こんな世界でも良いじゃない   作:はないちもんめ

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こいつらに人類の運命を任せて良いわけがない!


3 混ぜるな危険ってものは人間関係にもきっとある

青生は絶望していた。

 

ただでさえ、混沌の場と化している会議場に人が加わるなど考えたくもなかった。

 

しかし現実は残酷だ。

 

そんな青生の考えを嘲笑うかのように扉が開かれる。

 

そこから入ってきたのは

 

「すいませーん、ちょっと遅れちゃいましたー」

 

千種霞。千葉県、副首席。しかしランキングはトップ10どころか下から数えた方が間違いなく早い順位。

 

そんな霞がトップの中のトップが集まる超人どころか化け物の集まりである、合同会議にも呼ばれる副首席なのは何故か。

 

それは単純に霞が凄いから。ただ、その霞の凄さがランキングに反映されてないだけだ。(本人が順位に興味がないのにも原因があるが)

 

実は、このランキングの順位には欠点がある。このランキングはアンノウンを倒した数で決まっている。しかし、この方法だとアンノウンを倒すお膳立てをしたり、他の皆が動きやすいように指揮をしたりすることは順位に反映されないのだ。

 

実は霞が凄いのはここだったりする。

 

敵がどう動くかを見極め、それを考慮した上で最適解を導き出して味方に指示を出す。その上で、うち漏らした敵等を遠距離射撃。遠距離射撃に限れば霞の右に出るものはいない。

 

ぶっちゃけ、後方支援に限れば人類最強は霞である。実力が高いものほど、この事実を分かっているので霞がこの場にいることに異論がある者などいない。

 

しかし、分かっていない者も霞が副首席であることに文句がある者などいない。何故なら

 

「遅れたの全部おにいのせいなんで。怒るならおにいを怒って。もう、ボコボコにして良いから。原型とどめないくらいに」

 

「もー、やっぱり先輩には私がいないとダメですね」

 

彼女達がいるからである。上から順に紹介しよう。

 

千種明日葉。ランキング2位。人類の準最強である。名前から分かると思うが彼女は霞の兄妹。妹である。

 

霞はこの妹を溺愛しており、そのシスコンぶりは周知の事実なのだが、明日葉のブラコンの方が実はヤバいんじゃないかというのは知る人ぞ知る事実、ごほん、兄妹愛とは素晴らしいものだ。

 

そんな彼女の機嫌はすこぶる悪い。何故かというと

 

「ねぇ…何時までウチのゴミィの腕に抱きついてんの?キモいから止めてくんない?」

 

もう一人の女の子がずっと、霞の腕に抱きついているからだ。

 

「やだぁ、気にしないでくださいよ。恋人同士ならこれぐらい普通ですって。ねえ、先輩?」

 

「頼むから俺に振らないで。ていうか、何時付き合ったの俺達。何時、告られたの俺」

 

「え?じゃあ、もしかして、先輩…私が告ったらおっけーしてくれるんですか?ベッドインしてくれるんですか?」

 

「おめでとう、おにいちゃん。祝福はおにいちゃんの顔面に鉛の玉をぶちこむってことで良いよね?」

 

「俺、一回もそんなこと言ってないよね。そんで、頼むから明日葉ちゃん、瞳孔全開にして、そんなこと言うの止めて。冗談に聞こえないから。本気にしか聞こえないから」

 

もう一人の彼女の名前は一色奏。ランキング7位。言うまでもないが霞に惚れている恋するビッチ、ごほん、ごほん、乙女である。

 

今更だが、この二人非常に仲が悪い。理由は、正妻戦争で良いだろうか。良いよね?

