私、絹川ヨルがまだ一年生だった頃の、夏の話。
自分のNの性質上、暑さには共感出来ず。けれど外に出れば流れる汗に気付き次第、そこに危機感は覚える。そんな例年通りの夏だった。放課後、幸いにもエアコンが設置されている空き教室、相談屋の戸を叩き依頼者は現れる。それはまず見た目に愉快な人だった。
「相談屋とやらは、ここでして?」
その時私は、ある種の感動を覚えた。学校で珍奇な活動をしていたら、なんとまぁ目の前に、金髪縦カールのお嬢様が現れたから。あるいはそれはギャルだったのかもしれないけれど、絵に描いたような口調によって、私はそれをお嬢様としか認識できなくさせられた。
真っ先に、嘘くさ、と思った。世の中に、金持ちで育ちのいい金髪縦カールのお嬢様が実在したとして、そんな喋り方はしないだろうと。
だから私の感動というのは、好きなキャラクターの、とてつもなくクオリティが高いコスプレを見た時のそれだった。お嬢様が私と同じ……つまり庶民と同じ制服を着ているというのも、それがかえってロマンを感じさせてくれる。
「はい、相談屋はここです。そして私が」
「絹川ヨル……変わり者の一年生でしょう?」
お嬢様は指先でカールを弄び、それはもうみょんみょんといじり倒しながら、それっぽく尊大な態度で向かいに座った。
「ボランティアなんだか悪ふざけなんだか分からない活動をしている割に、寄らば斬る……というような雰囲気ばかり出している」
「そうです、その絹川ヨルです」
「わたくしはその絹川ヨルに依頼があって来ましたわ」
一人称「わたくし」を、女子高生が使っているのを初めて見た。それに重ねて「来ましたわ」だ。人によっては、笑いをこらえることに神経を集中させられるのかもしれない。私の場合は、例えるならたぶん、仮面ライダーの変身ものまねが異様に上手い親戚のおじさんを見た時の、男児のようなテンションになっていたと思う。あくまで内心でだけれども。
「内容を聞かせてください」
あくまでも動じずに、ニュートラルな対応をしたつもりだったけれど、お嬢様は「ふん」とつまらなさそうに言った。息を漏らしたとかそういうわけではなくて、確かに「ふん」と「言った」のだ。
彼女は私のことが気に入らないのか、それともそうでもないのか。強烈なキャラクター性の前にその他は全て霞んで、思考などまるで読めそうもない。
「ずばり害虫駆除ですわ」
「害虫駆除」
「あの黒いやつのこと、わかりますでしょう?」
「Gですか」
「ちょ、その名を口にしないでくださいます!?」
わざわざ私のところへ駆除の依頼へ来るからには、名前さえ聞きたくもないだろうと思ってイニシャルで言ったのに……。相当嫌いなのだろう。ある意味お嬢様らしいと言えばそうかもしれない。
かつて受けた教えを思い出す。Gを殺す時は、必ず何か道具を使えと。素手はやめろ、手袋越しでもやめろ、衛生的な問題もあるけれど、何よりまわりの人間が引く。Gに対する嫌悪がNでカットされる私に、昔からそう言い聞かせてくれた人には感謝しなければ。
「害虫駆除と言っても、一般人としての働きしか出来ませんけど、それでもいいですか?」
「働きに関しては、新聞紙を振り下ろすこと以上は求めません」
「私が行った時に都合よくその、コックローチが現れる保証もありませんけど」
「その時はその時ですわ」
彼女はどこか冷たさを感じる目で、そもそも期待なんかしていませんから、とでも言いたげな雰囲気を纏う。それは害虫に怯える乙女の姿とは、どうにも重ならないものだった。
そして、コックローチという名称はセーフらしい。庶民的な基準で言って、聞き慣れなければ聞き慣れないほど良いのかもしれない。
「わかりました、お受けします。……ああそうだ、クラスとお名前をお聞きしてもいいですか」
「あら、どうして?」
「相手が誰かもわからないまま、というわけにはいかないので」
「こんな出で立ちでこんな話し方をするのは、わたくしくらいの物と思いますけれどね」
自分で「こんな」という表現をするのか、と小さな驚きを受ける。お嬢様は客観的な視点をお持ちのようだった。
「そういう問題ではないんです」
「……名乗るのは構いませんわ。けれど、それなら代わりに一つ、条件を飲んでいただけます?」
「なんでしょう」
「あなたの写真を撮らせていただきたいの」
スカートのポケットからスマホを取り出して、お嬢様は言ったのだった。
「写真……? 今ここで?」
「えぇ、今ここで。ただの顔写真を」
「いいですけど、なぜ……?」
「わたくしのN「
そう言って彼女がスマホで見せてきた写真は、絵に描いたように私たちの想像通りな、藁人形と釘に、金槌だった。
