幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

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えー!今日は二本も投稿するんですかー!?




怖い。2

 自分の喉が裂けるかと思った。

 足の震えが止まらない。でもコイツらはマジで許せねえ。

 

 全員詩織の方を向いてて良かった。不意打ちで一人の頭に鉄拳ぶち込めたんだから。手がジンジンする。人を殴るって、こんなに痛いのかよ。

 俺が殴った一人は呻いたまんま、残りの三人が俺の方をじろりと睨む。足が竦む。さっき何叫んだかも覚えていない。息が荒い。心臓が死ぬ程ドクドクしている。

 

「なんだよおめえは」

 

「いきなり殴って叫んでんじゃねえよ!?」

 

 俺よりよっぽど凄むのに箔がついてやがる。普段の俺なら小便漏らしてるレベルに怖い。

 

「俺の女にてぇ出すんじゃねえよ」

 

 自分の声がさっきと比べて圧倒的に弱々しいことが自分でもわかる。不意打ちで一人沈めたけどあと三人。絶対無理だ。しかもノリで言っちゃったけど、俺の女でもなんでもない。

 はっきり言おう。俺は喧嘩が超絶弱い。小学生の頃に詩織と殴り合いの喧嘩して勝てた試しが一度もない。そもそも人を殴り慣れていない。

 俺が例えばボクシングでもやってたら。素人のパンチには当たらず、無駄のないジャブでこいつらをボッコボコに出来ただろう。史上最強の弟子だったら。それはそれはもう沢山の武術でボッコボコに出来ただろう。

 

 だが現実は非情なのである。俺は喧嘩慣れしてないガキなのだ。

 

 けど。だけど。

 

 詩織泣かす奴は絶対ぶっ飛ばす。

 

「死ねクソヤロォァァァ!」

 

 思いっきり拳を振り抜いた。空を切る。じゃあ逆手で腕を振り回した。空を切る。無理矢理拳を当てに行く。空を切る。

 

「暴れんな!」

 

 後ろからすっげえ衝撃。背骨が折れたんじゃねえの、ってレベルの痛みと同時に、うでが満足に動かせない。というか動けない。羽交い締めにされたんだ、って気付いた頃には鳩尾に拳叩き込まれてた。

 胃の中掻き混ぜられる感覚。全身の力が抜けるのに、体が重たくて異様に感覚が鋭い。全身から「痛い!」っていう信号が送られてくる。崩れ落ちたいけど、羽交い締めにされててそれも許されない。

 

「弱っ」

 

「何こいつ!イキリかよ」

 

 もう一発殴られた。やばい。ゲロ吐きそう。目の前がクラクラする。反転してる。痛いです。

 ぼんやりした瞳に、すっげえ怖そうな顔してる詩織が見えた。よかったー、服着てる。ごめんな、助けに来たけどめちゃくちゃカッコ悪いわ。怖かったよなー。口になんか詰め物までされてさ。叫べないし助けも求められねえよな、それじゃ。俺を応援も出来ねえよな。俺がプリキュアなら応援パワーで勝てたかもしれねえのに。まあプリキュアじゃないけど

 

 いきなり映った視界が空に書き換えられた。一瞬遅れて首と顎に激痛が走る。アッパーカットかな。痛すぎてなんも考えられねえ。頭がフラフラするしゲロは吐きそうだし。意識飛びそうだ。

 あー、これ口の中切れてるわ。めっちゃ血の味する。デジャヴ。夢の中でもこんなこと考えてた気がする。ある意味あれは正夢かー。

 

 また顔面を殴られた。これ以上不細工になったらどうしてくれんだよ。息が出来ない。

 

「……しね、ばーか」

 

 もう反撃するには悪口言うしか無いんだけど。俺一人じゃどうにもならんわなー。ミスった。せめて警察に電話してから来るべきだった。

 

