「おい、行くぞ三人とも。モタモタするな」
「あ、待ってよ、なおとん!」
「姫を焦らすな!全くお前は…」
待つわけがない。何故なら今日は三都市合同会議!つまり、カナリアに会える!
ということは、もしかしたらそのままランデブーの可能性もあるということだ。どうするか、一応ホテルの予約も入れておくべきか…
「安心しろ。100%必要ない」
「人の心を読むんじゃねえよ」
何てことを言うんだ、この変態は。可能性に道溢れてるこの道が見えないのか。
「あの…お願いですから落ち着いてくださいね?絶対に喧嘩しちゃダメですよ?」
秘書として付いてきた青生に任せろと言わんばかりのサムズアップを向ける。
「大丈夫だ。俺たちが何か問題を起こしたことがあったか?」
「何時もですよ!本当に頼みますよ!?」
問題ないと言ってるのに心配性な奴だ。チビ姫も皆仲が良いから大丈夫だと言ってるだろ。
そんなことを騒ぎながら歩いてると目的の部屋に到着した。そして、すぐさまチビ姫がドアを思いきり開く。そこには俺が待ち望んでいた人がいた。
「やあやあ、お待たせぇ!東京の人逹は早いねぇ」
明るい笑顔で挨拶をする舞姫に、先に来ていた先頭に座っている東京の茶髪のイケメンは目も合わさずに答える。
「ふん。お前逹が遅いだけだ。俺を待たせるとは良い度胸だな」
かなり偉そうだが、彼にとっては平常運転である。彼の名前は朱雀壱弥。態度に問題はあるが、実力は確かな第四位。男子に限れば最強である。
何だかんだで付き合いの長いこの面子にとっては、朱雀の悪口など驚くほどのことでもない。そして、同じく先に来ていた東京の三番手は窓を見ながら呟いた。
「いやあ、流石主席ですねぇ。よっ、東京のトップ。人を多少待ったくらいでそこまで偉そうなことを言えるとは尊敬しますわー、マジで」
「お前はどうやら、一度ヤラれないと分からんようだな…」
朱雀に喧嘩を売ってる男の名前は桐生宗吾。これもまた別ベクトルで態度に問題はあるが、戦闘力だけなら朱雀と互角に戦える第六位である。朱雀より順位が低いのはぶっちゃけ、やる気がないからである。
「え?ヤるって?うわー、引きますわー。男相手とかアブノーマルな方でしたか。もう話しかけてこないで、というか、死んでください」
「ほう、自殺願望があるのだとしたら良い挑発だ。その願望今こそ叶えてやろう」
あっという間に一触即発の空気になった二人を見ても、楽しそうに舞姫は言う。
「いやー、あの二人は相変わらず仲が良いねぇ」
「何処がですか!?いきなり、喧嘩始めてますよ!直人さんも何か言ってください。って、あれ?」
何処か、ずれた発言をする舞姫に、慌てて青生は訂正するが何時の間にか居なくなっていた直人に青生は疑問符を浮かべる。
そんな青生を見て、補足するようにほたるは指を指す。
「アレならあそこにいるぞ」
青生がほたるの指の先に指を向ける。するとそこには、何処に持っていたのか花束を抱えている直人と困りきっている金髪の女の子がいた。
彼女の名前はカナリア。ナイスバディの東京の2番手。ランキングは3番手より低い10位なのだが、性格の問題で2番手である副主席になっている。
「待たせたな、カナリア。迎えに行くのが遅れて悪かった。さあ、今すぐ一緒に初夜を迎えよう」
「あ、ははー。相変わらずだね、直人君は」
「相変わらずイケメンだって?何を当たり前のことを。さあ、久しぶりの恋人に喜びの妃キスを、つえい!?」
「直人君!?いっちゃん!何やってるの!」
カナリアに迫る直人に無言で朱雀は能力を使用し、壁まで吹き飛ばす。
普通に考えれば大事件だが、残念ながらここには普通に考えることができる人間がほとんどいないので、大部分が普通に行動している。
「おー、飛んだねー」
