理由としては、設定年齢からこちらのほうが自然だと思ったからです。
【Side 輝夜】
「大当たり~!」
目の前の福引きの親父がカランカランとベルを鳴らしながら、大声で言っていた。俺は食料の買い物のために商店街に来ていたんだが、そこで福引きの券を何枚かもらった。興味はなかったのだが、まぁ、せっかくだし、やろうかと思って、ガラポンを回したのだが、そのうちの1回の結果がこの通りだ。
「はい。特賞の温泉旅館のペアチケットだよ、僕」
「ありがとう」
そう言って、『特賞』と書かれた白い封筒を渡された。温泉か……。………………興味ないな。前世でも今世でも、行ったことが無いが、特に魅力は感じないんだよな。そもそも、前世に関してはベネスタンテ星に温泉という文化は無かったな。地球に来て、初めて知ったし。まぁ、それはおいといて、今はジュエルシード探しのほうが大事だ。これは誰かにやろう。うん、そうしよう。
「あれ?あなたは?」
俺がそう考えていると、誰かに声をかけられた。俺は声のしたほうに向くと、内心、顔をしかめた。なぜなら………。
「やっぱり!あなた、サッカーの試合で途中参加した子よね?」
「翼君の話だと、たしか……光城輝夜君…だっけ?」
それは、二宮葵と赤松花音だったのだ。2人の腕には鞄があって、その中に食材があったから、おそらく俺と同じ理由でこの商店街に来ているんだろうな。いや、それよりも、まさか、ここで会うことになるとはな……。光城輝夜=ダークネスだってことがばれないように会話するか……。
「えっと、君たちはたしか、サッカーの試合で翠屋JFCのベンチにいた……」
「えぇ、そうよ。私は二宮葵」
「うん。私は赤松花音」
「二宮さんと赤松さんだね。試合始まってすぐ、好き勝手やって退場になった子たちのお嫁さんだよね?」
「「違う(わ)よ!?」」
おぉ、息ぴったりだな。
「ちょっと!!なんで、私たちがあいつらのお嫁さんになっているのよ!?」
「えっ?だって、前の試合のときに彼ら、『俺の嫁』とか言っていて、君たち否定していなかったし」
「否定する気力が起きなかったのよ!!あんな大勢の前であんなこと言われて恥ずかしかったのよ!!」
二宮葵が必死に否定しているな……。まぁ、わかっているんだが。
「ね、ねぇ……。もしかして……、君のチームの他の子たちにも……同じことを思われていたりする……?///」
恥ずかしそうに俯いていた赤松花音が恐る恐る訊いてきた。
「うーん。半々かな?彼らが好き勝手に言っているだけだって、思っている子もいたし、『いや、普通、あんなことは言わない!それなら、本気なんだ!』っていう子もいたよ」
「あぁ~~~~っ……!!///」
「うぅ~~~~っ……!!///」
俺がそう言うと、こいつら頭を抱えて蹲ったぞ。顔を赤くするというおまけ付きで。かなり小さい声だが、『あいつら~、会ったら、絶対に許さないんだから~!!』や『うぅ~~っ……。変な誤解されちゃったよ~~!!』とか言っている。まぁ、ドンマイだな。ちなみに今、俺の言ったことは事実だ。あの後の祝勝会でそんな話したしな。
「そんなことより!!あなた、今、福引きで何か当てたわよね!?///」
二宮葵め……。露骨に話を変えたな………。別に構わないのだが……。赤松花音も興味があるのかチラチラと見てくるな……。
「うん。温泉旅館のペアチケットだよ。ほら、これ」
俺は、封筒からチケットを見せた。すると、それを見た2人は驚いていた。
「この旅館!?」
「今度のゴールデンウィークでなのはちゃんたちと行く場所だよ!?」
おいおい。マジか……。そんな偶然があるのかよ……。しかも、今の言い方だと高町家も来るみたいだし、おそらく潮田翼とかの前の月村邸の茶会で来ていたメンツも来るだろうな………。
《まさか、このタイミングで私たちと同じ旅館に行く人といるなんてね……》
《でも、葵ちゃん。これは偶然じゃないの?だって、この子、今、福引きで引き当てたのよ?》
《…それもそうね。オマケに彼から魔力は
毎度、お馴染みの読心術でこいつらの会話を聞いていたが、どうやら、俺のことをダークネスか、転生者だと疑っていたみたいだな。同じ旅館に行くってだけで疑われたらたまらないな…。だが、こいつらがそれで疑うってことはそこにジュエルシードがある可能性が高いな。あぁ、ちなみに魔力に関してだが、リミッターをつけているからだ。