 

ほたると直人の仲の悪さも有名だが、この二人の争いは舞姫が止められる。

 

対して、この二人の喧嘩は止めることができる人物がいない。霞が止めようとした所で聞く耳などないことを考えれば、間違いなく一番厄介な二人である。

 

実力行使で止めればと思うかもしれないが、それも無理。何故なら、この二人、喧嘩を止めようとした舞姫を正面から倒している。

 

どういう化学反応か分からないが、この二人はタッグを組むと非常に相性が良い。足し算どころか掛け算になる。

 

人類最強の舞姫を止められるタッグ。つまり、人類でこの二人を止められる戦力などいないことになる。千葉が三都市最強なのでないかと言われる所以である。

 

「てか、あれ?何でうちらの椅子が一個足りないの?」

 

「あー、本当ですねぇ。これじゃ、先輩が立ってなきゃいけなくなるじゃないですかー」

 

「おにいが立つ必要ないでしょ。立つのはあんたよ、三番。分かんないかなぁ、やっぱり、ビッチは空気読めないの?」

 

「いやいや、女の子立たせて俺が座るわけにもいかないでしょ。いいよ、一色。俺が立つから座れ」

 

そんな霞の優しさに一色の頬が染まる。それに反比例して明日葉の機嫌はどんどん悪くなる。他の都市の人間は微妙に距離を空け始めた。

 

しかし、一色は、ふと何かを思い付いたのか、笑顔で言い放つ。

 

「いえいえー、嬉しいですけど、やっぱり先輩が座ってください」

 

「え?いや、でもよ」

 

「良いですから。ほらほら」

 

一色は、そう言うと、拒否する霞を無理矢理座らせる。それを見た明日葉は、ふんと鼻を鳴らす。

 

「だってさ。気にすることないよ、おにい。ようやく、自分の立場ってものを分かっただけなんだからさ」

 

「そうは言ってもな」

 

「本当に大丈夫ですよ。明日葉ちゃんの言うように私も自分の立場に相応しい所に座ることにしますから」

 

「いや、どこによ‥」

 

「何言ってるんですかー。ほら、先輩もうちょっと深く座ってくださいよ」

 

「いや、もうちょっとって、いやいや、ちょ!?何してんの!?」

 

「な!?」

 

霞が深く椅子に腰掛けると、一瞬の隙をついて一色は霞の上に座る。それを見た霞と明日葉は驚きの声を上げる。

 

「何って、座ってるんですけど?もしかして先輩は、私に床に座れって言うんですか?」

 

「そうは言わんが、流石にそこはな、その、男として色々と」

 

「良いじゃないですか先輩。たまには、こういうのも」

 

そう言うと一色は霞の方を向く。二人の距離は10センチ程しかない。

 

「先輩は私のこと‥嫌いですか?」

 

「嫌いじゃない。嫌いじゃないけども!?」

 

「なら‥良いじゃないですか」

 

作られる二人だけの空間。そこに

 

「死ね」

 

「え!?な!?ギャーー!?」

 

前方から、明日葉の弾丸が迫る。しかし、その弾丸を一色は霞を盾にすることで回避した。霞の体は半身が凍りつき、もう半身は炎上していた。流石に哀れである。

 

「ちょっと!先輩に何てことするんですかー!」

 

「おにい!何で、そんな奴を庇うの!」

 

「お前が…俺を盾にしたんだろ…そして、明日葉ちゃん…お願いだから良く見て…これの何処が庇ったように見える…?」

 

しかし、そんな霞の正論は二人の耳に入らない。酷すぎると思う。

 

「もうさー、あんまり言いたくないんだけどさ。あんた邪魔なんだよね。あんたがいるとおにいが傷つくし…だからさ…」

 

明日葉は冷たく一色を睨み付ける。霞を攻撃したのはお前だよと言ってはいけない。

 

「この場であんたを三番から退場させるわ」

 

そう言って、銃を構える明日葉。完全に臨戦態勢だ。

 

しかし、そんな明日葉を見ても一色は笑顔を崩さずに、自らの武器である銃を構える。

 

「えー、怖いですー。まあ、やるならやるでも良いんですけどー。良いんですか?そんなことしたら…明日葉ちゃんが私に唯一勝ってる順位だってハリボテだったってことがバレちゃいますよ?」

 

「はははー、何でかなーウケないや。何でだろー、馬鹿だって分かるような冗談なのに。あー、分かったわ…あまりにも検討外れ過ぎて可哀相だからだ。しょうがないなー、主席として…現実を教えてあげるよ」

 

二人の間は一瞬で緊迫した空気になる。少しの動きが戦闘を誘発するかもしれない。

 

