それではどうぞ!
「ふう〜終わった。少し休憩して神界に戻るか」
杖を使って異空間から出た僕はペットボトルの水を飲んで休んでいた。
「腹減ったし果物でも探しに行くか」
僕は立ち上がって森のある方に向かった。すると杖が光り出した。着信があるようで、連絡先を調べた。
「一つは義晴からだ。……なるほど、歪みが少なくなってきたのか」
第一世界の"世界神"河本義晴から着信があり、メールを打って送信した。
「もう一つは……悠から連絡が来てたのか。何の用だ?」
物部悠から連絡が来てたので彼の居るミッドガルがるの映像を見た。すると近くに一体のドラゴンと何人もの少女が戦っている姿を目にする。
「これはリヴァイアサン!この前ボロボロにしたのに何故元に戻ってるんだ!」
僕はリヴァイアサンの姿に驚いた。一週間以上前に戦い、外殻のほとんどを破壊し、肉体にも傷を負った筈が戦う前の姿になっていた。
杖で何があったのか調べると、リヴァイアサンが空間の歪みに触れて元に戻るところを見る。
「なるほど……あの時から歪みがあったのか。マズイな……前より凶暴になってる」
空間の歪みは十二の世界で必ず起きる現象で、神以外の生物が触れれば肉体が変化し、凶暴化する。"世界神"の仕事はその歪みを修正するのが目的だ。
リヴァイアサンを倒した後、韓国に歪みを発見してそっちに向かった時に太平洋で歪みが出てきたと知る。
「瀕死寸前の状態で触れたから戻ったのか……まさか悠は僕に知らせるために連絡したのか」
修行している間、連絡に気付かずにいた。僕は少し悪い事をしてしまった。
(あの時倒していれば今頃は何事もなく過ごしていた筈だったのに……)
僕は杖で悠たちの様子を見た。そこには悠とイリス、そして深月がいた。
悠はニブルの兵たちを追い返し、シェルターに隠れても無駄だと分かり、外に出てリヴァイアサンと戦うつもりのようだ。
深月の方は、リヴァイアサンを倒す手段が無いと悟ったようで、一人戻ってイリスを殺すつもりだ。
それを止めるため、今彼らは喧嘩してるようだ。
「すぐに向かうか」
僕は仙豆を一粒食べて、体力と怪我を回復した。杖でミッドガルの場所を調べて向かった。
「"白"のリヴァイアサン……決着を付けに行くぞ!」
僕は体の中から興奮していた。サイヤ人の血というもので、また戦えるという気持ちを抑えていた。
超サイヤ人でしか太刀打ちできない白い竜とどうやって倒すか考えていた。するとある事を思いつく。
(まてよ……イリスさんがリヴァイアサンのつがいになれば向こうは二体になって連携攻撃をしてくるかもしれない。その方が面白いかもしれないな)
僕はヤバイ事を思い付いた。相手が強ければ強いほど燃え、たとえ自分に不利な状態や、最悪の状況になっても相手が強くなると知ればそうなっても構わない。たとえ人数が多くても同じこと、それがサイヤ人だ。
ベジータもセルが完全体の姿で戦うために未来のトランクスを足止めしたように。
(けどそれだと悠に恨まれるな。それでも戦ってみたいな)
僕はそう考えるが、実践しようとはしない。けど、考えるだけなら自由だから大丈夫だと思った。
◇
その頃、ニブルの兵を追い返し、リヴァイアサンを迎撃しようとしていた俺はイリスを守るため、義妹深月の前にいる。
「悪いな、深月。イリスにはもう先約があるんだよ」
「兄さん……私の出した条件を忘れたんですか?」
深月の眼差しが鋭くなる。
「覚えてるよ。だけど俺はイリスに直接命を託された。たとえ可愛い妹の頼みでも、この役目は譲れない」
「か、かわっ!?こ、こんな時に変なことを言わないでください!命令は絶対です!条件を呑めないのなら、イリスさんの護衛も許可しません!」
頬を染めつつも、深月は真剣な顔で俺を睨んだ。
「だったら勝手にやるまでだ。深月がイリスを殺そうとしたら俺が守る」
「聞き分けのないことを言わないでください!これは私がやるべきことなんです!私が手はもう汚れてるんですから!」
