幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい   作:仮面

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タイトル通り、とある二人にスポットライトを当てた、ほぼ会話文のお話です。


閑話 陰キャとビッチ

「おい晴人ォ!お前はよォ、お前って奴はよォ!!」

 

「どうしたコバ、ジョジョみたいな叫び方して……発作?」

 

「死ねっ!お前ホント死ねっ!」

 

 二学期が始まって一週間経つか経たないか。演劇衣装班ことコバと織田は早々からどんな衣装を作るか、予算はどのくらいか、どの店で生地を買うか等を纏まる為に放課後に残る、と聞いたので、実行委員だし様子見に行くかーってことで俺と詩織の二人で食堂の一角に来たのだが。

 

 なんかいきなりコバに怒鳴られた。俺なんかした?

 

「てめぇ!夏休みに二つもフラグ建ててんじゃねえよ!?俺も須田もびっっっっくりするくらい女っ気無かったのに!!なんでお前はビッチクイーンと別クラスのサッカー少女といい感じの噂立ってんだよ!?殺すぞ!!」

 

「……あー、それ」

 

「てか小林君、情報ちょっと遅い……?」

 

「ほっとけ詩織。陰キャだからそういう情報回してくるやつが居ないんだよ。……てか、ホントアタシとこいつが噂になってるのムカつくんだけど」

 

 織田のその一言は俺にもグサッと来るからやめろ。ぶっちゃけ俺も詩織から聞いてなかったらその情報回ってくるのめちゃくちゃ遅かったと思う。というかコバもよくその話題を織田がいる前で話せたよな……コイツも大概無神経極まりないと思う。

 

「ホントふざけんなよ、ちょっと前まで日高に彼氏が出来て沈んでたくせに……」

 

「えっ、ハル沈んでたの?」

 

「え、俺沈んでた?」

 

「沈んでたんじゃないの?結構みてて痛々しかった」

 

 まあ、若干沈んでた自覚はあったけど……マジかー、コバにも織田にもそう見られてたのか。よくよく考えたらあの頃異様に同情されてたもんなー。というか詩織がいる前でこの話出来るコバの精神は鋼かなんかか?絶対こいつ俺より無神経だろ。俺よりタチ悪いだろこれ。

 

「……で?進捗はどうなんだよ」

 

「序盤と終盤で衣装の雰囲気をガラッと変えたいなって話はしてた。最初はとにかく現代風、地味なスーツとかでいいんじゃない?って。で、終盤は逆にシンデレラの舞踏会!みたいなキラキラした感じの」

 

「うわぁ、それすっごく良い……!」

 

 織田の説明に詩織が目を輝かせている。女の子はそういうの好きだよなぁ。

 

「詩織、あんたドレス着てちゃんと踊れるの?」

 

「むー、香澄ちゃんもしかしてバカにしてる?」

 

 シンデレラ役は詩織がやることになった。織田が意地悪な先輩やるのを思いの外嫌がって、「アタシが意地悪な先輩やるならシンデレラあたしに決めさせて!」と謎の交換条件を持ち出してきたのだ。ぶっちゃけ俺は誰がシンデレラやろうとどうだって良かったので許可したら、織田はなんと詩織を選んだのである。詩織も結構な勢いで拒否してたんだが、結局なんだかんだでこの二人の出演は決まったのである。

 

「頼むからドレスの裾踏んでビリビリ……とかやめてね?」

 

「しないってば」

 

 まあ、二人ともルックス悪くないしいいんじゃねえのかなと思う。織田とかめっちゃ似合うし。

 

「シンデレラと王子様の衣装は作るけどさ、他のドレスなんかはドンキで買った方が安いんじゃない?」

 

「あ、それは俺も思ってた。まあ安っぽいっちゃ安っぽいけどそこそこ使えると思うぜ」

 

「そうだなー、全部作っても予算やべえしな……頭入れとくわ、サンキュ」

 

