幼馴染が彼氏作ったから俺も彼女作りたい 作:仮面
仕事無くなってこれ書いてると「なんで私には美人の姉貴がいないんだ」って思って死にたくなりました
「お前が休むなんてマジでビックリしたぞ。ほら、これノート。貸し一つな」
月曜日、学校に行くとコバが少し心配そうな顔をして二冊ノートを渡してくれた。うーん、持つべきものは良き友よ。こういう時は一切の罪悪感を感じないね。感謝しかない。
「サンキュ」
しかもご丁寧に俺がノートをいつも一切取っていない数学は渡して来ない。だって家で問題集さえやっとけばある程度点数取れるし。
「いいご身分じゃん不良少年」
後ろから肩を小突かれる。痛ってえな、誰だ?……織田かよ。
「アタシもサボりはあんまりしないのにね」
「おい織田ビッチ、お前と晴人を一緒にすんなよ」
持つべきものは友である。でも今のはちょっと罪悪感。
てかウサビッチみたいに言うのやめろよ。笑っちゃうじゃねえか。
「うっさい二次オタ。エロ本でも読んでシコってろ」
「ぁんだと!?知ってんだぞ、お前の鞄に付いてる缶バッジシリーズの中にヒプマイの麻天狼のロゴあるの」
「え、マジ?お前よくそんなの見てたな」
でも多分それ地雷だと思うぞ。
「はぁ!?お前マジでどこ見てんの!?クソ童貞!!死ね!!」
「痛ったぁ!?」
うーわ、ビンタされてら。そらそうよ。これに関しては色々と申し訳ない気もするがコバが悪い。
……にしてもクラスのビッチ集団の中にも一人位うたプリクラスタいると思ってたが、まさか織田がシンジュクの女だったとはなぁ……流石に予想外だった。まあ今人気だもんね、ヒプマイ。
……なんか織田の奴、姉ちゃんにちょっと似てるな。
〜〜〜
「納得がいかねえ」
「いや流石にコバ氏が悪いでしょー」
ヒリヒリ痛んでいるらしく、昼休みもコバは頬をさすっていた。最近暑いから中庭に行く気になれない。
「あのクソアマ……」
でも元はと言えば金曜の休みはサボりだろ、って俺が織田に言われたのがムカついて突っかかって、その結果ビンタされてるんだからかなり罪悪感。だってマジでサボってた訳だし、織田そのこと知ってるし。
「まあいいや。そんな事よりもお前ら!モテる方法だよ、俺はひとつ見つけてしまった!」
こいつの心の中忙しいな。
「おお、それはー?」
「それはだな……壁ドンだ!!」
「は?」
「えっ」
壁ドンって……こいつ何年前の流行りに乗っかろうとしてるんだ。二年くらい前にその流行は終わったぞ?
俺と須田が「こいつ何言ってんの」みたいな顔をしていると、どうやらその顔が「壁ドンって何ですか聞いたことも無いです」の顔と間違えたらしく、ドヤ顔で説明してきた。
「なんだぁ陰キャ共?やっぱり知らなかったか……仕方ない、教えてやろう。壁ドンとは」
「いや知ってるから」
「その流行りはちょっと前に過ぎたよー」
「……えっマジ?壁ドンってもう時代遅れ?」
いや、時代遅れかと言われたらそうでもない気がするけど……。そもそも壁ドンで女を落とせるのは超イケメンだけだって。多少ルックスが良い程度じゃ壁ドンでは落とせないって。
「じゃあシミュレーションしてみよう。コバが壁ドンをしたとする。須田が女子ならどう思う?」
「そのままおっぱい触られるんじゃないかとドン引きする」
「解ったかコバ?これが現実だ」
「俺ってそんなに信用ないか」
趣味はエロゲーだと明言してる奴が女子から信用あると思われてる方がおかしい。ゲテモノ料理店やってる人に「得意料理振舞ってやるよ!」って言われたら遠慮するのと同じ感じ。
「てか須田ぁ!お前もなんかモテる方法出せよ!?」
「逆ギレするなよコバ……」
壁ドンが時代遅れだったことと自分の信用の無さを須田にイライラでぶつけてどうする。
須田はうーんうーん悩んでから自虐的な笑みを浮かべた。
「いや、ほら。俺ってチビだしー?その時点でダメなんだよねー」
「歳上の女の人なら「可愛いー!」ってモテるかもしれないだろ!?おい晴人!お前の姉ちゃんのタイプってどんな男なんだよ!?」
「知る訳ねーだろ」
姉ちゃんの好みのタイプ?……最近はどんな男を見てかっこいいって言ってたかなぁ……。記憶を掘り起こす。
そういえば織田の奴、ヒプマイ好きだったとはなぁ。割とマジでびっくりした。……ヒプマイ?
