂戴。個人の魔力量を数字にした際に、誰でも消費量を1にする素敵道具と思ってくれれば良し」

「良しじゃないわよ! とんでもない道具じゃない!?」

【優作君…つまり、それを装備すると素人の魔術師でも大魔術を何発も使えるって事かい?】

「詠唱出来て発動できるなら可能ですな」

【あぁ~、僕たちの常識がガラガラと崩れ去っていく…】

 

 

 メディアに手渡したアクセサリーの性能に手渡された彼女は驚き、ロマニは遂に天を仰いだ。

 

 

「ま、スリースターズは置いといて。メディ姉に与えた服も覚えること沢山だから自分に適したスタイルを確立して下しぃ」

「イメージすれば浮かんでくるのね? ……って、多いわね…!?」

「その服は特殊さかい、他のジョブのアビリティも使えるかんね。その分複雑で情報も多いさな。自分に適したカスタムをして下さいな。あ、後これも渡しとく」

 

 

 忘れていた事を思い出したかの様に優作は新たに紋章の装飾品を取り出し、メディアに手渡した。

 

 

「……これは?」

「『ミスティシンボル』。装備すると魔術詠唱時間を半分に短縮出来るべ。魔法使いなら魔力消費と魔術詠唱時間は減らすのが鉄板やね」

「…もう何でもござれね」

 

 

 強力な効果のアクセサリーを両手に持ちながらメディアは遠い目になっていた。

 

 

:::::

 

 

「さて……この山の洞窟に大聖杯があって、セイバーの奴もこの奥に居る」

 

 

 学校跡地で準備を整えた優作達はメタルスラッグを走らせてクーフーリンの案内の元、目的の山へと向かっていた。途中残っていた案内掲示板に『柳洞寺』と書かれていた為、寺が山頂にあるのであろう。

 因みにメディアが加わった現在、車内には操縦者として優作、その後ろの2人席にオルガマリーとメディアが座っており、キューポラ部に防御要因としてマシュが掴まっている。クーフーリンはメタルスラッグの前方を走りながら索敵役を担っていた。

 間も無く洞窟の入口へと差し掛かろうとした時、上空から無数の赤い閃光が降り注いで来た。

 

 

「! っち、早速来やがったか!!」

「先輩、上ですっ!?」

「マシュ、盾を上に向けて! 迎撃は任せろ!!」

 

 

 クーフーリンとマシュがいち早く反応し、優作はキューポラ部分をマシュに防御させる様指示しながらバルカン砲が弾幕を張って降り注ぐ閃光を迎え撃つ。バルカン砲から放たれる弾丸と閃光がぶつかり合い爆発が起きるが、全て迎撃した為にメタルスラッグ自体に傷らしい傷は出来なかった。

 

 

「やれやれ、まさか全て撃ち落とされるとは…」

「っちぃ、言ってる側から信奉者の登場だ」

「……私は彼女の信奉者になった覚えはないがね」

 

 

 声の方を向くと男が立っていた。色素の抜けた白髪と褐色の筋肉質な腕が特徴的な男は今まで戦ったシャドウサーヴァントと同じく、黒い靄に包まれてはいるのだが、自我がちゃんと有るようで話し方はしっかりしていた。

 

 

「あら、彼も呼ばれてたのね?」

「メディ姉も知り合い?」

「彼も並行世界の聖杯戦争で争ったサーヴァントよ。話を聞く限り、ランサーとアサシン以外は面識が有るわ」

「な~る、最早同窓会やね?」

「こんな物騒な同窓会は結構よ…」

 

 

 メタルスラッグの車内にてメディアから知り合いである事を聞いた優作の同窓会発言にオルガマリーはげんなりした様子で意見した。

 

 

「ハッ、テメェは相変わらず聖剣使いを護ってんのか?」

「ふん、つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

「要は門番役じゃねぇか」

 

 

 噛みつく様な言い方のクーフーリンに対し、アーチャーは捻くれた返しをしてみせる。皮肉の応酬を見る限り、あの2人の関係は中々悪そうだ。

 

