城ヶ崎さんに甘えたい。   作:バナハロ

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ゲームが上手くなるには、まずソロでやること。

 ソロゲーマーの良い所は、一人でゲームが出来る事だ。一人で、という事はつまり、何をやるにも自分のペースで出来る。

 それはモンハンが良い例だ。「タン掘れ」と略されるクエストがある。護石を集めるのに最も適したクエストであり、最短ルートというのが決められているのだ。

 それを守らなければボロクソに叩かれることもあり、最悪集会場から追い出されることもあるのだ。

 別にそれが悪いとは言わない。ただ、他人に気を使うのがどうにも苦手な僕には合わない。

 他のオンラインゲームとかでもそうだが、とにかく僕は画面越しでも人とのコミュニケーションが苦手だ。顔を知らない相手のことなんか気にすることなんかないのに、とにかく相手のことを考えてしまう。

 そんな筋金入りのコミュ障の僕だが、まぁ結局の所はソロでゲームやればなんの問題もないわけだよね。

 だから、僕は一人でモンハンをやっている。それにほら、一人でラスボスとか強い奴を倒すと楽しいじゃん? 最速ラップとか測れるし、自己満足にソロはもってこいだ。

 よって、基本ソロがポリシーだ。やはり、人生最後に頼れるのは最終的に自分一人だ。

 そんな事を考えながら二つ名バルファルクを仕留めた。……でも、なんだかモンハンも飽きてきたな。これだけやれば腕も戻って来たし、多分ワールドが発売されても大丈夫だと思うんだよね。

 新作モンハンを楽しみにしながら3○Sを置いた。現在はまだ蒸し暑さの残る9月、いつのまにか発売まで半年を切っていた。

 楽しみにしながら、初○ミクの曲を聴きながらスマホゲーを始めた。やってるのはFGO。心を無にして種火周回を始めた。

 その直後だった。手に持っていたスマホの画面が唐突に切り替わり、着信画面になった。

 

『城ヶ崎美嘉』

 

 ……あ、どうしよう。出た方が……良いよね。でも出てどうすれば……。と、とにかく応答しないと……。

 

「……も、もしもし」

『あ、もしもし〜★ あたしだけど、玲くん?』

「は、はい……」

『今暇?』

「……ひ、暇です、けど……」

『じゃ、モンハンやろモンハン』

 

 ……や、やはりか……。昨日、知り合ったうちの学校の先輩で女子高生アイドルの城ヶ崎美嘉さんだ。

 僕と対極にいる存在で、正直この人がモンハンをやってるなんて想像も出来なかった。

 どうしようかな……。僕に女の人を楽しませるようなトーク術はない。退屈させたら向こうを不愉快にさせてしまうんじゃ……。

 や、でも向こうも僕にそんなの期待してないと思うし、向こうが欲しいのは技量だよね……。ここは断らずに……。

 

『玲くん?』

「っ、は、はいっ⁉︎」

『どうかした? もしかして忙しかった?』

 

 し、しまった……! 早く返事しないと向こうに気を遣わせてしまう……!

 通話越しなのに両手をわちゃわちゃさせながら早めに返事をした。

 

「い、いえっ! ひ、暇でした!」

『う、うん……あの、緊張してる?』

「し、してないです! だ、大丈夫で……いだっ!」

 

 右手を机の角に強打し、その場で手を押さえて突っ伏した。……く、クリティカルヒットした、今の……。

 

『あの、大丈夫? 何かあった?』

「い、いえ……お気遣いなく……」

 

 うー……右手が……。はぁ……何をしてるんだ、僕は……。一人で騒いで一人で打撃ダメージを負って……。

 一人悶えながら、通話中のスマホを肩と耳に挟んで立ち上がった。

 

『じゃ、やろっか』

「は、はい……! し、少々お待ちを……!」

『あ、うん』

 

