幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

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作りたい。

「はい、なんかいい案でも浮かびましたか」

 

「もっちろん」

 

 第二回、実行委員二名による文化祭の演劇コンクールの脚本どうするか決めよう会。ウィズアウト姉ちゃん。会場は当然かのように俺の家。まあ、四人家族がゆったり暮らせる位の一軒家に俺と姉ちゃんの二人で暮らしてんだからだだっ広い訳で。詩織の家より俺の家の方が何かと都合がいいのだ。

 で、前回は夜から始めてしまった為、時間的な制約があったのだが今回はお昼からスタート。今日のうちに方向性は決めておきたいよね。

 

「じゃあ日高詩織さん、プレゼンをどうぞ」

 

「はい、弊社がプレゼン致しますのは……」

 

 俺から振っといておいてなんなのだが、この「会社で新たなプロジェクトやりたいからプレゼンさせてください」みたいな寸劇調になってんのはなんなんだろう。というか詩織も乗ってくるのかよ。悪ノリ大好きか。

 ……まあ、前の夜の出来事があったのに、こうやって二人ともいつも通りみたいに喋れているのは良いことか。

 

「弊社がプレゼン致しますのは、妖精です!」

 

「……は?」

 

 頭の中お花畑なのか?妖精ってどういうことだよ。

 

「一人の妖精が子どもに攫われるの!で、他の妖精がその妖精を助けに行って、最後は子どもと妖精が仲良くなってハッピーエンド」

 

 あ、口調戻った。

 

「あー、そういうこと」

 

 女の子が好きそうな超メルヘンチックでピースフルな脚本でした。てか(まあまだ企画段階だから全然いいんだけど)めちゃくちゃアバウト。うーん、まあ、悪くは無いとは思うんだけどもなぁ。

 

「どうやって妖精攫うの。言っとくけど演じるの全員高校生だぞ?一番ちっちゃい女子……小山かな、小山が攫われる役やるにしてもさ、多分奴隷市場みたいになるぞ」

 

 俺達のクラスで一番小柄な女子、小山でも148センチある。妖精にしてはデカすぎるし、攫うとなるとこう、スピーディにやりたい。となると肩に担いだりするか、二人がかりとかになるわけだが……そんなこと出来るのは運動部男子な訳で。完全に妖精を捕まえた無邪気な子供ではなく人攫いの犯罪者、若しくは奴隷商人に早替わりだ。

 

「むー……確かに。身長的な問題かぁ」

 

「ストーリーわかり易いし悪くないと思うけどな。残念ながら却下」

 

「あ!じゃあ人攫いに攫われた友達を助けようと高校生が右往左往して、最後は人攫いと仲良くなってハッピーエンド!とかは?」

 

「アホか」

 

 無理があるわ。人攫いと仲良くなってハッピーエンドとかいうパワーワード生み出すのやめてくれ。

 

「むー。じゃあ、御社の考えをお聞かせ願いたいのですが!」

 

 あ、寸劇帰ってきた。

 

「あー、では弊社の意向を説明させていただきます。こちらのプロジェクターをご覧頂きたいのですが」

 

「プロジェクター?それっぽいものないけど」

 

「うるせえな!こう言った方がプレゼンっぽいだろ」

 

 形から入るタイプ、神崎晴人。宜しく御願いします。

 どうせなので脇に置いていた、脚本案を纏めたノートを詩織の目の前に置き、ページを捲る。

 

「では資料の一ページをご覧ください」

 

「おお、今度はそれっぽい」

 

 どうせ俺が「こういうのどう?」とか言っても詩織は何回かは「むー……」って唸る。もうそういうパターンが見えているので幾つか案を考えてきた。まずは一つ目。

 

「歩けメロス」

 

「うわー、出オチ感凄いタイトル……」

 

 うっせえな。

 

「基本的には走れメロスと変わらないんだが、一つだけ違うことがある。メロスは過呼吸を起こしやすい体質なんだよ。走ると呼吸が乱れてすぐ過呼吸になる。だからセリヌンティウスの為に走ろうとすると逆に前に進めなくなる。早く辿り着く為に、必死に歩くんだよ」

