幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

3 / 36
暇を潰したい。

「台風のコース変わって直撃しないんだろ?なんで今日こんな雨降ってんの?」

 

「まだ梅雨だからでしょ。はいパン」

 

 姉ちゃんから渡されたパンを齧りながらテレビに映されている天気予報を眺める。台風の進路は少し逸れて日本に上陸することはほぼ無くなったらしいが、世間は六月。絶賛梅雨の真っ最中なので本日は大雨である。うわー、学校行きたくねぇー。

 

「雨降って涼しくなるなら別にいいんだけどさ、この時期の雨って止んだあとに湿気マシマシでムシムシするんだよな。結局クソ暑い」

 

「あたしなんかそもそもお客さん来なくなるからクソ暇になるからね」

 

「雨の日に服買おう!とは思わねえもんな」

 

 雨が降って喜ぶのは農家と物好きだけだ。俺も割と物好きで変わってる奴だとは自覚してるが、それでもやっぱお日様に見守られて過ごしていたい。どうせなら警報出て学校休みになってくれ。有り得ないか。

 そういえばなんで雨をテーマにした曲って恋愛ソング多いんだろう。それも大体ちょっと切ないやつ。雨で気分沈むのに「雨の日に聴きたい曲!」みたいなやつ大体失恋ソングだったり片想いソングじゃない?雨の日こそ鼻血吹き出そうな熱い曲聴いて雨水全部蒸発させろよ、って思う。例えば……

 

「紅だァァァァァァ!!!」

 

「うるさい」

 

 姉と世間は俺に厳しい。

 

「……今日は店の中、USENじゃなくてX流すか」

 

 思いっきり影響されてますやん。というか姉ちゃん店の中の音楽決める権利あるの?強くない?

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 今日の昼飯も教室で食べる。理由は至極単純、まだ雨降ってるから中庭で食べたらびっしょびしょになるのです。

 

「卵焼き」

 

「だめ」

 

「ショタボで」

 

「だめだよ」

 

「ロリボで」

 

「だめだお」

 

「きも」

 

 じゃあティックトックのネタを振ってくんなよ。あーゆーのはぶりっ子してても許される女の子がやるからいいんだよ。実際あれに登録してる人ってめちゃくちゃ可愛い子割と居るよな。大概がイタイけど。

 

「そういや前にそれ織田がやってたよー、いろんな声でダメって言うやつ」

 

「あいつのロリボはしんどいわ、悪い意味で」

 

 あんな赤っぽい髪の毛でつり目でSMの女王様みたいなロリっ子がいてたまるか。

 

「アタシの話した?クソ童貞」

 

「いたのかよ」

 

 どうやら教室内で聞こえてたらしく、背後から件のビッチ女王様の声が聞こえてきた。うん。こいつの顔と雰囲気でロリボはやっぱしんどいわ。

 

「なんならアンタがティックトックの真似事して遊んでた時からいた」

 

「死にたい」

 

 後ろで思い出し笑いみたいな声が漏れ出ている。うわこれめっちゃ馬鹿にされてる感じする。うぜー。はずい。

 

「てかアンタ等、ティックトックとか興味無いと思ってた」

 

「詩織があーゆーの好きだからな、見て見てーとか言って色々見せられた」

 

「あれ超可愛い子とかいっぱいいるじゃん、目の保養」

 

「好きなユーチューバーがやってるからー」

 

「……そんなことだろうと思った」

 

 溜息をついてそのまま教室を出ていった。あいつもなんかよくわからん奴だな……。正直俺からしたらあいつがそういうのやってるのも意外なんだが。そんな動画撮るならハメ撮り撮るもんなんじゃないの?ビッチって。クソ偏見?まああいつ割とキッつい顔してるけど美人だし、似合わないとかは無いけど。

 

「日高の奴はそういうの好きそうだよな」

 

「何本か一緒にやらされたことあるぞ」

 

「今は高見氏とやってるんじゃないのー?」

 

「シンプルに傷付くからやめてくれ」

 

「やっぱ傷心のバツイチじゃねーか」

 

 よくよく考えたらそんな動画ティックトックにあげてるから俺ら付き合ってると間違えられたんじゃねーの?