 部屋から出て台所に降りて、コップに氷水を注ぎ、それをぶつけた右手で持って、左手でスマホを持った。

 ふと画面を見ると「スピーカー」というアイコンがあった。あ、もしかして、これ押せば音量大きく出来るのかな……。

 試そうと思って、押してから声をかけてみた。

 

「あ、あの……もしもし……?」

『もしもしー?』

 

 声大きくなった。こっちの声も聞こえてるみたいだし便利だなこの機能。

 ……あ、声をかけた以上は何か言い返さないと。

 

「す、すみません……えっと、僕もすぐインするので……お先に、集会エリアに……」

『えっ? あ、う、うん。りょーかい』

 

 ……あれ、なんだろ。何か分からないことあったかな……。まぁ良いや。

 しかし、こうして人に意思を伝えるのは何回やっても慣れない。少し会話するだけで一苦労だ。

 ホッと胸をなでおろしながら右手を冷やしつつ部屋に戻り、椅子に座った。すぐに冷やしたからか、あんまり腫れずに済んだ。

 引き出しから3○Sを取り出し、モンハンをつけた。ログインして、マイクの向こうに声をかけた。

 

「あの……」

『何?』

「これ……二人プレイってどうやって……」

『え、知らないの?』

「その……一人でしか、やったこと無くて……」

『そうなの? あ、もしかして友達いないんでしょ?』

「……」

『え、ほ、ほんとに……?』

 

 言葉の槍に心の臓を貫かれた。すみませんね……過去に一度も友達ができたことないもんで。

 

『あ、あはは……ごめんね……。まさか、従兄弟みたいな高校生がいると思ってなくて……』

 

 従兄弟にボッチがいるなら、取り扱い方くらい肝に命じておいて欲しいものだった。

 

「……いえ、大丈夫です。そ、それより通信プレイのやり方を……」

『あっ、そ、そうだよねっ。えーっと、まずは集会酒場に行って……!』

 

 と、言うわけで、ちょっと精神が崩壊しかけたが酒場で合流を果たした。

 さて、城ヶ崎さんのHRはどのくらいか……と、思ったらまだカマキリを倒してないレベルだった。いや、カマキリどころかバルファルクもまだなんじゃ……。

 

『うっわ……す、すごいね……』

 

 一方の城ヶ崎さんはおそらく俺のHRを見て驚いてるのだろう。まぁ、カンストしてるし当然と言えば当然かな。

 

『もしかして、結構やってる?』

 

 結構なんてもんじゃない。総プレイ時間は人に見せられるレベルじゃないので。

 まぁ、そんなゲーマー自慢をするほど僕も愚かじゃない。

 

「そ、そうですね……少し、だけ……」

『わー、やっぱり? 総プレイ時間どのくらい?』

 

 この人グイグイ来るなぁ……(白目)。完全に僕のSUN値削りに来てる。

 まぁ、とりあえず当たり障りのない返事を……いや、待てよ? 当たり障りのない返事をするゲーム総プレイ時間ってどのくらいだ……?

 まずいな、早く答えないとまた「もしもし?」って聞かれてしまう……!

 

「……さ、さんびゃく、くらいは……」

 

 本当は三百時間どころではないが、たまたま浮かんだ数字がそのくらいだった。

 しかし、非オタの方に三百時間という数字の時点で尋常ではないようで。電話の向こうがしばらく無言になった。

 

『ま、まぁ……友達がいないならそうなっちゃうよね……。うん、仕方ないよ……』

 

 そんなフォローある……? 明らかにトドメ刺しに来てたよね……。これだから人とコミュニケーション取るのは苦手なんだ。人によっては平気で死体蹴りして来るから……。

 それは向こうも気付いたのか「と、とにかく!」と言葉を継いだ。

 

『それより、キャラカッコ良いね!』

「えっ、そ、そうですか……?」

 

 それは嬉しい。キャラメイキングには時間かけたし、装備も作るのに苦労したから。

 逆に、城ヶ崎さんの装備はとても可愛らしかった。なんて言ったっけ……ベルダーXの女性装備。女の子だと可愛いんだなこの装備……。

 

