人理定礎者が逝く(仮)   作:和ん子

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 記念すべき第1話。

えーい、読んでいけー!


序章 〜舞台は新天地へ〜
とある劇作家「──いざ、開演の刻!」


 

 

 青年は目の前の光景に涙した。これが幻覚や夢ではないことを心より感謝して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【YGGDRASIL】。

 21世紀後半の荒廃した世界で新たに発明されたフルダイブシステム。とんで22世紀初頭にそれを採用したDMMO、つまり体験型と呼ばれるRPGの一つだ。そして、十数年続いたこの楽園ももうすぐ終わる。

 

 「リンク・スタート……なんちゃって」

 

 21世紀初頭に愛された同じフルダイブシステムが登場する“古典作品”のセリフを彼は毎回使っていた。

 

 視界が切り替わり、左上端に仲間全員で考えたギルドの紋章、自身のPC名、HPとMP、レベルと種族など。反対の右下と中央少し上に現在地であるナザリック地下大墳墓地下9階層にある円卓の間を示している。

 何であれギルドに属する者は最初のログイン地点が拠点内に定められている。それ以外はログアウトした場所や泊まった宿になる。

 あとは、右上の現在時刻と左下に共通ログ欄がある。

 

 今日がサービス最終日というのに、いつも通りだ。

 彼は何かしらのサプライズを期待していた分落胆も大きかった。だがサービス終了するのにそんな予算を確保できるかと言われれば納得してしまうのも事実。

 

 他にギルドメンバーがいないか仮想現実の首を振って辺りを見渡す。

 重厚で、豪華な装飾が施された扉を正面とするならこの部屋の最奥に位置する席に、彼が座っている。

 

 「おはようございます!モモンガさん!」

 「おはようございます、藤丸さん」

 

 背後の壁に飾られている黄金の九蛇がそれぞれ色違いの宝石を加えて絡みついている魔法詠唱者の武器。それもこのギルドを象徴とするギルド武器、〈スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン〉の真下に座っている彼は視線をこちらに向けて挨拶を返した。

 

 「メッセありがとうございます。他の方達は?」

 「まだですね。藤丸さんが一番でしたよ」

 「そう、ですか。……じゃあ俺はこれから裏市に行って〈世界級(ワールド)〉が売ってないか見て来ますね」

 「俺は今日一日ここで皆さんを待ちますね。お気をつけて」

 

 「はい!行って来ます!」

 「ふふっ、いってらっしゃい」

 

 藤丸から見て、漠然とした雰囲気だが弱っていると感じたモモンガも少し元気を取り戻したようで、最後に笑顔のスタンプと共に思わず失笑していた。

 

 藤丸は転移阻害や様々なギミックがあるギルド内で安全に転移できる指輪装備を掲げてナザリックの外へ飛び出して行った。

 

 

 ──十数時間後。

 ナザリックが存在する。ヘルヘイムのみでなく、人間種が支配する他世界にまで足を伸ばしていた藤丸は、グレンデラ沼地の樹海をホクホク顔で歩いていた。

 ここは毒沼でフィールド全域に最上級の解毒ポーションを使わなければ忽ち状態異常を起こす凶悪エリアなのだが、そんなことは関係ないとばかりに悠々と歩いている。

 彼の持つ完全な対毒スキルは、名前に毒と付くモノは〈世界級〉でなければ貫通できない程強力なものだった。

 

 そんな彼は時折、歩く速度を緩めてはコマンドのアイテム欄を開き、ゲームなので表情は動かないが、現実なら絶対にニマニマと頰が緩んでいるだろう喜色満面の声を漏らしていた。

 

 何を隠そう、彼が見つけた今回の戦利品にはこのゲームで最上級、いや規格外と呼ばれる〈世界級〉アイテムを複数見つけ、手に入れたからだ。

 一つでも戦況、いやゲームシステムを改変する力を有する存在を複数。プレイヤーなら誰しも一度は思いつく僕の考えた最強の武器が手に入ったのだから彼も例に漏れず嬉しさを全身で表現していた。

 

 

 それはそうと、画面右上の時刻があと数分しかないことに気付くのは少し後。

 「っ!やっば!遅刻だ!」

 

 運良く気付いた彼はスキルや魔法で速度を上げて沼地を駆け抜ける。

 

 「〈伝言(メッセージ)〉!……モモンガさん!今どこですかっ!?」

 

 走りながらフレンドと遠隔通信が可能になる〈伝言〉を使う。正確には魔法ではない為PCなら誰でもできる。

 繋がったと同時に相手の居場所を尋ねると円卓の間から移動して玉座で最期を迎えるらしい。

 

 マズい、と藤丸はかかないはずの汗が吹き出るのを感じた。システムの都合上、元ダンジョンだったナザリック地下大墳墓を改築したこの拠点の最奥、地下10階の玉座の間にはあの指輪でも転移できない仕様になっていた。

 最短で円卓の間か同階層の自室に転移し、走って移動するしかないのだ。

 

 毒の沼地を抜けて地表部分、今は無きパルテノン神殿の様な外装の地下聖堂から侵入しすぐ指輪を使って自室に転移する。

 円卓の間よりは近いと判断したのだ。それでも長いレッドカーペットが敷かれた廊下を走らなければならないのは変わらない。スタミナやステータス的に疲れることがないはずなのに、心臓が痛い。息が上がる。まるで現実の世界では全力で走ってるかの様な感覚に陥っていた。

 

 嫌でも目に入る時間の数字に内心舌打ちしながら漸く玉座の間に繋がる扉が見えて来た。

 

 時間にして残り20秒。

 

 彼の手がその扉に触れた瞬間、彼は意識を失った。

 

 いや、はっきり言おう。現実世界で心臓が止まり、この世から永遠に帰らぬ人となり、その数秒後に時計の数字は日を跨ぎ、全てが0となった。

 

 だが、物語は終わらない。どんな小説の中で話が終わろうとも彼らには後日談があり、死ぬまでの歴史がある。

 

 このユグドラシルというゲームも、運営からサービス終了を告げられたが、異世界と繋がることで永らえることとなる。

 

 ゲーム内で最期の時を迎え、新天地に旅立った者……ではなく、ゲーム最中に現実で死を迎えた不幸な彼の魂はそのコンテンツに囚われ、データごと異世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は不明、真っ暗な中突如複数のスポットライトが舞台に立つ奇天烈なポーズを取る男に当てられた。

 その男がバッと両手を広げ、舞台の上を歩きながら叫ぶように口を開く。

 

 「さぁ!開幕です!席に座れ!煙草は止めろ!写真撮影お断り!野卑な罵声は真っ平御免!」

 「異形の存在でありながら世界を救う贋作者は新たなる地で何を見!何を感じ!何を思うのかっ!今回は吾輩も出演者として彼と共にこのクソッタレな『現実(物語)』を紡ぎましょうぞ!」

 「紳士淑女の皆さま、ご笑覧あれ!これは異形の物語でもなく、人類の物語でもない!人が!彼が!何度も焦がれた願いを叶える物語である!それでは──共に旅立ちましょう、『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を!』……はじまり、はじまり」

 

 ジィィイイイ!とベルが鳴り響き、ライトの明かりも消え、止まっていた時も動き出した。

 

 ──今宵の舞台はもう止まらない。

 

 




 
 
 2000文字オーバー。
初回からぶっ飛ばした感はありますが、次回はもう少しお待ちを。

 あ!誤字脱字、誤用などの修正箇所は遠慮なく教えてください!では!

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