「暇だし」って言って俺の家に遊びに来た時。いきなり「これやってみたいんだけどさー、相手いないんだよねー、ハルなら一緒にやってくれるかなーって」って言いながらなんか可愛い子と雰囲気イケメンの二人が手遊びしてる動画見せられて、二時間くらい練習して、動画撮って。

 

「幼馴染だから息合うよね、私達」

 

 ニコって笑って、ありがとね、楽しかった!って言って動画保存して、そのまま見直してふふっ、って笑って。

 

 今は相手、いるもんなー。てか今俺とやってたらそれこそ浮気だもんな。なんかほっぺにチューするやつとか動画に撮って投稿してるのかもしれない。

 ……別にいいんじゃねーの?俺に関係ないし。めっちゃくちゃムカムカするけどね。このイライラを何処にぶつけたらいい?

 

「……晴人悪かったって、黙るなよ。すぐ声に出るのがお前のダメなとこだけど喋らなかったらお前のアイデンティティゼロだぞ?」

 

 コバが少しだけ心配そうな顔で俺のことを覗いていた。

 色んな奴から「色々とだめ」「終わってる」とか言われる俺だけど、それでも俺と付き合い持ってくれる奴らは結構良い奴らが揃ってると思う。担任の皆川ちゃんも含めて。

 

「……そういえばそろそろテスト前だな」

 

「折角謝ったのに開口一番嫌なこと言うなよ……」

 

 そこまで勉強が苦手な訳では無いがどうせ部活もしてねえんだ。そろそろちまちま進めておいてもいいかもしれない。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 昼休みには「そろそろちまちま進めておいていいかも」とか考えてたのに六限目ガッツリ寝てしまった。人間なんて大体そんなもん。やろう!って思ってもやらない。

 けど六限目寝てる時に夢を見た。図書室でなんか本を読んでる夢。折角なんで今日はちょっと図書室で勉強してから帰ることにしようかな。放課後の図書室とかほぼ誰もいないし。

 

 案の定図書室はビックリするくらいに人がいなかった。窓から見える景色は物凄く灰色。まだめっちゃ雨降ってる。グラウンドが見えるけど流石にどの運動部も今日は外でやってないらしい。今日昼過ぎには雨止むんじゃなかったか?

 適当な席に座って世界史のノートと資料集を広げる。暗記系は早めに綺麗に纏めてしまって、詰め込んで、前日にもう一回詰め込み直す。これでだいたい取れる。

 

 世界史、日本史って卑怯だと思う。大体歴史で男の子が燃えるのって戦国時代とか、三国志とか幕末とか、その辺じゃん。女子も最近は薄桜鬼とか戦国BASARAとかでやっぱりその辺に興味を持つけど、高校の授業とかだとその辺って瞬殺で終わるんだよな。だから冷める。織田信長はショットガンを使わないし豊臣秀吉はパンチで日本列島にクレーターを作らない。伊達政宗はレッツパーリー!しないし本多忠勝はガンダムじゃない。

 

「……あっ」

 

 めちゃくちゃ静かな図書室に、ちょっと低めの女性ボイスが響いた。しかも俺の近くな気がする。ちょっとビックリして思わずそっちの方を見てしまうよね、まあそりゃ。

 

 ミディアムヘアー?っていうの?割と長めの黒髪。ほんのちょっと日焼けした感じのする肌に、やたらとデカい目が凄く印象的な女の子が俺の方を見て立っていた。やっば、声に出しちゃったよ、みたいな顔してる。えーと……知らない子だ。

 

「……俺になんか用?」

 

「いや、その……ごめんなさい、つい声が出ちゃって」

 

 愛想笑いで誤魔化そうとしてる。ちょっと日焼けしてるからかな、笑った時に見える歯がめちゃくちゃ白く見える。

 

「背中に「バカ」とか書かれてた?」

 

「いや、書かれてないけど」

 

「……ごめん、俺君のこと知らないんだけど」

 

「私も。名前と学年は知ってるけど」

 

 え、なんで?俺そんな有名じゃないよ?悪評はもしかしたら立ってるかもしれないけど。え、待って怖くなってきた。俺どういうルートでこの子に知られてるの?

