一時的な平穏
………鳥のさえずりで眼が覚めるのではなく鶏の騒々しい鳴き声で眼が覚める。
何とも言えない朝だ、近場の安宿を取った為か狭いしほこりや壁にひびが入っていたり何とも管理がなっていない昨日の夜塵すら残さないほどに掃き掃除や拭き掃除を行いアルコールを散布したので大丈夫だが………しかも朝食無しの為自ら食料調達に赴かなくてはならない。お金は昨日のマモノ狩りでそれなりに稼げたが……贅沢は禁物であろう。
「世知辛いなぁ………」
ソレに私は生まれてからの性分により妙にお金がかかりやすい、汚れているのが赦せないのだ自分以外のものが汚いとしか見れない。殺菌用のアルコール、そして手を洗うようの石鹸再加熱用のバーナー等などお金がかかる。
「今日は酒場かな?」
食べ物で露店やきちんとしたレストラン等の選択もあるが露店は衛生的に論外却下、食べ物を何が漂ってるかもわからない空気の中で長時間放置している事が多いから。レストランは衛生的にはまだ赦せる範囲だが、値段がどうしてもはってしまうきちんとした料理人なのだから仕方がない………と思い、髪をとかしいつもの服に着替え予知書を持ってこの安宿から早々に立ち去った。
薄暗い路地裏を通りカランコロンと扉を開けると
「へーいいらっしゃい」
「嬢ちゃんエール一つ、チップやるから尻触らせてくれよ………」
「あらお客さんこれはそういう店ではありませんようふふ」
「なんだとっ!もう一回言ってみろ」
「てめえの脳みそが野ネズミ並だっていってんだよっ」
先ほどの鶏よりも騒々しい雑音が響いていた。
「…………ここは相変わらずだな」
酔っぱらってウェイトレスに絡む客それをいつものことのように軽くあしらうウェイトレス、そして突然喧嘩を始める荒くれもの達。こんなんだから料理の味やお酒の品質の割りに安いのであろうか?
「お客さんすみません、今日は混んでおりましてあちらの方と相席でよろしいでしょうか?」
騒々しさで気にも止めなかったが確かに随分と混んでいる………この時間にしてはだが、混んでいること自体はいつものことこんな早朝から混むこと自体は珍しい。
「いいですよ、どこですか?」
ウェイトレスの案内により人の間を縫うように進んでいく、そこには三ツ又の槍を椅子にかけているチェーンがついた茶色の革ジャンに身を包んだジーパンをはいた幼く見える男性……?もしかしたら女性でも通じるような外見である、テーブルにはその人物が注文した品であろうか魚の塩焼きとご飯そして玉子焼きデザートなのかリンゴが入ったゼリーが置かれていた。
「あっこの人ですか?」
その人物は口を開く、声は女性にしては低めであり男性としては高めだ。
「はい、失礼しますね」
と私は一つ挨拶をし、自身が座るであろう椅子とその周辺にアルコールで濡らした布巾で周囲を拭った。
その人物はその行動に驚くが、自身のある一点を見定めると勝手に納得しまた口を開き。
「もしかして僕と同じ先天性のマモノ狩り?日本刀は予知書で………」
「あぁそうだがそれが何か?」
「いやっ何でも無いです、珍しいなぁって……僕は薫と言います貴方は?」
「………イリカと言うが……」
確かに偶然こんな風にマモノ狩り同士合うのは珍しい、それは絶対数が少ないからだマモノ狩りというようにマモノを狩る時に標的が同じで会うことはままあるが、そこから協力するか妨害するかはマモノ狩りの精神によるだろう。
「イリカちゃんかー、そういえば知ってる?神殿から漏れた情報……ラグナロク……のこともあるんだけど今もっと身近な話。【夜に潜むものは日に現れる、その無限の悪夢を繰り広げながら】って予知、近々強力なマモノが現れるかもってことになってるんだ……」
「そうか、ウェイトレスさんベーコンエッグとパンそれとデザートにクレームブリュレ一つ」
「かしこまりましたー」
「イリカちゃん……聞いてた?」
聞いてたとも、マモノは基本的に夜凶暴化し強くなるがより強いものは昼であろうとその凶暴性そのままに活動ができる。予知書にその活動が予言されることも少なくはない。
「……その予知の中に滅びや結末に関する記述が無いことだろ?」
予知書の予知は絶対とされる、村が滅ぶと書かれたらどう足掻こうが滅ぶ運命は変えられないマモノの出現だろうとそうだマモノが倒せるかどうかの記述があった場合その通りになる。これにはその記述が全くないだから…
「そうそうマモノ狩りの頑張り次第で、悪夢は止められるって事なんだよ現れる事自体は確定になっちゃったけど………だからさうん」
薫は下を向き少し考える。リンゴのゼリーを横に見ながら。
「はいはいお互いの仕事をするだけだ」
「今回組んでほしいんだ、いやソロだけじゃ限界があって……それなりに倒せるけど強力なマモノはどうかなって心配で……」
「わかった、組もうか………こっちも限界を感じていた今日の夜にもう一回落ち合おう。」
「こちら、注文されたベーコンエッグとパン、クレームブリュレとなります以上でよろしいでしょうか?」
「あっはい。」
そういって何とも絶妙なタイミングで届いた食事をバーナーで軽く炙った。
「…………すごいね色々と…」
と薫がすごい形相でこちらを見る、まるで別の生き物が人間の言語で話したのを見るように。
「しょうがないだろうこれが私の性分だ」
「まぁ僕も人のこと言えないけどね………」
そういって穏やかな朝は過ぎてゆく、マモノが溢れ出す夜へと進んでゆく。
肘神さまの絹枝谷 薫さんお借りしました。
ソロではなくタッグこれからどうなるマモノ狩り
薫さんのリンゴゼリーはおっちゃんに嬢ちゃんおまけだーよく食えと押し付けられたものだったり。