【Side 輝夜】
念話が聞こえた俺は、その場所に向かった。すると、そこには、茶髪のツインテールの小娘とフェレットが黒い変な奴から逃げていた。俺は、ひとまず屋根の上で観察をすることにした。
「……あのフェレットはおそらく、俺と同じように変身魔法で姿を変えているんだな。それとあの黒いのは、ロストロギアの思念体か……」
俺は、そう推察した。おそらく、龍が見つけた公園の惨劇もこいつか、こいつと同じ個体の仕業だろ。そう考えていると、小娘がフェレットから渡された宝石、おそらくデバイスの起動パスワードを唱え始めた。だがな……。普通に考えて、相手のパワーアップの邪魔をしない理由は無いな。ほら、思念体も小娘に襲い掛かった。さすがに、助けに行ったほうがいいと思ったが、こちらに近づいてくる奴の気配を感じたから、まだ、俺は身を潜めた。そして、案の定、小娘とフェレットの周りにドーム状のバリアが張られて、思念体の攻撃を防ぎ、次に飛んできた炎の弾丸が思念体を吹き飛ばした。
「なのは………たしか、この世界を元にした物語の名前は『魔法少女リリカルなのは』だったな………。リリカルの意味はわからないが、おそらく、これは物語と関係あるな」
俺がそう考えていると、続々と小娘と同い年ぐらいガキ共がやって来た。しかも、全員、俺が探していた転生者6人だった。ん?なぜ、あいつらが転生者だというのがわかったかって?それは、読心術で全員の心を読んだからだ。まさか、ここで転生者が全員、集合するとはな…。
《あいつらもやっぱり来たな》
《それはそうでしょ。今日が原作のスタートなんだから》
《でも、神様の話だと、あともう1人私たちと同じ転生者がいるんだよね?》
《あぁ。だが、それらしい人物は見当たらないな……》
《まだ、来ていないのか。それとも、原作に関わる気が無いかのどっちかじゃない?》
葵、花音という小娘と翼という小僧の念話を読心術で読み取ったが、どうやら転生者が7人いることを知っているみたいだな。クレアッツィオーネとは別の自分たちを転生させた神から聞いたのだろう。そう考えていると、降魔、神代、皇と言った小僧共が思念体の突撃しに行った。………一応、あの3人の心も読んだが、いろいろと気になることがあったんだが………『オリ主』ってなんだ?そして、突撃しに行った小僧共は思念体に瞬殺されていた。………見事な噛ませっぷりだな。………さて、本当に気になることばかりだが、転生者に関して、現時点で1番気になるのは、あの翼という小僧だな。あいつの容姿に武器……多少の誤差はあるが、まるで………。いや、今はそれよりも優先すべきことがあるな。俺はそう考えて、S.C.F00のダイヤルをいじって、思念体の真上に跳んだ。
「S.C.F00」
俺がそう言うのと同時に左の掌に
「GYAAAーー……!?」
すると、思念体は霧散して散った。まぁ、当然だろう。俺の掌には“闇夜の炎”を纏わせているんだからな。
『1つ目は、俺の闇夜の炎と武器と匣を来世でも使えるようにしてくれ』
この世界に転生する前にクレアッツィオーネに頼んだ1つ目の特典だ。俺はこの世界でも、死ぬ気の炎を、闇夜の炎が使える。S.C.F00には、闇のリングと同じ材質のものが組み込まれているから、掌や武器などに炎を纏わすこともできる。そして、闇夜の性質の1つは“無効化”。それにより、ロストロギアの思念体を鎮めることなど容易い。俺は、思念体を押さえつけたときに触れたものを掴んで、立ち上がった。そして、青い菱形の『XXI』と刻まれた宝石を見て、呟いた。
「………これが、今回の元凶であるロストロギアか」
XXI……ローマ数字の21か。これがこいつの番号だとすると、あと最低でも20個あるということになるな。まぁ、こんな危険物、放置しておく訳にもいかないからな。俺は、このロストロギアをS.C.F00に収納した。
「っ!?ま、待て!!ジュエルシードをどうする心算なんだ!?それは、とても危険なんだぞ!!」
それを見て、フェレットがハッとして、叫びやがった。なのはという小娘は何がなんだか、わからない顔をしているな。そして、転生者トリオは、俺を警戒しているな。大方、俺が転生者なのかどうか、疑っているんだろ。
《あいつ、いったい何者?ジュエルシードの思念体を押さえつけただけで封印したし……》