あ、そうだ。最近姉ちゃんヒプマイの左馬刻がかっこいいって言ってたわ。
「……えっと、ワイルドな感じのヤンキー。身長はかなり高めの俺様系がタイプなんじゃないの?最近はそんな感じ」
オタ趣味バラしたら姉ちゃんに半殺しにされるのでなるべくはぐらかす。左馬刻はヤンキーというかヤクザだけども。
「ほらー!俺と真逆じゃんー!?」
あ、ホントだ。なんかすまん。
「……うん、頑張って生きろよ」
ほら、ヒプマイ繋がりだと乱数もチビだけどあんな感じのキャラでオネーサン達を落としてるらしいし、何とかなるよ。頑張れ。
……絶対コイツらと作戦立てても夏休みモテないと思う。
〜〜〜
「神崎、お前この後職員室来い」
なんか終礼で皆川ちゃんから呼び出し食らった。え、なんで?
まさか金曜のサボりバレた?いや姉ちゃんの演技は完璧だったハズだろ。まさか俺が隣で笑い堪えてる時に声入ってた?
俺が呼び出し食らうなんて今までで初めてなのでクラスが一瞬ザワつく。あいつ何やったの?みたいな。
二人だけ、哀れみと嘲笑の瞳で俺を見てくる奴がいる。俺がサボってたことを知ってる詩織と織田だ。
うわー、行きたくねぇー。
終礼が終わり、皆川ちゃんが職員室へ帰る。教室を出る直前に、「さっさと来いよー」と念を押された。え?マジでなんなの?
「ハル、バレたんじゃないの?サボり」
「呼び出される理由がそれ以外に考えられない」
鞄を背負ったまま少し同情するような表情でこっちに来たのは詩織だ。
「まあでもサボり自体は悪いことだしね。お姉ちゃんそういうの好きそうだけど」
「姉ちゃんが高二の頃はサボりまくってたらしいぞ」
「いいなー。私そんな度胸無いけどさ」
頑張ってね、と謎の応援をされた。職員室に行くのに頑張るもクソも無いだろ。
足取りが重い。でもこれよくよく考えたら違うのでは?それだったら姉ちゃんが一番怒られるべきだろ?だってあんな声色まで変えて電話受けたんだぞ?怒られるべきは姉ちゃんなのでは?サボったのは俺だけど。
勝手に責任転嫁することで心の平安を保つ。
職員室はノックして入るのがルールだ。どこでもそうか。
「失礼します。皆川先生は……」
「あー、こっち!神崎こっち!」
流石に職員室の中では皆川ちゃんにも先生を付ける。皆川ちゃんはブンブンと手を振って自分の場所を知らせてくれていた。背が低いからそうしないと見えないもんね。
恐る恐る皆川ちゃんの方へ行く。いいよ座って、と促されたので椅子に腰かける。
「金曜なんだけどさ」
来た。やっぱバレたか。土下座の用意をしておこう。
「お前が寝てる間にな、お前のお姉さんと電話でお話したんだよ」
……ん?なんかこれ話の方向が違うぞ?