それを見せられて、「写真が必要だ」とNの解説をほんの少しでも聞かされれば、誰でもなんとなくわかってくる。彼女に写真を渡すことはおそらく、心臓を握らせるに等しい意味があるのだろう。国民的少年漫画の、死の外科医を思い出す。
「なぜそんな脅しのようなことを……?」
「口止めですわ。わたくしのことを言いふらさないように。……わけのわからない一年生に縋りついたなんて噂を流されでもしたら、迷惑極まりませんからね」
「なるほど。そういうことならわかりました、撮ってください」
心臓を握られたところで、握りつぶされなければ何の支障もない。彼女は変人でこそあれ悪人には見えず、何より噂を気にするタイプの人間が、リスクを犯してまで私を無意味にどうこうするとは思えなかった。
……と考えての結論だったのだけれど、彼女はそれが意外なようだった。初めてお嬢様の表情に、内心がそのまま表れたように思う。
「噂通りの恐れ知らずですのね」
「恐縮です」
「褒めてません。……じゃあ、撮りますわよ」
レンズ付近のライトが光る。証明写真を撮るみたいにジッと座っていればいいのか、少しくらい笑った方がいいのかわからなかったけれど、そもそも自分は笑おうと思って笑えるタイプではないので仕方がない。
ただ相手が人間で、この場が厳粛には程遠いこともあって、出来心でピースサインは添えておいた。
「……恐れと、それと愛想もない」
写真を確認しながら、呟くように毒づかれる。
「よく言われます」
「どこがいいのかしらね……」
その言葉は、おそらく砂切とのことを言っているのだろうと理解した。なぜ私のような女を選ぶ男がいるのか、ということだ。変人が変人と付き合っている話はすぐに広まるらしい。あるいは彼女が噂好きなのか。
「さて、約束でしたわね、名乗りましょう。わたくしは三年C組の
「さおとめ、ふぉるまりあ、りぜ……」
「復唱しないでくださいます……?」
人の名前を覚えることにかけて果てしなく自信が無いので、声に出しながらメモを書いたのだけれど、怒られてしまった。名前という概念に敏感な人だなぁ、と口には出さず思う。
「ちなみにフォルマリアとリゼはわたくしが勝手に考えたものでして、本名は早乙女
「いやなんですかそれは」
さっき書いたメモにカッコを付けて、下に米印と「本名!」の注意書きと共に、カギカッコ付きで「早乙女凛音」と書いておく。
「弱味も握ったことですし、あなたには全てを話しましょう絹川さん」
「はあ、と言いますと……?」
「道中話しますわ。さっそく行きましょう、わたくしの家へ」
こちらの返事を待たず立ち上がる早乙女先輩に、私は慌てて荷物をまとめついて行くのだった。背後から観察する、歩くたび揺れる彼女のカールには、やはりフィクションじみた魅力を感じる。
これで迎えの車でも来ていれば、私も「なんか大変なことになってきたな」と非日常感を覚えていたのかもしれない。けれど実際は、徒歩で最寄りの駅に向かった。スニーカーを履く私と対照的に、早乙女先輩だけがカツカツと足音を響かせていた。
「わたくし、そこそこ裕福ですけれど、漫画に出てくるようなお金持ちではありません」
「はあ」
「髪は染めてこの色ですし、この話し方はわざとですし、ジャンクフードは人並みに食べますわ」
「なるほど?」
数百円のハンバーガーだのカップラーメンだのを食べて「こんなに美味しい物がこの世に!?」となるのは、フィクション界のお嬢様キャラあるあると言える。口振りからして彼女もそれを認識しているあたり、なおさら庶民の色が強かった。感覚が私と同じだ。
どうも早乙女先輩はお嬢様ではなく、そして自分をお嬢様と言い張るわけでもなく、それこそコスチュームプレイに勤しんでいることを自覚しているような人らしかった。
しかしまぁ、狂人の真似事を大通りで出来る者はうんぬんかんぬん、という話もある。
「好きな洋服を着て、精いっぱい化粧をして、ネイルでも塗ってみたり、眼鏡かコンタクトかで悩んでみたり……わたくしはコンタクトなんですけれども、そういったことと何も変わらないのです、わたくしの振る舞いは」
「そうなんですね」
私の愛想がない返事に、先輩は露骨に不満げなオーラを出す。駅に着いた。
縦カールの女子高生が私と同じく通学定期で改札を抜けるシーンを見て、どこか安心感を覚えつつ、ロマンを司る心が満たされるのを感じた。ジャストタイミングで電車がやってきて、私たちはそれに乗る。座れはしなかった。
私より少し背の高い先輩が吊り革を握る。あっつ……と呟きこぼしたのが私的に高得点だ。……少し経ってからドアが閉まり、電車が走り出す。揺れの無い静かなスタートだった。
電車の走り出したことが合図であったかのように、先輩は再び話し始めた。こちらは見ずに、ずっと窓の外を見ながら。
