フェイト / グランド なりきり オーダー   作:影鴉

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遣りたい放題の猛威が某節穴さんを襲う!!


優作は鬱展開が大嫌い

 セイバーが消滅し、残ったのは黄金に輝く水晶体の様な聖杯と4個の聖晶石のみ。

 残されたそれらはマシュによって回収された。

 

 

「セイバーに私の事について聞く事が出来ませんでした…」

「結局、詳しい事は解からず仕舞いかよ………おっと、どうやらオレもお役御免らしい」

「クーフーリンさん!?」

 

 

 セイバーを倒し、聖杯を回収した以上、聖杯に招かれた英霊であるクーフーリンもマスター無しでの現界が出来なくなっていた。そんな彼の体もこれまで倒してきたサーヴァント達の様に、光の粒子となって散り始めていた。

 

 

「今回の戦いは中々良かったぜ、坊主。次にオレを呼ぶ機会があれば、ランサーとして呼んでくれ!」

「そうはいかんざき」

「へ? おぁ!? 管に吸い込まれていく!?」

 

 

 そのまま消えていこうとしていたクーフーリンであったが、優作が封魔管を1本取り出してクーフーリンに向ける。すると、上部の軽く開いた隙間部分へとクーフーリンから散っていく粒子が吸い込まれていく。

 

 

「折角なんやからこの場で仲魔にします」

「へぁ!? いや、まぁ召喚で呼ぶよりかは確実だけどよ、オレとしてはランサーの方が…」

「ゲイボルグ習得出来たし、モーマンタイやろ? むしろそっちの方がランサーで呼ばれるよりも更に強くなれるべ」

「お、おぅ…だろうな…。なら坊主、この件が終わったらあのヨシツネって奴と戦わせろ! 後、坊主もだ!!」

「了解さな。つぅ事でクー兄、ゲットだぜ!!」

 

 

 優作と約束を交わし、クーフーリンは封魔管へと入っていく。

 

 

【お疲れ様、マシュ、優作君。どうやら君達は聖杯を手にした様だね? こちらでも空間の歪みの解消を確認した。そこは映像が繋がらないみたいでね、君達の活躍が確認出来なかったのが残念だよ】

「これでファーストオーダーは終わりでしょうか? 所長?」

 

 

 ロマニが労いの言葉を掛ける中、マシュが今後の行動をどうするかオルガマリーへと指示を問い掛けるが、彼女は腕を組みながら何やら考え事に浸っていた。

 

 

冠位指定(グランドオーダー)・・・何故その単語を英霊が・・・・・・」

「所長?」

「え? そ、そうね。良くやってくれたわ、優作、マシュ、そしてキャスター。不明な点は多いけど、これでファーストオーダーは終了とします。もうここに長居する意味は無いし、さっさとカルデアに帰りましょう。ロマニ、すぐにレイシフトの準備を…「いや、まだ終わらんみたいやで?」…優作?」

「あら、マスターも気付いていたの?」

「そりゃ、アルも見られてるつってたし。戦っている時に何も仕掛けてこなかった以上、今ここで漁夫の利狙って襲ってくるんじゃないかと、な?」

(悲鳴を上げて転げまわっていた割にちゃんと話は聞いていたのね…)

 

 

パチ パチ パチ パチ パチ

 

 

 洞窟内に拍手が響き渡る。しかし、妙な、何処か人を小馬鹿にしている様な皮肉の込められた嫌味な拍手な気がした。

 

 

「いや、まさか君達がここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ」

「レ……フ?」

「あの男は何?」

「レフ教授です。カルデアの魔術技師であり、所長に次ぐ重鎮になります」

 

 

 拍手及び声の主はセイバーが初めに立っていた場所に何時の間にか立っていた。

 モスグリーンのタキシードにシルクハット、そして赤みのかかった癖毛の長髪と常時細目で微笑む姿が特徴的な男。オルガマリーが呟いた通り、中央管制室爆発の際に死亡したと思われていたカルデアの顧問魔術師、レフ・ライノール本人であった。

 メディアは初めて見る顔だったので、マシュが説明をした。

 

 

【レフ!? レフ教授だって!? 彼も爆発に巻き込まれた筈……本当に彼がそこにいるのか!?】

「うん? その声はロマニ君かな? 君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来て欲しいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。全く…………どいつもこいつも統率の取れていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」