 こいつら衣装系に関しては詳しいな……織田はなんかコスプレ衣装作ったことある、って言ってたから解らないでもないが、コバに関しては完全に下心のみで身につけてるんだよな、このスキルと知識……頭おかしいだろ。

 

「日高、型紙と完成イメージ出来たら一回見せるからその時頼むわな。……あ、採寸は織田がやってくれるから」

 

「はーい、ありがと……ってあれ?ドレスは小林君の担当なの?」

 

「アタシが王子様の衣装担当で小林がドレス担当」

 

 逆だろ普通。あ、でもコバはチャイナドレスとかメイド服みたいな女性用の衣装ばっか作ってたのか。……織田はアレか。男装衣装とか作ってたのか?あんまり詮索すると殺されそうだからここでは聞かないけど。

 まあいいや。思った以上にこいつらはちゃんとやってくれそうで安心した。

 

「じゃあ、俺脚本皆川ちゃんに見せてくる。詩織先帰ってていいぞ」

 

「はーい。二人とも、頑張ってね」

 

「とっとと行けリア充共。幸せオーラが伝染る」

 

 幸せオーラは伝染ってもいいんじゃないだろうか。というか俺が幸せそうに見えるならコバの心は荒み切っていると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ、織田」

 

「何?」

 

 小林は無地のノートにドレスの案を書き出しながら織田に声をかけた。当然、目線はノートにあり、彼女の方を向く素振りは無い。織田も同じように彼女のノートに衣装の案を雑に描いており、声をかけられようと小林の方を見ようとはしなかった。

 

「お前から見て、晴人ってどう思う?」

 

「……は?意味わかんないんだけど」

 

「俺さー、晴人は絶対日高のこと好きだったと思うんだよなー」

 

「何?恋バナでもしたいの?キモイ」

 

「ぶっ殺すぞビッチ。そうじゃなくて!」

 

 小林は顔を上げ、イラついた顔で眼鏡の位置を直した。ルックスに限って言えば彼はかなり良い素材を持っている為、その仕草は少し絵になるかもしれない。

 

「あいつはいいヤツなんだよ。ぶっちゃけ、絶対日高のことは好きだったと思うんだよ。でもさ、高見ってヤツが日高と付き合ったじゃん?あいつ多分相当心にキてた……キてるんじゃねえかなって思うんだよな」

 

「話が見えないんだけど」

 

「だから、俺が言いたいことは……」

 

 織田が、ふと顔を上げて小林の表情を見る。

 

 ──その小林の表情は、今まで誰も見たことの無い程に真剣で、何か迫ってくるものがあった。

 

 

 

「お前、その状態の晴人弄ぼうとしてるんだったらマジでぶっ殺すからな。陰キャでひょろひょろの俺なんかに凄まれても怖くねえかもしんねえけど、マジでぶっ殺す」

 

 

 

「……マジでアンタに凄まれても怖くないわ」

 

 溜息を吐いて作業に戻る織田。小林の瞳の熱はそんな織田の赤い髪を睨んだままだ。

 

「噂が流れてるのはアタシも知ってるよ。ただ大学のオープンキャンパスに一緒に行って、帰りにゲーセン行っただけ」

 

「なんでお前が晴人とゲーセンに行くんだよ」

 

「……アンタ、前にアタシの鞄に缶バッジ付いてたの覚えてる?」

 

「……あー、ヒプマイの」

 

 頭の中で灰色の狼を思い浮かべる小林。織田は頭を掻きながら、心底嫌そうに続きを紡ぎ始めた。

 

「アンタがあの時に言ってたみたいに、アタシ結構オタってるんだ。……この、衣装作るスキルも、コス衣装とか作ったことあるから……」

 

 コス衣装、というワードを聞いて小林の目が輝く。

 

「マジで!?お前そんなもん作ってたの!?」

 

「うっさい!声がデカい!」

 

 異様な食い付きに織田は半ば引きつつ、晴人だけでなく小林にも自分の趣味を晒してしまったことに多少の後悔を覚える。対して小林の反応は非常に好感的だった。

 

