お久しぶりの更新です。
また投稿できて嬉しいですが、早速エタりそうになり申し訳無い。
やはり一話の投稿がフラグだったのか……
「〈英霊召喚〉──!」
「お久しぶりです!先輩!」
飛び込んで来る身の丈はある盾を持った少女を両手を広げて受け止め、その場でくるくると衝撃を逃がしながら回る。
いつも聖杯に接続された座から声は聞こえていたが、こうして実際に触れ合えた感動に転生して以来流したことのない涙が溢れ出しそうになる。
リディがそれをぐっと堪えていると盾の少女は自分から体を離し居住まいを正した。
「召喚に応じ参上しました。クラスはシールダー、デミサーヴァントのマシュ・キリエライト。この命にかけて先輩をお守りしますね」
「ありがとうマシュ」
「えへへ、一度でいいからやってみたかったんです」
あどけない表情で笑みを浮かべる彼女に彼も思わず破顔する。自室にほんわかした空気が流れるが、照れ隠しに咳払いをして意識を切り替えた。
「俺の可愛いマシュ、呼び出してすぐで悪いけどもうすぐ俺の仲間、友達が来るんだ。紅茶を用意してほしい」
「わかりました。ですけど、私より上手な方が他に……」
「確かにそうかもしれないけど、彼らにマシュを自慢したいんだ。それにマシュは特別だし、この〈マイルーム〉を守護って欲しいんだ。ダメかな?」
「全力で頑張りますっ!」
「うん、ありがとう。それじゃあお願い」
「はいっ」
マシュが部屋の奥に消えると同時に入口の扉から小気味いいノックの音が聞こえた。
「リディ様、至高の御方々をお連れしました」
タイミングよくユリがモモンガ達を連れて来たようだ。彼女への返事で扉越しに了承を伝えると扉が開く。他の部屋と合わないだろうがSF映画などに出てきそうなスライド式だ。
これは〈ヴァルキュリアの失墜〉という大型アップデートで追加されたミリタリー系のデータクリスタルを使っている。スウィートルームやファンタジーの世界観から一線を画すが、〈マイルーム〉はこれでなくちゃいけない。
「失礼します」
「藤丸さん、さっきぶり」
「お邪魔します」
「おっ邪魔〜」
「邪魔するなら帰ってー」
「じゃあ帰るわ〜ってオイ」
モモンガと茶釜が男二人の寸劇を見てふふっと失笑。ユリは……彼らのやりとりにかなり驚いていた。
「あ、ユリしばらく人払いをお願い。何かあれば〈伝言〉で呼ぶから。あ、そっちで何かあった時も遠慮せず言うように」
「かしこまりました。では失礼します」
ユリが退出して少し〈マイルーム〉に静寂が戻るが、今度は奥からマシュがお盆を持って出てきた。
「先輩、お待たせしました。人数は四人であってましたか?」
「あれ?マシュは一緒に飲まないの?」
「いえ、折角の再会ですし、私は……」
「あっ!?思い出した!盾子ちゃんだ!うわぁかわええ!すげぇ!」
「ペロロンチーノさんありがとうございます。それもこれも先輩がこの世界に連れて来てくれたお陰ですので」
新たに置いたテーブルの上にカップを並べていくマシュに身を乗り出して興奮するバードマン。尤も性的な意味ではなくグラフィックが細かく洗練されているのと、今まで上司と部下の関係で少し心労が溜まっていた中に湧いて出た後輩属性というオアシスに反応しただけである。
「ありがとう、だが私は」
「モモンガさん、でしたか?私達にまで偽る必要はありません。私達英霊は先輩の〈聖杯〉を通じて皆さんの会話も聞いています」
「「「!?」」」
ぐるんと三人が一斉に首を回してリディへ射抜くくらいの鋭い視線を向けた。マシュもそれに合わせて片手に盾を召喚していた。
「黙っていたのは謝る。でも皆支配者なんて疲れるでしょ?」
「ですからせめて先輩の部屋だけでも寛いで行ってください。ね、先輩」
「そういうこと」
肉棒と骸骨の二人はわからないが、バードマンのペロロンチーノは涙を流さないよう上を向いたまま腕を組んでいた。
マシュはそれを見てリディに良かったですねと微笑み、座っている彼の背後から恋人がするように抱きしめていた。
しかし、そんな二人を見て感動していたはずの三人の雰囲気がガラリと変わり、ペロロンチーノの涙が心なしか赤く染まっているように見える。
「藤丸さ〜ん?」
「「裏切り者ぉ!!」」
「先輩は私が守りマシュ!」
肉棒の先っぽに怒り心頭の青筋マークを浮かべた茶釜、地獄の底から響いたような怨嗟の声を上げる童貞達。魔王にも勝る軍勢に活き活きとして果敢に立ち塞がるマシュ。