 

 

 優作の着けている腕輪からロマニの声が響くとレフの笑みが醜悪なモノへと変わり、優作達を見下す様な視線を向けるレフに、優作は改めてカルデアで感じた黒幕・悪人フラグが当たりだと理解する。優作と同じく悪意を感じたマシュは前に出て盾を構え、メディアも何時でも魔術を行使出来る様に構えていた。

 しかし、現状を理解出来ず彼に駆け寄ろうとする者が一人いた。

 

 

「レフ……あぁ、レフ、レフ、生きていたのねレフ! 良かった、貴方が居なくなったら私、この先どうやってカルデアを守れば良いか分からなかった!」

 

 

 若くして所長となり彼に頼りきりだった少女、オルガマリーである。彼女が近づこうとするのを見るや否や、再び温厚な笑みを浮かべるレフ。しかし、オルガマリー以外の面々にはその笑みがまるで苛立ちを隠す為の仮面の様な不気味さを感じた。

 

 

「やあ、オルガ。元気そうで何よりだ。君も大変だったようだね?」

「ええ、ええ、そうなのレフ! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、優作に助けられたけどあと少しで竜牙兵に殺される所だったし、予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった!! ・・・でも良いの、貴方がいれば何とかなるわよね? だって、今迄そうだったもの。今回だって私を助けてくれるんでしょう?」

「ああ、勿論だとも。まず、君達が手に入れた聖杯を渡してくれ」

「分かったわ……ねぇ何で私の腕を掴むのマシュ? 放してよ!」

 

 

 レフの元へ駆け寄ろうとするオルガマリーだったが、彼女の腕を掴むマシュの顔は険しい。

 

 

「所長、下がって…下がってください! あの人は危険です……あれは、私達の知っているレフ教授ではありません!」

「何を馬鹿な事を言ってるの!? 放しなさい、放してっ!!」

 

 

ズドン

 

 

 オルガマリーが引き留めるマシュを振り払い、レフの元へと駆け寄ろうとした瞬間、銃声が洞窟内に響き渡り、それと同時にレフは後ろへと倒れた。彼女が銃声の方を向くと、優作が硝煙を上げるコルトライトニングカスタムを構えていた。

 

 

「ゆ…優作何でっ!? …「立てよ。撃ったのは只の鉛玉だ、これくらいじゃ死な無ぇだろ?」…死な無い…? 何を言って…」

「クックック…」

「…嘘…?」

 

 

 優作の暴挙と思われる行動にオルガマリーが唖然とする中、嘲笑うかのような声を挙げながらレフがゆらりと立ち上がる。

 その額には銃弾が貫通した穴が空いていたが、血は流れて無く、徐々に塞がっていく。その様子を見たオルガマリーも流石に彼が異常である事を理解し、後退った。

 

 

「…まさか容赦無く撃ってくるとは思わなかったよ。障壁を展開する暇すら無かったよ」

「隠す気も無い人外の気をプンプン出してる時点でそんな事言われてもねぇ?」

「ほぅ、解かるのか…48人目のマスター適性者。全く見込みの無い奴であろうと、善意で見逃してあげた私の失態の様だ」

「知らんがな。どっちにしろ、今回の事件の黒幕はアンタな訳だ? なら叩きのめして捕らえるだけだし」

「捕らえる? この私を? ククッ、ハハハハハッ!」

 

 

 愉快だと言わんばかりに高らかに笑うレフ、しかしそれは優作達を滑稽だと馬鹿にした笑いだった。

 

 

「愚かだ、実に愚かすぎる。サーヴァントと渡り合えようが君も所詮、他の愚かな人間達と変わらない。そして君もだよ、オルガ。爆弾は君の足下に設置したのに、まさか生きているなんて」

「………え?」

 

 

 レフの言葉にオルガマリーは唖然とする。

 

 

「……レ、レフ? あの、それ、どういう、意味?」

「いや…“生きている”とは違うな。君は“もう死んでいる”。肉体はとっくにね?」

「う、そ…?」

 

 