「お前が熱出した時にな、どうしたらいいかパニクって学校に電話するの忘れてたって。両親が家に居ないから晴人を守るのは自分だけなんですって。……いいお姉さんだな」
なんか真剣な顔で話されてる。
これアレだ。ただ姉ちゃんを労いたいだけだ。やめてくれ。その辺の話八割方嘘だから。俺隣で聞いてたから。笑っちゃう。今笑ったらマジでまずいけど笑いそう。
「これ、お姉さんに渡しておいてくれ。つまらないものだけど多分家事とかで大変だろうし、スキンケアの足しにでもって」
そう言って渡されたのは多分なんかの化粧品?美容クリーム?そんな感じのやつ。やばい。姉ちゃん渾身の嘘で皆川ちゃんから貢物を獲得しやがった。面白すぎる。
「……神崎お前なんて顔してんだ?」
「いや、あの……えっと、姉ちゃんがそんなこと言ってたんだなって、思うと……」
必死に誤魔化す。笑いを堪えてる顔だとバレないように。
「……そうだよな、家族の想いって中々見えないよな。大事にしてあげろよ」
「はい……大事な姉ちゃんなので……」
もう限界だ。泣いてるふりして両手で顔を覆う。美容クリームみたいなのを持ちながら。
「そんだけだ。もういいぞ」
「はい、失礼しました…… 」
俺は役者にはなれないな。笑い堪えるのも満足に出来ないもん。姉ちゃんすげえ。流石のハイスペックである。
皆川ちゃんが生徒に人気ある理由は多分この辺なんだろうなぁ。口がめちゃくちゃ悪いけどすげえ生徒を思ってるのは確かに解る。
さて、今日は用もないし帰るか……
「……あっ」
「あっ」
職員室を出てすぐに目が合った。女子サッカー部のユニフォームを着て、動き回るのに邪魔にならないように髪の毛をポニーテールで縛った石黒と。
「神崎君じゃん。何か提出物でもあったの?」
「いや、担任に用があっただけ。今から部活?」
「うん。明後日からテスト前で部活無くなっちゃうからさ、今日と明日はハードなんだよ」
白い歯を見せて笑う。ハードなら気が滅入りそうなもんだが、あまりそういった雰囲気は見て取れない。日焼けした肌は練習で付いたんだろうが、さてはこいつサッカー大好き少女だな?
「その割には楽しそうだけど」
「そう?部活自体は好きだからかな。テスト期間が恨めしいんだよね」
テスト一週間前になると、ほぼ全ての部活は休みになる。学生の本分はあくまでも勉強だから勉強しなさい、ってことなんだろう。成程、帰宅部の俺からしたら関係無いが、石黒にとってはキツイ話か。
「勉強、苦手なのか?」
「かなり苦手。いつも赤点ギリギリ。赤点取るとコーチに怒られるんだよねー」
「そりゃまた難儀だな」
「難儀なんです。神崎君は得意?」
「苦手では無いかな」
「いいなー」
どうでもいいが前初めて会った時は制服で、髪も下ろしてて。当たり前だけどスカートで。
今はサッカーユニフォーム着てて、髪の毛はポニーテールで。当たり前だけどハーフパンツで。
印象がかなり違うもんだ。元々活発そうに見えてたけど、部活スタイルだと更に活発そうに見える。なんだろう、可愛い男の子?みたいな印象すら受ける。
「……っと、顧問かなんかに用があったんだよな、悪い。呼び止めた」
「全然大丈夫。話し掛けたの私からだったし、ラインでも言ったじゃん?また絡んでねー!って」
そういやそんなこと言ってたな。
「部活頑張れ」
「ありがと。じゃあね」
本当にスポーツ少女、って感じだ。俺体育とかも得意ではないからなぁ……あんだけスポーツに打ち込んでる姿は素直に凄いと思う。
高見もバスケ上手いって聞くし、きっと同じなんだろうな。スポーツに打ち込んでる。
俺、そんな打ち込んでやったようなもの、無いからなぁ。色々なものに雑に手を出して、広く浅く色々やって見る。一つのものに全力で打ち込んでしまうと、それで挫折すると立ち直れない気がするんだよなー、俺。
俺も石黒を見習って今日は家で勉強に打ち込むことにしよう。
〜〜〜
今回の最大の敵は物理だと思う。元々苦手なんだよな。数学っぽいけどちょっと違う。助けてくれラヴアンドピースの天才物理学者。
俺が物理を勉強しないのは勝手だ。だがその場合、テストで痛い目を見るのは誰だと思う?万丈だ。……いやテストで痛い目を見るのは俺か。
「晴人ー!夜ご飯出来たけどどうするー?」
一階から姉ちゃんの声が聞こえてきた。え、もうそんな時間?やっぱ苦手科目は思うように進まねえな。
「片付けたら降りるー!もしアレだったら先食べといてー!」
アレだったら、ってどれだよ。
筆記用具をペンケースに納め、問題集とノートを閉じる。扇風機のスイッチを切ったところでスマホが鳴った。電話か?
