幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

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またランキング載ってたらしいです。

毎度毎度本当にありがとうございますm(*_ _)m


楽しみたい。

「風邪引いたのがあのタイミングで良かったわ」

 

「本来は引かないのが一番いいんですけど」

 

 俺と姉ちゃんは珍しく電車に乗っていた。窓から見える空はオレンジ色に染まっており、電車の中の人は心なしか浮かれて見える。浴衣を着ている人もチラホラ見えるな。

 

 今日は姉ちゃんと行くって約束していた、夏祭りだ。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「うわぁ、思ってたより人多いね」

 

「うわぁ、ホントだよ……」

 

 花火も見られるってこともあるのか、それともメインステージでやっているよさこい踊りや和太鼓、バンド演奏が集客しているのか、祭りの人の入り具合は俺達の予想を上回っていた。浴衣に紛れてコスプレしてる人までいるぞ、おい。暑そうだな。

 ちなみに俺は勿論なのだが、姉ちゃんも浴衣は着ていない。理由は至極単純、「面倒臭いから」。俺は普通にシャツにジーパン、姉ちゃんもシャツにホットパンツという超絶ラフな格好で祭りに来ています。

 

「何食べよっかな」

 

「歩いてたら美味そうなもん見つかるだろ」

 

「あ、そうだ。理恵さんにお礼も兼ねて何か買って帰ろうか」

 

 ぶらぶらと人の流れに紛れて歩く。出店を覗きながら。

 祭りの提灯には狐かなんか、そういう妖怪の魂でも入ってるんじゃないだろうか?ってたまに思う。こう、見るだけでワクワクしちゃうんだよね。だけど、ふとした時に提灯が燃えて消えるんじゃ無いだろうかって思ってしまう。

 

「お、焼き鳥ある。……うわ高っ!?あの値段ならもうちょい肉厚なところ出せよな……やめぴ」

 

「テキ屋だから大体はそんなもんだろ。当たりを見つけるまでは長期戦だぜ?……おっ、スーパーボールすくいだ」

 

「あんたこの歳になってスーパーボール欲しいの?」

 

「いらねえけどスーパーボールすくいはやりたい」

 

 金魚すくいや亀すくいは貰った後に「育てなくては」という強迫観念に囚われるからやらない。俺結構ズボラだからエサやるのとか忘れそうだし、そういうので後悔するの嫌なんだよね。

 その点スーパーボールはエサとかそういうの無いから、気軽に遊んで気軽に貰って帰れるのは強い。祭りで見つけたらついやりたくなっちゃうんだよな。

 

「おっちゃん、一回!」

 

「あいよ、三百円ね!」

 

 百円玉を三つ渡してポイと掬ったスーパーボールを入れる小さなボウルを貰う。さて、表面はどっちだ?

 

「おっちゃん、あたしも一回」

 

「おおっ、美人さん!三百円だよ!」

 

 姉ちゃんもやるのかよ。

 

「負けた方かき氷奢りね」

 

「あいよ」

 

 賭けが始まったよ。

 スーパーボールすくいで大事なことはポイの表の面を使うことと、なるべくポイが水に浸かっている時間を減らすことだ。あと、紙じゃなくてプラスチックの部分に重心が向くようにする。

 必然的にポイを水に浸けている時は斜め向きになる。そして掬うって言ってもポイの上に乗せる、というよりはそのまま勢いで投げ入れる感じ。……よし、上手く出来てる。

 

「おっちゃん、ボウルいっぱいになったからもう一つボウルくれ」

 

「うわっ、兄ちゃん上手いなぁ!よし、追加だ!」

 

 これ以上掬うとボウルに入り切らないので追加のボウルを貰う。まだポイは少ししか破けていない。久々にやったけど八十個は取れそうだな。

 

「おっちゃん、あたしにもボウル」

 

「姉ちゃんも上手だね!ほら、追加だ」

 

 うわ、姉ちゃんもボウルいっぱいにしてやがる。クッソ、ポイ破けてないし。……あ、でももう紙の部分で濡れてない部分無いな。ならまだ勝負は五分の筈だ。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「あー!!!悔しい悔しい!悔しい!」

 

「負け犬の遠吠えを聞きながら食べるかき氷ってのは最高だわ……」

 

 しかも負け犬の奢りでっていうのが最高だね。

 百二十対百八で俺の勝ちだった。ちなみにスーパーボールは掬った分全部貰える訳ではなく、百個以上掬えたら五個貰える、っていう仕組みだったので二人で計十個貰った。六百円でスーパーボール十個って考えたら驚く程コストパフォーマンスが悪いが、楽しかったので良いのだ。

 そしてかき氷を頬張る。一つ二百円、シロップかけ放題。姉ちゃんはいちご、俺はブルーハワイ。

 

