前回もそうなんですが、サブタイは
人物〇〇「〜〜〜(セリフ)〜〜〜」に統一したいと思います。
なるべく被らないようにしたいですね。
今回ちょっぴり長いです。
住んでいた村が襲撃され、罠に嵌めて捕縛できたのは大きな収穫だ。彼はこれから拷問に関しては他の誰よりも信頼できる方達にお願いしたところで、突然村から少し離れた森の方に強大な力の波動を感じた。
トブの森にある噂の〈破滅の竜王〉とも邪推するが、それが一体ではなく同等の力を持つ複数体ということに気づき、自分が生まれてからは形ばかりの村長に村の皆を屋内に避難させる様伝えて青年は襲撃者が来た方向とは逆の森に猛スピードで走って行った。
そこで彼は、運命と再会する。
力の正体と相対した瞬間、青年は脱力し崩れ落ちる様に膝を折った。
「モモンガさん!」
「危ない下がって!」
中央にいた黒いローブを纏い、死の魔王と形容しても謙遜ない恐怖と絶望を感じさせる骸骨の白い顔。
そんな彼と飛び出して来た青年の間に入り防御系のスキルを発動させるグネグネと嫌悪感を誘うピンクの肉棒。
そして最後の一体、いや一人。この世界では青年も見たことがない人間の四肢と全身を覆う羽毛、そして顔の大部分を占める鳥の嘴と背中から生える二対の翼。
未だ三人は警戒しているが、青年にとってそんなことは些細なことだ。何せ生まれてからずっと望んでいた夢が今現実となって叶ったのだから。
やがて防御スキルを発動したにも関わらず動きを見せない。寧ろ彼女達が少し前に見た守護者達と同じく跪いている様に見える青年にその首と思しき部分を傾げるピンク色のスライム。名を〈ぶくぶく茶釜〉と言う。
彼ら三人はユグドラシルというVR世界のゲームのキャラや設定を引き継いでこの世界に集団転移して来たプレイヤーであり、その中でも悪逆として名を馳せたDQNギルド〈アインズ・ウール・ゴウン〉の仲間だった。
構成員全員が社会人かつ異形種で構成され、人間種であるが故に参加できなかったプレイヤーもいる。
悪い噂しかない彼らだが、今この場にいる青年には彼らこそ願いであり、癒しだった。
遂にボロボロと泣き出した村人だろう金髪赤目の人間にギョッとする三人。
お互いが無言で顔を合わして何もしてないと首を横に振る。スライムだけはわかりづらいが。
とりあえず事情を聞く為、この世界についての情報を得る為に偶然見つけた何やらやたら強固に要塞化された異様な村の近くまで転移したのだが、三人は困り果てていた。
「ねえ君」
ぶくぶく茶釜の幼い少女のような声が聞こえると、さっきまで泣いていた青年がバッと顔を上げてその赤い目でジッと見つめてくる。
「茶釜さんっ俺だ!〈藤丸一香〉だ!」
青年が叫んだその瞬間、三人の内二人は人が変わった様に怒気を顕にした。勿論最後の一人にとってもその名前は代え難い大切なものだ。それをどこで知ったかは知らないが、それを口にし、剰え騙るなど万死に値する。
真ん中の骸骨の手が動き得意な魔法を発動する為に魔力が溜まっていく最中、また青年の口が動いた。
「モモンガさん、ぶくぶく茶釜さん、ペロロンチーノさん、また会えて良かった……もう悔いはない」
「待ってモモンガさん!」
「お、おう!?どうしました茶釜さん」
「いいからここは私に任せて下さい」
ずりずりと音を立てて草木の上を這う様にして近づくぶくぶく茶釜。
「こちらの質問に全て答えなさい。いいわね?」
青年はモモンガが次にする魔法を見破っていた。第9位階の即死魔法〈心臓掌握(グラスプ・ハート)〉だ。幻覚だが実体のある相手の心臓を手の中に作り出し握り潰す魔法。
これにアンデットであるモモンガは様々なスキルで強化を施しており、例え即死に対し抵抗できたとしても朦朧状態になる追加効果もある。
それを見て、自分が人間になってしまったから、もうギルドにはいられないと納得し死を受け入れた、はずなのに。
青年の生き死には隣にいたぶくぶく茶釜によって少し延長された。その彼女が命令口調で発した言葉に呆気に取られつつもこくんと小さく頷く。
