ラグナロク 【予言書の終り】   作:夢食いバグ

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遅くなってすみません。


熱は循環し、身を焦がす。

私が次目覚めたのは固い木のベットの上だった、覗き混むのは二人の人物。

 

少女のような、銀製の彫刻のような綺麗な髪を見せ言葉もなく……心配そうに覗く。知らない人だ、目は宝石のような輝きをもつアメジストのような紫、後天性の特徴か。

 

「つっまだ怠いな。とりあえずすまないが水くれないか……?」

 

「わっわかった!」

 

と薫は急いで水を汲みにいっていた。

 

熱に浮かされたか、体が怠い鉛を全身に仕込んでるようだ…………汗は体の水を使いきったのかでない。あの人形劇はあまりにも魂が籠りすぎていた、本当に只の上手いだけの人間だとは思えなかった。

 

「ところでお前はなんだ?助けてくれただろうが……礼はする、ありがとう。」

 

【いやー急になんか倒れたようで、ビックリしましたよーお財布は取り返しましたがねっ!】

 

と人形のような女性は、手頃な紙に返答を書いて渡した………たまにボディーランゲージや攻撃的肉体言語で突破しようとする猛者もいるが彼女はそういう人ではないようだ。

 

「あぁ取り返してくれたのか………ありがとう。」

 

【いえいえー】

 

「水っ汲んできたよっ!」

 

そうして薫がコップに零れそうなほど水を入れて持ってきた、走ってきたので実際にこぼれてる。

私は少し笑った、マモノ狩り故に普通の人よりは頑丈だ普通の人間でもギロチンで首を切られてから10分間は意識がある………ソレよりも遥かに死ににくい。

 

「そこまで慌てなくても、大丈夫だぞ……」

 

「いやっ心配するよ!急にぶっ倒れたんだからさ、魔物狩りとも言えどちゃんとしてよ。」

 

「ハハハ…………」

 

そうやって、苦笑いして汲んでくれた水を一気に飲んだ。急いで入れたせいか、気管に少し入ったようで蒸せる……鼻から出た。

 

「いや、イリカちゃんも慌ててるじゃん……もっとゆっくり……」

 

【仲いいんですねー、付き合って。】

 

と彼女がそう微笑みながら紙に記した物を見た瞬間、私はもう一回汲まれた水を飲んでる途中で吹き出した。

 

「いや、ソレはない。」

 

「まっまだ………マモノ狩る為にペア組んだばかりだよっ!」

 

そうお互い返答を返した………言葉に出してるが紙にもそういう類いを書く。まだ組んだばかりだしな……これで片方がもう付き合ってるとか、思い込んでいたら色々大変な事になる。

 

【あっそういえば………貴方の事と私の事いってませんでしたね?

 

私はアリスフィア・クレシェンドと言います。見た目からわかると思いますが、後天性のマモノ狩りですね。】

 

そうやって、誇らしげな顔を見せた。随分実力に自信があるのであろうか?

 

「私の名前は、イリカ・バルカ。マモノ狩りをしている、今はコイツと予言の事もある。それまでチームを組んで討伐を行うことになった。」

 

薫に指をさして自己紹介と共にそういうなかではない事を証明しようと、口を開いた。まだ水分が足りないのか、口の中が乾いたように感じる。

 

「うん……神殿から、強力なマモノが現れるって予知があって。それを止めるため、にお互い組むことにしたんだ。」

 

薫も少し、慌てているようだが。しっかり答えている………そりゃあ誤解されたらたまったものでは、ないからな……

 

【へー、タッグかぁ……珍しいのかなぁ。確かに生存確率は確実に上がるだろうけど、魔物狩りって正直協和性あんまりないからねぇ……一回その場で遇って即興でやったのとあるけど。】

 

軽く内容をまとめた紙を渡すと彼女は一度組んだときの事を思い出したのかうへぇと芋虫を思わず、噛み潰してしまったかのような表現を浮かべる。

 

確かにマモノ狩りは人間の灰汁を煮込。混沌な倫理を抱え常識が何処か吹っ飛んだやからが殆どだ、先天性は言わずもがな先天的に異常を抱えている……後天性もあの予知書を読んで発狂しなかった、数少ない奴だ。

 