「正直に仰ってくださいまし。わたくしはあなたの目から、どのように見えているのかしら」
窓の外には、何も面白い物があるとは思えなかった。
「本当に正直に言っても?」
「えぇ」
ガタンゴトンと電車の走る音がBGMとなっている。目の前で座席に座り目をつむっているおじさんが、眠っているのかどうか私にはわからない。
「仮面ライダーの変身モノマネがものすごく上手い、親戚のおじさんを見た時の男児のような気分です」
「……どういう意味でして?」
「本物かどうかってことじゃなくて、わくわくするんですよ」
「……変な子」
一駅超えて、二駅超えて。先輩はまだ降りる気配がない。他の乗客もさほど乗り降りしなかった。
「彼氏から褒められることはあって?」
「え?」
目を閉じていたおじさんは、眠っていたらしい。隣の人の肩にもたれかかって、その瞬間自分が寝ていたことに気付き、跳ねるように目を覚ますのを見ていた。
「いるんでしょう?」
「あぁ、はい」
「褒められたりするのかしら、あなたは」
「まぁ、はい」
「……わたくしも」
ゴトッと、ガタゴト揺れる電車の中でも、ことさら強い揺れが起こった。私も先輩も、他の立っている乗客たちもみんなよろける。まるでそういう約束事に則っているようだった。
先輩は不機嫌そうな顔をして体勢を立て直す。
「白状しますとね、わたくしもそういう人が欲しいのですわ」
やはり先輩は、こちらを一瞥もしない。
「誤解を恐れず言いますけど」
そう前置きをしてから言う。
「みんなそうなんじゃないですか」
皮肉や苦味のある笑いさえ無しに、淡々とした即答が返される。
「わたくしが「みんな」の中に入っていると思えまして?」
次の駅に着いてドアが開くと、先輩は何の前触れもなく降りていった。さすがに身構えていたので、私もすぐについていく。
エスカレーターに乗ってのんびり改札へ向かう。よく観察してみると、先輩の方を物珍しそうに見ては通り過ぎていく人もたまにいるようだった。
「わたくしは自分の趣味を曲げませんわ!」
改札を抜けて外へ出るなり、目立たない程度に大きな声で彼女はそう言った。
「いいと思います」
「わたくしがなぜこんな話をしたのか、理解出来ておいでで?」
「いえ、まったく」
「勘違い女だと思われるのは心外だから、ですわ。痛い女と思われるのもそう、徹底抗戦でしてよ」
先輩の目には、私の知らない誰かに対する敵意が宿っていた。
「戦う意思はありません」
苦労してそうだな、と思ってしまった。それについて、一見奇抜なキャラクターを振る舞っているけれど……、なんて言い方をすれば間違いなく彼女は怒るだろう。趣味をそんなふうに言われれば誰でも怒る。
生まれ持った趣味で苦労しているという意味では、うちの彼氏の女装と同じような物とも言える。きっと先輩はそれも心外だと言うだろうけど、モテたいことと趣味を曲げたくないことは両立されてしまうのだ。早乙女フォルマリア利世に幸あれ。
まぁ何にせよ今は、私のするべきことはGを叩き潰すことだけなのだけれども。そしてそうでなくても、私から先輩に言えることなんて何もない。
「ここですわ」
しばらく歩いて、一軒のアパートにたどり着いた。数台の車が停まった駐車場を通り過ぎて、玄関ドアの並ぶ廊下へ踏み入る。一階の手前から二番目の扉に鍵をさして、彼女は帰宅すした。
「どうぞ」
「おじゃまします」
入ると、そこは驚くほど整頓された家だった。私を連れてくる予定があったから、今だけそうなったのかもしれないけれど、これであの黒い害虫が現れるというのなら、我々人類がヤツらを生活圏から完全にシャットアウト出来る日は残念ながら来ないように思える。
「ちょっと」
呼び止められて、私はピタリと足を止める。もしや先輩は潔癖で、ガサツな私の行動が何か琴線に触れたのかも……と思いきや。
「あなた、大丈夫……? 顔が赤いし、汗も」
言われてハッと思えば、私は額にものすごい量の汗をかいていた。
暑いとか喉が乾いただとか汗が不快だとか、そういった感覚が全てNでカットされてしまうので、気を付けていないと夏はこうなる。
「すみません、どうも暑さに弱いようで」
「言えばいいでしょう、そうならそうと。倒れられでもしたらわたくしが」
エアコンのスイッチを入れながら言う先輩が、私を心配くれていると素直に受け取るのは、希望的観測だろうか。
「いや、わからないんです。ざっくり言って私のNは、ストレスや不快感を感じなくなる能力なので」
私の特徴や名前を知っていたくらいなので、先輩にはNについてもざっくりと知られているとばかり思っていた。そいぜい秘密になっているのは「怒りは例外的にカットされない」ことくらいかと。