 

「まぁ、良いさ。テメェとの因縁にもそろそろ終止符を打ちたかったトコだしよ」

「望むところだが…その槍や服装はその戦車にいるであろうマスターのお陰かね?」

「良いだろ、これ? 貰った時点じゃ色々情報が多くて戸惑ったが、中々俺向きな力だ」

「サーヴァントに力を与えるか…やはり普通のマスターとは何処か違う様だ」

 

 

 ビーストランスをアーチャーに向けるクーフーリン、その横に戦車から降りた優作とマシュも並び構える。

 

 

「クー兄、悪いけどセイバーは皆で袋叩きにする予定やし、おいちゃん達も参加するで?」

「援護と防御は任せて下さい!」

「やはり全員で来るか……なら」

「あん?」

 

 

 優作達を前にして未だ構える様子の無いアーチャーは何かを待っている様に見えた。

 

 

「保険を掛けていて正解と云う訳だ」

「保険だと…?」

「■■■■■■■■■■――――!」

 

 

 天を割く様な咆哮が聞こえ、音の方を向くと建物を薙ぎ倒しながら、ナニカが轟音と共に此方に突っ込んで来るのが見えた。それに気付いたクーフーリンが、慌てた様子で警告の声を上げる。

 

 

「ヤべぇ、奴が来た・・・!?」

「奴って…」

「バーサーカーだ! 真名はヘラクレス、この聖杯戦争で最も厄介な奴だ!!」

 

 

 大英雄ヘラクレス、その名を知らない者はこの場に存在しない。それ程迄に有名にして強力な英霊が狂った状態で暴走列車の如く此方に向かって来ている。

 

 

「な、何で!? バーサーカーはこっちから仕掛けない限り襲ってこないんじゃなかったの!?」

「テメェ、バーサーカーを近くまで誘き寄せてたな?」

「フッ、流石に多勢に無勢だから利用させて貰っただけだ」

 

 

 オルガマリーがヒステリー染みた悲鳴を上げる中、クーフーリンはアーチャーを睨み付ける。睨まれたアーチャーは肩を竦めるだけだった。

 バーサーカーが此方に向かっている理由は至極簡単、アーチャーが遠距離からバーサーカーがいた廃城へと狙撃。そのままバーサーカーの近くに矢を着弾させ続け、その跡を追わせたのだ。

 

 

「おぉう…2方面作戦かいな」

「慌てた様子で無い様だけどマスター、勝算は有るの?」

「ちょっと、如何するのよ!? ヘラクレス相手なんて流石に無茶でしょ!?」

 

 

 対するはシャドウサーヴァントのアーチャーとバーサーカー。冬木大橋でのアサシン&ランサー戦を思い出すが、今回の相手は中々手強そうだ。

 

 

「マシュとクー兄でアーチャーを相手してくれる? 御供は付けるさかい」

「坊主と魔女だけでバーサーカー相手するのか? 幾等なんでも無茶じゃねぇか?」

「おいちゃんにはこのメタルスラッグがあるし、とっておきもまだ有るべ」

「そうかい、なら後で泣き言無しだぜ?」

「先輩、無茶しないでくださいね?」

「モーマンタイ。って事でマシュ達の援護宜しく頼むヨシツネ、ドゥン!!」

 

 

 2本の封魔管を取り出して呼び出すは2体の仲魔。

 召喚の光が消えた後には烏帽子を被った鎧武者姿のヨシツネと燃え盛る虎の様な獣であるドゥンが立っていた。

 

 

「っしゃあ! いくぜ!!」

「アオーン、任せろサマナー!」

「っく…どれだけ使い魔を持っているのだ君は!!?」

 

 

 召喚と同時にヨシツネがアーチャーへ抜いた2振りの刀で切り掛かり、アーチャーが中華剣で受け止める。しかし、そこへドゥンがファイアブレスを放ち、アーチャーは素早く下がりながら弓へ持ち替えて迎撃を開始する。放たれる矢を撃ち落としながらヨシツネとドゥンが追跡し、その後をマシュとクーフーリンも続いた。