《でも、その旅館でフェイトちゃんは来るかな?》
《………わからないわ。前のすずかの家じゃ、フェイトどころか、ジュエルシードの反応も無かったし。あの後、どこを調べてもジュエルシードは落ちていなかったし……》
こいつら……。あの家にジュエルシードがあったことを知っていたのか……。だとしたら、不審に思われているかもしれないな……。ジュエルシードを裏で
「あの~。そろそろ、帰っても良いかな?」
「えっ!?あっ、ああ!!ごめんなさい!!」
「呼び止めて、悪かったね。それじゃあ、またね。あっ、そういえば、翼……前のサッカーであなたに名前を訊いた子がリベンジするって、言っていたわよ」
「アハハ…。俺(と
俺はそう言って、帰路に向かった。二宮葵と赤松花音が今の俺の言葉に驚いているみたいだが無視だ、無視。潮田翼が助っ人として入ったことを言えば、『なぜそのことを知っているのだ?』とか言われて、俺が転生者だってことがばれるかもしれない。まぁ、最初はユニフォーム着ていなかったからって言えば大丈夫だと思うがめんどくさい。素人に関しては嘘じゃないしな。トラップやドリブルとか、俺はやってないし、ボールを奪うときは適当に蹴っただけしな。俺はそんなことを考えて、家に向かった。
…………それにしても、我ながら年相応の喋り方、似合わなかったな。
~その日の夜~
「それで、誰かにあげるつもりだったチケットの旅館に行こうということか?」
俺が龍に先程のことを伝えたら、龍はそう尋ねてきた。
「そういうことだ。だから、依頼は入っていないか?」
「ゴールデンウィークの間なら大丈夫だ。でも、それなら、いつものように先回りして、ジュエルシードを回収すればいいだけじゃないのか?」
龍がそう思うのは、当然か。俺が言っていることは光城輝夜として直接、あいつらと接触するって言っているようなものだ。そうすれば、光城輝夜=ダークネスということがばれるかもしれないからな。だが……
「いや、どうやら今回は前に話したフェイトっていう金髪ツインテ娘も来るらしい。そいつに関してはなぜジュエルシードを狙っているのかわかっていない」
「だから、あえて先回りしないってことか」
「そういうことだ」
「……よし、わかった!それなら、俺らも準備するか」
「そうだな」
さて、旅館ではいったい、どうなることやら。
~旅行当日~
旅行当日、龍の運転する車で旅館に来た俺たちだった。
「着いたな」
「そうだな。それであいつらはいるのか?」
「それはまだわからない。ゴールデンウィークの間に行くことまでは聞いたが、それ以上のことは聞けなかったからな。だが、事前に調べたら、
「そうか。それでその例のものはどうしたんだ?」
「軽めの封印はかけておいた。いくら、あいつらをおびき寄せるためとはいえ、暴走されたら敵わないからな」
「なるほどな。とりあえず、チェックインだけでも済ませておくか」
「あぁ」
そう話して、俺たちは旅館の中に入った。
【Side 葵】
さて、今日は原作の温泉の日よ。参加するメンバーは高町家一同と私と花音、翼、アリサ、すずか、忍さん、ノエルさんとファリンさん。それから、フェレット状態のユーノよ。
旅館に着いて、チェックインして私たちはさっそく、温泉に入ろうとしたんだけど………
「キュッ!?キューーーーーーーッ!!」
「こら、ユーノ!暴れんじゃないわよ!」
まぁ、原作通りにユーノが女湯に連れて行かれそうになっているわね……。さて、どうしたものか………。なのはとすずかは暴れるユーノを押さえているアリサの味方だし……。そういえば、なのははユーノが人間だということ、まだ知らないのかしら?……絶対にそうよね。そうじゃなきゃ、アリサの味方にならない………あれ?でも、Strikersでの銭湯回では、今のユーノよりも年上のエリオを女湯に拉致っていたし、積極的に誘っていたキャロにも特に何も言わなかったし………、実は本当に気にしていないのかしら?私は…前世のことがあるから、別に子供のユーノに見られても平気だけど、ここの温泉も9歳以下までなら男の子が女湯に入っても問題ないみたいだしね。あっ、でも、翼やあの3馬鹿たちはダメよ!見た目はともかく、中身はとっくに成人しているんだから。あっ、それと花音は私と違って、考えが肉体のほうに引っ張られているのか、恥ずかしそうにしているわね。仕方ないわね。ユーノを翼に押しつけるか……。
