幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい 作:仮面
お久しぶりです。本っ当にお待たせして申し訳ありませんでした。あけましておめでとうございました。
盆が終わった。
だからと言って夏休みに変化が訪れる訳でもなく、俺はもう少し残っているこの休みを満喫する。
……あったわ、変わったこと。父ちゃんと母ちゃんがまたどっかに帰った。まあ、これは変わったことというよりかは元に戻ったこと、なのかな。
最後に作ってあげたケーキは喜んで食べて貰えた。そこそこ真面目に作っただけあって味も申し分無く、まあ親孝行出来たんじゃないかな。
お盆も過ぎてしまえば、夏休みもいよいよ終わりが近付いてきたなぁ、という謎の感慨深さを感じる。大体この時期までに課題や宿題を終わらせてない奴は最終日まで終わらない。姉ちゃんがそのタイプだったなぁ。
俺は既に課題は終わらせてしまったので、あとは残りの夏休みを満喫するのみだ。
……やる事ないんだけどね。という訳で家で一人でダラダラしている。基本的に俺はダラダラするのがあまり好きじゃないのだが、外に出たってクソ暑いだけだし、勉強もゲームもする気にもならないので、まあたまにはダラダラするのも悪くないと言い聞かせている。
スマホが鳴った。ラインの通知だ。誰だ?……織田?なんか、最近あいつとの絡み増えたなぁ。取り敢えずメッセージを開くことにする。
『なんかあたしとあんた、噂にされてるんだけど』
おおう……そうだな。噂にされてるな。俺ですら知ってるんだから相当な噂……いや、そうでも無いのか?詩織はそういう噂色んなところから聞きそうだし、たまたま詩織から俺が聞いただけかもしれないけど。
『ムカつくからお前誰かと付き合って。そしたら噂が嘘だと証明される』
「無茶言うなアホが」
どういう思考回路してたらそういう結論に辿り着くのか教えて欲しい。
「てかお前が彼氏作ればいい話では?」
『めんどくさい』
この人なんなんですかね。めんどくさいってところがムカつくわ。その気になればいつでも作れるんだからね、みたいに言われてる気がする。実際あいつはすぐ作れそうなのが輪をかけてムカつく。
またスマホが通知を知らせる。今度はメッセージでは無く写真の送信だった。送られてきた写真をタップしてみる。
そこには先日俺がクレーンゲームでゲットしたルビィちゃんと、その姉にあたるダイヤちゃんのフィギュアが並べられていた。
『姉妹揃った( ̄▽ ̄)』
……なんの報告?というか俺、ラブライブは残念ながら守備範囲外なんだよ。キャラ位は知ってるけどね。ごめんな。
「ダイヤは自分で取ったのか?」
『兄貴が取ってくれた』
結局人頼みかよ。というか郁也さん妹に甘すぎじゃね?うちの姉ちゃんかよ。
……やっぱあれだな、織田家と神崎家のきょうだいは若干似てる気がするな。
なんていうか、勿体ねえよなぁ、姉ちゃんも。郁也さん超優良物件じゃん、俺を理由に振ってんじゃねえよって話だよな。まあ、郁也さんには俺がいるからー、って言って振った訳じゃないのは知ってるんだけど、それでもやっぱりなんか申し訳ないというか、いたたまれない?そんな気持ちになる。
スマホが鳴った。今度はなんだ?
織田からのラインでは無く、今度は姉ちゃんからのラインだった。
『合コン、数合わせで誘われたから夜行ってくる』
……まあ、俺がどう言おうと、姉ちゃん自身に未練も無くて、そんでもって復縁する気も無いんだったらどうしようもないんだけど。
付き合ってる時は仲良かったのになぁ。今でも顔合わせたら二人とも嬉しそうだし。
今まで付き合ったことが無い俺には、解らない感情なのかもしれない。俺が思っているよりも、彼氏、彼女、付き合った、別れた、っていう感情は簡単じゃないのかもしれない。
なんだかなー。
やっぱり、俺も彼女欲しいな。
姉ちゃんは合コンで夜遅いんだったら、俺も外で飯食うかなー。誰か誘って。
……誰を誘えばいいんだ?やっぱコバか?
取り敢えずコバにメッセージを送信する。今日、夜飯行かね?と簡潔に。
返信はすぐに返ってきた。
『悪い、明日まで親父の実家に帰ってるんだ』
あー、そりゃあ無理だわな。しょうがない。じゃあ須田はどうだろうか?同じようにメッセージを送る。
こちらも返信はすぐに返ってきた。
『ごめん!従兄弟とおばさんが家に来てるから夜は出れない』
ご丁寧に兎が土下座をしているスタンプも送られていた。まあ、盆明けたとは言えな、そういうこともあるわな。
……。
…………。誰誘えばいいんだろう。
改めて俺の交友関係狭すぎじゃね?