 

「絵面地味すぎない?」

 

「そうか?セリヌンティウスと抱き合って「行ってくる!」って言って走り出した瞬間「げほっ、うぇっほげほ!ぜぇひゅー!ぜひゅー!」ってのたうち回ってSEで心電図みたいな音鳴らしたら笑い取れると思うんだけど」

 

「出オチじゃん!その後ずっとメロスが歩いてる絵面が続くんでしょ!?」

 

「ちゃんと盗賊も出てくるし結婚式も挙げる」

 

「むー……いや、却下」

 

 なんで。ちょっと自信あったんだけどなぁ……確かに「あれ?もしかしてちょっと絵面地味かな?」とは思ったけども。

 

「じゃあ次、詩織が案出す番な」

 

 こいつさっきの妖精意外にもちゃんと案用意してるんだろうな。下手したら「え?今のしか考えてない」とか言いそうで怖いんだが。もしそう言いやがったら俺の案で無理矢理通す。

 

「シンデレラ!ベタだけど普通に良いと思うんだよね」

 

 シンデレラ、か……確かにベタだけど、確かに普通に良さげな気はする。怖いのは他のクラスと被りそうだなー、って事くらいか……?

 

「シンデレラそのままやるのか?」

 

「うーん、改変してもいいとは思う。でも私、改変案思いつかなかったんだよね」

 

 演出的に難しそうなのは魔法でかぼちゃを馬車に変える所とかはキツそうだな……あと衣装。衣装どうするかな。舞踏会のシーンは皆ドレスとかタキシードみたいなの着せたいしなぁ。

 でもその辺りを上手くやれたらいけるんじゃなかろうか、シンデレラ。

 

「……アリだな」

 

「でしょ?」

 

 全然アリだ。うちのクラスにシンデレラみたいな可愛くてちょっとお姉様方からいじめられそうな感じのする女子が居ないことが問題だが。意地悪なお姉様は織田とかその辺にやらせたら完璧だろう。

 

「話の内容も皆知ってるだろうから説明しやすいし、俺も他の案考えてたけどこっちの方が楽そうで良さそうだな、シンデレラでいくか」

 

「やったー!可愛いドレスー!」

 

「……いや、まずはそのドレスのアテを探すところからなんだけどな」

 

 姉ちゃんも流石に持ってないだろうしなぁ……普通は持ってないよな。

 

「あとは出店だよね。ハル、何か考えてるって言ってたけど何するの?」

 

「んあ?あー、出店な。いや、普通にフライドポテトとかにしようと思ってるけど」

 

「え、めちゃくちゃ普通じゃん」

 

 フライドポテト作る為の揚げる機会(フライヤー?)も教師が付いてくるもののちゃんと借りれるらしいし、作る分にははっきり言って全然問題無いと思う。

 だが、それだけで売り上げ一位を狙えるとは流石の俺も思っていない。当然策は練ってあるさ。

 

「フライドポテト自体は普通だけどな、チラシをめちゃくちゃ撒く」

 

「……えっ、普通じゃない?」

 

「まあ、聞けって」

 

 俺は渾身の作戦を詩織に話してみた。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

「うっわー……それルールに引っかかってないの?」

 

「引っかかってない」

 

「よくそんなの思いついたね……」

 

 ドン引きされた。いや、多分このドン引きは良い方向のドン引きだと思う。

 

 去年の文化祭を思い出してみると、例えばバスケ部がやってた出店だと「フリースロー、決めたら50円引き!」みたいな値引き企画みたいなことをやっていて、結構な長蛇の列になってたのを覚えてる。

 そう、「値引き」がアリなのだ。

 という訳で俺の考えた作戦は簡単。チラシを大量に刷っておき、チラシに「このチラシを持ってきた人には50円引き!」と書いておく。フライドポテトなら食べながら歩ける上に、安くなるなら……とチラシを貰った人はつい足を運ぶだろう。そしてチラシと交換で50円引きでポテトを売る。