けれど先輩は今ここで目を丸くして、それから一人で「そうか、だから……」と何か納得しているようだった。するとおそらく先輩は、私をただの無愛想で虫に強い後輩女だと思っていた説が有力になる。
「無神経なことを言いましたわ」
意外なくらい、彼女は目をふせて、後ろめたそうにしていた。
「いえ、むしろ気付かせてくれる人がいないと、本当に最悪の事態もあり得るので助かります」
「……麦茶しかないのですけど、構わないでしょう?」
「ありがとうございます」
彼女は立ち上がり冷蔵庫に向かったかと思うと、お茶より先に「ああ、それとこれ」とハエ叩きのような物を台所から持ってきた。
「丸めた新聞紙じゃないんですね」
「新聞は取っていませんの。あれはものの例え……問題ないでしょう?」
「ええ」
素振りをしてみると、びゅんびゅんと風を切る音が鳴る。
「はい、お茶。……せいぜいこれがバイト代ですわね」
「大儲けですね」
「……今さらですけど、あなたはなぜこんな活動をしているのかしら」
お互い、氷の入ったガラスのコップで麦茶を飲む。カランと鳴る音が、風鈴のような役割を果たしている気がした。
「話すと長くなりますが、一言で言えば親の影響ですね」
「へぇ、親の。どんな?」
思ったより話に食いついてくる。
「意外ですね」
「え?」
「私に興味を持ってくれるなんて」
先輩は私のNも知らなかったくらいの人だ、私の母親についてもさほど知らないだろう。正直話すのは面倒だった。まず母が現在引きこもりになっていることから前提として話さなければならず、世間話には向かない。
案の定、私の挑発じみた台詞に彼女は乗ってくるのだった。
「思い上がりも甚だしい……。ヤツが現れるまでの暇つぶしに過ぎませんことよ。どうせ合わない趣味の話をするより、いくらか有意義かと思っただけのことですわ」
「そのヤツですけど、現れるんですか……?」
一匹見ればなんとやらとは言うものの、ヤツらは一度逃がすと肝心な時に出てこなくなる。血祭りに上げてやると探したって出てくるとは限らないのに、そうそう都合よく今日現れるとも思えない。
「必ず来ますわ。毎日ですもの」
「毎日」
「まぁ、仮に現れなければ、現れるまで泊まっていただくだけですわ。そのための脅しでもあるのよ。……あら?」
聞き捨てならないことを口走りつつ、先輩は窓の方へ向かっていった。そして外の自転車置き場へ通じるその窓をカラカラと開けると、
「あらネオン、来てくれたのね」
一匹の猫を抱きかかえて……む? いや、違う。猫じゃない。何か違う、あまり見たことのない小動物を抱えていた。
「え、なんですその子」
「この子はネオン。狐よ」
「きつね……!?」
「ほらネオン、あの人に挨拶して?」
ゆさゆさと抱かれたまま揺さぶられたネオンという狐は、私に向かって「ねお〜ん」と猫のような鳴き声を発したのだった。……理解できたのは、名前の由来くらいというものだ。
「え、飼ってるんですか?」
「いいえ、ペット禁止ですもの。野良ですわ」
「野良の狐って、いるんですか」
「どう見てもいますでしょ。何なら触ってみます?」
言われてネオンを差し出されたので、とりあえず撫でておく。モフモフしていた。猫のそれとは違う気がしたけれど、それで「そっかぁ野良狐が遊びに来るのかぁ」と納得できたわけじゃない。
とはいえ目の前の事実をいつまでも受け入れないほど、人間の家に遊びに来る野良狐の存在を頑なに否定する理由もない。そういうものなのだ、と思っておこう。
「いつもヤツが現れたら、ネオンに助けてもらってましたの。追い払うのが限界ですけれどね」
「そんな凶悪なやつなんですか……?」
猫と狐でそこまで大きさが変わるわけじゃないし、猫がネズミを食うというなら、Gを追い払うのが限度って何かおかしくないだろうか……? 私に頼らずとも何かこう、ネオンがガッとGを殺ってしまえばいいのに。
まるで命綱へ縋り付くようにネオンを抱いたままの先輩は、露骨に思い出すのも嫌そうな顔をする。
「凶悪も凶悪、沖縄の悪い部分を感じますわ。行ったことはありませんけど」
「私もないです」
南の方の地域に対する「虫がデカそう」というイメージだけが一人歩きしていた。
……なんて和気あいあいとしていられたのも、それまで。平穏というのは突然、何の前触れもなくいとも簡単に、通り魔に刺されるが如く致命的に失われてしまうものだった。
私は初め、突如壁に穴が開いたのかと思った。ネオンを家に入れた窓の枠がはめられている、早乙女先輩が背を向けているその壁に、大きな大きな穴が開いたのかと。むしろ私が今まで注意散漫で、その穴を見落としていたのかと。