質素で生活感のなかった〈マイルーム〉が少し騒がしくなり、リディはご満悦の様子で最終決戦を眺めていた。
「茶が美味しい……」
カンストプレイヤー三人の猛攻を見事防ぎきったマシュにご褒美のギュ〜、からのナデナデをして骨抜きになってしまったこと以外、先程と何ら変わりない光景がそこにあった。
※マシュは途中退場の為ベッドに寝かせています。
散々騒いで落ち着いたのか、黙って席に座りなおす三人。姉弟はそれぞれ冷めてリディが入れ直した紅茶を飲むが、モモンガは飲む寸前でピタリと止まる。
「あ、モモンガさん骸骨ですもんね」
「すいませんモモンガさん〈人化の指輪〉渡すの忘れてました」
何もない空間に穴が開き、そこに手を突っ込むリディ。すぐに取り出すと握った物をそのままモモンガに渡す。
「こ、これが!」
「〈人化の指輪〉!」
「藤丸さん、私には?」
「ちゃんと三人分ありますよ。ここには今までのガチャで当たった物を捨てずに保管してましたから」
「ありがとう!まあ、この体にも愛着が湧いてきてるんだけどね」
三人に指輪が行き渡り、一斉に空いてる指輪へ嵌める。茶釜だけは何故か指輪を飲み込んだようにしか見えないが、それはユグドラシル時代から仕様だったので今更疑問に思わない。
「ぉお……」「これが……」「空気が美味しい……」
「「「って現実の自分じゃん!?」」」
そうなのだ。茶釜が手鏡といういつ使うかわからないようなアイテムを取り出して自身の顔を確かめては二人にも回した結果、そんな感想が三人の口から同時に飛び出した。
「その指輪なんですが、ユグドラシル時代じゃ予め容姿を設定しておかないと現実の自分になっちゃうんです。だから俺はそれを複数持ち歩いて人間種の街に何度も潜入したりしましたね。逆に色んな姿を設定しておけば何処にでも忍び込めますから」
今はその容姿データを〈聖杯〉に登録し直して英霊達の姿としているが、それを手に入れる前の変装道具(裏技)としてそれなりに重宝していたのだ。
ギルドに内通者が出てからそれは止めたが。
「あと、人化の影響でステータスは大幅に下がってますが、スキルなどはちゃんと機能するものとしないものがあるのでちゃんと確認してくださいね。モモンガさんは特に精神攻撃無効がなくなったらやばいんですから」
「ゔっ、的確なアドバイスありがとうございます……確かにさっきまでなんか冷静でしたけどこの状況に緊張が……」
「とまあ、こんな風に肉体に精神が引っ張られるのはもうテンプレートな話だから、二人も気をつけてください。じゃあ一回外しましょうか」
リディに従って指輪を外す。
「じゃあ紅茶も飲んで一息入れたんで、本題ですね。モモンガさん、ここに来る途中にユリから聞いたんですけどAOGが世界征服を計画してるってマジですか?」
「は?え、はぃいい!?何ですかそれっ」
「私初耳なんですけど?」
「あ……あれかも」
ボソッと気になる発言をしたペロロンチーノに視線が集中する。それにビクッと怯えるがおずおずと話し出した。
「ほら、モモンガさんと二人で夜空を見に行ったあの時……確かモモンガさんが“世界征服なんて、悪くないかもしれないな”って……」
「あ"……」
「「……はぁ」」
ナザリックが転移して丁度一日が経過した頃に、この二人は僕やぶくぶく茶釜に内緒で外に出ようとした挙句、地上で見張りをしていたデミウルゴスに見つかり、同行を許した上で今の不用意な発言をしてしまったらしい。
その後茶釜が二人の外出を知って反省するまで殴り続けたらしいが、そんな発言をしていたなんてのは勿論知らず、二人もそのことがすっかり頭から抜けていたようだ。
リディが聞いた話では、ナザリック指折りの知恵者であるデミウルゴスにその発言を聞かれ、最下級の配下に至るまでにその計画が行き渡っていると、ユリが話していた。
ユリもナザリックやAOGの名が広まるならと賛成の色を示していた。属性が善寄りの彼女でさえその反応なら悪側が大多数を占めるナザリック全体のは想像に難くない。
「てな訳で、少し軌道修正をしましょう」
「どうやって?」
「武力での支配、ではなく、恐怖での支配、でもない。人間と友好的な関係を築きつつ、貿易戦争で支配していくんです」
「それ誰の発案?」
「孔明と金儲けが好きな女王です」