以前と同じ台詞を深月は口にする。だが今の俺は、その理由を知っていた。
「———篠宮都のことか?」
「っ……!?」
息を呑む深月。
「親友だったらしいな」
「…………」
深月は唇を噛み締め、何も答えない。辛そうな深月の表情に心が痛んだが、俺はさらに言葉を続ける。
「どんな思いで深月がドラゴンになった仲間を討ったのか……俺には正直想像もつかないさ。だけど……その子を手に掛けたから、イリスのことも引き受けるなんて理屈は納得できない。篠宮都とイリスを一纏めにするな!」
俺の言葉を聞いた深月は奥歯を噛み締めるが、ついに耐え切れなくなった様子で口を開く。
「だったらしい……他の誰かにやらせばいいんですか?私はそれこそ納得できません。何より、兄さんにだけは絶対イリスさんを殺させるつもりはありません!」
声を震わせながらも、深月は言い返す。
「俺も、深月にだけはやらせるつもりはない」
「……私は決めたんです。兄さんにはもう何も委ねません!三年前のような後悔をしないために!」
俺と深月は睨み合う。
「……俺たち、同じことを言ってるな」
「そうですね……完全に平行線です」
もうこれ以上、いくら言葉を費やしても無意味だとお互いが理解する。
「久しぶりに……やるか?」
「……ええ」
架空武装———ジークフリート。
俺は手に持ったままだったネイガルを地面に投げ捨て、右手に重さのない上位元素(ダークマター)の装飾を形成する。深月も虹の弓を構えた。
深月と戦うなら、ネイガルは使えない。それはたぶん、深月の見たくない俺の姿だから。
ゆえに俺はミッドガルの物部悠として、深月の兄として、ジークフリートで立ち向かう。ジークフリートが対人戦に向いていないのは承知の上だが、やるしかない。
一触即発の雰囲気にイリスが慌てる。
「モノノベもミツキちゃんも喧嘩しちゃダメだよ!今はこんなことしてる場合じゃ———」
「いや、今はそんな場合だ」
「いえ、今はそんな場合です」
俺と深月の声が重なる。
「この頑固な妹は、言葉じゃ止まらない」
「分からずやの兄さんは、こうしないと言うことを聞いてくれません」
俺はジークフリートの銃口を深月に向ける。
深月の弓に、黒い上位元素の矢が番えられた。
「なあ、深月」
「何ですか、兄さん?」
「ずっと言うタイミングを探してたんだが……パンツ、見えてるぞ?」
「———!?」
顔を真っ赤にして、慌ててスカートの裾を押さえる深月。
その隙を俺が見逃すはずはない。
ジークフリートをで撃てる上位元素(ダークマター)の段は、最大三発。使い切れば架空武装は消失し、再度の攻撃にはジークフリートを再生成する必要がある。それは大きな隙となってしまうので、弾は無駄遣いできないが———。
俺はイメージを練りながら、二発分の上位元素を込めた弾丸を放つ。
「監獄弾(ケージ・ブリット)!」
黒い弾丸は深月の手前で物質変換し、小さな鉄檻を形成する。俺の生成量は少ないので格子棒は非常に細いが、何とか深月を包み込む大きさの檻を作ることができた。
鉄檻の重さが加わったことで、深月は地上へ落ちてくる。だが纏っていた風により、深月はギリギリのところで軟着陸した。
「人の下着をじっくり眺めた挙句に不意打ちとは……ずいぶん卑怯な手を使いますね、兄さん。ですがこの程度で私は捕まえられませんよ?」
檻の中で弓を構え、深月は鋭く告げる。
「自壊」
細く小さな矢が檻に突き立った瞬間、鉄格子に亀裂が走り、ばらばらに崩れ落ちた。
「今のは壊れるという概念物質の矢です。打ち込んだ物の状態を無理やり変化させる高等技術ですが、これもリヴァイアサンには切り離しで対処されてしまいました」
淡々と説明しながら、次の矢を番える深月。
"D"としての能力勝負では、勝ち目はない。
だが俺も、最初から鉄檻で深月を拘束できるとは思っていなかった。先ほどの攻撃は、深月を地上へ引き摺り下ろすためのもの。空を飛ばれては流石にどうにもならないため、二発分の上位元素を消費してでも、最初の一手はそこに費やす必要があったのだ。
