ファフニール VS 神   作:サラザール

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どうも、サラザールです。投稿から一ヶ月が経ちました。それではどうぞ!


クラスメイト見習い

朝の六時、僕は砂浜で修行をしていた。"破壊神"の服と靴に十トンの重さを追加して、気のコントロールをしていた。

 

毎朝必ずやっているので、どんどん強くなる。仕事が無い時は読書か修行をしていることが多い。

 

本は夜に読んでいるのがほとんどで、昼間は修行をしている。

 

「もう少しパワーを上げるか」

 

僕は"カチカチン鋼"を使って、亀仙人の萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)を練習している。

 

体内に流れる微量な電流を互いに合わせた手の平に集中させ、腕を突き出すと共に放射する。

 

被弾した相手は空中に浮遊させられることによって四肢の自由を奪われ、やがては感電死してしまうという、非常に危険な技だ。

 

原作で初めて披露したのは天下一武道会の決勝で悟空に追い詰められた時に使用した。

 

ドラゴン相手なら大量のエネルギーが必要で、殺す事も出来るがその隙に悠たちがダメージを与えることができるため、サポートの練習をしている。

 

周りに気づかれないようにシールドを何重にもかけているため、ミッドガルは僕がここで修行してることは知られてはいない。

 

ところが、人が近づいて来ていることに気が付いた。足音から聞いて、ミッドガルの学生のようだが、気を少し感じると悠と同じくらいの力を感じる。

 

どうやら相当な使い手のようだ。スポーツの得意とかそういうレベルではない。

 

格闘技を習っていると思われる。

 

僕はすぐに修行を辞め、シールドを消した。

 

深月さんからはまだ生徒たちと接触してはいけないと言われているので、体を透明化して、すぐに深月の宿舎に戻った。

 

一分して、ジャージを着ていて、ボーイッシュでさっぱりとした少女アリエラ・ルーがランニングをして、砂浜を見ると足を止めた。

 

「あれ、さっきまでここに人の気配があったような……」

 

アリエラは僕の存在に気付いていた。

 

やはり彼女は只者ではないようだ。

 

「気のせいかな」

 

アリエラは再び走り出した。違和感はあったようだが、彼女は気配を探れるようで、人がいないと分かるとランニングを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、亮さん」

 

「おはよう、深月さん」

 

僕は自分の部屋に戻ってシャワーを浴びて、昨日届いた制服に着替えて三階の食堂に向かった。

 

深月は僕よりはやく着いていた。

 

「もう少し待ってください。七時になったらオートメイドが用意してくれますので」

 

「了解」

 

深月は席に座ってパソコンをカタカタ打ち込んでいた。

 

どうやら僕が外で修行していたことはバレていないようだ。

 

彼女はミッドガルの生徒会長であるので、仕事をしていると思われる。

 

少し時間が経つと悠が食堂に入って来る。

 

「おはようございます、兄さん」

 

「おはよう、悠」

 

「おはよう、深月、亮」

 

僕と深月は挨拶をすると悠も返してきた。

 

丁度七時になり、オートメイドが食事を持ってきた。

 

「「「いただきます」」」

 

僕たちは食卓に並べられた料理に手を付ける。

 

「今日からだな、亮」

 

「ああ、学生生活を送るのは六年ぶりだよ」

 

「そうなんですか?神々の世界にも学校があるんですか?」

 

深月は僕よりさんまの塩焼きを箸でつまみながら言う。

 

「言ってなかった?僕は元々他の世界の人間だよ」

 

「えっ!?」

 

「なっ!?初めて聞いたぞ!どうやって神になったんだ?」

 

悠は驚き、神になった経緯を聞いた。

 

「まあ、色々とあってね。いつか説明するよ。それは置いといて、僕が暮らしてたのは第一世界。ここと対(つい)になる世界だよ」

 

「対?どういうことですか?」

 

「世界には十二存在してるのは知ってるよね。対とは言わば裏と表のようなものだよ。例えば第一とこの第十二世界、第ニと第十一世界のように足して十三になるのが対になっていて、双子のように同じ文化の町や人間がいるんだ」

 

「そっ、そうなのか」

 

悠と深月は驚いたまま、箸が止まっていた。

 

「では、亮さんがいた第一世界では兄さんや私のように似ている人もいるんですか?」

 

「いると思うよ。対とはそういうものだから」

 