「ブルーハワイって結局何なんだろうな」

 

「色合いと語感で名前付けたんでしょ?そもそもかき氷のシロップって着色料以外全部成分変わらないらしいし」

 

「えっそうなの?」

 

「見た目と名前の先入観で勝手に味を勘違いするんだって。実際は全部同じ甘いシロップらしいよ」

 

 そうだったのか……。だからブルーハワイなんていうよくわからない味が爆誕しているのか。普通に美味いからそれでいいんだけどね。

 

「てか、俺らちゃんとしたご飯食べてないのに先かき氷食べていいのかよ」

 

「こういうのも夏祭りの特権でしょ?あ、あの焼きそば美味しそう」

 

 焼きそばの列に姉ちゃんが吸い込まれていった。俺もなんか腹に溜まるものが食べたいな……おっ、あれは……とん平焼き?出店でやってるのは少し珍しい気がする。そんなに並んでいないしあまり高くなさそうだしボリュームもありそうだ。買いだな。並ぶか。

 

 ホント、今ってなんでも売ってるよな。テキ屋の当たりくじやヨーヨー釣り、射的なんかは前からあったけど、「なんだそりゃ!?」みたいな出店がたまにある。さっき見つけてビックリしたのはフェイスペイントをしてくれるお店。ほっぺたなんかに綺麗な金魚の絵を描いてくれたりするらしい。すげえな。あれか、インスタ映えってやつなのか。

 ちょうど今俺が購入してハフハフ言いながら食ってるとん平焼きだってそうだ。前は見なかった気がする。……いや、とん平焼きはどうだろう。記憶に無いだけで前からあったのかもしれない。

 

「晴人、珍しいの買ったね」

 

「あ、やっぱとん平焼きって珍しい?」

 

「あんまり見ないかなー。花火までまだ時間あるしもうちょい見て回ろうよ」

 

「あいよ」

 

 こうも人が多いと知り合いが居てもおかしくないのかもな。俺は交友関係が狭いからあんまり出くわす、とかそういうのは無いだろうけど姉ちゃんは割と交友関係が広いのでばったり!とかあるかもしれない。

 まあ別にどうでもいいけど。ただ姉ちゃんの友達ってチャラいのが多いからあんまり得意じゃないんだよなぁ。

 

「すみませんお姉さん、花火の観覧場所って何処か知りません?」

 

「ごめんね、知らないの」

 

 うわ、声掛けられた。……なんだよ、姉ちゃんの知り合いかと思ったらただ道聞いてきただけかよ。びっくりしたわ。見た目がちょっとチャラチャラしてたから知り合いかと思った。

 

「あー、知らなかったんですね、すみません。よかったら一緒にいい場所探しませんか?」

 

「結構です。あたし連れいるから」

 

 ……これ道聞いてる訳じゃねえな?

 ナンパか。祭りだし、まあそりゃあ居るわなぁ……。そっか、姉ちゃん見た目は美人だから誘われてもおかしくないのか。

 うわ、連れいるから、とか言うからこっちめっちゃ見てるじゃん。怖い。睨み返さなきゃ。ダメだ、こういう時なんで俺の顔は女子っぽいのかと思ってしまう。もっとコワモテがよかったなぁ。それでいてイケメン。

 

「……ふーん、彼氏ですか?」

 

「そうだけど、何か?」

 

 違いますけど!?何か違いますけど!?お姉さん?お姉さん!?

 いや、こう言った方が引き下がるかもしれないって訳か?なんか逆効果っぽくない?これあんまりいい方向に進みそうにない顔してるよ、ナンパ師!

 

「へぇ……これが?」

 

「これが。何?ケチつける気?」

 

「いやぁ?ただ……俺の方がいい物件ですよ、って」

 

「ここでナンパしてる時点で事故物件だろ」

 

 あ、やば。声に出ちゃった。

 

「ぁんだとテメェ━━」

 

「その辺にしとけ」

 

 殴られる……!……あれ?なんか割り込んで来た?

 背中しか見えないけどガッチリしている。つい最近も見た気がする、この背中……。

 

「ナンパはもうちょっとお淑やかにやれや。ぶっ飛ばすぞ」

 

「郁也じゃん。何?まだあたしの彼氏気取り?」

 

「そんなんじゃねーよ。タチ悪そうなナンパ見掛けたから止めただけ」

 

 郁也さんだった。うわー、かっけえ。確かにこの工事勤務で引き締まってる身体とかっけえ顔で凄まれたら怖いわ。ナンパさんどっか行った。

 

「相変わらず姉弟で仲良いのな」

 

「郁也さんありがと。腹立つけど俺じゃ撃退できてない」

 

「気にすんな。どうせ俺が入ってなくても雨がボッコボコにしてただろ」

 

「ボコボコにしたかったのに邪魔された。郁也をボコっていい?」

 