けれどその「黒」は、間違いなく動いた。
「……早乙女先輩」
「何かしら」
「参考までに聞きます。ヤツのこと、どれくらい苦手ですか……?」
私の表情と視線で、先輩も事態を察知したのだろう。みるみるうちに顔は青ざめ、震える声を絞り出す。
「絹川さん……わたくし本当に、本当にダメなんですの……」
「ゆっくりです。ゆっくりこっちに来てください」
コクコクと、先輩は小刻みにうなずいた。
……無音だった。その歩みは無音。世界がミュートされてしまったのかと思うほど、狐を抱えた先輩は静かに、静かに、少しも姿勢を変えずに、スライドするように私の方へと歩を進めた。揺れる縦カールだけが、彼女が動いていることを知らせている。
そうしてやがてゴールへたどり着くと、彼女は1ミリの迷いもなく、忍者じみた音の無い動きで肩にしがみつき、素早く私を盾にしたのだった。
「な、なんとかしなさい! そういう話でしたでしょ……!?」
大金を払って護衛を雇った人のようなセリフを、先輩はものすごーく小さな声で、耳元にささやいていた。
「いや、そうしたいのは山々なんですけど、そうしがみつかれると先輩ごとヤツに接近することになりますよ」
「そんなことしたら、わたくしあなたを殺すわ、絶対に。何がなんでも呪ってやるから……」
「じゃあ離れてくださいよ」
「あなたそれが依頼者に対する態度……!? わたくしを一人にする気!?」
追い込まれた途端にヒステリックになる先輩は、しかし大声でヤツを刺激したくないのか常に小声で、私は全然怖くないこともあって先輩がちょっと可愛く思えてくる。
「ネオンちゃんがいるでしょう」
「や、やだ……やだ……」
壁に張り付いたヤツから目を離すわけにはいかないので背後は見えないけれど、先輩が弱々しく首を振っていることが雰囲気だけでわかった。今にも泣き出しそうな声だった。むしろよく狐一匹で今日までもってたものだ。
「やるしかないんです、先輩。ヤツは絶対逃がしませんから、下がっていてください」
「……言ったわね? 言ったわね? 絶対ですわね!?」
「絶対です」
「……うぅ」
肩から手が離れて初めて、Nで痛みがカットされるから気付かなかったけど、ものすごい力で握られていたんだなということを知った。じわーっと肩が暖かくなるような感覚があったのだ。
ヤツを刺激しないように、先輩を見習ってゆっくりゆっくり近付く。物音一つ立てず、こちらの間合いまでにじり寄る……。が、寄れば寄るほど、異常を感じた。
いくらなんでも大きすぎるのだ。間近で見たそれはハエ叩きでどうにか出来る物じゃなかった。例えるならそう、バナナ一本分くらいの全長。ここが東京だろうと沖縄だろうと、いくらなんでもこれはおかしくないか。
「あっ」
突然、ヤツは羽根を広げ私に飛びかかってきた。それで咄嗟に私は、昔あれだけ言われたのに、タブーを犯してしまった。
ハエ叩きでは力不足。そう思ったから……つい反射的に左手が、空いてる方の手が出てしまった。サイズがサイズだったので、握りつぶす時に音が聞こえた気がする。
その音がした一瞬、確実に時の流れが凍ったように思う。
「
早乙女先輩の、鼓膜をつんざく絶叫が響く。振り返ると、ちょうど狐が光の塊に変化していた。
狐の形を取っていた光の塊はやがて別の物へと変形していき、輝きを失って単純な物質となっていく。最終的に早乙女先輩が手にしたそれは、あの三種の神器だった。
藁人形、釘、金槌。……一つだけ違うのは、藁人形の頭部に私の顔写真が貼られていこと。
「わ、わたくしに今近づいたら……、近づいたら……」
文字通り藁にもすがるような気持ちなのだろう。全身をガタガタ震わせて先輩が言う。
「絶対に近づかないのでやめてください」
降伏のポーズとして両手を上げたのだけれど、先輩は音速でそっぽを向いた。悪い事をしたと思う。本当に。
「すみません。なんでも言う通りにするので、呪うのだけは勘弁してもらえませんか」
「じ、じゃあ窓から外へ出て帰って。荷物と靴は玄関の外へ出してあげるから、それで帰って」
「了解です」
しくじったなぁ……。先輩には本当に悪いことしてしまったなぁ……と悔やみながら。先輩にトラウマを与えてしまったことをどう償えばいいのかもわからず、私は言われた通り窓から外に出た。
夏とはいえ、もう日が沈みかけている。空は紺色に近くなって、近所の家の窓から漏れる明かりが、希望の光のように目立ち始める時間帯だ。
……暗くなった自転車置き場へ通じる道に、誰かが立っていた。限りなく闇に近い光の中にいつの間にか立っていたせいでその人は、いやにホラーチックな雰囲気を纏っている。