肉棒に戻った茶釜が体を捻って、恐らくあちゃーと空を仰いでいるのだろう。
「でも考えてみるとこの方法が一番穏便なんですよね。建国までいくつか厄介な必要事項はありますけど、建国して、ナザリックのゴミアイテムをばら撒けば俺達の懐も潤って荷物の整理もできて周辺国に力の差を誇示することもできますよ」
「その割に陰湿極まりないっすけどね」
「ぷにっと萌えさんも似たようなことやってた気がしますが……確かに不用意に敵を作ることがなければこちらも安全でしょうし。よし、ギルドらしく多数決を取りましょう。賛成、反対はそれぞれ右手と左手をあげてください。どうぞ」
反対、無し。賛成、四。満場一致で決まった。
「ではそこまでの厄介事を纏めといてください」
「わかりました。できたらアクターに確認して貰って彼に届けてもらいますね」
「ヒギィイイイ!?」
パァァァ。モモンガが発光し、絶叫が止んだ。
「い、いきなり何を言うんですか貴方は……?」
「これを任せるには適任かなって。アクターってギルメンの姿になれますからそのまま商人だった音改さんに化けてもらいましょう、との事です」
孔明様々である。ナザリックが有事の際にユグドラシル金貨が必要になることは多い。例えばだがギルドの維持費やNPC消滅時の復活に大量の金貨が必要だ。そうならない為にもアイテムや物資をエクスチェンジ・ボックスでユグドラシル金貨に替えておく必要がある。これは商人スキルで換算額が跳ね上がるので当然の処置と言えた。
「で、ですがアレが外に出るとなると宝物殿の警備が……」
「そんなの俺達が指輪を奪われないようにすればいいだけです。元々あの場所には転移でしか行けませんし、毒無効のスキルか装備がないと数秒で死にます。ほら、問題ないですよ」
う、とかぐっとかなおも抵抗を続けようとするモモンガにリディは呆れをため息で表現した。
「モモンガさん、俺言いましたよね?彼らNPCは何よりもまず創造主を親のように敬い、そして影響されるって。タブラさんみたいにびっしりとテキストを埋めていれば別ですけど、実質モモンガさんの息子ですよ」
「ならシャルティアは俺の娘か」
「アウラとマーレは私の可愛い子供達ね」
「はい。辛いことを言うかもしれないですけど、モモンガさん、ギルメンがAOGを去っていた時はどうでしたか?ペロロンさんや茶釜さんが残ってくれた時、どんな気持ちでした?貴方と同じくらいアクターもモモンガさんに会いたいと思っているはずなんです」
「……」
部屋の、誰も口を開かない。ペロロンチーノでさえ口を重く閉ざしている。彼は彼で今でこそこうしてナザリックに帰還したが、元は引退していた身。モモンガの気持ちを理解することは難しい。
リディも二人に比べれば長いが、やはり一度は引退していた側の人間だった。それを言えば、モモンガは一蹴することもできたかもしれない。
が、彼はそれをしなかった。彼自身が、守護者達に、友人達の子供のようなものと公言したからだ。ギルメンの子供なら、自分が作ったアクターは?勿論自分の子供ということになる。
これがゲームなら作品や造物主と創造物の関係を保てたかもだが、現実に動いてなおかつ自意識を持っていたなら、もう認めるしかなかった。
ユグドラシル内の時間は一分が一時間になり、一日で八万六千四百時間経過し、一年で三千万時間超えとなる。それより遥かに長い時間放置していて、自分に失望されていないか怖かったのだ。
階層守護者達やプレアデス達の前で支配者として振舞っていた彼でも、息子と認めた相手に嫌われたり失望されたりするのが恐ろしくなってしまった。だからできるだけ違う理由で今の今まで遠ざけていた。
「わかりました……それに、さっき玉座の間で約束しましたしね。この後、一度顔を見に行ってみようと思います」
「俺も同行しましょう」
「藤ま「リディ院」
「ぶはっ……!」
リディの台詞に耐えきれなかったのか、ネタを挟んできたペロロンチーノ。そのネタを知っている者は思わず吹き出してしまう。
例外は言葉を遮られ、その作品を詳しく知らなかったモモンガくらいのものだ。他の連中は例外なく体を震わせて波が引くのを堪えて待つしかない。
「す、すいま……ツボに……くはっ」
「モ、モモンガさん、まって……今、むりぃ」
「……」(プルプル)
「はぁ……」
モモンガは毒気を抜かれて思わずため息が出てしまう。