「いい訳無いだろ脳筋女」

 

 郁也さんも浴衣じゃなかった。やっぱ夏は暑いからシャツだよな。俺と違うところはハーフパンツってところくらい。イケメンだから何着ても絵になる。なんか和柄とか似合いそう。

 

「郁也さん、一人?」

 

「家族のアッシー君になってんだ。こういう時だけ「車出せー!」って言うのずるいよな」

 

「織田も?」

 

「香澄か?いるぞ。両親、俺、香澄。今は親父のパシリしてただけ。俺以外は場所取りしてくれてんだ」

 

 分業か。織田家も大概家族仲良いよな。車出せー!って言われて素直に出してる郁也さんを見ている限りはそう思う。嫌そうな顔してないし。

 

「結構いい場所だけど、一緒に見るか?」

 

「なんでアンタと見なきゃいけないのよ。却下」

 

「言うと思ったけどな」

 

「じゃあ聞くな。行くよ、晴人」

 

 そう言ってずんずん進む姉ちゃん。あー、お礼くらい言っとけって、もう。

 

「あー、ごめん郁也さん。また」

 

「おう、またな」

 

「晴人、置いてくよ」

 

 そう言いながらどんどん歩いていく姉ちゃんの顔はちょっとだけ嬉しそうだった。

 そんな顔するくらいなら悪態なんぞつかずに素直に話せばいいのにさ。まあ悪態ついてる時もそれなりに楽しそうなんだけども。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「……花火ってさ、最初に考えた奴センスあるよな」

 

「どしたの急に」

 

「だってさ。普通に考えて花って地面に咲くものだろ?それを空に咲かせようって考えた奴はいいセンスしてると思わねえ?しかもさ、地面に咲いてる花に火をつけたら燃えて無くなるじゃん?なのに空に咲かせる時は火を使おう!って考えたんだぜ?発想力ヤバいだろ、普通に」

 

「あー、そう言われてみればそうかもね」

 

 爆音。轟音。真っ黒な空に赤色、緑、紫、黄色。

 空に向かってカメラを向ける人、はしゃぎながら叫ぶ子ども達、腕を組んで眺めるカップル、酒の肴にするオヤジ共。俺も姉ちゃんに話し掛けてるけど、多分一部一部は花火の音にかき消されてろくに聞こえてないんだろうな。

 

 でも、別に今はそんなことはどうだっていいのだ。メインディッシュはお喋りじゃない。空に咲いてるセンスある花火とかいう爆音の原因だ。

 

「思ったよりガッツリ花火してるね。正直もうちょっとしょぼいと思ってた」

 

「だなー。これは来て正解だわ」

 

 花火を見て「こんなのただの炎色反応じゃん」とか言う奴居るんだろうな。確かにそうかもしれないが、そういうのは無粋ってもんだ。寧ろただの炎色反応でここまですげえもん作れるのがすげえんだよな。

 ちなみに「花火見に行ってくるわ」ってコバにラインしたら「えっ、あんなのただの炎色反応じゃん」って帰ってきた。あいつ無粋な奴代表だわ。そんなんだからモテねえんだよ。俺もモテないけど。

 

 花は散るから美しい。散り際が切ないから。本当にそうだろうか?もし、花が散らない世界があったら?永遠の美しさ、ってのもいいのかもしれない。不滅の美学、みたいな。

 だけど、やっぱり花は散るから美しい。花火を見てるとそんな気がするなー。だって、花火がドカーン!って上がるくせにフワッて消えるんだもん。あんな爆音鳴ってるのに、子どもの泣き声なんかが聞こえてこないのも、無意識的に「あれは怖くない。綺麗なもの」って認識してるからなんだろうな。

 

「なんかさ」

 

「んー?」

 

「綺麗だよな」

 

「あたしが?」

 

「花火が」

 

「そうだね。来てよかったよ。風邪も治ってよかった」

 

 なんというか、この花火は詩織や理恵さんとじゃなくて、織田や郁也さんとじゃなくて、石黒とじゃなくて、勿論コバや須田とじゃなくて、姉ちゃんと一緒に見れてよかった気がする。

 なんだかんだで素直なままの自分でいられるのは姉ちゃんだけだから。素直に「綺麗だなー」とか言ってるのを他の奴には聞かれたくない。

 

 それに、すごく家族、って感じがする。家族で祭りに遊びに来て、花火を見る。このまま家に帰って、風呂に入って、花火の余韻で眠れないから、なんとなく夜中までテレビを見る、ゲームをする。そんな、ちょっと特別な日の家族の遊び。

 

 これは姉ちゃんと二人じゃないと味わえない楽しさだろ。

 

 夏休みの思い出が、一つ出来た。

 

 五尺玉が大きく上がる。

 

「綺麗だ」

 

「そうだね」

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