「あれ?君たち……」
そんなことを考えていると私たちに呼び掛ける声が聞こえて、私たちはそちらのほうを向いた。
「あっ。光城君」
そこにいたのは、この前、商店街で会った光城ともう一人、知らないお兄さんだった。光城のお兄さんかしら?彼がここのチケットを福引きで当てていたことは知っていたから、もしかしたら、会うかもしれないと思っていたけど、まさか、さっそく会うことになるとはね……。
「何?花音、知り合いなの?」
「えっと、ほら、この前は翼君たちの試合の相手チームで途中参加した子だよ。私と葵ちゃん、この前、商店街の福引きでここのチケットを引き当てていたところを見て、それでちょっとお話をしたの」
アリサの質問に花音が答えて、それでなのはたちは『あぁ、彼か』といった感じで納得していたわ。
「……俺のこと、覚えているか?」
すると、翼が光城にそう尋ねたわ。翼には、前の商店街で会った後で、彼が福引きでここのチケットを手に入れたことを話したから特に驚いた様子は無さそうね。それよりも、前の試合で負かされたことを気にしているのか、敵意が剥き出しになっているわよ。
「あぁ、うん。前のサッカーの試合で俺に名前を訊いてきた……えっと……名前は……」
「……そう言えば、言ってなかったな。潮田翼だ」
「あぁ、そうだったね。潮田君ね」
「あっ!私、高町なのはって言うの!」
「私はアリサ・バニングスよ」
「月村すずかって言うの、よろしくね」
翼が名乗ると、次々になのはたちが名乗り出したわ。……妙になのはが積極的な気がするわね……。……あっ、そうか!あの3馬鹿たちのせいで翼以外の男友達がいないから、この期に仲良くなろうとしているのね。ここならば、あいつらの邪魔は無いし、他校の生徒だから大丈夫ね。
「高町さんとバニングスさんと月村さんだね。俺は光城輝夜」
「む~っ。できれば、なのはって、呼んで欲しいの!」
それに対して、光城も自己紹介を返したけど、名字呼びがお気に召さなかったなのはが自分のことを名前で呼ぶように頼んでいたわ。
「んー……。でもな……」
「悪いな。お嬢ちゃんたち、こいつ、少し人見知りな性格だから、女の子の名前を呼ぶのが照れ臭いんだよな。(本当は、馴れ合う気が無いだけだろうけど)」
光城が困ったように言っていると隣にいたお兄さんがそう言ったわ。
「えっと……、あなたは……?」
「あぁ。ごめんごめん。俺は輝夜の叔父の光城龍だ。普段は私立探偵をやっているんだが、今日はこいつが当てた福引きで一緒に来たのさ」
とお兄さん、龍さんがそう言ったわ。
「探偵!?すごいです!!」
「アハハ。ありがとうな。でも、たぶん、俺は君たちが思っているような探偵じゃないんだよな」
「えっ?そうなんですか?」
なのはが探偵に関して、疑問符を浮かんでいるけど、実際、その通りなのよね。現実の探偵は人探しや素行調査はあるけど、殺人事件の解決はしないのよね…。……とそんなこと考えている間に龍さんが説明していて、なのはたちは納得していたわ。
「ところで、さっきから何を騒いでいたの?」
「えっと、それはユーノ君、……このフェレットを女湯に連れて行こうとしていたんだけど。暴れちゃっていて……」
すると、光城が質問してきて、それを花音がそう答えた。
「えっ?ここの温泉って、ペット同伴OKだっけ?」
「それは問題ないわ。ほら、そこの注意書きにも書いてあるわ」
光城が突然、そんなことを聞いて、アリサが大丈夫だと言って、注意書きが書かれている看板を指さしたわ。
「本当だ。ん~。でも、やっぱり、ペットを温泉に連れ込むのはやめたほうがいいと思うよ」
「えー!?どうしてなの!!」
光城がそう言うと、なのはは納得いかないという声を出したわ。かく言う私も少し戸惑っているわ。なんで、連れ込むのをやめたほうがいいのかしら?はっ!まさか!!こいつが実は転生者でユーノの正体を知っているから……。
「いや、だって、ここには他のお客さんもいるし、その中には動物がダメな人もいるかもしれないじゃん」