「素直でいいわね。さっきの名前はどこで知ったの?嘘はわかるわよ」
シュルシュルと粘体から触手が数本伸びて青年に巻き付けて脈を図る複数箇所に配置した。
彼女に嘘を看破するスキルも魔法もないが、ゲームでは存在しなかった脈や触覚、味覚がある今ならば、彼女がしたように脈の変調で嘘を見抜くことも可能だった。
「知ったも何も、大昔のゲームの主人公の名前を捩ったものです。それは茶釜さんも知ってるでしょ?」
「余計なことは喋らないで……次、そのゲームの名前は?正式名称で」
「Fate/GrandOrder」
「……次、その中のキャラで最も好きなキャラは?」
「うえっ……言わなきゃダメ、ですか?」
「一気に心拍数が上がったわね。言えない理由でもあるのかしら?」
バクバクとなる心音に茶釜がここだと確信を突く問いを投げかけるも、今まで無反応だったにも関わらず冷や汗に目が泳ぎ、挙句カタカタと小刻みに震えている。はっきり言って異常だ。
茶釜が先程続けていた問いは後の二人もよく本人から聞いていた話だ。仲間の異形種プレイヤーだった彼は見た目こそ人間種だが、〈ウォースピリット〉──英霊と呼ばれる種族を獲得して現在のキャラを作る決心を固めたとか。
最初の二つの答えは正しかった。だが、彼は異形種。こんなLv100にも満たない脆弱な人間種ではない。それにとある事情でオフ会に終ぞ参加しなかったが、実際にあったことのある三人は彼は普通の黒髪黒目のどこにでもいる様な、そんな人だった。
だから金髪赤目の青年は件の彼の姿とどうやっても重ならなかったのだ。
「理由というか、この世界に転生してから〈聖杯〉に登録した英霊全員が意思を持ちまして……中には設定故狂気的にヤンデレなのもいるので……勘弁してください!」
「……ちょっと待って、そんな理由?」
そんな、と軽い口調で言われた彼が先程とは打って変わって声を大にして叫ぶ。それはある種魂の叫びだった。
「そんなって何!?こちとら死活問題だよ!下手したら斬り刻まれて雷撃たれて火炙りにされちゃうんだよ!今俺は人間なの!死んだら自分で蘇生できないんだよ!」
「蘇生方法があるの?」
「……ああ、あるよ。ただしユグドラシルの時と殆ど同じでデスペナの経験値が足りないと弱い奴はそのまま生き返らず灰になるけど」
「モモンガさん」
「わかりました。ここからは私が質問しよう。お前は先程〈聖杯〉と言ったな?今どこにある?」
「どこって、ここだよ」
青年は体が触手で拘束されているので指を指すことができず、頭を動かして顎で自分の心臓部分を指し示した。
その意味を理解したモモンガは骨の手で顔を覆いあちゃーと空を仰ぐ。だが、何やら淡い緑色の光を発して再び青年に向き直った。
「……わかった。では最後の質問だ。藤丸さんの──」
「──」
その後、どうやら最後の答えは彼らが望む答えだったらしく、触手はさらに体を締め付け肉棒の頭部分でまるで頬ずりする様にスリスリと身を寄せて来る茶釜。
少し離れた場所でオイオイ泣くバードマンのペロロンチーノ。骨だから表情の変化は乏しいが雰囲気で何となく喜んでいるモモンガ。
彼らの中心で漸く誤解が解けたと安堵する村の神童リディ・エモット、18歳。
「お久しぶりです皆さん。また会えて本当に良かった」
「こちらこそお元気そうで、っていうのは違うかな?」
「そうね。結局ポックリ逝ってこっちの世界に転生した訳だし。でも本当に元気そうで何よりよ」
「現実の藤丸さんヘロヘロさんより体ボロボロでしたもんね。ずっとベットの上だったし」
改めて挨拶と青年には前世と言うべき現実世界での生活で場を和ませる。自虐ジョークは彼も受け入れており、転生についてもとうの昔に乗り越えた。
だから笑って三人も彼の話に続く。
「そうだ!藤丸さん、実は俺達ギルドごとこっちに転移したんですよ」
「へ?マジですか?」
「マジよ」
「マジマジ、本気と書いてマジの方な」