《もしかして、7人目の転生者?》
《否定はできないな。だが、ジュエルシードをなのはに渡さず、自分のデバイスに収納した以上、何を考えているのか、わからない》
現にこいつら、念話でその事について話しているし。あと小僧、なのはに渡さないって、なぜこの危険物を現状を理解していない小娘に渡さなければいけないんだ。まぁ、それは置いといて……
「ほう……。こいつは、ジュエルシードというのか……」
「「「!?」」」
《ジュエルシードのことを知らないの!?》
《なぜだ!?あいつが転生者なら、ジュエルシードのことは知っているはずだぞ!!》
《えっ!?転生者じゃないの!?》
俺の言葉に転生者トリオは混乱しているな。こいつら、『転生者=物語を知っている』といった先入観を抱いているな。あいにく、俺はこの物語に関して、知らないんだよ。現に、このロストロギアがジュエルシードという名前も本当に今、知ったしな。
《いや、ちょっと待って!もしかしたら、原作知識が無いだけかもしれないわ!まだ、転生者じゃないって、決めつけるのは、早計よ!!》
おっ?葵っていう小娘は察しがいいみたいだな。まぁ、どっちでもいい。できれば、俺が転生者であるということはばれたくないが、今はそれよりも……
「このジュエルシードという石が危険?そんなの、後ろの惨劇を見れば百の承知だ」
そう言って、後ろを指差した。コンクリートの道路や塀はひびが入って、かなり滅茶苦茶な状態だった。
「今朝、この近くの公園も今のこれと同じような状態になっていたが、それもこのジュエルシードの仕業なのか?」
「そ、それは………」
俺が公園の惨劇のことを尋ねると、フェレットは口ごもった。どうやら、俺の考えは正しかったみたいだな。
「それと、どうする心算かって、言われたら。こんな危険なもの、誰の手にも渡らないように厳重に保管するだけだが?」
「ふざけるな!!お前みたいな奴、信じられるか!!」
翼っていう小僧が噛みついてきたな。まぁ、何度も言っているが、この格好だとそう思うのは、無理ないな。だが、まぁ、そんなことは関係ない。
「それよりもいいのか?ほら、お前らの後ろ」
『えっ?』
俺がガキ共の後ろのほうを差すと、ガキ共は全員、釣られるように後ろのほうを向いた。
【Side なのは】
なんか、ずっと空気だったなのはなの。どうやら、あのお化けの正体はあの青い石、ジュエルシード?みたいだったの。しかも、今日、学校の先生から言われた公園の事故もそのジュエルシードせいみたいだったの。マスクの人はそのジュエルシードを自分が保管するって言っているみたいだけど、翼くんはマスクの人が信用できないみたいで大きな声で叫んでいたの。すると、マスクの人が後ろを指差したので、私たちは後ろを振り向いたの。そこには、何も無かったけど………
「何か……聞こえます……」
「これって……パトカーのサイレン……?」
「まぁ、これだけの騒ぎを起こせば、パトカーの1台や2台は来るわね……」
「早く、ここから離れないと、私たち補導されちゃうよ!!」
「だが、
フェレット、私、葵ちゃん、花音ちゃん、翼くんの順にそう言って、もう一度、マスクの人のほうを向いたの。でも………
『……って、いない!?』
マスクの人はいつの間にか、いなくなっていたの。たぶん、なのはたちがパトカーのサイレンに気を取られていた間にどっかに行ったと思うけど、全く気づかなかったの………。
「くそっ!!逃げられた!!」
「転移の反応は感じなかった……。いったい、どうやって……」
「そこのフェレット!!今はそんなこと考えてる場合じゃない!!翼も悔しがっている場合じゃないわ!!私たちも早くここから逃げるのよ!!」
「そうだね!!なのはちゃんも行こ!!」
「う、うん!!ご、ごめんなさい~~~!!」
そして、私たちはその場から急いで、走って逃げたの………。
【Side 輝夜】
「……今、戻った」
「おぉ、おかえり」
俺は自宅に戻っていった。ガキ共がパトカーのサイレンに気を取られている間にジャンプで道路から塀、屋根へと跳んで、屋根から屋根へと跳んで離れたのだった。
「それで、どうだったんだ?」
「……あぁ、悪い。その前にやっておきたいことができたから。さっきにそっちを済ませてからでいいか?」
「ん?まぁ、別に構わないが」
「助かる」