 

「……なんで知ってんの」

 

「いや、うん」

 

 このノリ絶対いい方向に広まってねえだろ。なんだ、「口悪いゴミ」とか言われてんの?「超絶陰キャ」とか?それとも「童貞」?誰が広めてんだよそもそも。

 

「教えてくんない?」

 

「……あれだよね、神崎君だよね?……詩織ちゃんに振られたって」

 

「紅だァァァァァァ!!!」

 

「そこ!図書室では静かにしてください!」

 

 予想外の方向から飛んできたから思わず叫んでしまった。おかげで図書室の先生から怒られた。慰める奴は元から何処にもいない。

 というかこの子、その噂で俺見て「あっ」って声出したのかよ。めちゃくちゃ失礼じゃねえか。

 

「……なんか、ごめん。やっぱショックだよね」

 

 しかも叫び声に若干引いた挙句謎の同情食らってるし。慰める奴はいたわ。

 

「……誤解なんだけど、俺元々詩織とは付き合ってないから。幼馴染なだけで」

 

「え?そうなの?詩織ちゃんのティックトックでたまに二人で色々やってたから付き合ってると思ってた」

 

 やっぱりあの動画シリーズが勘違いに拍車掛けてんじゃねーか!?

 取り敢えず図書室の先生がこっちめちゃくちゃ睨んでるから気まずい。予定とは違うけどさっさと片付けて雨の中帰るとするか。

 

「あの動画シリーズはあいつの暇潰しに付き合ってただけ。じゃあな、日焼けちゃん」

 

 ちょっとなんかイライラしてきた。昨今の若者はすぐイライラするね、とか言われるけど知ったことか。ストレスだらけの社会が悪いのだ。キレる高校生の見出しになってやろうか。

 

「あー、待ってください」

 

 呼び止められた。

 

「えっと、二年六組の石黒凜香っていいます。その、噂で勝手な事言ってごめんなさい」

 

 石黒凜香と名乗った日焼けちゃんは深々と頭を下げる。……この手の話題で謝られた事ないから俺どうしたらいいのかわかんないんだけど。しかも先生めっちゃ睨んでるし。俺がなんか暴言吐いたみたいになってない?これ。

 石黒ちゃん……いや、初対面の人にちゃん付けもどうよ?石黒さんが顔を上げた。

 

「で、ごめんなさいついでになんだけど……暇ならちょっと付き合ってくれませんか」

 

「は?なんで」

 

「や、私女サカの部員なんだけど、今日部活オフなの忘れてて部室行ったら誰もいなくて」

 

 女サカって女子サッカー部のことか。日焼けしてるのはそういうことなのね。

 

「……で、今日パパもママも仕事で七時位まで帰って来なくて、私今日部活あるし大丈夫でしょーって家キー持ってなくて」

 

 家キー?……家のキー、家の鍵か。え、何?そういう略語流行ってるの?