その事実は、唯一の常識人である青生を青ざめさせた。

 

「いきなりあの二人戦闘体勢になってんですけど!?す、朱雀さん、止めてください!」

 

青生は、何とか止めることに賛同してくれそうな朱雀に声をかけるが、朱雀の返事はそっけない。

 

「ふん。何故俺があんな無能たちを止めねばならん。好きにやらせておけ」

 

「そ、そんなダメですよ!そんなことしたら、この部屋どころか建物まで吹き飛びますよ!?」

 

「俺には関係ない」

 

「そ…そんな…」

 

朱雀の返事に青生は途方にくれる。が、そんな青生を援護するかのように桐生は話に参加する。

 

「まあまあ、青生の姉さんも分かってあげてくださいよ。ウチの大将の気持ちも。以前、止めようとして一瞬で吹き飛ばされて気絶しちまったんですから。あんだけヤられたらショックでしょうよ。流石四番様ですわ」

 

訂正。援護ではなくガソリンをぶちまけに来たようだ。明らかに朱雀の機嫌が悪くなる。戦線はますます拡大しそうです。

 

「マジで?そんなんされたの?何時も周りをクズ扱いしてるクズがクズみたいに扱われたの?おい、桐生君。写真ないの?写真」

 

「馬鹿言っちゃいけませんよ、直人の兄貴。写真どころかビデオできっちり保存してあります。バックアップも完璧でさぁ」

 

「くたばれ」

 

ニヤニヤと悪そうに会話する二人に、朱雀の攻撃が炸裂する…が、二人はジャンブして回避する。

 

「おいおい、朱雀クン。本当のことを話されたからって怒っちゃいけねぇよ。器の小ささが露呈するぜ?」

 

「本当でさぁ。こんなんがトップだとか悲しくなりまさぁ」

 

「言いたいことはそれだけか?ならば、俺もそろそろ動くか。抵抗しても良いぞ?どのみち俺が人類のごみを片付けることに代わりはないのだからな」

 

一瞬にして別の舞台でも戦闘が始まろうとしている。それを見た青生は泣きたい気分になって、怒鳴る。

 

「誰が戦闘しろって言ったんですか!私は、止めてって言ったんですよ!舞姫さん!ほたるさん、何とか三人を止め…て…」

 

最後の希望とばかりに、舞姫とほたるの方を見た青井は色々と諦めた。何故なら

 

「ほたるちゃん、くすぐったいよー」

 

「いや、これはしょうがないんだ姫。あの二人は、椅子がないことで喧嘩を開始した。ならば、私と姫が同じ椅子に座れば戦闘は止められるさ」

 

「そうか!なら、私たちがこうすることで人類はまた一歩平和になったんだね!」

 

「ああ。姫は何時も正しいな」

 

完全に周りを無視して百合ってる二人を見たからだ。何か色々言って自らの行動をほたるは正当化しているが、ヨダレを垂らしながら舞姫の匂いをかいでいる段階で完全にアウトだ。誰か警察呼んでこい。

 

一度冷静になるために、青生は深呼吸する。そして落ち着いて自らが次にしなければいけない行動を考えた。

 

「そうだ。カナリアさんの治療をしなきゃ。大丈夫ですか、カナリアさーん」

 

人はこれを現実逃避と呼ぶ。

 

「じゃあ、始めようか三番…三番を止めるか、死ぬか二つに一つだから、早めに決めた方が良いよ?」

 

「間を取って明日葉ちゃんが消えるっていうのは、どうですかー?」

 

「喧嘩は止めてとは言わない…だけど、せめて俺の近くでやらないで…余波で死んじゃうから」

 

「さて、ゴミを片付けるか」

 

「お前に勝てばカナリアは俺のものってことで良いだろ?」

 

「トップなのに余裕なさすぎっすわー。格好悪いわー、マジで」

 

「ほたるちゃんってあったかいね」

 

「姫もあったかいよ」

 

「カナリアさーん、大丈夫ですかー?」

 

「……」

 

この後に、この部屋が見取り図から消えたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 




オリキャラの一色奏の容姿?ご存じのあのキャラを思い浮かべて貰えれば問題ないですよ。
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