 

 こうしてしまえば、チラシを配るから色んな人にフライドポテトの情報が回る。値引きの魔力で人を集める。そしてそのチラシは最終的に俺達の手元に帰ってくる。その帰ってきたチラシをまた大量にばら撒いて、また宣伝&値引きの魔力で客を集める。永久機関だ。

 

「普通、値引き券やチケットは何度も使われないように端をちぎったり、スタンプを押したりするだろ?それをしないんだよ。そしたら何回でも配れるだろ」

 

 流石にくしゃくしゃにされたり変な方向に折れ曲がったりしてるようなチラシは配れないけど。それでもかなりいけると思うんだよな。

 

「あとは値段設定だけちょっと考えないとな。基本は「50円引きでもちゃんと採算が取れる」値段でありつつ、「元の値段でも物足りなくない」ことが条件だから、一番難しいのはそこかもしれない」

 

「ハル、将来会社とか建てたら?」

 

 大げさだわ。しかもこれって経営的なアレでは無く宣伝的なアレだし。アレってなんだ。

 

「私そんなの考えもしなかったなぁ、他のクラスと被らなくて人気の出そうなものばっかり考えてたよ」

 

「変に奇を衒いすぎると逆にミスしそうだからな、宣伝と付加価値に重きを置くスタンスにしようと思った 」

 

 多分付加価値の使い方は間違えていると思うが、それっぽい雰囲気さえ伝われば良い。どうせ詩織俺より頭悪いし。

 

「あったま良いー……なんか勉強の出来る頭の良さじゃないね、それ。出店はやっぱりハルに任せた方がいいかな」

 

「演劇の方は脚本は考えるし練習も参加するけど俺はキャストで出ないし誰が出るかも詩織が決めてくれ。お前の方がクラスの連中と仲良いだろ」

 

 当初の予定通り、出店は俺がメイン、演劇は詩織がメインで制作していく方向で決まりつつある。まあ脚本は俺がメインなんですけど、出店も手伝ってもらうつもり満々だし些細な差だろ。

 

「なんとなく決まってきたね。ドレスどうしよ……」

 

「そこだよなぁ」

 

 目下一番大変そうなのはそこである。クラスの連中にもドレスを持ってそうな奴は居ないよなぁ……幾らコバでも流石に持ってないだろうし。家にメイド服があった時はドン引きしたけど。

 ……一応聞いてみるか。

 

「ワンチャン、コバに聞いてみる」

 

「小林君がドレス持ってる可能性にワンチャンかけるの……?」

 

 エロゲー趣味を隠さないせいで基本女子からドン引きされてるコバなので、女子から話しかけにいくことは殆どない。これは俺が電話するべきだろうな。

 

『もしもし、晴人?どした?』

 

「おー、コバ。あのさ、演劇の衣装なんだけど」

 

『俺に全部決めさせてくれるのか!?』

 

「させねーよ」

 

 それをさせたら俺が皆川ちゃんにめちゃくちゃ怒られるんだよ。というか下手すりゃPTAにも怒られるわ。

 

「シンデレラとかやりたいんだよ、ドレスとか持ってない……よな?」

 

『シンデレラかよ……ドレスは無い。チャイナ服ならある』

 

「いらん」

 

 なんでチャイナ服がラインナップに増えてるんだよ。舞踏会で皆優雅にダンス踊ってる中に一人だけチャイナ服居たらおかしいだろうが。てか前家に遊びに行った時はなかったぞ。買ったのか。

 

『えー。めちゃくちゃスリット入っててエロいのに』

 

「確かにエロいけど今回そういうのじゃねえから!お前に聞いた俺がアホだったわ」

 

「ハル、エロいって何よ」

 

 詩織が隣ですっげえジト目で睨んでくる。絶対これ俺悪くないと思うんですけど。

 

『ドレスなぁ……流石に型紙があっても作るの難しそうだわな。出来んことも無いだろうけど』

 

「え、お前ミシンとか出来るの?」

 

『あれ?言ったこと無かったっけ?俺の家にあるメイド服とか全部俺が作ったんだぞ』

 

 変態に技術を与えた結果がこれだよ。

 いや、でもこれは良いことを聞いた。型紙と布さえあればワンチャン、コバに作って貰える可能性がある。

 

「ワンチャンお前に頼むかも」

 

『エロくしていい!?』

 

「良くない」

 

 これマジでシンデレラいけるんじゃね?