 しばらく二人にボコられ続ける。痛いとかもう感じない。千から七を引き続けてるから……とかではなく、多分体がもう痛みを受け付けてない。ずっと羽交い締めだから、一番きついのは倒れたいのに倒れられないこと。

 

 でも、絶対意識だけは保っていた。

 多分、俺が気絶したら「よっしゃー邪魔は消えたー」って感じでいよいよもって詩織が脱がされる、輪姦される。それだけは絶対に許さねえ。だから死んでも意識は飛ばさない。ずっと恨み言吐いて目ェ開け続けてやる。

 

「こいつサンドバッグのクセにトバねえ!」

 

「うぜえんだ……よっ!」

 

「いっ……!?っフゥー!……ゲス野郎が、しね」

 

 喧嘩ってのは再起不能にした方の勝ちだ。何回ダウンを取ったら勝ち、みたいなルールは無い。テンカウントのされてても、後で起き上がったら負けじゃないんだよなぁ。

 俺が不意打ちした野郎が起き上がりやがった。クソが、気絶してろよな。……俺の筋力じゃ無理か。ここからは三人にボコられるのか。痛いなぁ……。失敗した。警察を呼んでから来るべきだった。

 

 起き上がりやがった野郎は何故か俺の方ではなく……俺の後ろを見ていた。

 

「……!?おい、カズ!後ろ━━」

 

「んあ?…おごっ……!?」

 

 ふと、羽交い締めが解けた。俺はそのままその場に崩れ落ちる。

 

「詩織ちゃん、無事なんだろうな……!無事じゃなかったら……お前ら全員殺す……!」

 

 ファミレスで聞いた声と同じ。だけど雰囲気が圧倒的に違いすぎる。でも解る。誰が来たかはすぐ解る。……悪いなー、俺もう満身創痍だから立てるかもわかんないぞー?

 

 正真正銘、詩織の彼氏。高見玲音がそこにいた。

 

「んだよ!?このアマ股緩すぎじゃね!?二人とやってんのかよ!?」

 

「おい、俺の幼馴染をアバズレ呼ばわりすんな……お前とはちげえんだよ!死ね!」

 

 めちゃくちゃ気に障ること言われたから無理矢理立って、野郎の股間を思い切り殴り付ける。ボロボロだけど、急に来たイケメン君に皆気を取られているから股間潰しは綺麗に決まった。二度とセックス出来ないようにしてやろうか。

 

「クソァ!てめえはまたサンドバッグなってろや!」

 

 頭を踏みつけられる。地面に思い切りぶつけられ、鼻に激痛が走る。

 

「お前なんなんだよ!死ねよ!」

 

「うっせえ!女拉致って楽しいんかボケッ!」

 

 聴覚だけは鮮明だ。高見がすげえ叫びながら殴り合いしてるのは解る。あー、くっそ。勝てねえわ。多分俺より喧嘩強いだろうしな、あいつ。

 けど四人もいるんだ、俺もあいつもボッコボコにされんの解ってる。だから俺も必死に抵抗するぞ。……拳で。

 

「だぁァァァ!」

 

 踏みつけられた足を両手でしっかり握って、無理矢理頭からどかす。そのままフラフラになりながら立って、足を思い切り引く。

 

「うぉっ!?」

 

 そしたら当たり前だけどこける。マウントを取る。さっきまでのお返しだクソ野郎。

 

「ぁあっ!うるぁっ!でぃ!っんぅ!」

 

 ぼごっ、ぼごっ、とずっと顔を殴り続ける。おら、口の中切れよ!血の味を味わえよ!俺は何発殴られたっけ?五十発位殴ってやる。

 

「調子乗んなよ陰キャァ!」

 

 いきなり後ろから服掴まれて引きずり降ろされた。背中が地面に擦れてめちゃくちゃ痛い。そして脇腹を蹴られる。吐いた。

 

「ヴぉえっ」

 