 悪鬼の様な笑みを浮かべるレフの言葉にペタリと崩れ落ちるオルガマリー。この冬木の街にレイシフトする直前に体験したあの痛みは記憶障害等では無かったのだ。

 呆然とする彼女を余所にレフの言葉は続く。

 

 

「トリスメギストスはご丁寧にも、残留思念になった君をこの土地に転移させてしまったんだ。レイシフト適正のない君は肉体があったままでは転移出来ないからね。分かるかな? 君は死んだ事で初めて、あれほど切望した適性を手に入れたんだ。だから、カルデアにも戻れない。だって、カルデアに戻った時点で、君のその意識は消滅するんだから」

(成程ね、今の所長さんの姿は彼女自身がイメージした姿。だから怪我処か服に汚れすら無かった訳だ)

 

 

 優作が内心で納得する中、オルガマリーだけを見詰めながらニコリと笑うレフ。しかしその表情とは裏腹に彼の目付きは冷たく、あらゆる全てを蔑んだ笑みである事は明らかであった。

 

 

「え……え? 消滅って、私が……? ちょっと待ってよ……カルデアに、戻れない?」

「そうだとも。だがそれではあまりにも哀れだ……そこで、生涯をカルデアに捧げ、ましてや精神だけになってまで人類のために尽くした君に、最後の手向けとして今のカルデアがどうなっているかを見せてあげよう」

「あ、聖杯が!?」

 

 

 レフが手を掲げるとマシュが持っていた聖杯が彼女の手元から離れ、一瞬の内に彼の手に収まった。そして空間を指でなぞる様な動作をすると、レフの背後の空間が歪み、真っ赤な巨大地球儀、カルデアスの姿が現れた。

 

 

「な……何よあれ? カルデアスが真っ赤になってる……? 嘘・・・よね? あれ、ただの虚像でしょう、レフ?」

「酷いなオルガ、これは本物だよ。態々、君の為に時空を繋げてあげたんだ。聖杯があればこんな事も出来るからね。そしてこれこそ人理が焼却した証であり、もはやこの結末は変えられない!!」

【なっ…人理の焼却だって!? それじゃあ、2016年以降を観測出来ないのは…】

 

 

 驚愕するロマニの言葉にレフは醜悪な笑みを浮かべながら頷く。

 

 

「もう既に気づいているのではないかね、ロマニ? 人類はこの時点で滅んでいる。貴様達は未来が観測できない事に対し、未来が消滅したなどとほざいていたが、そんなのは希望的観測だ。未来は消滅したのではない。焼却されたのだ。既に結末は確定した。貴様達の時代はもう存在しない今現在、カルデアが無事なのはカルデアスの磁場で守られているからだ。だが、カルデアの外はこの冬木と同じ末路になっているだろう」

【外部と通信が取れないのは故障では無く、受け取る相手が既に存在していないからか……!】

「ふん、やはり貴様は賢しいな。オルガよりも君を優先して殺すべきだったよ。まぁ、それも虚しい抵抗だ。カルデア内の時間が2015年を過ぎれば、そこもこの宇宙から消滅するだろうさ」

 

 

 吐き捨てる様に言葉を零しながら、レフは改めてオルカマリーを見据えた。

 

 

「さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。あれがお前達の愚行の末路だ。人類の生存を示す青色は一片もない。有るのは燃え盛る赤色だけ。あれが今回のミッションが引き起こした結果だよ。良かったねぇマリー? 今回もまた、君の至らなさが悲劇を呼び起こしたワケだ!!」

「ふざ──ふざけないで! 私の責任じゃない! 私は失敗していない! 私は死んでなんかいない……! アンタなんか、レフじゃない!! アンタ、どこの誰なのよ!? 私のカルデアスに何をしたっていうのよぉ……!」

「アレは“君の”、では無い。“私が作った物”、だ。全く……最期まで耳障りな小娘だったなぁ、君は」

 

 

 鬱陶しそうな表情でレフが再び空間を指でなぞるとオルガマリーの身体がふわりと宙に浮かび上がった。彼女の身体はそのまま引き寄せられる様にカルデアスへと向かっていく。

 

 