 とりあえずこれ以上話すとコバが「エッチなドレス」について長々と語り始めるであろうことがなんとなく予測がついたのでこちらから一方的に切る。

 

「おい詩織、コバの奴がミシンで衣装とか作れるらしい。シンデレラいけるぞ」

 

「マジ!?……でも小林君に衣装任せて大丈夫?エッチなやつとか嫌だよ?」

 

「そこだよな……なんか、こう監視役が必要だよな」

 

 再度ラインの友達一覧を眺める。なんかこう、監視役になりそうな奴……あっ。

 

「織田を監視役につけるってのは?女子だからある程度可愛いドレスとか解るだろうし、採寸とかも女子がいた方がやりやすいだろ」

 

 というかコバが「採寸するから女子こっち来てー!」とか言ってメジャー持ってたら下手したら何もしてないのにボコボコにされる可能性あるし。

 

「香澄ちゃん?あー、確かにいいかもね。小林君ビビりそう」

 

 何より織田は腕っぷしが強いし威嚇が出来る系女子だ。コバは喧嘩が鬼のように弱いので(俺より弱い)、多分反抗の余地が無い。

 ……やっぱり織田って俺の姉ちゃんに似てる気がする。

 連絡してみるかー。

 

『……もしもし?何の用』

 

「よぉ、花火行ってたんだってな。あれ凄かったな」

 

『なんで知ってん……あー、兄貴か。何?暇なの?』

 

「お前さ、文化祭衣装製作班な。あと意地悪なお姉様の役も」

 

『……は?』

 

「ちょっとハル、結論から行きすぎ。……意地悪なお姉様は確かに似合うかもだけど」

 

 しまった。過程をすっ飛ばしてしまった。

 

「や、文化祭の演劇コンクール、シンデレラとかやりたいなって話になってな。コバの奴が型紙さえあれば難しいけど作れるかもって言うからアイツに任せたいんだけど、アイツに頼むとエロくなりそうだから、そうならない為のストッパーにお前を付けようと思って」

 

『……てか、アタシ作れるよ。衣装』

 

「だよなー、作れるよな。……えっ、マジで?」

 

 え?お裁縫とかやろうものなら針を指の力で折りそうなお姉様が?衣装を?お作りになられるのですか?

 

『その……こ、コスプレ衣装とか作ったことあるから……一応型紙とミシンがあれば作れるけど』

 

 こいつオタクの沼に浸かりすぎだろ。すげえな。

 オープンスケベゲームオタクと隠れ腐女子オタクの二人に衣装全部任せて良いのでは?

 

「え、じゃあもう任せていい?」

 

『……まあ、衣装作るのは割と好きだし、いいけど』

 

「よっしゃー!サンキュー織田!じゃあな!」

 

『でも意地悪なお姉様はやらないからね!ちょっと、聞いてるの!?おいかんざ━━』

 

 やべえ。目下一番面倒臭そうな衣装問題が一瞬で解決した。なんか最後に織田が叫んでたきがするけど。まあ後でラインで聞いてみるか。

 

「織田も衣装作れるって」

 

「ウソ!?香澄ちゃん、意外……でもこれでシンデレラ出来るんじゃない!?」

 

「出来るな。もう今から脚本作っちまおうぜ」

 

 一回完成したら皆川ちゃんに見せておきたいし。あの人現文の教師だから色々ダメ出しとか貰えるかもだし。

 

 二学期も少しだけ楽しみになってきた。





高校の時の演劇コンクールって、ネタに走るか、童話系を改変するか、頭良いクラスがめちゃくちゃ重たい話を題材にするかの三択ですよね。大体。
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