城ヶ崎さんに甘えたい。   作:バナハロ

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ボッチに友達っぽいのが出来ると挙動不審になる。

 学校が終わり、僕は一人で帰宅していた。

 今日は違うが、最近、美嘉先輩が仕事の時以外はほとんど毎日一緒にいる。なんだか、友達が出来た気分で少し嬉しいな。

 ちなみに、美嘉先輩は今は友達と遊びに行ってるらしい。夜もモンハンはできないそうだ。僕と違って友達いるんだし、当たり前といえば当たり前だ。

 ……でも、なんだろう。少し面白くない。なんだろう、嫉妬? 大体、友達だって男とは限らないのに。

 そもそも付き合ってもないのに嫉妬するなんておかしいでしょ。そう、頭では理屈で理解してる。

 ……でも、嫉妬してる。なんだろ、恋してるわけじゃないのに。僕って子供なんだな意外と……。また自分の嫌いな所を見つけてしまい、下手に自己嫌悪しながら、気が付けば自宅の最寄駅を抜けて池袋に来てしまった。最初に美嘉先輩と出かけた場所だ。

 こんな所に来ても美嘉先輩と会えるわけでもないのに……。もしかして、久し振りの一人が寂しいとか思ってるのかな……。

 ……お金も使いたくないし帰ろう。でもこのまま帰ったら電車賃勿体ない気がするなぁ……。

 

「……はぁ、何やってんだ僕は」

 

 バカみたい。というか、バカなんだろうなぁ……。僕みたいな奴に友達なんかできちゃいけないんじゃないかな……。

 ……うん、帰ろう。電車賃は……勿体なくて良いや。

 そう決めて、駅の入り口に引き返そうとした時だ。

 

「あれ? 玲くん?」

「っ」

 

 僕を呼ぶ声が聞こえた。僕をそう呼ぶ人物は、世界中探しても二人しかいない。そのうちの一人のどちらかはすぐに察しがついた。

 

「っ、み、美嘉先輩……!」

「珍しいね? 一人でこんなとこにいるなんて」

 

 感心したようにそんなことを言った後「誰?」「後輩兼師匠」「ああ」「いや納得するのゆいゆい?」みたいな会話をするお友達……というか大槻唯さんと本田未央さんとそんなやり取りをした。

 うわあ、アイドルだらけ……ど、どうしよう……。ていうか、美嘉先輩に見つかったらまずいんじゃ……!

 頭が真っ白になってきた僕は思わず逃げようとしてしまったが、地面のタイルに足を躓かせ、盛大にすっ転んでしまった。

 

「ちょっ、大丈夫……?」

「ううっ……」

 

 な、泣きそう……。というか、ストーカーまんまだなこれ……。

 あまりの惨めさにリディみたいになりそうになってると、美嘉先輩に起こしてもらってしまった。

 

「どうしたん? こんなとこで……」

「え、えっと……あ、げ、ゲーセンに用があって……!」

「ふーん……」

 

 何となく僕が言いそうなことを言ってみた。ちなみに、ゲーセンに用なんかない。入るだけでも勇気がいる。

 本田未央さんが美嘉先輩の肩を突いた。

 

「美嘉ねぇ、この子ってもしかして、かみやんとかかれんの師匠?」

「そう、宮崎玲くん」

「ふーん……そう」

 

 頷きながらニヤリと微笑み、僕をまじまじと見つめる本田未央さんに気を取られ、真横に大槻唯さんが移動してきてるのに気付かなかった。

 

「へー! あたし、大槻唯。唯で良いよ☆ よろしくねっ」

「私は本田未央、宮崎玲くんだから……普通にレイくんで良いよね。よろしく!」

 

 あ、ああああ! やっぱり苦手なタイプだあああああ!