「きゃあっ!? な、何をするの!?」

「だから言っただろう、君への最後の手向けだよ……そこまでカルデアスに執心なのだから、君の宝物とやらに是非全身で体験してみたまえ」

「な…何を言ってるの!? 止めてよレフ! だってカルデアスよ!? 高密度の情報体よ? 次元が異なる領域なのよっ!?」

「ああそうだね、ブラックホールと何も変わらない、まぁ太陽かもしれないが…まぁどうせカルデアに戻る事無く君は消滅するんだ。それなら、君の宝物に触れさせてあげようじゃないか。何にせよ、触れるモノは全て分子レベルで分解される。残留思念に過ぎない君もそうなるって訳さ」

 

 

 言葉を交わしてる内にオルガマリーはどんどんカルデアスへ引き寄せられていく。このまま呑み込まれるのも時間の問題だった。

 

 

「さぁ、生きたまま無限の死を味わいたまえ」

「嫌…嫌ぁっ!! 私はまだ死にたくない!! 助けてよぉ!!? マシュ、優作助けてぇ!!」

【不味い、このままじゃ所長が…!】

「所長っ!!」

「如何するの、マスター?」

 

 

 オルガマリーのピンチであるが下手に近付けば彼女と共にカルデアスに呑み込まれてしまうだろう。

 如何する事も出来ない状況に焦るマシュに対し、優作は顔を顰めながら黙っていた。

 今現在、優作はキレていた。

 

 

「ロマン、確認すっけど所長さんは“死んで魂だけの状態”なんだな?」

【…あぁ。おそらく所長は……魂だけがレイシフトしてそこにいるんだと思う】

「なら…」

 

 

 優作が懐から取り出したのは一本の封魔管。仲魔を呼んで助けるのかと思いきや、優作は蓋を軽く開けてカルデアスに引き寄せられているオルガマリーへと向けた。

 

 

「嫌ぁ! 死にたくないっ! やっと認めてくれたのっ! “頑張ってる”って、初めて誉めてくれたのよ!!? 今迄、誰も私を評価してくれなかった! 皆、私を嫌って嘲笑っていた! 漸くなの! なのに、あんまりよ!!」

 

 

 これまで所長として、カルデアを維持する者として振舞い、責任を背負いつづけていた。だが、それを誰も認め、褒めてはくれなかった。それどころか誰もが自分を嫌い、疎ましい存在と思われ続けていた。

 “自分はずっと一人ぼっち、”そう思っていた。

 しかし優作は、まだ知り合って間もないのに認めてくれた。

 宙に浮かびながらも必死でもがくオルガマリー。しかし、彼女の抵抗も虚しくその身体はどんどんカルデアスへと引っ張られていく。

 

 

「最後までみっともない姿だな、オルガ。まぁ、醜い人間の最後などこんなモノか…精々無駄な足掻きで楽しませてくれ。そして、君は永遠の死を味わいながらずっと生き続けるんだ!!」

「やだ…死にたくないの…、いや…イヤアァァァァァァァァァァァアァァッ!!!」

 

 

 オルガマリーの抵抗を滑稽だと嘲笑うレフ。

 そのままオルガマリーはカルデアスに呑み込まれ………無かった。

 

 

「何?……何が起きている? 何故動かない!?」

 

 

 カルデアスに呑み込まれる寸前、宙に浮く彼女はその手前で止まった。それどころか徐々に離れていく。

 突如の事態に笑みを浮かべていたレフの表情も困惑へ変わる

 

 

「おいちゃん、嫌いなんだよねぇ…。正しい方向に努力してるのに何も報われる事無く、死ぬって展開…全く…」

 

 

 オルガマリーが改めて引き寄せられていく方向の先には封魔管を持つ優作の姿があった。

 

 

「そんな展開、認め無ぇから」

「先輩…!」

「カルデアスから離れていく? 一体何をした!?」

「現状、所長さんは死んだ事に因って霊体になっている。つまり“幽霊”って訳だ。だから…」

 

 

 優作の元へどんどん引き寄せられていくオルガマリー。

 そして遂には優作の持つ封魔管へ吸い込まれていった。

 

 

「クー兄達、英霊宜しく、封魔管に宿らせる事が出来る訳だ」

 

 

 彼女を吸い込んだ封魔管を翳し、優作は改めて現界させた。

 

 