 

「友達とか皆部活か帰ったかで、今私ぼっちで暇なんだよね。購買でなんか奢るし、私の暇潰しに付き合ってくれませんか」

 

 さっきまで初対面だった、しかも異性にそんなことお願いするのか。流石にちょっと恥ずかしいらしく指で頬をポリポリしている。大きい瞳がキョロキョロしている。

 ……まあ、別に俺も用は無いし。なんか奢ってくれるらしいし。暇潰しに付き合うくらいはなんてことはない。

 

「……俺でいいなら」

 

「やった!ありがとね、神崎君」

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 食堂の端の方の席に陣取り、奢ってもらったジュースを飲みながら雨が止んで時間が経つのを待つ。その間、他愛も無い話をする。

 意外にも話のネタは尽きなかった。石黒さんがどう思ってるかは知らないが、俺は割と楽しい。

 

「え、じゃあお姉さんと二人暮らし?いいなー」

 

「よく言われる。でも意外とそうでもないぞ?」

 

「でもさ、そういう暮らし憧れない?……あ、そういう暮らしをしてるから憧れとかじゃないのか」

 

「石黒さんは兄弟とかいないの」

 

「呼び捨てでいいよ、同い年だし。お兄ちゃんと妹がいるよ。どっちも二つ違い」

 

「それくらいの歳の差だと「きょうだい」って感じするな。うちは六つ違うから」

 

「てことはお姉さん社会人?かっこいー」

 

 喋っていて解ったこと。石黒凜香、十七歳。つまりもう誕生日は迎えてるらしい。部活は女子サッカー部で、ポジションはトップ下?らしい。サッカーよく知らないから解らんが、フォワードの一つ後ろって言ってたから……多分イナズマイレブンのジェネシスで言うとウルビダのポジション?だと思う。

 電車通学で片道三十分くらい。つまり六時半位まで暇潰しに付き合えばいいらしい。今が五時過ぎなのであと一時間半。兄と妹がいる。

 

「でも本当に付き合ってると思ってた」

 

「まあよく一緒にいたのは事実だしな」

 

「ティックトック見てると仲良さそうだもんね」

 

「俺自分が映ってるやつ半分くらい見てないんだけど」

 

「インストールしてないの?」

 

「してない」

 

 パリピ御用達、みたいなのはちょっとしんどい。

 

「見る?私インストールしてるし幾つか詩織ちゃんのやついいねしてるし」

 

「自分が変なテンションで音に合わせて手遊びしてる所見るのしんどくないか?しかも相手役今彼氏いるし」

 

「それもそうか。……今、一緒に何かやる?」

 

「なんでだよ……」

 

「いいじゃん。お近づきの印」

 

 歯を見せて笑う。なんというか、石黒は無邪気、って言葉が似合う気がするな。俺とは大違いだ。俺は邪気に満ち満ちているから。

 

「えー、詩織ちゃんとはやるのに私とはやってくれないの?」

 

「あいつは幼馴染だからそういうのやるのに抵抗無いんだよ。あのシリーズの手遊び難しいし」

 

「顎乗せてくれるだけでもいいよ」

 

「俺の顔面偏差値でやってもキツいだけだわ」

 

「確かに」

 

「急に辛辣になったな」

 

 無邪気すぎる。素直に口に出し過ぎてる。

 

「冗談だよ。じゃあこれやろうよ」

 

 悪戯っぽく笑ってから、俺にスマホの画面を見せてくる。内容は簡単なアルプス一万尺。途中でカメラに向かってキメ顔するだけ。

 

「もしくはめ組のひと」

 

「それ詩織にやらされた」

 

「知ってる。私それいいねしたもん」

 

「……暇潰しになるなら、アルプス一万尺くらいやってやんよ」

 

「やった!……あ、ついでに連絡先交換しようよ」

 

「あいよ」

 

 鞄の中から俺のスマホを取り出す。画面には、コバからのメッセージを受信した旨がお知らせされていた。気になるので先にそちらを開封する。

 

「悪い、ライン来てるから先そっち見る」

 

「はーい」

 

 メッセージを開く。

 

 

『お前何で女子と二人でイチャイチャしてんだよ、死ね』

 

 

「見てたのかよ!?」

 

「え、何が?」

 

 あいつ筋金入りに拗らせてるなぁ……というかイチャイチャしてないし。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。