「………ここは、どこだ?」
黒いコート、黒いズボン、黒いネクタイ、真っ赤なワイシャツを身につけた黒髪黒目の青年、光城輝夜は周りを見て、そう呟いた。そこは、豊かな草原と澄みきった青空が広がっていた。
「俺は確か……、ロヴィーノの奴が仕掛けた隕石を破壊するために突っ込んで、それから隕石の爆発に巻き込まれて死んだはずなのだが……」
輝夜はここに来る前のことを思い出そうとしたが、そのときにふと気がついた。
「リングが無い……」
輝夜は自分の右手を見て、そう呟いた。ロヴィーノの対決のときに中指にはめていた自分の闇のリングと人差し指にはめていた自分の名付け親である聖輝と明夜の形見である光のリングが無くなっていたのである。
「…………」
そこで、輝夜は改めて、自分の状態を確認した。
(今の俺の手持ちは元々、予備で持っていたAランクの闇のリングとドレイクの匣とガンブレードが入っている保存用匣か………。それにこのコート……、俺がリボーンたちに相手に“
輝夜は今の状況に頭を抱えた。さらに付け加えるならば、“
「ん?」
そんなときに輝夜は何かに気づいた。輝夜は目を細めて、遠くを見た。
「……何か、いるな」
そこには誰かの人影があった。しかし、そこからでははっきりとした姿が見えなかった。
「………仕方ない。今はあいつに聞いてみるか……」
輝夜は他にすることが無いと思い、人影のほうに歩いて行った。
輝夜が近づくと、人影もはっきりと見えてきた。その人影は………
(…………女?)
膝裏までありそうな長い銀髪に青目のきれいな女性が立っていた。彼女の側には白い2脚の椅子と小さなテーブルがあった。さらにテーブルの上にティーセットと付け合わせの菓子が置いてあった。それは、まるで来客の準備をしているかのようだった。すると、女性は輝夜に声をかけた。
「待っていました。光城輝夜さん」
「!?………あんたは誰だ?それと、なぜ、俺の名前を知っている?(………いや、俺の名前に関しては、野暮か……)」
いきなり、自分の名前を言われて、輝夜は女性に尋ねた。しかし、輝夜は自分の名前を知られている理由は予想がついているみたいだ。
「申し遅れました。私はクレアッツィオーネと言います。呼びにくいならば、クレアで大丈夫ですよ?」
輝夜に言われて女性、クレアは自己紹介をした。
「あえて、クレアッツィオーネと呼ばせてもらう」
輝夜の言い分にクレアは思わず、苦笑した。
「警戒心の強いお方ですね。………でも、仕方ありませんね。それと、なぜ私があなたの名前を知っている理由ですが………」
クレアはそこで一泊、間を入れると、答えた。
「あなたのご想像通り、私が神だからです」
「………やはりな。種族としての雰囲気がなんとなく、あいつに似ていたからな。ロヴィーノのな」
クレアの正体は神だった。そして、輝夜もそのことに気づいていた。遠くからでは、わからなかったがクレアに近づいたことで、気づいたのだ。クレアの雰囲気が《神々至上
「………。さぁ、立ち話も何ですし、良かったら、こちらにおかけください」
輝夜の言葉にクレアは一瞬、悲しそうな顔をしたが、すぐに切り替えて、輝夜を椅子のほうに案内した。輝夜も大人しく椅子のほうに移動して、腰掛けた。それを見ると、クレアも空いているもう1つの椅子に腰掛けた。
「紅茶かコーヒー、どちらがいいですか?緑茶が良ければ、そちらを用意しますが?」
「………コーヒー」
「わかりました。ミルクと砂糖は?」
「いらない。ブラックでいい」
「わかりました」
そう言うと、クレアはコーヒーの準備を始めた。クレアがコーヒーの準備をしている間、輝夜はクレアの観察しながら、考え事をしていた。
(こいつ、いったい、どういうつもりなんだ?俺にこんな、ご丁寧なもてなしして………。それに、俺が『雰囲気がロヴィーノと似ている』って言ったことに対しての一瞬のこいつの顔……。あんな奴と似ているって、言われたことに傷ついたっていうわけでもなさそうだ………)
輝夜はそんなことを考えていたが、答えは出なかった。
「どうしたのですか?」
そこで、コーヒーの準備をしているクレアがじっと見ていた輝夜に尋ねた。
