幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

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生きてます。
最近生存報告ばっかりしてんなこの人。ちょっと忙しくて書けなかったのです。


告白されたい?

「……えっ、ハルどうしたのその髪色」

 

「染めた。似合ってる?」

 

「うん、似合ってるけど……どうしたの?グレた?」

 

「グレてねえよ。なんとなく染めた」

 

 時間ってのは早いもんで、お盆休みももう終わりが近づき、明日の夕方には父ちゃんも母ちゃんも向こうに行っちまうらしい。最初こそなんか「どうしたらいいんだ」とか思ってたが、髪染めてもらったり、進路相談に乗ってもらったり、やっぱり家族っていいな!って思ったわけです。

 

 で、只今詩織の家のキッチン。何をしているかと言いますと、まあキッチンだから料理でして。

 折角なので父ちゃんと母ちゃんが仕事場近くの方へ帰る前に、ちょっとしたサプライズケーキ的なものを作ろうと思ったのである。ただ、父ちゃんも母ちゃんも家でのんびりしているので、自宅で作るとバレる。というわけで詩織の家のキッチンを借りることにしたのだ。

 

 ……で、詩織と会うのはお盆の前以来なので、当然ながら髪を染めてからは初めてで。びっくりされた。

 

「ハルはなんとなく卒業まで染めないのかなって思ってた。いいじゃん、カッコイイよ」

 

「そりゃどーも。じゃ、作るからそこどいてくれる?」

 

「え、私も手伝うよ?」

 

 え、マジで?

 えー……マジでか……。

 

「ぶっちゃけ俺一人でやった方が効率いいからいらないんだけど」

 

「むー……私だって上手くなったんだけど」

 

「俺も上手くなってるから差は縮まりません」

 

「うわムカつく!」

 

 なんなら今度俺の手料理と詩織の手料理、高見に食べさせてどっちが美味かったか決めさせてみようぜ。俺勝っても何も嬉しくないけど。

 

「じゃあ大人しく退きまーす。……私も暇だから話し相手くらいはいいでしょ?」

 

「まあ、それくらいなら」

 

 材料は詩織の家に来る前に買ってある。ホント、こういう時幼馴染の家が近いっていいよな。ボウルとかそういうのはお借りすることにしている。大体何処に何があるかは知ってるし問題ないだろう。気分はさながら墨村良守だ。

 

「ハル、髪染めたらお姉ちゃんみたいだね」

 

「そうか?」

 

「うん。顔が似てるからかな」

 

 姉ちゃんは美人だけど、俺の顔は女々しい。うーん、やっぱり女顔なのか?俺は。ボウルに諸々の材料を入れて、思い切りかき混ぜる。意外とこれがしんどいんだよな。力が要るし、長い間混ぜないといけない。電動のやつはすげえよな、スイッチ一つでとんでもない力で混ぜるんだから。

 

「お前は染めねえの?」

 

「うーん、茶髪くらいならしてみたいな」

 

「それこそ似合うと思うぞ」

 

「そうかな」

 

 というかこいつ、顔立ち整ってるから割と何しても似合う気がする。美人系……というよりは可愛い系の顔立ちだから、唇ピアスとかは流石に似合わないだろうけど。少なくとも俺よりは色々やっても許される顔だろう。

 口と共に、腕もしっかり動かす。まあ失敗は無いだろうが、母ちゃんとかに食べてもらうなら、まあ折角なら美味いもん食べてもらいたいし。

 

「……そうだ、ハルってさ」

 

「んあ?」

 

 

「香澄ちゃんと付き合ってるの?」

 

 

「……は?」

 

 手が止まった。

 えーと。なんでそうなるの?

 

「ゲーセンでデートしてる姿が目撃されています。しかも制服デート♡……ハル君、真実のほどは?」

 

 あー、あれか。

 うわぁ、詩織の顔がニヤニヤしていやがる。あれだ。恋バナしてる時の女の顔だ。俺ソノ顔キライ。コワイモン。

 てか、付き合ってないし。付き合ってない……し……。

 

 

 

『ビッチでも「誰でもいい」って訳じゃないんだけど?』

 

 

 

 ふと、ホッケーゲームをする直前に織田のやつがそんなことを言ってたのを思い出した。

 ……いやいやいやいや。あいつその後嘘だって言ってたじゃん。ただ童貞の俺をからかってただけだ。仮にあのゲームに勝てても多分おっぱいは揉めなかったし、織田と俺が付き合ってるなんてことも有り得ない。そもそもあれはデートじゃなくて、織田がクレーンゲームでルビィちゃんのフィギュアが欲しいって言うから行っただけで……。

 

「付き合ってねえよ」

 

「目撃証言については否定しないの?制服デート」

 

「や、確かに制服でゲーセンに遊びに行ったけどな。けど別にデートじゃねえし」

 

「えー?二人で遊びに行ったらそれはもうデートだよ?」

 

「謎理論やめろ」

 

 ……いや、それもそうか。それもそうなのか?童貞の俺にはわからん。

 

「ハルにも春が来たね」

 

「ドヤ顔で言ってるけど上手くねえから、それ」

 

 そのドヤ顔さっきのニヤニヤ顔よりムカつくからやめてくれねえかな?