 

 

「マシュ達は戦闘開始した訳だし、そいじゃあ此方も…」

 

 

 メタルスラッグに戻った優作は車体を転進させて向かって来るバーサーカーを確認する。身長2メートルを超える筋骨隆々の巨体で瓦礫を吹き飛ばしながら向かって来るバーサーカーはまるで人間戦車の様であった。

 

 

「おっぱじめようかねぇっ!!」

 

 

 バーサーカーに向けてバルカン砲を向け、戦いが始まった。




元ネタ
>シモ・ヘイヘ(出典:リアル)
言わずと知れたフィンランドの白い死神。
リアルチートの一人であり、アンサイクロペディアも真実しか書けないレベル。

>ルーデル(出典:リアル)
正確な名前は『ハンス・ウルリッヒ・ルーデル』。
第2次世界大戦で活躍したドイツ空軍パイロットで人類史上最も多くの機甲戦力を破壊したと思われる戦車撃破王。
シモ・ヘイヘと並ぶリアルチートの一人であり、アンサイクロペディアも真実しか書けないレベル。

>D4C(出典:ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン)
少年ジャンプの漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』の登場人物である、ファニー・ヴァレンタイン大統領の持つスタンド能力。
何かの間(ガラス片や水滴のような液状物でも可)に挟まる事でそっくりそのままの少しだけ違う世界を行き来できる能力を持つ。

>リチャード・ナイツ(出典:サガフロンティア2)
スクウェア・エニックスのRPGゲーム『サガフロンティア2』の登場人物。
原作の主人公の一人であるウィル・ナイツの息子であり、偉業を成し遂げた父と比較されることを嫌い、何物にも捕らわれず自由奔放に生きる生活を選んだディガー。
卓越した剣と槍の腕を持ち、術の資質は父を超える。
一族の宿敵であるエッグの行方を追っていた際に意識を支配され掛け、自ら命を絶った。

>ビーストランス(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する槍武器。
クヴェルである為に壊れる事が無い。

>クヴェル(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場するある物体の総称。
人類が繁栄する前の先史文明が作り出したオーパーツであり、一部地域を除いて貴重な品として扱われている。


>赤魔道士(出典:FFシリーズ)
スクウェア・エニックスのRPGゲーム『ファイナルファンタジー(FF)シリーズ』に登場する職業。
基本武器は剣やレイピアであり、黒魔法、白魔法の初級術他、バフ・デバフ魔法が集まった赤魔法を使うが、何よりの特徴が連続して魔法を発動する「連続魔法」である。

>ヴィエラ族(出典:FFシリーズ)
『FFシリーズ』に登場する種族。
ウサギのような長い耳を持ち、女性しかいない種族で俊敏で集中力に長け、生まれながらにハンターの資質を持っている。また、精霊と交信する事が出来る為この種族しか成れないジョブが有る。


>スリースターズ(出典:FFシリーズ)
『FFシリーズ』に登場するアクセサリー。
装備するとどんな魔法を行使してもMP消費量を1固定にする。

>ミスティシンボル(出典:テイルズオブシリーズ)
バンダイナムコのRPGゲーム『テイルズオブシリーズ』に登場するアクセサリー。
装備すると魔術系詠唱時間を半分にする。


>ヨシツネ ドゥン(出典:デビルサマナーシリーズ他)
アトラス作品に登場する悪魔。
本作のヨシツネは他シリーズ要素が加わっている事から…あっ(察し)


Q、クーフーリンとメディアに着せた服の理由は?
A、似合ってると思った作者の趣味やで。(だからそれぞれの衣装を着たイラスト誰か描いて下さい)←要求乞食

Q、スリースターズとミスティシンボルを装備したメディアって無敵過ぎない?
A、仲間を強化して何が悪い?


次回は9月30日投稿予定。
感想コメント、意見・質問お待ちしております。

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