俺はそう言って、ダークネスの姿を解き、S.C.F00のダイヤルをいじった。すると、S.C.F00から空間にディスプレイが浮かんできた。その中には女性が映っていた。
『久しぶりですね。輝夜さん』
「あぁ、久しぶりだな。
その女性はクレアッツィオーネだ。
『2つ目は、クレアッツィオーネ。お前との連絡の手段が欲しい』
死ぬ気の炎と同じように、特典でクレアッツィオーネに頼んだものだ。まぁ、何かの保険になるだろうと思って、頼んだのさ。龍はいきなり、俺がクレアッツィオーネと連絡を取ったことに驚いていたが、何か理由があるのだろうと思ってくれたのか、黙っていた。
『お互いに久しぶりなので、少し世間話をしようかと思っていましたが、どうやら、あなたはそんな気分じゃないみたいですし。単刀直入に聞きます。いったい、どのようなご用件で?』
「あんたに訊きたいことがある」
『………そうですか。わかりました。ですが、私たち神にもルールがあり、話せるものと話せないものがあります。もしかしたら、あなたの知りたいことが話せないものかもしれません。それでも良いでしょうか?』
「構わない」
『わかりました。それで、訊きたいこととは、何でしょうか?』
クレアッツィオーネの言葉に俺は、息を吐いて、答えた。
「翼っていうガキのことだが」
『潮田翼さんのことですね。(ガキって……今のあなたも子供なんですが……。でも、子供の輝夜さん、かわいらしいですね♪)』
「なんか、変なこと考えていないか?」
『い、いえ。別にそんなことはありませんよ………。(す、鋭い……。)それよりも、やはり、あなたは彼が気になりますか……。それもそうですね。なんたって、彼は………』
次にクレアッツィオーネが言う言葉を俺は予想できた。
『
「…………」
………あぁ、そうだよ。あの潮田翼っていうガキは髪の色や5歳ほどの年の差などの違いはあるが、
『それで、厳密には彼の何を知りたいのですか?特典でしたら、残念ながら、他の方のも含めて、私からは教えることはできません』
「そんなことはどうでもいい。俺が知りたいのは、あいつが着けていた
『
「あの
俺が知りたかったのは、そこだ。潮田翼の指には沢田綱吉のと同じ“ボンゴレギア 大空のリングVer.X”を身につけていた。以前、
『そういえば、あなたの目的は………。なるほど、なぜ、あなたがその質問をするのか、わかりました。正直、かなりグレーの質問ですが、結論だけならお答えできます。あれは
クレアッツィオーネはあっさりと否定した。
『あれは潮田翼さんのデバイスのモデルとなったのです。だから、あれには
「………まぁな」
気づいていたか。まぁ、前世で
『話はそれぐらいですか?』
「あぁ。俺の訊きたいことはそれだけだ」
『わかりました。それでは、もう切りますね』
「それは別に構わないが珍しいな。いつもなら、世間話をしようとしてくるくせに」
ちなみに、すでに何回か連絡は取り合っている。
『えぇ。今回は止めておくことにしたの』
「そうか。それじゃ、またな」
『えぇ。さようなら』
そう言うと、ディスプレイは消えた。それを確認すると、俺はずっと黙って待ってくれていた龍のほうを向いた。
「悪い。待たせたな。それじゃ、さっき、あったことを話す」
「……それはいいが、輝夜」
「なんだ?」
「苛ついているみたいだが、大丈夫か?」
龍の言ったことに俺は一瞬、理解できなかった。
「苛ついている?俺がか?」
「どうやら、その様子だと自覚していないみたいだな。お前、帰ってから様子が少しおかしかったぞ」
まじか……。自分だと、全然、気づいていなかったな。だが、言われてみると確かに、何だか心のどこかでムカムカとしているな。
「そんなに、わかりやすいほど苛ついていたのか、俺は……」
「いや、パッと見た感じは普通だった。俺だから、気づいたって感じだな。あと、クレアッツィオーネもあの様子だと、気づいていたと思うぞ。だから、今回は気を使って、世間話をしなかったんだと思うぞ」
「そうか……」
俺はいったい、何に苛ついていたんだ?それを考えて、俺はすぐにわかった。なぜ、それに苛ついているのかは、まだわからない。だが、その事について考えると、俺は心が嫌な意味でざわついた。俺は……
潮田翼に苛ついているんだ。
第3の特典はまた、別の話で。