魔物狩りの中でイカれてる奴を数えるよりも、イカれてない奴を数えた方が遥かに早い。そもそも何処か吹っ飛んでなければマモノとの戦いはついていけずに早死する。

 

「それは、難儀だったな……」

 

と言うと彼女は熱気に満ちたようにガリガリと筆をすすめ、長い感情の籠った愚痴じみたものを書き始めた。ちょっと興奮して字が書きなぐったように、荒れてしまっている。

 

【えぇ!大変だったんですよー、女の子には戦わせられないって。私の言うこと聞かず、マモノに勝手に突撃していって……。胴体と頭がマモノの攻撃で、ナムサンオサラバで。自分を強いと勘違いしている、バカほど救えないものはありません。】

 

ふんすっと音が聞こえそうなほど、彼女にとってあの出来事は散々であったようだ。

 

「大変だったな、身内の足手まといは凶悪な敵よりも害悪だから。そこまで怒るのも無理はない。」

 

「うっうん、相談は大事だよね……」

 

少し薫が引き気味だが、彼女と一緒に組んだ奴はマモノ狩りの戦闘は誰かを護る為に行うと盛大なる勘違いをしていたらしい。マモノ狩りは英雄ではない、選ばれし勇者でもない只の狩人だ。

いくら頑丈と言えど致命傷は存在するし、常人なら一滴で死に至るマモノの毒で死にはしないが……体が鈍りはする。後天性だが先天性だが知らないが、心から同情するには価しない滑稽さだ。

 

【沢山の人護るーってだったら、ちゃんと男女関係なく使えーって話です!でも死んでしまったのは悲しいですね………】

 

と怒るのをやめ、顔がうつ向いた…怒りは悲しみを隠すためかはたまた己が慣れてしまうのに、嫌悪してしまっているのか。

 

「同業者の死亡なんて、マモノ狩りではしょっちゅうあることだろ?それ事にいちいち悲しむのか優しいな。」

 

「ちょっイリカちゃん!?」

 

薫が驚くが思わず口に出してしまった、後天性故に理解できない。きついことを言っているだろう……私はそうしなければ持たなかった。マモノ狩り同業者の死は遠くから聴いたのみだが……人の死は幾つも見てきている。いやマモノ狩りとしてマモノが人を喰らう食事風景を幾つも見てきた。

 

悲しんでは、何かが私の中の何かがパキンっと音をたてて、壊れてしまいそうだった。

 

【えぇ、悲しみますよ!マモノ狩りとしては、人死になんて日常見たいなものですけどねっ、だから悲しみを感じてマモノにドーンってぶつけてやるんです!

 

そうすれば、不思議と力が沸いてきます。今まで救えなかった人たちの分………この一撃一撃に全て込めるんだって。】

 

彼女はその失礼とも言える発言を察したように怒らず、拳を握りしめて語った、救えなかった人たちの悲しみを力に変えてぶつけると言う。その顔は、何処か決意に満ち溢れていた。私と違って本当の強さがあると感じた……

 

「優しいは撤回はしないが一つ追加する、私と違って強いな……貴女は。」

 

私はもう、そう言うことを最初に磨り減らしてしまった。重すぎて持っていたら壊れてしまいそうで捨てて行ってしまったんだ……取り戻すのはもう遅すぎる。

 

【いえ、イリカさんも強いですよ。だって今泣いてますよ……今もいやずっと、堪えてたんですよね?】

 

そうやって、軽く笑って彼女は私を見た。

 

「えっ?」

 

ほうを手で拭う、そこには水のような感触があった……コレがなんなのかわからなかった。

 

「はい、ハンカチ。涙だよ拭いて今まで、悲しかったよね……?大丈夫今は側に誰かいるから。」

 

そうやって、水を拭かれた。この名前を忘れてしまった水は涙と言うらしかった。

 

ポタンポタン、と落ちていく………蛇口のネジが狂ったようだ。止まらなかった、訳がわからなかった。

 

【薫くん………少しそっとしとこうか……】

 

とあまり刺激しない方がいいと彼女は判断して、薫に伝えるが。

 

「……アリスさん、僕はイリカちゃんが泣き止むまで側にいます。多分今必要なのは側にいてくれる人だから。」

 

この出来事は日が沈む前……空がオレンジに彩られる頃、悪夢の予言の始まりの前一時の安息だった。




大丈夫かなぁ……

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