「ん?あぁ、あんたが美しいからな。見とれていた」
ととっさに輝夜は考えていたことと全く別のことを答えた。
「!?うふふ。本当は、違うことを考えていたでしょ?でもお世辞でも嬉しいわ」
クレアは一瞬、驚きながらも輝夜が考えていたことが違うことに気づいていたみたいだった。しかし、輝夜は動揺した様子もなく、こう言った。
「フン。まぁな。だが、あんたが美しいという感想は別に世辞じゃないけどな」
「え?」
輝夜の言葉にクレアは思わず、目を丸くした。
「あなたって、そんな性格だったかしら?」
「あんたが俺のことをどう思っているのか知らないが、俺は綺麗なものは綺麗と美しいものは美しいって正直に言うぞ」
クレアの疑問に輝夜はあっけらかんと答えた。実際、輝夜の言うとおり、クレアの容姿はこの世とは思えないほど、美しいものだった。長い銀髪も風に靡いて、キラキラと輝いていて、顔のパーツもそれぞれバランス良く整っている。そして、スタイルもいい。今、椅子に座っている姿もまるで1枚の絵画のようだった。
「そ、それは、ありがとうございます///……………そういうところ、
「?」
輝夜の感想にクレアは顔を赤らめて、そう言った。最後にボソリと何か呟いたが輝夜には聞こえなかった。しかし、輝夜は興味がなかったのか、話を進めようとした。
「それよりも、そろそろ話を進めないか?」
「はっ!?そ、そうですね!!」
輝夜にそう言われて、クレアは慌てて、ちょうどできたコーヒーを2つのカップに入れて、自分と輝夜に差し出した。そして、落ち着いたところで、クレアは話を切り出した。
「まず、気がついていると思いますが、ここは死後の世界になります」
「……そうか。………ということは、俺はやはり死んだのか」
「えぇ………。おそらく、あなたが気になっていた3つのリングは現世に取り残されています」
「………そうか」
そう言って、輝夜は差し出されたコーヒーを飲んだ。
「!?……うまいな」
「ありがとうございます」
輝夜のコーヒーの感想にクレアは礼を言った。
「ってか、茶菓子を出された時点で予想はついていたが、死後の世界でも飲み食いはできるんだな」
「ふふ。栄養は取ることは残念ながらできないけど、今、こうして私の姿が見えて、私の言葉が聞こえるように味覚を残しているのよ」
「そうか。それで、話を戻すし、いきなり本題に入るが、なぜ、あんたはこうして、俺をもてなしてくれるんだ?」
と輝夜は今、自分が言ったように、いきなり本題に入った。それを聞いて、クレアは顔を暗くした。
「それは………謝罪とお礼ですね……」
「謝罪と礼?」
輝夜は一瞬、何のことだと思ったがすぐに心当たりが思いついた。
「…………ロヴィーノのことか」
「はい……。《神々至上
(他の神様の言葉だと説得力があるな)
「あなたがた、ベネスタンテ星の住人はロヴィーノのせいで苦しみ、本来は我々、神々が片付けるべき案件をあなたがたが肩代わりしてくれました。そのことに神々を代表して、私から本当に申し訳ございませんでした。そして、ありがとうございました」
クレアは立ち上がって、深々と頭を下げた。輝夜はそんな彼女をただ、黙って見ていた。
「…………別にあんたが謝ったところで、別に元に戻るわけじゃないし、それに礼も沢田綱吉に言ってくれ。ロヴィーノを倒したのはあいつなんだからな」
そう言うと、クレアは頭を上げて、こう言った。
「もちろん、彼にも謝罪とお礼を言うつもりです。しかし、最終的にロヴィーノの計画を阻止してくれて、その結果、亡くなってしまったあなたにも言わなければなりません」
「………そうか。まぁ、気持ちだけ受け取っておくよ」
「ありがとうございます………」
そう言うと、クレアはもう一度、頭を下げて、椅子に座った。そこで、輝夜はふと思ったことをクレアに尋ねた。
「そういえば、あいつと一緒に死んだ俺がここにいるが、ロヴィーノそのものはどうなったんだ?」
輝夜の疑問にクレアはしんけんな顔つきでこう答えた。
「………あなたの魂を回収したときには、ロヴィーノの魂は見当たりませんでした」