「悪い、姉ちゃん電話!先食べといて!」
「はぁ!?あたしの飯より大事な電話なの!?……五分で降りてこい!」
「いやホントごめん!」
怖。ごめんなさい。
スマホの画面を見ると、電話してきていた相手は……石黒?何でだ?全く理由がわからない。
取り敢えず通話ボタンを押して耳にあてた。
「もしもし?」
『あ、神崎君?ごめん、急に電話して』
電話越しに学校の「間もなく最終下校時刻です。部活延長のない生徒は……」というアナウンスが聞こえている。まだ帰ってる途中か?
「いや別に電話はいいんだけど。なんかあった?」
『うん。あのさ、神崎君って、勉強苦手では無いんだよね?』
「まあ、それなりには」
部活もしてない、バイトもしてない。だからと言って遊び呆けている訳でもない学生が勉強苦手だったらいよいよもってこいつなんなの?ってなるし。
あ、なんかこれデジャヴ。図書室で初めて会った時のこと思い出す。
『今回のテストで赤点取ったら、誰であろうと次の練習試合、レギュラーから外すってコーチに言われてさ。割と皆マジで勉強しないとやばいんだよね。でもその中でもトップクラスに赤点取りそうなのが私で……』
「俺に勉強を教えてほしい、と」
『……そういうことです』
やっぱりな。暇潰しに付き合ってくれ、って言われた時と同じ感覚を感じたのはそれか。
「他に頭良い友達とかは?」
『皆自分のことに手一杯みたいでさ、女サカのメンツはそもそも馬鹿ばっかりだし』
まあ、私が筆頭なんだけどねー、と笑いながら続ける。
いや、ぶっちゃけ勉強を教えることに関しては別に問題無い。教えているうちに自分の頭の中にも入ってくる、っていうのは割とマジであるし。
なんというか、コバに乗せられて女誘ったみたいな気になるのが嫌なんだよなー。
『……あっ、勿論自分の勉強に集中したい!とかだったら全然断ってくれていいよ』
なんとなくフィードバックするのは、練習がハードだって言っているのに楽しそうに笑っていた石黒の姿。
本当にサッカーが好きなんだろーなー。
「……俺でいいなら、全然教えるけど」
『ホント!?やったぁ!ありがとね、神崎君』
「取り敢えずもうすぐ飯だからもう切るぞ?あとでいつやるかとか決めるのでいいか?」
『私は教えてもらう側だから神崎君に合わせるよ』
「そうか。じゃあまた後でラインする。部活お疲れ様」
『ホンットにありがとね!じゃあね!』
電話が切れた。
……飯食ったら勉強しよ。教える側が解ってなかったら笑いもんだし。
そろそろマジで更新ペース落ちると思います。台風のせいで(おかげで?)ここまでかけた。