『ほら、やろう! クエスト!』

「っ、は、はいっ」

 

 元気よくそう言われ、僕も頭を切り替えた。

 

『まずは、やっぱりバルファルクかな。まだクリアしてないんだよね』

「……わ、分かりました……」

『あれさぁ、空中から突っ込んで来るの避けられないんだよ。どうすれば良いの?』

「あ、えっと……」

 

 ……どうしよう、そもそもあれ躱すのに手間取ったことないんだけど……ま、まぁ、一番分かりやすく躱せる方法で良い、かな……。

 

「……は、走りながら常に飛んでるバルファルクを画面に入れて……そ、それで突っ込んで来た所で緊急回避をすればなんとか……」

『画面に入れて、か……なるほど……』

「あの、その前に良いですか……?」

『何?』

「その……その装備で、バルファルクに……?」

『え、ダメ?』

「いえ、ダメでは……ただ、龍耐性がないから……その、あまりプレイヤースキルに自信がないようなら……」

『えー、でも可愛いんだもん』

「龍耐性装備でしたら、ナルガクルガがオススメですが……」

『……えぇ、あれ友達四人と袋叩きにしてようやく倒せたレベルだから、もう二度とやりたくないんだけど……』

「僕が手伝いますが……」

『良いの⁉︎ じゃ、やろっか』

「二度とやりたくないのでは……?」

 

 しかし、やろっか、か。簡単に言ってくれるな。こういう時、僕の装備も悩むものだ。はっきり言って上位の装備で問題なく倒せる。むしろその方がスリルがある。

 しかし、それはソロでやる時の話だ。協力、しかも知り合いとやる時は二つのパターンに分かれる。それは手伝う相手がクリアを目的としているか、それとも楽しみながらクリアすることを目的としているか、だ。

 結果は同じだが過程は大きく異なる。前者なら僕がガチ装備で行ってさっさと終わらせた方が早いし、後者ならガチ装備で行くと秒で終わってしまう。

 そして、他にもどの程度本気でやれば良いのかも変わって来るし、アイテムの使用も相手に合わせた方が良いのか分かれる。

 ……あー、正直面倒臭い。だからマルチは嫌なんだ……。や、別に手伝うことは良いんだけど……。

 ハッキリ嫌と思えない辺り、僕も面倒な人間だなぁ……。そんな事を思って、また思わず自己嫌悪しているとまた声が聞こえてきた。

 

『玲くんって、モンハン上手なんでしょ?』

「へっ? ま、まぁ……多分……」

『じゃあさ、少しでもあたしも上手くなりたいから……なるべく、あたしメインで戦っても良い、かな……?』

 

 まさか向こうから依頼が来るとは……。

 

「そ、それは良いですけど……」

『玲くんはどのくらい強いの?』

「へっ? え、えっと……」

 

 ……どうしよう。なんて答えるのが正解なんだろ。ナルガクルガ上位装備で倒せる、なんて言ったら自慢みたいになっちゃうかな……。

 や、でも向こうは僕がそれなりに上手いことは知ってるわけだし、そこは……えっと、自慢にならない範囲で答えれば良いか。

 

「な、ナルガクルガくらいなら、10分掛からずに…倒せますが……」

『……あの、じゃああたしがピンチになったら助けてくれる?』

「わ、分かりました……」

 

 ……まぁ、上位装備で行ったらナメてるって思われそうだし、武器はG級無属性で行けば……何とかなる、かな? 防具はギルドガードにした。カッコ良いから。

 よし、そうしよう。城ヶ崎さん……Mika☆さんがクエストを受けてる間に、僕は装備を変更した。

 

『さ、行こうか』

「は、はい……」

 

 僕は心底後悔した。この日、安易に城ヶ崎さんのモンハンに付き合ってしまった事を。

 

 

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