「!?ってことは、あいつはまだ、魂として生きている可能性があるのか!?」
輝夜は思わず、立ち上がって、そう叫んだ。クレアの言い方だとロヴィーノは肉体を失ったみたいだが、ロヴィーノは魂だけの状態でも恐ろしいことを輝夜は身に染みている。なんたって、ロヴィーノは魂の状態で輝夜たちの故郷であるベネスタンテ星を半壊にさせたのだから。
「落ち着いてください。話には続きがあります」
「っ!?………すまない」
クレアに言われて、輝夜は落ち着き、椅子に座ったのだった。
「いえ、あなたの気持ちもわからなくもないので大丈夫です。それと、ロヴィーノに関してはひとまずは大丈夫です」
「?どういうことだ?」
クレアの言葉に輝夜は首を傾げた。
「あの戦いでロヴィーノの魂自体にも、かなりダメージがあります。仮に生き延びたとしても、再び彼が活動を再開するまで回復するのに数億年はかかります。その間に今度こそ我々が責任を持って、彼を捕縛して、断罪を行います」
「………そうか、わかった」
輝夜は完全に納得したわけでは、なさそうだったが、これ以上自分にできることは無いだろうと思い、そう言った。
「それで、俺はこれから、どうなるのだ?地獄に行くのか?」
話に一区切りつくと、輝夜はクレアにそう尋ねた。輝夜は自分が生きていた間、していたことを考えて、そうなるのでは無いかと思った。しかし、クレアは首を振った。
「いいえ。あなたには、別世界に転生をしてもらうつもりです」
「………転生?」
クレアの言葉に輝夜は首を傾げた。
「はい。ロヴィーノの一件のお詫びにあなたには新たな生を謳歌してほしいのです」
「………そうか。それで、その世界はどんな世界だ?」
「はい、その世界は『魔法少女リリカルなのは』の世界です」
「………はっ?『魔法少女リリカルなのは』……?」
輝夜の呆然とした様子にクレアは苦笑いした。
「そうですよね。そんな反応してしますよね。『魔法少女リリカルなのは』は簡単に言えば、とある世界での物語の名前であり、その物語が現実となった世界に転生してもらうつもりです」
「物語が現実となった世界ねぇ………」
「さらに付け加えるならば、あなたのいた世界も物語が現実となった世界であります」
「………はっ?」
クレアが語った真実に輝夜は間抜けな声が出た。そこで、クレアから詳しい詳細を聞いた。それを聞いて、輝夜は驚いた。
「………沢田綱吉を主人公とした物語が他の世界にあるというのか………。さすがに、驚いたぞ……」
「はい。しかし、残念ながら、虹の代理戦争までしか描かれていませんので、あなたやあなたのお仲間たちのことは知られていません」
「いや、別に構わねぇよ。それにしても、沢田綱吉にとって、それって、プライバシーの侵害にならねぇか?」
「アハハ………。さすが同じ世界の住人となると、考え方が違いますね………。しかし、あまり、否定もできませんね……」
輝夜の言葉にクレアは顔を引きつらせて、そう言った。
「それで、話を戻しますけど…。転生してもうのですが、実はあなた以外にも6人の転生者がいるのです」
「はっ?6人の転生者って、なぜ、そんなことになっているんだ?」
輝夜がそう聞くと、クレアはどこか言いにくそうししながら、しぶしぶと説明した。
「実は、彼らのいた世界を管理していた者がうっかりと彼らを殺してしまって……」
「おい、ちょっと待て」
そこで輝夜は聞き捨てられないと言わんばかりに呆れた表情で言った。
「うっかりで殺した?なんだ、その馬鹿な話は?俺は、自分で選んで死んだから、文句を言う気はないが死ぬつもりも無いのに殺されたそいつらはふざけるなって、話だろ」
「返す言葉がございません……」
輝夜の言葉にクレアは頭を項垂れた。
「ハァ……。まぁ、あんたが犯した失態じゃないみたいだから、これ以上は文句は言わないが、それで他に転生者がいる。だから、なんだ?」
「あっ、はい。実は彼らのいた世界には『魔法少女リリカルなのは』も『家庭教師ヒットマンREBORN!』の物語も知っているのです。だから、あなたにはこれから行く世界に関する知識を――――」
「いらない」
「……えっ?」