 助けを求める視線を美嘉先輩に送ると、それを察してか美嘉先輩も割り込んで間に入ってくれた。

 

「二人とも、玲くん行く所あるみたいだし行くよ」

「えーせっかくだしレイくんも一緒に行こうよっ」

「そーだよ。良いじゃん」

「私達もゲーセン行く予定だったしさ」

「それ! てか、ゲーム上手いんでしょ? ゆい、取って欲しいのあるんだー☆」

 

 うおっ……美嘉先輩が言いくるめられてる……。どうやらトップクラスのコミュ力モンスターのようだ。

 僕としては帰りたいと言いたいのだが……そんなこと言う勇気はなかった。ほんと、情けない男ですみません……。

 美嘉先輩が困った顔で僕を見た。うん、観念するよ。なるべく後ろをついて行くから……。

 

「……わ、分かりました……」

「「やったね♪」」

 

 二人は楽しそうにハイタッチして、僕の両サイドを挟んだ。

 

「さ、行こう!」

「ゲーセンへ!」

「っ、あ、あのっ……!」

「二人とも、初対面の人にグイグイ行き過ぎ」

 

 美嘉先輩が何とかお二人を引き止めてくれた。

 ……はぁ、大丈夫かな、僕。今日は生きて帰れるのかな……。

 不安になりながら、前を進む三人の後ろを黙ってついて行った。まず向かった先はゲームセンター。元々、行く予定だったらしいので、ありもしない予定に付き合わせたわけではない事に、ひとまずホッとした。

 ゲーセンに入ると、中は相変わらずキラキラテラテラワイワイガヤガヤと騒がしく喧しい。まぁ、中のゲームはどれも面白そうなんだけどね……。

 

「お、あったー! これ欲しいんだよね〜」

 

 大槻唯さんが指差してるプライズは、まさかのキョンのぬいぐるみだった。そもそもハルヒのぬいぐるみなんてまだあるんだ……と、思ったりもしたが、今の話題はそこではない。

 大槻唯さんがハルヒのキョンのぬいぐるみを欲しがっている、と言うことだ。

 

「え、これ?」

「そうだよ?」

 

 本田未央さんも驚いたのか大槻唯さんの顔を見上げた。うん、そりゃ驚くわ。アイドルが深夜アニメのぬいぐるみを欲しがる、だと……?

 

「そ、そういえばさー……ゆいゆいとか美嘉ねぇもだけど……なんかアイドルってゲームとかアニメ見てる人増えたよねー。しぶりんとかしまむーもそういうの好きみたいだし……」

「未央ちゃんも見る? ハルヒ。面白いよ?」

「あ、あー……私はアニメとかあんまり分からないから……」

「大丈夫だって、絶対ハマるから!」

 

 うーん……これは放置して良いものだろうか。いや、どちらにせよ話しかける勇気なんかないから放置するしかないんだけど……アイドルがまさかのオタク化って……。

 まぁ、かくいう僕もゲームばかりやっててアニメはあんま見てないんだけどね。中学の時までは有名なアニメだけ見てたけど、今は別にアニメよりゲームのが楽しいからゲームしかやってない。

 

「ね、取れる? 玲くん」

「えっ、えーっと……」

 

 ……ど、どうしよう……。取れるかな……。あまりクレーンゲームってやったことが……。

 

「……わ、分からない、です……」

 

 本当に。だって経験ないもん。お金もかかるし。

 そんな考えが顔に出てたのか、美嘉先輩が隣から優しく言ってくれた。

 

「あの……無理しなくて良いからね?」

「……は、はい……」

 

 お気遣いありがとうございます。でも、やるしかないんです。

 改めて、クレーンゲームの中を見てみた。アーム二本だけでぬいぐるみを掴み、出口に持っていくゲーム、か……。

 ……燃えるじゃん、そういうゲーム。

 財布から百円玉を出して入れて、投入した。ふいいいん……と間抜けな音とともに動き出すクレーン。まずは、ぬいぐるみのセンターをとらえた。

 持ち上げたものの、一定の高さまで上げるとぽろっとアームが緩んで落とした。

 

「……なるほど」

「うわー……これ無理な奴じゃん……」

「あー、玲くん。無理しなくても……」

「いえ、もう一度」

 