「私…助かったの?」

「死なせんよ。おいちゃん達には所長さんが必要なんだから、死ぬ事は許さん(何より所長さんもモデルとして逸材だし…)」

「先輩の言う通りです。私達は所長の頑張りを確かに知ってます! 所長はカルデアに必要なんです!」

「優作、マシュ…」

 

 

 自分が必要だと言われた事で照れて顔が赤くなるオルガマリー。彼女の無事な姿にマシュも安堵の表情を浮かべた。

 

 

「おのれ…一思いに楽になれたものを…」

「無限ループで死にまくるのが楽とか頭湧いてんのか、お前? 人間の屑がこの野郎…」

「ふん、君達の様な人間と同類に扱って欲しくないな。私は最早全く、別の生き物なのだよ。改めて自己紹介をしようじゃないか。私はレフ・ライノール・フラウロス。人類を処理するために遣わされた2015年担当者だ!!」

【フラウロス…?】

(フラウロスっていや、ソロモン王が使役してた悪魔の一柱だったな…なら此奴は下っ端で黒幕はソロモン王か? ………あり、フラロウスでなかったけ?)

 

 

 芝居がかった動きでレフは白熱した様子で声を荒げ始める。彼の言葉にロマニと優作がナニカに気付く。

 

 

「解かるかね、最後のマスター適性者よ? お前達は進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのでは無い。自らの無意味さに! 自らの無能さ故に! 我が王の寵愛を失ったが故に! 何の価値もない紙屑の様に、跡形も無く燃え尽きるのさ!!」

「話が長いわ、クソ野郎」

 

 

 優作はうんざりした様子で再びコルトライトニングカスタムを抜いてレフに向けて撃ち続けていく。しかし、レフは透明な障壁を展開し弾丸は障壁によって拒まれた。

 

 

「クハハハハハハハッ! 無駄、無駄、無駄だぁ!! 王の寵愛を受けし私に、そんな攻撃が通じるものか!!」

「…まぁ、だろうな。だから遊びは終わりだ(・・・・・・・)、メインチェンジ『時を駆ける魔王:ダオス』」

 

 

 コルトライトニングカスタムを懐に戻した優作は掌をレフへと翳す。

 瞬間、閃光がレフを貫き左半身を消し飛ばした。

 

 

「…は?」

 

 

 腰あたりから左肩までを失い身体を支えきれなくなったレフはグシャリと生々しい音を立てながら崩れ落ちる。

 

 

「障壁、が突き…破られた…? それにその姿…一体何…何を、何をしたんだ貴様ぁ?!」

「知る必要があるか?」

 

 

 再びレフへと掌を翳して閃光を放ち、肉体を修復途中だった彼を消し飛ばした。

 レフの言葉通り、優作は学生服姿から全身をオレンジを基調としたマントに包まれた姿に変わっていた。

 残ったのは閃光に呑まれなかった右手だけだったが、それなりの力を持っているのであろう、残った右手から再び修復を始めていた。

 

 

「ヘラクレスの宝具をパクってんのコイツ?」

「人外の肉体に変質してるのもあるけどこの男、神代の魔術師並みの魔力を持っているわ。王の寵愛とやらの影響なのでしょうね」

「グギギ……き、貴様ぁ…」

 

 

 修復を終え、立ち上がったレフは憎悪を滾らせながら優作を睨み付ける。そんな睨まれた本人は肉体どころか着ていた衣服まで戻っている辺り器用だなと思っていたのだが…

 

 

「塵屑と何ら変わらない存在如きがぁ!! 王の寵愛を受けたこの…「噛ませ発言乙」……グピッ!?」

 

 

 一瞬でレフとの距離を詰めた優作は拳と蹴りによる連撃を叩き込む。

 

 

「ここまでド三流悪役発言噛ましてくれるたぁ……有り難くって涙が出らぁっ!!」

「ガバッ、ボゲェッ、ゴブラァ!?」

 

 

 止めに踵落としを顔面に振り下ろし、そのまま地面へと叩き潰した。

 

 

「そういや、世界を焼却したんだよな? つまり、家で帰りを待ってるおいちゃんの両親やら土産を楽しみにしてる後輩達も燃やした訳だ?」

「燃やされた塵屑がどうし…「クー兄、焼き殺したって」…ッグギャアアァァアアアア!!?」

 

 