「あれぐらい避けられないとは情けない。姫、こちらの席へ。青生。椅子が足りないんだが何故だ?」
「この間ほたるさんと直人さんが喧嘩して壊したからですよ!ああ!何で無言で千葉の人達の椅子を奪ってるんですか!というか、止めてくださいよ!」
カナリアと青生だけが騒いでいるが、飛ばされた当の本人はピンピンして跳ね起きる。
「何すんだ、ムッツリスケベ!恋人との再会を邪魔すんじゃねぇよ」
「ああ、すまん。節操がないゴミだと勘違いした」
「ははは。面白いな、ゴミ代表にそんなことを言われるとは。丁度良い。どうやら俺の席もねぇみたいだし、お前の席とカナリアは俺が貰い受ける」
「ふん、お前がか?お前が俺から何かを奪うなど100年早い」
空気がピリつく。そんな空気を無視するかのように、桐生の声が鳴り響く。
「まあまあ。副主席はともかく席なら2つ余ってるんでほたるの姉さんも使って良いですよ。俺のは別に用意したんで」
「はあ?お前がか?お前がそんな気を使うなんて…」
意外な桐生の言葉に驚いた朱雀と直人は桐生の方に振り返り絶句する。確かに、椅子は2つ余っていたし、桐生は別のものに座っていた。しかし、それは椅子などではなく
「こ、これで良いんだよね?桐生君」
「当たり前じゃないですか。これで喧嘩は収まりましたよ。副主席の願いは叶ったじゃないですか」
「そ、そっか、良かった。で、でもこれ、恥ずかしい」
「え?恥ずかしいんですか?なら、今からケツでも叩きましょうか?でかいし、良い音するんじゃないですか?」
「そ、それは止めて!」
「副主席の頼みとあらば、しょうがないですねぇ。俺って何て良い奴何だろう」
カナリアだった。この世界では優しすぎると人間扱いされないらしい。青少年の集まりの場は一瞬にして特殊な趣味の方達の集いの場に変わった。
「何かSMクラブみたいになってるぅ!?」
「SMクラブって何?」
「姫は知らなくて良いんだよ」
「のほほんとしてる場合じゃないですよ!洒落になってないですよ、あれ!早く止めてください!」
神奈川の女勢は一人を覗いて静観していたが、男達の反応は違った。
「「カナリアに何をするか、貴様あ!!」」
朱雀と直人はあまりの現状に一瞬我を失ったが、直ぐ様現状を把握し、能力を発動した。
しかし、桐生は一瞬で跳躍し二人の能力を回避した。椅子にされていたカナリアは余波で吹き飛んで、気絶した。可哀想にも程がある。
「ああ!このランキング馬鹿!お前のせいでカナリアが吹き飛んだじゃねぇか!加減しろ!」
「お前のせいだろうが!お前もお前だ、このバカナリア!何をこんなゴミの椅子になっている!」
「いや、あんたらのせいでしょう。副主席も可哀想に」
「「全部、お前が元凶だろうがぁ!!」」
その騒ぎを端で見ていた青生の顔はひきつっていた。
もちろん、騒ぎがとんでもなく大きくなったことも原因の一つだ。しかし、それだけではない。青生が感じていたのは未来への恐怖だ。
考えてみてほしい。今日は三都市合同会議なのだ。三都主!合同会議なのだ。
しかし、まだ二都市しか集まっていない。それだけでこれだけ大きな騒ぎになっている。これに後一都市追加されたらどうなるかなど誰の目にも明らかだ。
青生は任務を放棄して帰ろうと扉に向かう…が、絶望の声の方が早かった。
「あーあ、おにいのせいで遅くなっちゃった」
「絶対に俺のせいじゃないと思うんだよなぁ。俺はむしろ早く行こうって言ったんだよなぁ」
「まあまあ。こういう時は先輩が悪いってことで良いじゃないですかぁ」
「何も良くないんだよなぁ」
帰ろうと手を伸ばした青生を嘲笑うかのように一瞬早く別の人の手によって扉が開けられる。
青生は涙が出そうになった。ぶっちゃけ、泣いてもしょうがないと思う。
とりあえず、三話までは書きます!多分!