「で、藤丸さん元々レイス系の種族でしたからランダムに転生したら人間だったって設定でギルドに帰りましょうよ!守護者もきっと喜びますよ!」
「三人だけじゃなくて守護者も全員来てるんですか!?……ハハハ、なんてこった」
衝撃の事実が元藤丸、現リディ青年は何故か茶釜の触手の中で脱力し乾いた笑いを出していた。
「どっ、どうしたんですか!?」
「いえ、こっちの話です……俺のこの18年は何だったのか……Lv100の守護者や宝物庫のアイテム、それにモモンガさん達がいれば万事完結ですよ」
「?どういうこと?」
「まあ、ナザリックに戻ることは賛成です。ただ設定がある程度反映されてるみたいなので人間嫌いの守護者や僕もいましたから、少し心配ですが。今は村の襲撃の処理と周辺の探索に専念したいです」
「もしかして、あの村の防壁や装備って」
「ええ、仲間の英霊達と協力して作り上げました。流石に貴族やらに目を付けられた時は焦りましたが幻術でやり過ごしました」
「その辺のお国事情についてもナザリックで聞くことにしましょう」
「では」
その時三人の後ろから黒い円形の闇が出現し、中から黒い全身鎧に二本の角を生やした女騎士が現れる。
「遅れて申し訳ありません。至高の御方々。……で、そこにいる下等生物は如何なさいますか?お手を煩わせているのであればこのアルベド」
チャキ、と持っていたハルバード──槍と斧が一体化した武器を人間に向けるナザリック最高幹部の一人守護者統括のアルベド。
「この手で虫ケラの如く潰して」
だが、彼女としてはそれは当然の行為であり、人間という下等な生き物が彼女達にとって神にも等しい、いや、神よりも尊い存在を前にして跪かないどころか、頭も垂れず許可なくご尊顔を拝するなどあってはならない大罪である。
だが、彼女の手はその至高の御方によって止められた。
「今、何と言った?アルベド」
「ヒッ!?モ、モモンガ、さま?」
「なあアルベドよもう一度言ってくれ。今彼を殺すと言ったのか?幾らお前でも許さんぞ?」
〈絶望のオーラI〉。格下相手に様々なバッドステータスを与える効果があり、同レベルのアルベドには本来なら効果はないはずだが、今彼が手に持っているのはギルド武器の〈スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン〉の効果により耐性を貫通して周囲に恐怖をばら撒いている。
この中でレベルの低い青年も当然その効果を受けていた。
「お、お許しを!不肖アルベドモモンガ様が不快になられる言葉を発してしまい、死をもってお詫びを」
「待て。やめよアルベド」
「はっ」
「ナザリックにおいて死とは慈悲だ。そして私にとっても死とは状態の一種に過ぎん。故に死は罰になり得ない。それとなアルベド。今私が怒ったのはそこの彼が私の大切な友だからだよ」
「そ、それは……誠でしょうか?」
「ああ、お前も聞いたことはあるだろう?我がギルド至高の42人の内の一人、〈藤丸一香〉さんだ」
その名前を聞いて彼女は驚愕の表情を浮かべ、跪いていた状態のまま視線だけを人間に向けた。
記憶にある容姿、力、風格、全てを当て嵌めてみても比較することすら烏滸がましい。彼女の思考は精神支配による洗脳か至高の御方の名を騙る不届き者としか思えなかった。
「お言葉ですがモモンガさ、ま?」
「フォウ!」
動物らしき鳴き声が聞こえ、視界の端から白い物体が飛び出して青年に体当たりを仕掛ける。
「ぐほっ……きゃ、キャスパリーグ。何度も言うけど昔みたいに強くないから君の体当たりは受け止められないよ?」
「フォウ!フォフォウ!」
まるで飼い犬と戯れる様に人類の敵となる厄災の獣を抱き上げ手櫛で毛並みを整える姿に、確かに、そう確かにアルベドは以前見た光景を思い出した。
──見てください皆さん!
──何ですか?人形?
──犬?でしょうか?
──違いますよ。キャスパリーグと言って今コラボガチャのシークレットキャラですよ!
──えぇぇぇ!?藤丸さんヤベェェ!