 

「……でもアレだね。なんだろ、ちょっと悔しいかな」

 

 お盆の間にこいつ情緒不安定にでもなったか?

 

「何がだよ」

 

「うーん、なんというかな……ちょっとハルの気分になれたかもね」

 

 全く意味がわからない。俺の気分になれた?……ダメだ、理解不能だ。こいつの言ってることが久々によくわからない。取り敢えず手は動かす。

 

「私が玲音君と付き合った時、ハルはこんな気持ちだったのかー、って。別に付き合ってた訳でもないし、ただの幼馴染なんだけどね。むー、ハルに目をつけるとは香澄ちゃんも中々やるな!って気持ちと、むー、ハルが遠くなるー!って気持ちと、他にも色々ごちゃ混ぜ」

 

「……あー、そういうこと」

 

 やっと理解した。つまり、こいつは俺がちょっと前まで拗らせてた感情を少ないながらも感じている訳か。俺別に付き合ってないんですけど。というかお前は彼氏いるだろうが。

 

 ……いや、多分これは彼氏彼女がいるから、っていうのは関係無いな。「幼馴染」だからなる感情というか……多分、詩織が高見と付き合う前に俺が誰かと付き合ってたとしても、詩織と高見が付き合った時に少ないながらも同じ感情は抱いていたと思う。よくわからない、モヤモヤした感情を。俺は居なかったからその感情を色々拗らせてた?訳で。

 

「俺の場合それに加えて深層心理的にお前のことが好きだったんだぜ?死にたくなるだろ」

 

 それはそれとして仕返し出来るチャンスなので意地悪をするとしよう。やばい、楽しい。

 

「しかもそんな時に「私を振ってよ!ハル!お願い!私を振って欲しいの!貴方にしか……頼めない!」ってお願いされるし」

 

「ちょっ、そんな言い方はしてないよ!ちょっと誇張し過ぎじゃない!?」

 

 顔を真っ赤にして怒る詩織。最近はやられっぱなしだったからな。これくらいは許してほしい。

 

「むー……私知ってるんだからね、香澄ちゃんとデートしただけじゃなくて、リンちゃんのサッカーの応援も行ってたの」

 

「あー、そういえば行ったな」

 

「ハル、ちょっと気が多すぎるんじゃないの?モテモテじゃん」

 

「応援くらい行くもんじゃねえの?」

 

「ハル、絶対自分からは行かないでしょー。リンちゃんに「見に来てね!」って言われたから見に行った、と私は予想します」

 

 大当たりです。こいつ怖。俺の思考回路丸見えかよ……。テスト勉強見てあげた見返りに、かっこいい姿を見させていただきました。

 

「リンちゃん、かっこいい姿をハルに見せたかったんじゃないの?実は惚れられてたりして」

 

「いや……ねーだろ」

 

「どうかなー。意外とハルって魅力的だし?もうちょっと覇気があって、思ったことすぐ口に出す癖をやめたらだけど」

 

「それは多分最早俺じゃないぞ」

 

 俺のアイデンティティが全部無いじゃねえか。コバ曰く喋らなかったら俺にいい所無いらしいし。……思い出すだけで腹たってきたわ。俺だってケーキが作れるっていう魅力があるんだぞ!

 

「ハルはかっこいいよ。惚れてた私が言うから間違いない」

 

 その言い方はずるくないか。ちょっと期待しちまうじゃねえか。

 さっきした意地悪を繰り返してやろうか。

 

「高見と比べてどっちの方が魅力的?」

 

「そりゃー、……男としての魅力は圧倒的に玲音君だけど。ハルはきょうだいみたいなもんだし」

 

 その返し方もずるい気がする。

 

 

 

「……ハル的には、リンちゃんだったり香澄ちゃんは、アリなの?」

 

 

 

 アリなの?

 

 アリなの?

 

 ……アリってなんだ?

 

「もし、リンちゃんだったり、香澄ちゃんだったりに告白とかされたら、オッケーするの?」

 

「……なんでそうなるんだよ」

 

「例え話だよ」

 

 ……ふむ、織田か、石黒から告白された場合か。俺は果たしてどんな反応をするのだろうか?一人ずつ考えてみるとする。

 

 まずは織田から告白された場合。

 

「………罰ゲームなのかなって思うな」

 

「どういうこと……?」

 

 いや、織田が俺に告白する瞬間とかどう考えてもドッキリか罰ゲームか、若しくはなんかオタ関連の話を真剣に切り出すかの三パターンしか無いだろ。大穴で郁也さん関連の話くらい。変にそこでテンション上げたら後ろからビッチ集団がやってきて「ドッキリ大成功!」みたいなの掲げてくるだろ、絶対。

 

 次に石黒の場合。石黒の場合……?