 優作の言葉と同時にレフの足元に魔方陣が展開される。瞬間巨大な火柱が立ち昇り、彼は業火に飲み込まれた。

 

 

「やっぱ…『焼殺』は最高やな」

「腐れ外道相手だし良く燃えるだろ。それよりほらよ」

「ん、聖杯回収あんがと」

 

 

 レフが現れた時点で優作はクーフーリンが入った封魔管をこっそりと開放。念話でレフの死角に回る様に指示しつつ、奪われた聖杯を奪い返すチャンスを待たせていた。

 

 

「貴様ぁああああ────!! 私の邪魔どころか聖杯までも…「エクスプロード」…ギャバッ!!?」

 

 

 優作の詠唱と同時に小さな火の粉がレフへと付着し、大爆発を起こす。消し炭から元に戻ったばかりの彼は爆炎に飲み込まれ再び消し炭と化した。

 尚、爆風は洞窟内に広がったがメディアが障壁を張っている事でマシュ達が呑み込まれる事は無かった。

 

 

「カルデアの職員達を爆殺して所長さん焼こうとしたんだからさ、自分も燃やされる覚悟あんだろ?」

「ガハ…な…何ィ…?」

「あぁ、マシュも殺しかけてたな……ほんと、有り難いわ…テメェみたいなゲス野郎、倫理観ガン無視で叩き潰しても罪悪感を感じる必要が無いんだからなぁ! テトラスペル!!」

 

 

 新たな詠唱で4属性の魔力が展開される。先ずクーフーリンのアンサズと同等の巨大な火球が幾つもレフへ降り注ぐ。レフは障壁で抵抗するが1つ目の火球が障壁を焼き尽くし、残りが彼に命中する。

 

 

「グガアァアアアアッ!!?」

「熱いか? なら冷やさなきゃな?」

「ゲピィッ!?」

 

 

 続いて突撃槍の様に鋭く太い氷が幾つもレフの身体を貫いてゆく。

 

 

「如何した? どっかの王の寵愛を受けたんだろ? 抵抗してみろよ、オラァ!!」

「ギャアアアアァア!!?」

 

 

 新たに雷が降り注ぎ、再びレフの身体を焼き焦がしていく。

 

 

「ここまでくるといっそ哀れだな、止め無ぇけど」

「家族や友人を実質殺した犯人の一人なのだから当然ね」

「はわわっ、敵とは云え遣り過ぎな気がします」

フォウフォウ、キュウ(本当に人間なんですかねぇ、彼)?」

「………(家族が焼却されてのが大半なのでしょうけど、私達の事で怒ってくれるのね…)」

 

 

 地面から槍の様な岩が突き上がり、レフを串刺しにする様を見ながら優作の後ろで待機していた面々が呆けた様子で言葉を零す。

 

 

「何だ、なんだなんだ、何なんだお前はぁ!!?」

「絶賛ブチギレ中の“不思議な力を持った一般人”じゃあ!! ゴッドブレス!!」

「ひでぶっ!?」

《まだ一般人を名乗るんだ…》

キュウキュフォーウ(意地でも一般人を言い貫くスタイル、)フォーウ(嫌いじゃないわ)

 

 

 何度も殺され続ける現状に遂には怯えを含んだ表情で喚くレフに優作は容赦無く魔術を叩き込む。レフの真上で大気が纏まり、高密度に圧縮された空気がそのまま彼を押し潰した。

 高圧縮の風圧を叩き込まれた事により、地面深く迄めり込んだレフ。しかし、地面から現れたのはヒトガタで無かった。

 

 

「ふざけるなああああぁぁあアアアアア──────ッ!!!」

「うんわ…きっしょ」

「な、何なのアレ!?」

「成程ね。力を得た代償…と言うのか、アレがあの男の正体な訳ね。醜いこと」

 

 

 現れたのは肉塊で構成された塔の様なバケモノだった。

 ビクビクと蠢く肉塊の彼方此方に目玉が生えたその姿は正に醜悪の一言で纏められる。

 

 

「絶対に許さんぞ、貴様ァ!! この特異点も間もなく消える以上、空間ごと貴様達も消えるのだろうが知った事かっ!! 今この手で葬ってくれ…「それはこっちの台詞だ」…る!!?」