と、私が警戒していたけど、今の光城の言葉で的外れだったというのが理解したわ……。っていうか、全くもっての正論ね……。いくら、ここの温泉がペット同伴OKって言っても、ここは私たちの貸し切りって訳じゃないし、動物アレルギーを持っている人からすれば、良い迷惑ね……。
《ユーノ。彼の言い分は正しいから、悪いけど温泉に連れて行くことはできないわ》
《い、いえ。温泉に入れないのは少し残念だけど、確かに彼の言っていることに間違いないので……》
《あら?残念なのは、私たちの裸を見られないことじゃないの?》
《なっ!?ち、違いますよ!!からかわないでよ、葵!!///》
《アハハ。ごめんごめん。冗談よ》
念話で少しユーノをからかっていたところで、周りの様子がどうなっていたかというと、彼の言い分が正しいのは、わかったけど、いまだに不満があったなのはたちだったけど、ずっといた士郎さんや桃子さんの説得によって、ユーノを女湯どころか温泉に連れ込むことはやめたみたい。
「どうやら、話はついたみたいですね」
「えぇ。お騒がせしてすみません……」
「いえいえ。それでは、自分はこの子と一緒にお土産を見に行きますので、これで失礼を」
「えぇ、こちらこそ」
龍さんと士郎さんがそんな会話をして、光城一家は離れていったわ。………そう言えば、たしか、彼の福引きで当てたチケットって、ペアチケットよね?別にそこまで、おかしい話じゃないけど、お父さんやお母さんとは無理だったのかしら……?……やめましょう、余所の家庭事情を詮索するのは無粋だわ。
「「……………」」
「恭也さん。忍さん。彼らをジッと見て、どうしたのですか?」
すると、翼が恭也さんと忍さんに話しかけていたわ。2人の視線の先は確かにさっきの2人が歩いて行ったほうをジッと見つめていたわ。
「いや………。あの輝夜って子、初めて会った気がしなくてな……」
「恭也も?私もなのよ」
えっ?2人の言葉に私は耳を疑ったわ。
「えっと、それって、すれ違って見かけたとかじゃなくて?」
「あぁ。どこかで会ったはずなんだ。しかも、割と最近にな……」
「そうなのよね……」
恭也さんと忍さんがそう言って、首を傾げていたわ。翼も花音も気になったみたいで私と目があったわ。光城輝夜……、いったい、何者かしら……?
その後、私たちはユーノを部屋に待機していたノエルさんとファリンさんに任せて、私たちは温泉に入ったわ。温泉から上がった後は、すずかの家でのフェイトとの接触が無かったからなのか、アルフとの接触も無かったわ。そして、豪華なご飯を食べて、皆が寝静まったときだったわ。
キーーーーーーン!!
「「「「「!?」」」」」
「今のは……!?」
「ジュエルシードだ……」
私たちにとって、久々のジュエルシードの反応がしたわ。私たちは寝ているアリサとすずかを起こさないように静かに部屋を出て、ジュエルシードの反応がしたほうに向かったわ。もちろん、神社のことを教訓に全員、バリアジャケットに着替えてね。
「ジュエルシード、封印」
ジュエルシードの反応があった河原に来ると、そこには、フェイトがバルディッシュでジュエルシードを封印していたわ。側にはアルフもいたわ。
「ん?なんだい、あんたら?」
アルフが私たちに気がついて、尋ねてきたわ。本当に原作と変わったわね。これがフェイトたちとの初邂逅なんだから……。
「なぜ、ここに僕と同じ魔導師がいるんだ!?」
2人を見て、ユーノが驚いたように叫んだわ。
「私たち以外のジュエルシードの探索者……?」
「……まさか、あんたら!!あの
一方で向こうも訝しげに私たちを見てきたけど、それよりも今のアルフの言葉よ!!
「へんてこマスクの男って………」
「まさか、ダークネスのことか!?」
そうよ。私たちの知る限り、マスクの男は1人しかいないわ。まさか、すでにフェイトたちと接触していたとはね……。しかも、アルフの様子から煮え湯を飲まされたみたいね……。
「俺のこと、呼んだか?」
『!!?』
すると、急に男の声が聞こえたわ。私たちはこの声を知っている……。よく、考えれば、この人物も久しぶりに会うわね。私たちもフェイトたちも声のしたほうに顔を向けたわ。
「あんたは!!」
「あの時の……!!」
「「「「「ダークネス(さん)!!」」」」」
そこには、ダークネスが静かに佇んでいたわ………。
次回は、三つ巴の戦いです。