狙い通り地上へ降り立った深月に向かって、俺は駆け出す。
深月が目を細め、短く告げる。
「粘縛」
放たれた矢が途中で半透明な橙色に変わり、爆発的に広がった。恐らく上位元素を粘着性のある投網に変換したのだろう。
回避は間に合わないと判断した俺は、ジークフリートを構える。
これが最後の一発。
深月は、改めて架空武装を作り出す隙など与えてくれないだろう。だからこの物質変換が、勝負を分ける。
「赤刃弾(レッド・ブリット)」
トリガーを引いて、架空武装に残った上位元素(ダークマター)を全て変換、ジークフリートは消滅するが右手は代わりに硬い感触を掴み取る。
俺が変換したのはナイフ状に圧縮した空気。圧縮率を高めにした刃先は高熱となり、赤い陽炎を生んだ。
要領はテストで用いた空気の弾丸と同じだか、あの時ほどシビアな調整をする必要はなかった。粘着の物質を焼き切れるだけの熱量を得られれば、それで十分だ。
深月の綱を、高熱となった刃で切りつける。
ほとんど抵抗となく、俺を包み込もうとしていた投網はバラバラになった。
深月が表情を険しくする。
「兄さん、これ以上抵抗すると怪我しますよ。一の矢———分かたれる風(フォーク・ウインド)!」
俺を無傷で捕らえるのは無理だと判断したのだろう。深月の目つきが変わった。何か、とっておきの技を使うつもりらしい。
深月が矢を放つと同時に、大気の流れが変わる。空気が収束していく。風の流れから俺はその数を読み取ろうとするが、収束点が多すぎて把握しきれない。
恐らく深月が放ったのは、俺と同じく空気を圧縮した攻撃。
しかしレベルがあまりに違う。凄まじいまでの変換量。
数え切れない風の矢が俺に迫る。
ただでさえ目に見えない攻撃を、全て回避することは不可能に近い。そもそも、あまりに数が多すぎて避けられる隙間もないだろう。
だが人間には無理でも"悪竜(ファフニール)"ならば———。
(この、一瞬だけ!)
「つ!」
俺は奥歯を噛み締めて、再び己を切り替える。意識が加速し、肌が読み取った大気の流れが、視覚情報に加味させる。
今度は、分かる。
撃ち放たれた空気の矢が———見えた。
数は、およそ百。
「ああああああああああああああああああっ!」
矢を躱し、潜り、避けきれないものは熱の刃で切り裂く。
不可視の弾幕を正面から突っ切り、俺は深月に肉薄した。
驚きに目を見開く深月。
俺は空気のナイフを振り下ろし、当たる寸前で霧散させ———。
———深月の頭に、軽いチョップを食らわせた。
「あうっ!?」
「先に相手の頭に触った方が勝ち。俺たちのが作った喧嘩のルールだ。破ったら絶交。兄妹じゃあなくなる。覚えてるよな?」
「……はい」
額をさすりながら深月は頷く。
「イリスのことは、俺に任せろ」
「…………」
しかし、今度は頷かない。兄妹喧嘩のルールを破る覚悟さえあることが、深月の瞳からは感じ取れた。
「納得できないなら、別にそれでいい。けど、今ので分かっただろ?深月は親を止められない」
「それは……」
「どっちがイリスを殺すとか、そんな争いはもう無駄だ。それより最後の足掻きに全力を尽くさないか?」
そう問いかけた時、ポケットの中から通信機が光った。
俺は取り出して確認すると、亮からだった。
『悠?聞こえるか?』
「ああ聞こえるぞ」
『悪いな、さっき着信に気付いた。状況は把握してるからすぐに着く』
「分かった。まだリヴァイアサンは来てないから大丈夫だ」
俺は亮と通話して、深月は誰と連絡しているのか分からず、話掛けてきた。
「兄さん?誰と話してるんですか?」
「ああ、ちょっとな」
悠は説明しようとすると突如光が現れた。深月とイリスは驚き、警戒した。
徐々に光は消え、そこには自らを神と名乗る少年、大島亮が現れた。
「待たせたな悠」
いかがでしたか?次回"白"のリヴァイアサン戦、決着がつきます。お楽しみに!