その誰かがドスドスドスとこちらに向かって走ってきた時、しまったと思った時には、もう遅く。男だ、この人、と気付いた頃に、もし彼が刃物でも持っていたら、私は死んでいたかもしれない。
男は私の左手を叩いた。えっ、と驚いた瞬間、もう私の手の中にヤツの残骸はなかった。
「え」
「誰だお前……」
少々聞き取りずらい低音の声。
「誰だよお前……!」
男は私の肩を掴み、脅すような声音と共にものすごい力で揺さぶってくる。暗い中よく見ると、彼の前髪は無駄に長く、目元が九割型隠れている。
「あなた、なに……?」
気が付くと、明るい部屋の中から早乙女先輩が見下ろすようにこちらを見ていた。まだ怯えが残っているようで、声も体も気の毒なくらい震えている。
「ひっ」
先輩が悲鳴を上げて部屋の中へ逃げた。何事かと思った瞬間、信じられない物を見ることになる。
見たこともない量のヤツらが、その大群が、一直線に早乙女先輩の方へ走っていた。即座に逃げ出した先輩は窓を閉めなかったので、そいつらは次々部屋の中へ入っていく。
見ると、一瞬確認できた前髪男の目は、まともな人間の形相ではなかった。血走り、見開き、一点だけを見つめる、異常者の目。
私はその男の顔面を思い切り殴り飛ばした。
「ぎっ」
うめき声を上げ暗闇の地面に倒れ込んだ男の上に、私は馬乗りになる。筋肉らしい筋肉の付いていない男だったので、私との力の差は五分五分に近いと思われた。
「あんたが元凶か。ゴキブリを出せるN?」
襟を掴んで睨みつける。すると、男は私の腕を握った。
男の手には指がなかった。十本全部、綺麗にない。そして今度はその手首までもが消えた。そして無くなった手首の代わりに、大きな黒い虫が二匹残る。
体の一部をGに変えて操作するN……で間違いないだろう。だとするとさっきの超大型を殺した時、この男にダメージが行っている可能性がある。残骸を回収すればそのダメージが回復すると考えれば、男が突然私の前に出てきたことにも説明がつく。
……いや、そうだ。この男は、ダメージを受けてすぐに出てきた。私が外に出てから、本当にすぐ。ということは、こいつもしかして、先輩と同じアパートに住んでるのか。
二匹が私の腕を伝い顔を這ったけれど、Nの相性もなかなか凄まじいところだった。
「私はびびらないから。それより答えろ、なんでこんなことをする?」
「……しだ」
「え?」
「ここはペット禁止だ!!!!!!!!!」
ほんの少し前の先輩の絶叫にも負けないほど、日暮れの空にその声は響き渡った。
「当然の報いだろ。動物を追い払うか、あいつがここを出ていくかすればいい」
「そのために、Nで嫌がらせを?」
「あぁ、嫌がらせ? 俺は正しいことをしているだけだろうが。嫌がらせをしてるのはあの女の方だろうが!」
手首も指も全部元に戻して、男は私の首を握った。息が出来なくなる感覚がして、本気で絞められているんだと認識する。苦しいという感覚はないけれど、試しに試みたところ、声は途切れ途切れのうめき声程度しか出せなかった。
男の腕を掴んで引き剥がそうとしてもどうせ不可能だろう。そう判断して私は、男の首を絞め返す。……そうやってやれるだけ抵抗はしてみるけれど、あれ、これもしかして私死んじゃうのかな、とぼんやり考えていた。
「
聞き覚えのある声と、金槌が釘を打ち付ける音がした。
「かっ……あ……!?」
男が急に私の首から手を離し、自分の首を掴んだ。あわてて私も手を離したけれど、それでも男は自らの首を掴んで、苦しそうにのたうち回っている。
「絹川さん」
早乙女先輩が、前髪男の写真を貼り付けた藁人形と金槌を持って立っていた。人形には釘が刺さっている。けれどなぜか彼女の姿からは、まったくホラーらしさが感じられなかった。むしろこの時の先輩は、ヒーローみたいだった。
「先輩、殺したんですか」
「まさか。ちょっと苦しめただけ」
「助かりました」
「……偶然よ」
命の恩人と呼んで差し支えないことをしてくれたというのに、先輩はどうにも暗い顔をしていた。つけっぱなしになっている先輩の部屋の明かりが、その表情を演出っぽく照らしている。
「怖くて、どこに逃げればいいかわからなくて、あなたに助けを求めに来たの。そうしたら偶然、こうなった」
先輩の持っていた呪いセットは、いつの間にか狐の姿に戻っていた。狐はあくびをするみたいに大きく口を開けて、ねお~ん、と鳴いて私を見る。口を閉じた狐をよく見ると、恐ろしいほど鋭い目つきをしていることに気が付いた。
「先輩は恩人ですよ。ちょっと死んだかと思いました」
「わたしも、もう死ぬかと思った、今日は」