詩織誘うか?いやでも俺から誘うのは流石にまずいよな?高見が不憫過ぎる、というかまあ色々と問題がある。かと言って高見を誘うのもなぁ……別に仲悪いわけじゃないけど、二人で飯食いに行って何の話するの?病院の飯は不味かったよなー、とかそんな話するの?アホかよ。
うわっ……私の交友関係、狭すぎ……?
……織田にラインしてみよ。
「夜暇だったら飯食いに行かね?」
……ついさっきラインで「変な噂立ってんだけど」みたいな感じでご機嫌斜めだった織田を誘うのは流石に頭がおかしいな。送信してから気がついたので後の祭りというやつである。アフターフェスティバルなのだ。
そしてこいつもマッハで既読が付いた。まあ織田はさっきまでラインしてたとは言えど、お前らスマホいじりすぎだろ。そんなだから近頃の若者は〜、とか言われるんだぞ?
『喧嘩売ってんの?わら』
うわ怖。「わら」を漢字じゃなくて平仮名で打ってるのがなんか怖い。なんかごめん。タイミングが悪かったのは俺も認めるから。どちらかと言うと喧嘩より油を売りたい……それも違うか。
うん、やっぱ俺友達少ないわ。もう切れる手札が無いもん……。
いたわ。石黒。……いやでもあいつこそ無理だろうなー、部活やってるだろうからスマホ見てないだろうし。
それでもダメ元で送ってみる。内容は簡単に「今日夜飯食いに行かね?」のみ。思っている以上に、夜ご飯を一人で食べるのは寂しいのだ。一人暮らししてるOLとかってどんな気持ちで夜ご飯食べてるのかホント気になる。生きていけなくね?俺多分一週間くらい連続でぼっち夜ご飯になったら寂しくて死んじゃうね。
案の定というかなんというか、石黒へ送ったラインはすぐには既読は付かなかった。まあ、これが普通というか、さっきまでの連中が速すぎたというか。特にやることも無いのでソシャゲの溜まったスタミナを消費しておくことにする。
ソシャゲの進化も目覚しいよな、俺が小学生くらいの頃なんてダンジョンに入って、「進む」みたいなボタン押したら効果音も無しに進行度が増えるだけだったってのに、今は進もうとしたら敵が邪魔して、クイズに答えたりパズルをしたりしなきゃいけないんだもんな。まあ俺がソシャゲなんかに触れ始めた時期は既にパズルとドラゴンが合体したゲームだったりがメジャーだったけどさ。あと聖杯戦争。姉ちゃんが推し鯖が当たらなさ過ぎて辞めたやつ。
最近ハマっているのはバンドリの音ゲー。カバー曲多いし、しかもこのカバーが結構面白い所突いて来るんだよな……たまーに「いやこのアレンジはどうなのよ……」みたいなのもあるけど。ミッシェルの中の人可愛い。
元々音ゲーは得意じゃないので、まあ完全に下手の横好きみたいな、お遊びでやっているのだが、それでもやっぱ難しい曲をフルコン出来たら嬉しいし、推しキャラの高レアが当たると嬉しい。ソシャゲはこういう適当に遊びたい層にもウケてるのがいいんだろうなー。……お、フルコンいけそう。この曲フルコンした事ないし出来たら石貰え……
『新着メッセージがあります』
──切り忘れた通知、そして無情なるミス。
「あ゛っ」
やってしまった……。スマホの音ゲーあるある、「通知で画面が見えなくなってミスをする」を発動してしまった。マジかー……いや、通知を切ってなかった俺が全面的に悪いんだけどね。今のタイミングはるんって来ないわ。
このまま音ゲーを続ける気にもならないので通知を開く。メッセージの相手は、まあ当然というかやはりというか石黒だった。
『いいよー\( 'ω')/』
『今部活終わったから先家でシャワー浴びていい?』
まさかの返事はオッケーだった。あれ、今まだ3時とかだけど、もう部活終わったの?意外と早いのな。いやシャワーくらい全然浴びて頂いて構いませんけども。クソ暑いもんね。
「オッケー」
『どこ行くー?』
ホントだ、どこ行こう。サイゼ……は却下。石黒とサイゼに行ったら勉強しなきゃいけない気になってしまう。俺はもう課題終わらせたし。焼肉……も高いから却下かな。バイトしてない学生のお財布は軽いのだ。
「誘っといてなんだけど特に行きたい場所無い。笑」
『えー笑 じゃあ私の家の近くまで来てよ』
「なんかあるの?」
『美味しいラーメン屋さん』
「行くわ」