 喉が気持ち悪い。口の中は甘ったるさと鉄っぽさでいっぱいだ。水が欲しい。

 もうなんも考えらんねえ。死んでもいい。こいつらボコるまで気がすまねえ。そう思ってた時。

 

 

「お巡りさん、こっちー!!」

 

 

「んあ!?サツ!?」

 

「誰だ!」

 

「いややばくね!?逃げるか!?」

 

 誰かの叫び声が聞こえた。お巡りさん……誰かこの騒ぎ聞きつけて警察呼んだか!?それは誰か知らんがナイスだ!聞き覚えのある声な気がする。

 野郎共は一斉に慌てふためきやがった。ざまあみやがれ。

 

「……嘘だよバーカ!歳下をよってたかってボコって恥ずかしくねえのかタコ!悔しかったらレイプじゃなくて彼女作ってラブラブエッチしやがれクソ童貞が!!……ひいいいごめんなさい!!」

 

 ……コバの声だ!あいつ、あんなにテンパリながらこの場所見つけたのか。

 

「ぶっ殺す!!!」

 

 あいつ煽りスキル高いな!?しかも言うだけ言って逃げんのかよ!?あいつ足遅いから捕まるんじゃねえの!?

 

 だけど一瞬また全員の視線はコバの方へ行った。そしてコバにブチ切れて追いかけようとしたチンピラに向かって一足先に高見が走り出す。

 

「あああああああああっ!!」

 

 物凄い叫び声と共に飛び蹴りを放った高見。チンピラはコバに夢中でその飛び蹴りを顔面にくらい、そのまま地面に倒れて気絶した。あと三人。だけどこっちは俺は死にかけ、高見もよく見たら顔が腫れている。望み薄い。

 

「あー、やっば。頭クラクラする」

 

 そんな高見の呟きが聞こえてきた瞬間。

 

「ざっけんなよテメエら!死ねよ」

 

 野郎の一人が高見に向かって走り出して……

 

 ドスッ。

 

「えっ」

 

 明らかに殴るとか蹴るとかそういうのじゃない音が鳴った。

 高見の脇腹に何かが刺さってる。赤い何かがドロドロと落ちていく。

 

 俺の中でなんかがキレた。

 

「何やってんだお前っ!!」

 

 体が自分でもびっくりするくらい勝手に動いた。自分の身体能力とは思えないレベルの跳躍力でナイフぶっ刺した野郎に飛びかかる。

 そのまま顔面を殴り、落ちた顔面を両手で掴んで膝蹴りを無理矢理入れる。そして股間を蹴り上げた後に蹲ったそいつの身体を両腕で地面に叩き付けた。鼻が折れてるかもしれない。

 

「痛ったぁ……!初めて刺された、洒落にならん……!」

 

 高見も刺された部分を抑えてその場に蹲る。俺もその場に倒れ込んでしまう。あと二人。あと二人……あと二人……!身体がいよいよもって動かない。

 

「あは、あはは?あははははっ!やっと倒れたかよ糞ガキ共!」

 

「くっそ……ナイフは卑怯だろ、殺す気かよ……」

 

 お前も殺すぞって言ってたじゃねえかよ。俺ら二人ともだっせー。

 スマホが鳴った。取れねえよ。通話ボタンとか押せねえよ。

 ラインの無機質な音が神社に鳴り響く。

 

「んだよ、ママから電話だぞ?アッハッハッハッハッ!」

 

 

 

「うっせー童貞共、てめえ等こそママのミルク吸ってろ」

 

 

 

 毎日聞いてる女の声が聞こえた。あれ?俺場所教えたっけか?