輝夜の拒否にクレアは戸惑った。
「だから、いらないって言っている」
「いいのですか?あなたなら、情報のアドバンテージの重要さを知っているはずですよね?」
「そんなものは現地で回収する。それにその物語の道筋を知って、その通りに進める必要があるのか?」
「!?」
輝夜の言葉にクレアは驚いたが、すぐに顔を引き締めて、輝夜に言った。
「いいえ。どうするつもりなのか。それは全て、あなたの自由です」
「そうか、それなら、勝手にやらせてもらうぞ」
「はい。………それならば、特典のほうはどうしますか?」
「特典だと?」
「はい。実は他の転生者は皆さん、あなたと違い、戦いの経験が無いのです。だから、それを補うためにご希望の3つの特典を得て転生してもらうのです。簡単に言えば願い事ですね」
「ふぅん。願い事ねぇ……。まぁ、それなら、受け取ろうか」
「!?本当ですか!!」
「あぁ。それで、特典っていうか、願い事の内容だが――――」
そこで輝夜は3つの特典の内容を言った。それを聞いたクレアは驚愕した。
「えっ!?そ、そんな内容でいいのですか……?」
「何だ?できないのか?」
「い、いいえ……。できる、できないで言われたら、できますが………。今までの転生者でそんなお願いしてもらう人はいませんでしたので……。特に3つ目は………」
「悪いがその3つ目は俺にとっては最も重要なことだ。それに俺は他の連中とは違う。俺は俺だ。考え方が違うのは当然だ」
「それはそうですが………。わかりました。それでは、その3つを特典としますがよろしいですか?」
「あぁ」
クレアの問いに輝夜は頷いた。輝夜が望んだ3つの特典。その内容を知るのはもう少し先になる。
「話もこれまでです。それでは、光城輝夜さん」
すると、クレアはそう言いながら、にっこりと輝夜に向かって、笑った。
「いきなりですが、いってらっしゃい♪」
そう言うと、輝夜の真下に巨大な穴ができた。
「はっ?」
輝夜はいきなりのことに間抜けな声が出た。しかし、重力に逆らえず、輝夜はそのまま椅子ごと穴へ落ちていった。
「………」
クレアは立ち上がって、穴に近づき、少しおかしそうに笑いながら、呟いた。
「うふふ♪ごめんなさい♪少し悪戯心が出てきて♪1度、やってみたかったのよね♪」
「やられたほうはたまったもんじゃないがな」
「そうね♪でも、別にこれ以上、害があるわけじゃなし、大…丈……夫………よ………。(あれ…?今、私、誰と話しているの…?)」
クレアは背後から言葉が聞こえて、次第に言葉が詰まった。そして、嫌な感じがして、恐る恐る後ろを振り返った。そこには…………
「…………よくも、やってくれたな」
「て、輝夜さん!?」
たった今、穴へと落ちていったはずの輝夜がクレアにガンブレードを突きつけていた。輝夜は無愛想な顔がいつにもまして、厳しくなっていた。
「ど、ど、どうやって、ここに!?」
「あ?そんなの、これを使ったに決まっているだろ」
クレアの疑問に輝夜は右手の中指にはめていた闇のリングを見せた。それを見て、クレアは気づいたようだった。
「!?そうだったのね!!闇夜のショートワープ!!」
「そうだ。そして、それよりも何か言うことはないのか?」
輝夜はそう言うと、ガンブレードの刃先に闇夜の炎を纏わせた。それを見て、クレアは青ざめて…………
「ごめんなさい!!出来心で本当にすみませんでした!!」
輝夜に土下座をした。その姿は何とも情けない姿だった。
「…………まぁ、いい」
すると、輝夜はガンブレードの炎を治めて、ガンブレードも直した。
「えっ…?許してくれるのですか……?」
クレアも驚いた様子で顔を上げた。
「本当は首から下を生き埋めにすることを考えていたりしたんだが……」
(怖っ!?)
「そんなことしようとしても、
そう言うと、輝夜はクレアのほうをジッと見た。
「あんたは俺よりも強い。下手すれば、俺たちが戦ったあの
「……………」
「でも、だからこそ、納得ができないところもある。…………クレアッツィオーネ。なぜ、お前はあの戦いに参加しなかったんだ?」
輝夜は有無を言わせない口調でクレアにそう言った。