「死ぬが良い、ダオスコレダーッ!!」

「ぐ、オォォオオオオオォオオオオオオッ!!?」

 

 

 怒鳴り散らしながら攻撃に移ろうとするレフだったが、そんな時間を優作が与える筈が無く。何時の間にか肉柱の根元にいた優作が地面に向けてエネルギーを込めた拳を振り下ろした。

 優作が振り下ろした拳の位置を起点に大爆発が起こり、エネルギーの奔流がレフを呑み込んだ。洞窟の天井を突き抜ける程の巨体が消滅していく。修復しようにも消滅のスピードが速すぎて間に合わない。

 

 

(このままでは本当に消滅…、私が、死ぬ?)

「とっととくたばれ、クソ野郎」

「おのれ、おのれ、オノレ、オノレェエエエエエエ─────ッ!!?」

 

 

 レフの怨嗟の声と共にエネルギーの奔流が止む頃、巨大なクレーターだけが残っていた。

 

 

「ちっ、ギリギリで逃げたか」

「ちょっと、マスター! 高威力の技を使うなら先に言いなさい!! 余波だけでも、もう少しで障壁を突き破る所だったわっ!!」

「メディ姉、御免。威力は加減したつもりやったのけど、キレてたから加減が甘かったみたい。後で詫びはするさかい」

 

 

 レフが逃げた事に舌打ちする優作にメディアが叱り付ける。キレた優作が暴れた余波に因る二次被害を防いでいた彼女はこの戦闘におけるMVPであるだろう。

 しかし、事態は急を要していた。レフが言っていた様に特異点の問題を解決した事に依り、この空間は崩壊を始めていた。

 特異点が崩れていく中、マシュが慌てて要請する。

 

 

「地下空洞が崩れます……! いえ、それ以前に空間が安定してません! ドクター、至急レイシフトを実行してください!!」

【解かってる! もう実行しているんだけど…そっちの崩壊が早いかもだ!】

「時間を稼げば良い訳だ?」

「言うと思ったわ。それで如何するの、マスター?」

「俺も何か策があんだろうとは思ってたけどよ、どうすんだ?」

 

 

 一方の優作は落ち着いた様子。短いながらも是迄の付き合いで彼の遣りたい放題っぷりを見て来たメディアとクーフーリンは現状の策を聞いてみる。

 

 

「タイムストップ」

 

 

 優作の言葉と同時に、周囲の風景が灰色に染まった。崩れだして洞窟上部から降ってきていた瓦礫が縫い付けられた様にピタリと動かなくなる。

 

 

「これって…時間を止めたの!?」

「然様。でも止められる時間は少ないからさっさとやっちゃってな、ロマン」

【…君の無茶苦茶振りには開いた口が塞がらないよ。でも、もう少しでレイシフト完了だ】

「そんじゃあ、クー兄と所長さんは封魔管に戻ってね。えぇと…メディ姉はどうすれば良いん?」

【彼女はカルデアを介した召喚サーヴァントだから一緒にレイシフト出来るから問題無いよ】

「ならモーマンタイやね、それじゃあお二人さんは宜しく」

「はいよ。それじゃあ坊主、約束忘れんなよ?」

 

 

 約束の確認をしながら、先ずクーフーリンが封魔管へと戻った。

 

 

「んじゃ最後に所長さん」

「あの…大丈夫なのよね?」

「心配しなさんな、カルデアに戻ったら新しいボディも用意するさかい」

「!? 元に戻れるの!?」

「言ったやろ? おいちゃん、正しい方向に努力してるのに何も報われないのが嫌いなの」

 

 

 封魔管をオルガマリーへと向けながら、優作はニヤリと笑った。

 

 

マリー(・・・)は報われるべき」

「優作…有難う」

 

 

 感謝の言葉を残し、オルガマリーも封魔管へと戻る。

 同時にレイシフトが開始され、周囲が光に包まれていく。

 

 

「そんじゃ、帰りますか。フォウ、おいちゃんの肩に」

フォウ(あいあい)

「えぇと、此処に来る時みたいに手を繋ぐべきかね?」

「そうですね、その方が良いです」

「なら…メディ姉も」

「分かったわ…って、何赤くなってるの?」

「おいちゃん、マシュやメディ姉みたいな美人さんに触れられるの慣れてないさかい。勘弁してな」

「あらあら(意外と年相応な所もあるのね?)」

 