 次は500円入れた。その方が一回分得だからだ。今のは物理的に不可能だったかどうかを見るために100円にしておいたが、可能だと判断したので500円入れた。

 再びクレーンを動かし、獲物を捕らえに行った。今度は出口から遠い方のアームを深く引っ掛けて転がすようにしてみた。

 

「……ねぇ、美嘉ねぇ。大丈夫なの? 破産しない?」

「んー、大丈夫だと思うよ。あの子、ゲームやってる時は目つきが変わるし」

「へっ……?」

 

 何回か試行錯誤しながら手元のボタンをいじってると、最後の7回目でなんとか落とす事ができた。

 景品受け取り口からぬいぐるみを取り出し、思わず嬉しくて掲げてしまった。

 

「っ、や、やった! やりました!」

 

 久し振りだ、こんな達成感……! ひさびさに難しいゲームやった気がする……!

 これだよ、これがゲームをやる喜びって奴でしょ……! 最近のゲームは難易度低いよね。ファミコンマリオとか見習ってほしい。

 ……いや、あれはさすがに無理だけど。

 テンションが上がっておかしくなってるのか一人で喜んでると、ふと美嘉先輩と本田未央さんと大槻唯さんが一歩引いてるのが見えた。

 

「……す、すごい喜んでる……。あんな玲くん初めて見た……」

「あ、やっぱりたまになんだ……」

「ぬいぐるみもらいにくいんだけど……」

 

 そんな呟きを聞いて、思わず顔が赤くなった。どうしよう……死にたくなってきたな……。

 恥ずかしさのあまり、徐々に頭が真っ白になっていく。最近、こんなことばかりだ。僕が何をしたって言うんだ、神様。

 

「あ、あー落ち着いて玲くん! 可愛かったから! 恥ずかしくないよ!」

 

 美嘉先輩がそう言ってくれるが、そんなフォローあるのか。さらに恥ずかしくなる一方だった。

 が、まぁ落ち着いてと言われれば落ち着くしかない。というか、美嘉先輩の言葉はよく通るよなぁ。なんだか落ち着ける。

 深呼吸してると、大槻唯さんが僕のぬいぐるみを見ているのに気付いた。

 

「……あ、あの……これ……」

「え、良いの? もらっちゃって……」

「は、はいっ……」

「でも、あんなに喜んでたのに……」

「だ、大丈夫ですよ……。僕、取るのが楽しかっただけですから」

「そ、そう? じゃあ、もらっちゃうね? あ、お金は払うから」

「あ、す、すみません……」

 

 600円いただいて、財布にしまった。ふぅ、無料で遊べたと思えば割と良いのかもしれない。

 

「で、玲くんの欲しいのってどれ?」

「へっ?」

「ほら、ゲーセンに用があるって言ってたでしょ?」

 

 ……あ、忘れてた。ヤバいな、どうしようかな……。別にやりたいものなんてないし……。

 でも、ぬいぐるみを取ってあげてしまった以上、向こうも僕に付き合ってくれる気満々だろうし……。

 

「あ、もしかして忘れたんでしょ?」

 

 美嘉先輩がニヤニヤしながら聞いてきた。いや忘れるも何も存在しないんだけど……。

 

「この子、結構忘れっぽいからね〜」

「へー、そうなん?」

「頭良さそうに見えるのに?」

 

 などと僕を無視して話は進む。おかしいな、僕、美嘉先輩の前で忘れっぽいとこ見せた覚えないんだけど……むしろナルガ装備の素材をすべて暗記しててドン引きされたくらいだし。

 ……もしかして、僕のこと助けてくれた、のかな……?

 

「さ、それよりみんなで遊ぼうよ。あの銃でゾンビ倒す奴とか」

「えぇ〜……ゆいそういうの苦手なんですけどー」

「てか、美嘉ねぇそう言うの得意だっけ?」

「大丈夫、玲くんがいれば何とかなるから」

「あ、あはは……」

 

 そんな話をしながらゲーセンをしばらく見回った。

 

 

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