「まじかぁ、俺のまわり衣装作るやつ誰一人いなかったから普通に仲間がいて嬉しいぞ!?なあ、どんなの作ったんだよ、教えろよ?」

 

「はぁ?あー……最近だと、寂雷先生とか」

 

「えーと、それもヒプマイだっけか?マジか、お前が着るのか?」

 

「…………そうだけど」

 

「女性衣装は?」

 

「ほぼ作らない」

 

「なんだよ、つまんねーの」

 

「アンタ結構ムカつく」

 

 男装衣装しかほぼ作らないと解った途端、興味の半分が削がれたと言わんばかりのテンションの下がり方に、織田は本気で引いた。自然と本日何回目かの溜息も出てしまう。

 

「……まあ、結構オタクだから、アタシも。クレーンゲームのフィギュアが欲しかったの。でもアタシ下手だから、代わりに神崎に取ってもらってただけ。別にアイツを弄ぶ気は無いし、アタシなんで周りからビッチって思われてるかもよく知らないし」

 

「俺はなんか、結構歳上のイケメンといる姿をよく見るから、遊んでるんじゃねえの?って聞いたけど」

 

 小林のその又聞きの噂を聞いて、織田はまたもや溜息を吐く。

 確かに、織田は歳上の男性といることが多い。それも、髪の毛は赤みがかった茶髪で、体格も良いかなりの「イケメン」だ。

 

「……それ、多分アタシの兄貴」

 

「えっ、お前きょうだいいるの?」

 

 噂の真偽等、元を正せば案外当然のことであることが多い。織田が遊んでいる、と噂されていた原因は郁也にあったのだ。郁也も晴人の姉、雨のように少し妹を甘やかす癖がある上に、織田自身も郁也のことを好いている。その為、余計に遊んでいるカップルのように見えてしまったのだろう。

 

「だから、アンタが思っているような感じで神崎と絡んでるわけじゃない。まあ……ただのオタ友、かな」

 

 織田はそう締めつつ、小林と晴人に少しだけ感心していた。

 晴人がどう思っているかは別として、小林のあの気迫は、本気で友達を心配していた。思ったことを素直に口に出し、尚且つその毒が非常に強く、自らの傷口は隠そうとする晴人のことを、小林が本気で友達だと思い、好いているとは思っていなかったのだ。

 彼は、思った以上に友達思いの人間なのかもしれない。

 

「……アタシからしたら、アンタの方が意外だよ」

 

「俺が?なんで」

 

「もっと陰キャだと思ってた」

 

「は?」

 

 もう少し、卑屈でひねくれていると思っていた。そう言わなかったのは、織田が少しだけ小林のことを見直したからなのかもしれない。

 思えば、小林が本気で織田に突っかかったのは、晴人が学校をズル休みした時だった。恐らく、彼は晴人の欠席がズル休みだったことを知らなかった為、ズル休み扱いした織田が許せなかったのだろう。

 

「アタシは結構好きだよ、神崎のこと。アンタも、思った以上に嫌いじゃないかも」

 

「俺知ってるぞ、そういうのを文化祭の魔力って呼ぶんだ」

 

「なにそれ」

 

「エロゲとかラノベでよくあるんだよ。あんまり接点ない異性と文化祭の実行委員やって、「あれ?こいつ実はいいやつじゃん」みたいに錯覚して付き合っちゃうようなアレが」

 

「あー、そういうこと。まあ学園モノの王道だよね。何?アタシとヤリたいの?」

 

「……お前、そういうこと言うからビッチに思われるんじゃないのか」

 

「別にビッチって思いたい奴は思わせとけばいいし」

 

 暫し、無言のままで作業が進む。

 

「……あ、アタシが隠れオタってバラしたら殺すからね」

 

「バラさねーよ別に。あ、でも今度コス衣装見せてくれよ」

 

「……別にいいけど。そんなに上手く出来てるもんじゃないからね」

 

 

 ──神崎って、変な奴には好かれやすいのかもね。こいつとか、アタシとか、兄貴とか。





進展しているようで、していない。

コバはいい奴です。
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