「──藤丸一香、さま」
「うん、アルベド、ただいま」
「おかえり、なさいませ……よもや至高の御方を間違えるなどこの罪どうやって償えば」
急に泣き崩れた彼女に先程まで冗談抜きに殺されかけていたはずの彼からただいまと何でもない様に返され、さらに自責の念を抱く。
「間違えるのも無理はない。この三人だって最初は即死魔法とか後ろに下がって防壁のスキル使ったり捕まえて尋問までされて漸くって感じだし。多分ナザリックに今の俺を藤丸だと認識できるものはいないだろうからな」
「「「すいませんでした」」」
少し考えてみれば簡単なことだ。ペロロンチーノやぶくぶく茶釜はともかく、アンデットのモモンガに精神支配は効果がない。あるとすれば世界級アイテムか〈完全なる狂騒〉という一見パーティグッズにしか見えないネタアイテムぐらいしかない。
「では私めが先に藤丸一香様の帰還を伝えておけば」
「それには及ばんよアルベド」
「モモンガ様」
「私達三人が証明すればいいだけのこと。守護者統括のお前よりも私達の方が信憑性もあるだろう?」
「申し訳ありません。出過ぎた真似を致しました」
「よい」
モモンガとアルベドの会話が終わった所で青年は一旦村に戻り、家族に出かけることを伝えて戻るという。
「では〈異界門〉役に私が残ろう。アルベド気持ちはわかるが彼の帰還はサプライズだ。誰にも漏らすなよ」
「ハッ」
「じゃあ私達は先にナザリックに戻ってますね。おら行くぞ愚弟」
「いやちょっとねーちゃん!?藤丸さんっ妹について詳しくギャー!」
くるりとスキップでもしそうな程ルンルンな雰囲気のまま〈異界門〉を潜るアルベド。続いて重度なロリコンの弟を引き摺りながら潜る姉と弟。
その変わらない姿に残ったモモンガとリディはどちらともなく笑い出した。
リディは早速〈嫉妬マスク〉を被ったモモンガを連れて村へ戻った。マスクを被った理由はリディの提案なのだが、単純に村人を怖がらせない為だ。
今、リディと英霊達によって魔改造、もとい訓練されて立派なカルネ人(某野菜人風)に進化した彼らでも、人間味のある英霊とは違い、モモンガの骨の体にまだ耐性がない。あったとしても訓練で召喚された竜牙兵や骸骨兵のみだ。魔法詠唱するリッチはまだ無理だった。
それに気づいたリディが村に入る前に彼にそう提案した。幸い、仮面を被っていた英霊は何人もいた為そこまで怪しまれることはなかった。
「これは……凄いですね」
「ありがとうございます」
リディは村の皆への挨拶をそこそこに自分の工房に訪れていた。
ユグドラシルにあった拠点作成アイテムとは違い、英霊達の知識を借りて自分に合った工房を一から作り上げることができた。
そうしてできた工房は例え村が超位魔法などで一瞬の内に滅んでも、ここだけは無傷というぐらい強固で、本人の許可なく入れば即死に至る難攻不落の城塞となっていた。
ちなみにデザインはかの建設王であるファラオとアッシリアの女帝、賢王達である。皆嬉々として参加していた。
なので、どことなく既視感が……。完成した時リディはまあいいかと諦めの境地に達していた。
工房でこの世界で改めて自作した霊装を持ち出し最低限見てくれを整える。以前から持っていた神器級には程遠いが、大丈夫だろうと装備した直後、工房の前にリディの妹達の姿があった。
彼女達が勝手に入る前に急いで外に出る。
「お兄ちゃん!村長さんが呼んでる!」
「おにいちゃ、はやく!」
彼女達の様子に只事じゃないと察してリディはモモンガの方を振り返りアイコンタクトで肯き合う。
「わかった。村長宅に行けばいいか?」
「じゃなくて広場の方!」
「……そうか。二人ともありがとう。一応皆に家から出ないよう言ってお父さん達のとこに帰りな」
二人の目線に合わせて屈み、頭を少し乱暴に撫でる。エンリは恥ずかしそうに、ネムは擽ったそうにそれぞれ撫でられ村の方に走っていった。
「すいませんモモンガさん。少し遅れそうです」
「付き合いますよ。もう茶釜さん達に伝えてます」
「流石社会人の鑑」
「報連相は普通です。それより急ぎましょう。早く済ませればその分早く帰れます」
「わかりました」
エンリ達の言った広間の方に身体能力を上げて走り出した。
やったね!6000文字オーバー!ヤッタ\( ‘ω’)/ヤッタ
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