そのため息でダムが決壊したロリコンに割りかし本気の制裁を加えて、リディに向き直った。
「ちょっと真面目に向き合ってみます」
「はい、それで充分です」
モモンガの心象が少し軽くなったところで、次の議題に移る。
ギルドの方針は世界征服でこの世界に転移してきたギルメンを探すこと。その過程は可能な限り穏便で血を見ない方法を持ち入り、周囲と敵対しないこと。
そして、その為の足掛りとして何をすればいいのか。それが今回の議題だった。
「では藤丸さん、これまでに得た情報を掻い摘んでお願いします」
「はい。まずはカルネ村があったリ・エスティーゼ王国とその周辺諸国の地図です。王国首都はここ、今いるナザリックが多分この辺りですね」
テーブルに自作の地図を広げてチェスの駒に似た置物で目印を作る。
それを覗き込む三人は彼が何か言う度にフムフムと頷くのを繰り返した。茶釜やモモンガはともかく、ペロロンチーノはちゃんと聞いているのだろうか?そんな疑問が過った。
この時代で防衛目的もあり正確な地図は作れないのだが、彼が作成したものは正確そのもの。流石は万能の天才、飛行艇を作るのもちょちょいのちょいだ。
そして上空から撮影し、写し書きしたものがそれだ。
各周辺諸国の位置関係を把握した後、国ごとにわかっていることを説明する。
王国なら貴族派閥と王派閥が対立し貴族の腐敗が進んで空中分解寸前だとか、帝国は最近皇帝が代替わりして改革中、法国は海魔などの魔物に首都を襲撃され建て直しの真っ最中。ついでに主戦力の二人を失い他の竜王国などへの支援やエルフの国に対する戦力が足りてない最悪な状況。
少ない説明の中でAOGが手を下さずとも勝手に自滅しそうな国が複数出て来るとは、流石のモモンガ達も絶句。
異形種となって人間に対する意識が変わっても、これを知れば流石に哀れに思う。
それから過去のこと。法国や各国が信仰する六大神、法国以外は四大神やその生き残りを殺した八欲王、更に民謡にもなっている昔話の口だけの賢者や十三英雄など、断続的に登場するプレイヤーの存在。
上記に挙げた者全てではないが、高確率でプレイヤーだとリディは疑っていた。
「周辺諸国については大体わかったわ。藤丸さんが一番警戒している評議会は今は置いておきましょう」
「?じゃあどうするんだ?ぶくぶく姉」
「次言ったらコロス……オホン。まずはナザリックの意識改革ね。守護者達の行動を把握する為にも何か役職に就かせて報告させるのが一番よ」
「情報収集は今まで通り英霊達に任せて」
「いえ、それに加えて暗殺者スキルを持ってる配下にもさせる。理由は人間に近い英霊と異形種の意識の差異で情報を多視点から吟味できるわ」
「そ、それなら俺達の誰かも独自に情報収集を行った方が……」
リディと茶釜がスラスラと目的とこれからの指針を定めていくと、モモンガがほんの少し勇気を出して願望増し増しな提案を言ってみる。
「「それモモンガさんが外に行きたいだけでしょ」」
「そ、そんなこと……はい、あります」
だが、二人に息ピッタリで本心を指摘されて敢え無く撃沈。骸骨なのに声だけで消沈しているのがわかる。ここでの共通認識だが、モモンガは意外とわかりやすい。
「何もダメとは言いませんよ。どこぞのバカみたいに単身で乗り込む訳でもなし、プレアデスから誰か一人くらい護衛をつけて欲しいですけどね」
「護衛、ですか……」
「当然です。というかアルベドやデミウルゴス辺りから言われるでしょうからこちらでさっさと決めておきましょう。そういうことです」
「じゃあ俺も一旦カルネ村に戻って」
「藤丸さんは当分ナザリックでお留守番ですよ。守護者達から要介護者として精々甲斐甲斐しく世話されててください」
「酷ッ!?ていうか言い方!」
「なら自力で説得してください。少なくともシャルティアに勝てないと多分外出なんて無理でしょうけど」
リディが座ったまま崩れ落ちる。その様子にモモンガは慌てるがペロロンチーノは爆笑し、茶釜はいい薬だと言いたげな視線を向けていた。
遅れて申し訳ありませんでしたぁあああ!!_○/|_
それと今回のでストックが完全になくなったので不定期更新になることが避けられません。何卒、何卒ご容赦を……((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル