幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

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夏休み
断りたい。


 退院しました。まだ完治してないけど。

 高見も退院しました。まだ完治してないけど。

 

 また時々病院に行って怪我の経過は見せたりしないといけないらしいが、取り敢えず退院しました。別に怪我が痛くて生活に支障が出る!とかも特に無かったので、もう今はたまにあちこちがジンジンする程度だ。高見の奴は刺された所がたまにかなり痛いらしいが。

 

「当たり前だけど家の方が落ち着く」

 

「そりゃそうでしょ」

 

 学校の方は既にテストは終わっているらしく、今は教師陣が鋭意採点中……ということで授業は無いらしい。明後日辺りにテスト返却が行われ、その後に終業式。そして夏休み……といった予定らしい。

 つまり今日は部活動でもない限り登校する必要はないのだが……俺は制服に着替えていた。理由は至極単純。

 

 俺と高見の二人は今日からテスト二日目が始まるのだ。……あ、あと詩織も二日位は一緒にテスト受けるらしい。

 コバとか須田とか、石黒辺りに「テスト、どんな問題出た?」ってラインで聞こうとしたら、先にコバから「お前らのテストは問題変わるらしいぞ」ってラインが来てました。そりゃそうだよね、俺みたいなやついるもんね。

 

「あんたはいつまでテスト受けるの?」

 

「今日と明日……明後日に終業式して、その次の日で終わり」

 

 杉山先生からもらったプリントにはそう書いてあった筈だ。つまり夏休みの初日の午前中はテストで潰れることになる。俺と高見だけ夏休み延長してくれないかな?

 

「あー……どんまい。名前欄に間違ってアレクサンドロス大王って書いちゃダメだからね」

 

「どういう間違いをしたらそうなるのか教えてくれ」

 

「……そっか、アンタは世代じゃないのか、バカテス」

 

 姉ちゃんが遠い目をした。

 バカテスは知ってるけどさ、そんなネタは俺は知らん。

 たまに思うけど姉ちゃんのオタ知識は何処から湧いてるんだろうか。ライトオタクの筈なのになぁ。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「はい終わり!解答用紙回収すっぞー」

 

 試験監督の皆川ちゃんの声と共にシャーペンを置く。物理意外と行けた気がする。55点くらいは取れたんじゃねえの?

 隣で呻いている高見、そしてなんとも言えない表情で終わってるのに答案用紙を睨む詩織。……やっぱ三人だけでテスト受けるのって変な感じするな。

 

「……おい神崎」

 

 俺の答案用紙を回収した時に皆川ちゃんの手が止まった。

 

「……え、何すか」

 

「それ、何?」

 

 皆川ちゃんが指さしたのは俺のテストの問題冊子。他の二人と変わらないはずだが?

 

「え、皆川ちゃんから配られた問題冊子ですけど」

 

「先生って呼べっつってんだろ。……いや、じゃなくて、その冊子に描かれてるやつ」

 

「あー、これっすか?ピカチュウ」

 

「高二になってテスト終わった後に冊子に落書きとかするなアホ……しかもブサイクだし」

 

 え、だって時間余ったんだもん。

 よくテストや模試なんかを受けると、時間が余ったら後で自己採点出来るようにしておく、とか間違いが無いか再度見直す、なんて言われたりするけど俺はそういうことは一切しない。面倒臭いし、何より別に自己採点したからってそのテストの結果が変わる訳じゃないから。見直ししたって結局その時の自分の実力が変わる訳でもないし。

 

 だからこうしてピカチュウを落書きしてたんですが、ブサイクらしいです。なんでー?俺デブチュウの時代の方が好きなんだけどなー。

 

「ハル、昔から絵心無いよね」

 

「お前には言われたくねーよ」

 

 お前はピカチュウ描く!って言ってクリーチャーを生み出す系画伯だろうが。

 

「まだ一応テスト中に含まれんだぞお前ら!カンニング類似行為にしてやろうか!?」

 

 皆川ちゃんがキレた。真ん中で高見が物凄く笑いを堪えている。笑え笑え、大爆笑してカンニング類似行為にされてしまえ。

 

「……あ、神崎。お前このまま残れ」

 

「え、なんで」

 

「話がある」

 

 ピカチュウ描いたから俺だけカンニング類似行為ですか?てか最近よく皆川ちゃんに呼び出し食らうな……。

 

「はい、じゃあテスト回収したので一旦これを職員室に持ち帰ります。日高と高見は解散、お疲れ様。神崎は待機」

 

「先生お疲れー!」

 

「どうもっす」

 

「マジでなんでなん?」

 

 関西弁が混じるくらいには意味がわからない。

 

「……じゃ、俺部活行くから。二人ともお疲れ。神崎はまた明日」

 

「玲音君頑張ってねー!……どうする?折角だし終わるまで待ってようか?」

 

 高見は荷物を纏めてそのままバスケ部の練習に向かった。……あいつ、まだ傷痛いらしいのによくやるなぁ。詩織は特に用もないらしいのであとは帰るだけらしいが……一人で帰るのもなんとなく寂しいから待ってて貰ってもいいんだが、高見がそれを許すのか?

 

「……神崎。別に二人で帰るのは良いけど、俺は幼馴染パワーには負けねえぞ」

 

 教室を出たばかりだから聞こえていたのか、扉からひょっこり顔を出して頬を紅くしながらそんなことを言ってきた。何なんだあいつは。勝ち負けとか無いだろ。

 

「お前が一人で帰りたく無いんなら待ってればいいんじゃねえの?」

 

「じゃあ待ってる。中庭いるね」

 

「あいよ」

 

 詩織も出て行った。

 

 ……なんか、一人が久々に感じられる。

 昨日の昼間まではずっと病室で、高見と同じ部屋だったから。流石に昨日は姉ちゃんも家にいてくれたから、帰ってきてからも一人じゃなかったから。今日、この教室に着いた時も、先に高見が来てたから(詩織は遅刻ギリギリだった)。

 

 一人だからと言って別段静か……という訳でもなく、窓の外からは男子サッカー部のボールを蹴る音と掛け声が、蝉の鳴き声が、陸上部が地面を蹴る音が聞こえてくる。……男子サッカー部ってことは、今日は女子サッカー部はグラウンド練習じゃないんだな。

 

「……暑っつい」

 

 毎年「去年よりも暑い!」とか言われているこのヒートアイランド・ジャパン。流石の我がボロボロ校もこの暑さの中クーラーも無く授業を受けろという程鬼畜では無いので、この部屋も今は冷房がかかっているのだが、それでも尚暑い。快晴の空の下でボールを蹴っているサッカー部には頭が下がるね。多分体育館も蒸し風呂みたいな暑さだろう、高見もよくやるよ。詩織も待つならクーラーの効いてる図書室とかにすりゃあいいのに。

 

「……待たせたな、神崎」

 

「うっす」

 

 皆川ちゃんが帰ってきた。額には汗が浮かんでいる。廊下も暑いんだろうなー。

 

「で、話って何すか」

 

「あー。お前さ、文化祭の実行委員とか興味ない?」

 

「無いです」

 

 ある訳ねえだろ。もう面倒臭そうな匂いがプンプンするもん。

 我が校の文化祭は十月の末に行われる。クラス単位で出店をやったり、部活単位で出店をやったり。有志でパフォーマンスしたり、文化部の発表があったり……と、まあ普通にそれなりの文化祭なのだ。

 しかしそれなりの文化祭、ということは準備もそれなりに大変なのである。

 

「あー、いや。実行委員っつっても」

 

「嫌です」

 

「いや、だからちょっと話だけでも」

 

「嫌です」

 

「話聞けよ神崎ィ!」

 

「嫌です」

 

「さっきのピカチュウカンニング類似行為にするぞ」

 

「汚ねえ!やることが汚ねえぞ皆川ちゃんよォ!」

 

 職権濫用だ。パワハラだ。訴えてやる!……何処に訴えたらいいんだ?

 

「実行委員っつってもな、文化祭そのものの実行委員じゃない。というかそんな大役お前に任せたら文化祭が滅ぶ」

 

 どういう意味だ。というか俺をなんだと思ってるんだこの先生は。

 

「じゃあ何すか」

 

「クラスの出し物の実行委員だよ。高二の演劇コンクールと、あと当日なにやるか」

 

「……めんどくせ」

 

 文化祭の本祭は土曜日なのだが、その前日の金曜日に何故か高二は演劇コンクールという名の催し物をやることになっている。クラス単位で演劇をして、最優秀クラスは本祭でも発表、という形になってる。つまり今俺が頼まれているのは、クラスリーダー……みたいなもんなのか?

 

「大体なんで俺なんですか」

 

「この役割、部活やってない奴じゃないと出来ないから。男女一人ずつ。あたしのクラスで帰宅部の男子、あんたと小林だけなの」

 

 えっ、須田って部活やってたの?知らんかった。

 

「なんでコバだとダメなんですか」

 

「あいつに実行委員任せたら本祭無理やりメイド喫茶とかいかがわしい店とかにするだろ、絶対。あと演劇の女子の衣装も絶対ヤバくなる。それされて怒られるの、あたし」

 

「すげえ説得力ある」

 

 本質的にあいつはただのスケベ野郎だからな。……あれ?これ是が非でもコバにやらせた方が俺にもメリットあるくね?メイド喫茶とかにしてくれたらクラスの女子のメイド姿拝めるじゃん?織田とかみたいな不良少女がすっげえ恥ずかしそうに「……ちっ、お帰りなさいませ」とか言うんでしょ?アリじゃね?

 

「おい神崎、何考えてるかバレてっからな」

 

「げっ」

 

 顔に出てたか。

 

「というか小林よりはお前の方がまだ人望あるだろ?割に柔軟な考えしてるお前の力が借りたいんだ。頼む」

 

「えー……」

 

 なんか皆川ちゃんって背低いから頼む!って言われたらちっちゃい子に意地悪してるみたいでちょっと嫌だな。面倒臭いけど、まあ、別に……

 

「……いいっすけど」

 

「ホントか!?良かったぁ……小林にも一回聞いたら「女子の衣装全部俺が決めていいんすか!?」って言われて干されることを覚悟してたんだ」

 

 あいつ欲望に正直に生きすぎだろ。

 

「じゃあ、今日は終わり。学年主任にはお前がやるって言っとくから。また明日な」

 

「うっす」

 

 なんか上手いこと乗せられた気もするが……まあいいや。折角なので全力でやる。目指すは演劇コンクール一位、そんでもって本祭の出し物も大成功で終わらせる。……そう上手くいくのかな。まあいいや。

 

 詩織は……中庭だったな。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「悪いな、待たせて」

 

「いいよ別に。私も暇だし」

 

 そういえば中学時代はこうやってよく一緒に帰っていた。中庭を抜けて下駄箱で靴を履き替える。

 

「で、話なんだったの?怒られるようなことした?」

 

「学校に来てもいなかったのに怒られるようなこと出来るわけねえだろ」

 

 お前を助けた代償に入院生活送ってたんだよこちとら。

 

「文化祭のクラス実行委員やれって言われた」

 

「……へ?」

 

「へ?って何だよ。俺がやるのおかしいか?」

 

「い、いやー、そうじゃないんだけど……あっ」

 

 なんだこいつ、明らかに変な反応した後に何かに気が付いたような表情になりやがったぞ?

 ……ちょっと待て。クラス実行委員って「男女」一人ずつって言ってたな?そんでもって「部活やってない奴」だったっけか。俺のクラスで部活やってない女子って、織田率いるビッチ集団と、あと……

 

「あっ」

 

 まさか。

 

「お前も……?」

 

「……うん。私が女子のクラス実行委員です」

 

 マジかよ……。いや、別に全然良いけど。

 

「よくよく考えたら私のクラスで部活やってない男子、ハルか小林君しか居ないもんね」

 

「お前、絶対織田とかに押し付けられただろ」

 

「……というか、あの子達に任せたらダレそうだし……どうせなら文化祭楽しみたいじゃん?」

 

 一理あるな。別に織田とかが適当な人種、って訳でも無いが、実行委員で皆をちゃんと引っ張ってくれそうか?と言われると首を振りたくなる。

 これ高見になんか言われそうだなー。まあいいや、しーらないっと。

 

 そもそも冷静に考えたら詩織と組めるのは普通にラッキーだ。何かしら決めあぐねた時にすぐに互いの家で作戦会議出来るし、互いになんとなくどういう事がやりたいか、とかどういう風に言ったら怒らない、とかは理解してる。この上なく連携は取りやすい。

 

「俺、どうせなら演劇コンクール優勝したいんだよね。ついでに言うなら本祭の出し物も大成功させたい」

 

「うっわ、欲張り。いいじゃん、私も頑張るよ。……今年はなんか、お店の売上競走とかあるんだって。お店やらない?食べ物作るの」

 

「面白そうじゃん。姉ちゃんとかから売れそうなもん聞いてみるわ」

 

「そっか、お姉ちゃんもいるの心強いね。じゃあたまーにハルの家行くね、お姉ちゃんと三人で作戦会議」

 

「おう」

 

 唯一の問題点は詩織と俺の二人が高見に怒られる可能性がある事だが……浮気じゃないし、割とマジで偶然実行委員が被っただけなので仕方が無いのだ。……ちょっと悪い気もするが悪く思うなよ。

 

「じゃあ、今日の夜ご飯食べに行くから」

 

「……は?」

 

「後でねっ!」

 

 詩織はそのまま走って帰って行った。

 ……いや作戦会議の予定速すぎません?取り敢えず姉ちゃんに許可取らないといけないんだが。

 

「仕事中にラインごめん。なんか詩織が夜ご飯食べに来るらしいけど」

 

 取り敢えずラインを送る。すぐに既読が付いた。休憩中かな?

 

『りょー。多めに作るわ』

 

 許可取れちゃったよ。しかもいとも簡単に。

 

「……家着いたら片付けるか」





毎日投稿出来てた時期の私すげえな。書き溜めはあったとは言えども。
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