口調が変わっていることから、先輩が本気で焦っていたことがうかがえる。とはいえ、私も「助かった」と分かってから焦りの気持ちが出てくる次第だ。私は死ぬわけにはいかないのに、無茶をしすぎてしまった。いろいろな人から怒られても仕方がない。けれど逆に言えば、私が死ぬと悲しむ人がいてくれるっていうのは、間違いなく幸せなことだろう。
「うぅっ」
意識を失ったかと思われた男が、突然立ち上がった。私たちは二人して臨戦態勢に入る。
言葉を放ったのは先輩からだった。
「大体の事情はわかりましたわ。あなたの叫びも聞こえましたし。隣人であるあなたが、わたくしに嫌がらせをしていたのね」
「お前の方がッ! お前の方がルールを、」
「あのですね、あなたの言っている動物は、わたくしのNの一部なんです。離れたくて離れられる物ではありませんの」
「……クソ女」
敵意以外に何の中身もない言葉を吐いて、男が顔のまわりを飛ぶ羽虫を払うように手を振った。部屋の明かりは男の立っている場所までは届かず、彼が暗闇の中でそういう動作をしたことが、目で見て分かることの限界だった。
けれど私は確信している。あいつは今、絶対にGを放った。体のどの部分を使ったのかまではわからないけれど、確実にこちらを……というか早乙女先輩を攻撃している。コンマ数秒後、明かりの届く範囲内に黒い害虫が見えるだろう。
害虫駆除をするとは確かに言った。けれど一般人としての働きしか出来ないとも言った。一匹や二匹ではない数の刺客を出されていれば、私の力では先輩を守ることができない。私の仕事はある意味、あの男をあぶりだした時点で終了していたのだ。
だから、あとは彼女がやる。私の隣で、藁人形が仰向けになって軽く宙へ放られた。顔にはもちろん、目の前の男の顔写真。金槌が振りかぶられる。
「
放り投げられた藁人形の下側から、釘がグサリと当たり前のように刺さる。まるで空中に人形が固定されているかのように、あるいは藁が鉄の塊じみた重さを持っているかのように、物理的に不自然に釘が人形の胸を貫いた。
「うっ、おえっ」
突然男が嘔吐したのと、先輩が背を向けて全速力でこの場から逃げ去ったのは同時だった。
先輩もGの予感を察知していたから、一撃加えたらダッシュで逃げたのだろう。けれど実際には、部屋の明かりが届く範囲にヤツらは一匹も現れなかった。地面に伏して再びのたうち回っている男を見て、彼のダメージが一定を超えるとGの動きも止まるのかもしれないと仮の結論を出す。おそらくこれで決着だろう、先輩を呼びに行かなければ。
背を向けた先輩は、自転車置き場を抜けてぐるりと裏へ回り、各世帯の玄関ドアが並ぶ廊下の方へ来ていた。廊下を抜けた先の駐車場へ向けて、というかここではないどこかへ向けて、彼女とその足元の狐は全力ダッシュしていた。ただし彼女はスマホを耳に当てている。
後々警察がかけつけて、先輩と隣人の男と、それから私も事情聴取のために結構な時間を取られることになるのだった。
ゴキブリ男が自分を正義と疑わず全てを話したので、私たちはギリギリ正当防衛で済まされた。先輩の呪いのNが威力を調節可能な物で、後遺症とか残らないように調整してくれて本当によかったと思う。
親にも学校にも連絡が行ってしまったけれど、心の広い教師陣はむしろ私のことを若干英雄的に扱ってくれた。もちろん大々的に表彰されたりなんてせずに、今回の騒動で相談屋を解体することだけは見逃してやるといった具合の話だけれども。
親からはちょっとだけ叱られた。せいぜい害虫を出す能力が相手だったのだし、戦うより真っ先に警察呼べよと言われれば、確かにその通りだとぐうの音も出なかった。いざという時、自分が冷静さとは無縁になってしまうことを自覚させられる。
一番怒ったのは砂切だった。私が死んで最も悲しむのは、実は親を通り越してこいつなんじゃないかと思うくらい、女装していたって男だろうにちょっと泣いてたし。ただ面白かったのは「こうグシャッと、握りつぶしちゃいました」と話して左の手のひらを見せると、彼は暴漢に袋小路へ追い込まれたか弱い女性みたいな顔をしていた。いや、さすがに不審者相手に危ない行動に出てしまったことについては、平謝りしたけれども。
「先輩が私のことかばってくれたんですね」
空き教室の中で向かい合って座って、私たちはエピローグを紡ぐ。さすがに早乙女先輩とあれきりでさよなら……とする気にはなれなかった。向こうも同じ気持ちでいてくれたのだと思う。
「何の話ですの?」
「相談屋が解体されずに済んだのは、先輩が私をかばってくれたからだと聞きました」
「どこでそんな話を」
「どこでって、その、彼氏からです。情報通なんですよ」
「……はぁ」
先輩は露骨なため息を吐いて、気持ちを落ち着けるためか縦カールをみょんみょんと指でいじり遊んでいた。
「口の軽い男」