 

 衣装をライドウの服に戻し、優作はマシュ達と互いの手を握る。

 止まった時も動き出し、洞窟内が崩れ往く中、優作達はレイシフトの光に呑まれていった。




元ネタ
>ダオス(出典:テイルズオブファンタジア他)
『テイルズオブファンタジア』の登場人物で本作のラスボス。
異星デリス・カーラーンの最大国家“エリュシオン”の王であり、魔科学兵器によって滅びの道をたどり始めた母星を救うため、世界樹ユグドラシルが生み出すマナの結晶体 “大いなる実り”を求めて本作の舞台となる“アセリア”を訪れた。
しかし、アセリアのマナは魔科学によって徐々に枯渇しており、大樹ユグドラシルも枯渇の危機に陥っていた。そのためマナを浪費する人間(特に魔科学に関係する勢力や人間)に対し、魔物を率いて大規模な戦争を仕掛け始めた事から物語は始まる。
他シリーズにもゲスト出演している他、『テイルズオブエターニア』では彼を模したと思われる時を司る大晶霊『ゼクンドゥス』がいる。
作品によって強さがまちまちだが、ラスボスの強さとしてもテイルズオブシリーズで3指に入ると言われている。

>ダオスレーザー(出典:テイルズオブファンタジア他)
ダオスが使用する特技で両手にエネルギーを収束して強力なレーザーを放つ。
攻撃範囲は直線状であるが射程無限な上、回避、防御無視と凶悪な性能でまともに喰らうと即死クラスのダメージとなる。
作品によって光属性だったり属性無しだったりするので耐性装備を怠らなければ即死する事は無い。

>テトラアサルト(出典:テイルズオブファンタジア他)
ダオスが使用する特技で打撃技を4連続行う。
作品によってパンチだけであったり、締めにアッパーを使ったり、両手の払いから蹴り上げ、踵落としと繋げたりと様々。

>焼殺(出典:サガフロンティア2)
『サガフロンティア2』に登場する炎術。
『炎』+『炎』+『石』+『樹』の組み合わせで発動し、対象は単体ながらも即死の追加効果が有る。

>エクスプロード(出典:テイルズシリーズ)
『テイルズシリーズ』に登場する火炎属性上級魔術で敵の間近で大爆発を発生させてダメージを与える。
ダメージは大きいがヒット数が基本1と少な目。

>テトラスペル(出典:テイルズオブファンタジア他)
ダオスが使用する魔術で4種の術を無詠唱で連続使用する。
元々はファイアーボール、アイスニードル、グレイブ、ライトニングといった基礎魔術を連続使用したのだが、作品によって使用する術が異なったりする。

>ゴッドブレス(出典:テイルズシリーズ)
『テイルズシリーズ』に登場する風属性上級魔術で、風圧で敵を押し潰しダメージを与える。
威力は高いが、攻撃範囲がもの凄く狭いという欠点もある。

>ダオスコレダー(出典:テイルズオブファンタジア他)
ダオスが使用する特技で地面に高圧エネルギーを叩きつけて半球状の爆発を起こす。
技を使用するダオスから約一画面程の射程があり、回避、防御無視とダオスレーザーと同じく凶悪性能。
真面に喰らうと即死クラスの技だが、作品によって光属性だったり属性無しだったりするので耐性装備を怠らなければ簡単に即死する事は無い。

>タイムストップ(出典:テイルズシリーズ)
テイルズシリーズに登場する法術で場合によっては秘奥義扱いになる。
一定時間味方以外の時間を止めるが、敵が放った手裏剣や矢などの飛び道具、一部の敵は止める事が出来なかったりする。


Q、オルガマリー助かってるやん!!
A、ハッピーエンド目指してるんだから助けない訳無いよなぁ?

Q、何時まで一般人ネタを続けるん?
A、優作が諦める日まで。

Q、どんだけレフをボコるん?
A、ぶっちゃけ、全然ボコり足りないけど文章にしたらグダグダになるので是位で許してあげました。


次回のエピローグで特異点F編は終了。
以降は2、3話幕間を挟んで第1特異点へ殴り込む予定。

次回は、10月21日投稿予定。
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