 

「石黒って恋とかするのかな」

 

「今サラッとすごく失礼な事言ったね、ハル」

 

 なんというか、サッカー一筋のイメージが強すぎてな。あいつが誰かに告白した!って言われるより「とうとうファイアトルネードを会得したの!すごくない!?」って言われた方がなんか説得力あるわ。

 

 でも、もし告白されたら?って例え話だもんな。うーん?うーん……。

 

「……そもそもさ、両想いになったらカップル誕生なんだろ?俺、あんまり好きとかわかんねえんだけど」

 

「付き合っているうちに好きになっていく、とかもあると思うけどね」

 

 あー、そういえばそのパターンがあるのか。よくよく考えてみれば詩織とかモロにそのパターンだったわ。

 付き合っているうちに好きになっていく、ねぇ……。なんか釈然としないっつーか、なんというか。

 

「でも、やっぱ付き合うなら好きな人と付き合いたくね?」

 

「それが出来るならね。ハル、今好きな人居るの?」

 

「……いない、な。強いて言うなら姉ちゃん」

 

「……それはラブじゃなくてライクでしょ」

 

 姉ちゃんくらいさっぱりしてる人だと付き合っても楽そうだよな。まあそもそも俺付き合った事ないから楽とかしんどいとかわかんねえけど。

 ……そういや、織田って何となく姉ちゃんに似てるなー、って思ったことあったな。……いや、でもあいつはなぁ、付き合ってもしんどそうだし、そもそもドッキリ枠だし……。

 

「でも、妬けちゃうな。リンちゃんも香澄ちゃんも可愛いもん。ホントにハルが付き合ったら、私なんて忘れ去られそう」

 

「記憶の片隅には置いといてやるよ」

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 ハルが、料理をしている時に手を止めるのはとても珍しい。

 面倒臭がりで、覇気があんまり無いのがハルだけど、一回やり始めるとテキパキとこなすのがハルだから。だから、何かをしている時に手を止めている時は、別のことを真剣に考えている時のハルだ。

 

 私がちょっとからかい半分で言った、香澄ちゃんとリンちゃんのことで考えてるのかな。それ以外にある訳もないか。

 

 幼馴染だから、っていう贔屓目はあるかもしれないけど、ハルはちゃんとしていたらかなり良物件だと思う。ちゃんとしていたら。だから私も惚れていたわけだし、惚れてた時はモタモタしているとそのうち誰かに取られちゃうかもな、って思ってた。

 香澄ちゃんとリンちゃんが、ハルのことが好きなのかどうかは全く解らない。……正直、ハルの言ってた罰ゲームかと思う、とかあいつ恋とかするのかな?とか、ちょっと解らないでもない部分もあるし……。

 

 でも、好意的な感情があるのは間違いないと思う。

 

 もし、ハルが誰かと付き合ったら。

 私は玲音君と付き合ってるし、今は玲音君のことが大好きだ。

 言ってしまえば、ハルはただの幼馴染で、きょうだいみたいなものだけど、それ以上でもそれ以下でもなくて。

 

 だけど。

 

 だけど。

 

 ……なんとなく、モヤモヤする。

 

 昔は好きだったし、すっごく小さい頃は結婚の約束なんかも、しちゃったっけ。

 けど、今は私には彼氏がいて。私に彼氏がいるんだから、ハルに彼女が出来るのもそりゃあ、当然というか、出来てもおかしくなくて。

 

 

 なのに、何故かハルが奪われるような気がする。幼馴染なんて、言ってしまえばただの友達で、その称号に鎖はついていなくて、彼女が出来たら彼女とイチャイチャするのは当たり前で。

 

 

 ちょっと、それが嫌な気がする。……おかしいな。彼氏でも無いのにさ。

 

 

 

 

 ああ。

 

 なるほど。

 

 

 ハルって、ずっとこんな気持ちだったのかな。

 

 

 胸の奥が痛い。

 

 ハルがそんな思いで私を見ていたんだな。

 

 そして、今度は同じ気持ちを、同じ寂しさを、私が背負うんだな。

 

 幼馴染って、不思議な関係。

 彼氏じゃないのに、奪われたと錯覚して。でも、好きなのは彼氏で。じゃあハルは何?って聞かれたら、きょうだいみたいなものって。でも、血は繋がってない。

 

 

 

「……妬けちゃうし、しんどいなぁ、これ」

 

 

「なんか言ったか?」

 

 

「ひとりごとー。」

 

 

 こんなにチクチクと痛いのに、ハルはずっと私を見ていてくれたから。

 私も、甘んじてこの痛みを受け入れて、ずっとハルとは幼馴染。




ちまちま書いていきますので、また適度に宜しく御願いします。
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