「何にせよありがとうございます」
「……それはこちらこそですわ。あなたに助けられたのは、事実ですもの」
人に頼ることを負い目と感じるタイプの人なのか、虫に怯える姿を晒してしまったことがよほど自尊心に傷をつけたのか、……それとも私を藁人形で脅したことに気まずさでも感じているのだろうか。とにかく先輩の様子は暗かった。
「あの狐、ネオンでしたっけ。あの子が見た人の顔を、藁人形に貼る写真に出来るんですね」
「え、よくわかりましたわね」
「だってあの男の写真を撮るタイミングなんかなかったですし。……今ネオンはどこで何をしているんですか?」
「さぁ、知りませんわ」
あっけらかんと、当たり前だろうという風に、彼女はそう言った。
「え、でも、Nだから離れようと思っても離れられないのでは?」
「あぁ、あれは嘘ですわ」
まさかあなたまで信じているとは、と先輩の顔に書いてあった。数秒前と打って変わって、彼女の表情にネガティブな色は一切ない。
「ネオンはわたくしが危なくなった時、なりそうな時は必ず来てくれます。反対に平常時は、どこで何をしているのかわたくしにもわかりません。……会いたいと思えば、すぐに来てくれますけれどね」
「え、でも警察にも「離れられない」って話してましたよね」
「まさかあの場でその程度のことを審議しないでしょう。あとで嘘だとバレても、わざわざペット禁止を理由に警察が来るとは思えませんわ」
すらすらと、イカれた悪人が今まで殺した人間の最期を語るみたいに、先輩はそう語った。
今日も外は夏の晴天で、セミの鳴き声がここまで聞こえてくる。昨日の暗闇でヒーローに見えた早乙女先輩が、今はそれなり不気味に見えた。
「でもそれ、後々裁判沙汰とかになった時まずくないですか」
「その時はその時ですわ。そんなことになるとも思えませんし。……いいでしょう? 今こうして平和な時を過ごせているのだから」
「……いい、のかな」
仮に良くなかったところで、終わったことは巻き戻せず、先輩の選択を私が捻じ曲げることも出来ない。今回の件はあのゴキブリ男が悪いけれど、それは確実なのだけれど、かといって先輩は清廉潔白でひたすらに可哀想な被害者だったのかというと、ちょっとよくわからなくなってきた。
けれどそもそも、人間というのはそういうものなのかもしれない。善だけの人も悪だけの人もいないのかもしれない。そう考えるとむしろ、今回の件が自然なことであるように思えた。
「さ、わたくしそろそろ帰りますわ。今回のことは、本当にありがとう。けど写真は消してませんから、余計なことは口外しないよう頼みますわよ」
「了解です」
そうして見送る、つもりだった。けれどいざという時、カールを揺らしながら立ち去る背中に、私は未練を感じてしまう。何に対する未練なのかはわからない。けれどこれが、先輩との最後のやり取りであるような気がして、そこに何か未練があった。
「先輩」
「はい?」
呼び止められて振り向いた彼女は、不思議そうに私を見ていた。
「先輩って一人暮らしですよね」
「そうですわね」
「もしもまた、普通に害虫が現れたら、その時はどうするんですか」
「……あら」
くすくすと、彼女は笑った。その様子は、今まで一番それっぽかった。
「意外ね。わたくしに頼られたいのかしら?」
「いや、いや……そうですね。頼ってもらえたら、悪い気はしません」
「考えておくわ」
愛想っぽい微笑みを残して、今度こそ先輩は去っていった。……結局それが、早乙女凛音との、いや、早乙女・フォルマリア・利世との最後の会話になったのだった。卒業式の日、「早乙女凛音」と名を呼ばれて、誇らしげに返事をした彼女の声と姿をよく覚えている。ドレスとゴスロリを足して二で割ったような衣装で出席していた彼女は、その日もやはり縦カールを揺らしていた。
今思えば、彼女が二度とは相談屋を訪れなかったことにも納得がいく。ヒーローに見える時もあるけれど、でも、やはり不気味。そんなふうに見えるのは、本来私から先輩に対してじゃない。先輩から見た私が、そんなような存在に違いないのだ。
彼女も……早乙女先輩も私のことを、一夏の良い想い出だと思ってくれているだろうか。
N紹介
・「
所持……
能力……対象の顔写真を貼った藁人形に釘を打ち込むことで任意のダメージを与える能力。その気になれば殺傷力もある。藁人形と釘と金槌の三点セットは普段「
・「
所持……前髪が長い隣人の男。
能力……体の一部をゴキブリに変えて操作する能力。大きな部位を変えるほど巨大なゴキブリを生み出せるが、ゴキブリに与えられたダメージはこのNの持ち主にも反映される。ただし反映されたダメージは能力を解除することにより瞬時に回復できる。