 

「おい、晴人!電話したんだから出ろよ」

 

「この状況みてそれ言うかよ……痛っつ」

 

 神崎雨。姉ちゃんがラスボスみたいな雰囲気背負ってやってきた。働いてたまんまの格好だから、無駄にオシャレである。その上着動きづらかっただろうに。てか電話してきてたのアンタかよ。

 

「……で?こいつらボコッたらいいの?」

 

「……おい、お姉さん?もしかして喧嘩するつもり?」

 

「喧嘩?しない。私の大事なお友達を返してもらうか……一方的に私がアンタらボッコボコにするかのどっちかだから。喧嘩じゃなくてイジメ」

 

「は?」

 

 さも当然、みたいな口調で姉ちゃんは言い切った。

 

「ナイフ刺さってる少年が詩織ちゃんの彼氏さんかな?……それ、抜くなよ。多分ここだろうと思って一応救急車も呼んでっから。痛いだろうけど耐えな」

 

 そう言うと上着を脱ぎ捨てて、腕まくりをする姉ちゃん。そう、うちの姉ちゃんは……

 

「覚悟しろよ、ぶっ殺してやるから」

 

 異様に喧嘩が強い。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 姉ちゃんが来てから決着は一分で着いた。何がやばいかって、自分から殴りかかったらアウトだから、相手から殴りかかられるまで一切攻撃しないことだよな。あくまでも正当防衛のもとボコボコにするのちょっとよくわからなかった。

 姉ちゃんが詩織の口の詰め物と縄を解いた瞬間に、詩織は全力で走って俺と高見に向かって抱きついた。

 

「怖かった……!玲音君、ハル、ごめん……!ひぐっ、なんか、すごい怪我して……」

 

 ……高見の奴が「俺一人じゃ支えられない」とか言ってたけど、俺も一人じゃボコボコにされてただけだし。なんというか、なんとも言えないな。

 

「取り敢えず、詩織ちゃん?」

 

「痛いから抱きつくのはやめろ」

 

 気持ちは分からんでもないけど、俺も高見も重傷だからな。

 

 全てが終わってから「よかったー!お前ら無事かよ!」と走って帰ってきたコバを殴る権利はあると思う。俺も高見も。

 でもコイツのおかげで助かった瞬間もあったんだよな。あの隙に高見がドロップキックぶちかました訳だし。

 

 警察も救急車も先に姉ちゃんが呼んでくれていたみたいで、事件は驚く程迅速に解決した。

 俺と高見は仲良く病院送り。姉ちゃん、詩織、そしてコバも警察から事情聴取。クソ野郎共四人は逮捕。全員成人済みらしいので顔写真付きで名前も公開だ。やったぜ。

 

「……なあ、高見」

 

「……何?」

 

「俺ら、明日テスト受けれるかな」

 

「絶対無理でしょ……下手したら詩織ちゃんも、小林君も」

 

「だよなぁ。後日だよなぁ」

 

「そうだね。……現代文、教えてくれない?」

 

「おー」

 

 後から聞いた話なんだが、事件に計画性は無かったらしく、テスト期間の女子高生でそれなりに美人のやつだったら誰でもよかった、という無差別的な犯罪だったらしい。偶然そこに居合わせた詩織はマジで運が悪かった、としか言い様が無かった。

 

 俺は全身打撲で全治三週間。一週間は入院。高見は脇腹を数針縫った挙句に打撲も重なり同じく一週間は入院。二人とも骨折れてないのは不幸中の幸いだろうか?詩織も精神状態やら云々の検査等があった為一日入院。で、その後は警察から話を聞かせて欲しい、ということでやはり一日は潰れそうらしい。

 俺達三人は仲良く後日、終業式までの休日のどこかでテストを受ける羽目になるのであった。

 

 そして病室。なんと三人とも同じ病室である。

 

「口ん中切れたからさ、もの食べるのめちゃくちゃ辛い」

 

「痛った!箸持てない」

 

「……二人とも大丈夫?」

 

「「大丈夫じゃない」」

 

「……やっぱ二人、似てるね」

 

 散々だよくそやろーめ。





もう少しだけ病室の話は続きます。それが終わったら一学期編終わり。夏休み編やります
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