即答で送ってしまった。男子高校生はラーメンが大好き。あいつの最寄り駅ってどこだっけ……三駅先だったか?片道の交通費幾らかな。
『じゃあ6時に駅来てね』
「りょーかい」
片道190円。まあ全然許容範囲内。焼肉食べに行くよりは遥かに安いな。
さて……まあ時間は有り余ってるけどちょっと外に出る準備するか。
〜〜〜
時間ピッタリ。
三駅分電車に揺られてやってきた石黒の住んでる街。
県を跨いでる訳でもないし、なんなら初めて来たわけでもない。だから特に新鮮なものは無い。が、この駅は急行列車も停車するそこそこデカい駅で、降りてすぐ歩けば飲み屋街というか、居酒屋の建ち並んでいる通りに出てしまう為、少し別世界というか、特別感はある。
「お待たせー。ごめん、二分遅刻した」
「それくらいなんともねえよ」
石黒の服装はダボッとしたシャツに、下はショートパンツ。こいつこのタイプの服装好きなのかな、前の時もこんな感じだった気がする。まあ、似合ってるしいいんだけどね。サッカーをする時みたいに、髪の毛を後ろで纏めていた。
「てか、ラインしてから気付いたんだけどさ。ハル君、交通費かかるよね?ごめんね」
「いいよ別に。美味いラーメン食べたいし」
実際些細な問題だし。両親から仕送り来るし姉ちゃんも働いてるからそこそこお小遣い貰ってるし。
「じゃ、行こっか」
「おう」
石黒に連れられて居酒屋通りを進む。夏だからまだ空はオレンジ色だが、既に居酒屋のかきいれ時は始まったようで、キャッチのお兄さんがメニューを持って「居酒屋ないっすか!?」と通行人達に声を掛けている。居酒屋ないっすか、って聞き文句はおかしいだろ。居酒屋はあるよ、お前どこで働いてるんだよ。
「お盆休み過ぎたからちょっと人減ったんだよね、この辺り」
「やっぱ休みの日の方が多いのか、この道」
「土日の夜なんか最悪だよ、たまーに酔っ払いが喧嘩するの。まあそんな夜遅くに外出ることなんて殆ど無いけど」
そういう石黒の口調はかなりイライラしていた。よっぽど酔っ払いが苦手と見える。悪酔いした時の理恵さんとかめんどくさいから気持ちは凄くわかる。
「でもさ、居酒屋でお酒飲むのはちょっと憧れるよね」
「どこで飲んでも一緒だろ……」
「一緒じゃないよー、「とりあえず生で」って言ってみたくない?」
「あー、それはわかる気がする」
「でしょでしょ!私多分お酒あんまり強くないけど」
だろうな。石黒はすぐ酔っ払って……なんか泣き出しそう。泣き上戸っぽい。うわぁ、こいつ酔っ払ったらめんどくさそうだな。
居酒屋通りを抜けて、小さな角を曲がる。するとすぐに小さな建物から提灯が降りているのが見えた。赤い地に黒くデカデカと「ラーメン」と書かれている。間違いなくあそこだろう。
「そういえばハル君、彼女出来たの?」
「……は?何を突然」
本当に突然過ぎて変な声出たわ。
「ほら、誰だっけ?ハル君のクラスの……髪赤い人いるじゃん」
「あー、織田な。あれ別にデートでもなんでもないからただの噂」
「あ、そうなの?なーんだ」
折角面白そうなネタを見つけたのになー、と言いながら口を尖らせる石黒の表情は、何処か安心しているようにも見えた。なんでこいつが安心するんだ。いや俺の見間違いかもしれないけど。
「……なんでちょっと嬉しそうなんだよ」
「ぁえ?私今ちょっと嬉しそうだった?」
「ちょっとな」
突っ込んでみると、石黒は立ち止まって俺の方をまじまじと見つめる。そして大きく溜息をついた後、頬をポリポリとかき始めた。
「……ごめん。私、ハル君に黙ってたことあるんだよね」
「えっ、何?」
石黒から発せられた言葉は、ちょっと意外なもの。なんだ、俺に黙ってたこと?俺と石黒は正直言って知り合ってめちゃくちゃ日が浅いからそんなのあって当たり前……だと思うのだが。
「ハル君ってさ、詩織ちゃんに振られたじゃん?」
「振られてねーよ」
いや、振られたけど。少なくともその事実を知ってるのは俺と詩織の二人だけだよ。噂で俺が振られたみたいになってるけど。てか一回それ訂正したよな?
「あ、そうだっけ。まあいいや、私がハル君と仲良くなったのってさ、丁度ハル君が振られた辺りだったじゃん?つまり詩織ちゃんと玲音が付き合い始めた辺り」
「だから振られてねーって」
こいつ、人の傷えぐるつもりか──
「私、玲音が好きだったんだ」