僕は食事を進めていた。普通こんな訳の分からない話を信じてくれる人はいないが、悠と深月は神の存在を信じてくれている。

 

僕の正体を知るのは悠と深月、シャルロット学園長とマイカである。

 

他は皆、特殊な"D"とされている。

 

「不思議ですね……神様が近くにいるなんて、今でも信じられませんがこれは現実ですので受け入れるしかないありません」

 

「ははは、今でも信じてなかったのかよ」

 

こうして朝は雑談をしながら食事を続けた。

 

 

 

 

 

「……であるからして、彼も私たちと同じ"D"ではありますが、我々とは違って特殊な力も持っています。そんな彼に多くの疑問を抱く方もいると思います。しかし、彼はこの五年間で"青"のヘカトンケイルや"紫"のクラーケン、そして"白"のリヴァイアサンなどのドラゴンと戦っていました。今回のリヴァイアサン戦では、我々に少なからず協力してくれました。彼を受け入れる事もまた———」

 

ここは島の中央に位置する学園の体育館。全校生徒が整列し、壁際には教職員が並んでいる。その全ての視線が向けられた壇上で、深月はマイクを通して皆に語りかけていた。

 

僕はその隣で後ろに手を組んで立っている。

 

「———身内である兄の紹介の時と同様、不安に思われる事は多いと思います。ですので私は皆さんの生活を守るために、全力を尽くとお約束いたします。勿論兄と同様、問題を起こした場合はより厳しい処分を———」

 

今行われているのは、僕のミッドガル転入に関する説明を行うための全校集会だ。

 

食事が終わったあと、僕は深月さんと一緒に非常用階段へ登校した。集会があるまでは他の"D"と接触してはいけないという事で悠は一人でいつも通ってる道で通学した。

 

悠のミッドガル転入の集会を杖から見ていたが、やはり彼女には信頼と尊敬があることが雰囲気だけで分かる。

 

(これが深月さんの力か)

 

僕は深月さんが何故生徒会長になったのか改めて知った。

 

説明している時間は暇なので、周りを見渡した。数はそれほどではないが、気を探ると生徒は六十六人だ。

 

教職員の数は二十人、合計で八十六人いるということになる。

 

悠がいる列を見つけると数日前にリヴァイアサンのつがいになったイリスと金髪の少女、ショートカットの本を持った少女、パソコンを持った赤毛の子、茶髪のボーイッシュな少女、六人が整列していた。

 

僕が配属されるのはブリュンヒルデ教室だと聞いている。深月を含め、悠もブリュンヒルデ教室だと今日聞いた。

 

「———皆さんが彼を温かく迎えてくれる事を私は期待しています。そして彼にも我々の誠意と信頼に応えてる事を求めていきます。ですからどうぞ彼を、よろしくお願いします」

 

深々と頭を下げ、演説を締めくくる深月。すぐに大きな拍手が体育館中に鳴り響いた。

 

「さあ、亮さん。一言お願いします」

 

鳴り止まない拍手の中、深月が大和にマイクを譲る。

 

僕は普段通りの態度だが、集会なので偉そうにせず敬語で話した。

 

「どうも、大島亮と申します。精一杯頑張っていきますのでよろしくお願いします」

 

すると、拍手はより一層大きくなった。「よろしくねー!」「私たちがついてるよ!」「かっこいいー!」などの温かい歓声が飛ぶ。

 

やはり深月の皆を引き付ける演説と悠が来たということで少しは変わってきたと思う。

 

僕と深月は一礼し、舞台の袖に引っ込んだ。

 

「これで兄さんと同様、より好意的なものになるでしょう」

 

「そうか……それなら少しは楽になるよ」

 

「そうですか?普段と変わりないと思いますが……」

 

「バレてたか、実は全然緊張してなかった」

 

正直なことを言うと深月さんは息を吐く。

 

「あなたって人は……さっきも言いましたが、問題は起こさないでください。あと———」

 

深月は忠告をしてきた。

 

「これから亮さんが配属される教室は問題児揃いです。私の言葉もどれほど届いたのか自信がありません。受け入れてもらうには亮さん自身の努力が必要ですので、くれぐれも正体を明かさないようにお願いします」

 

「分かってるよ。けど、神だと言っても信じてくれないんじゃない?」

 

「貴方の力を目にすれば信じてしまいます。貴方は特殊な"D"として紹介してますので、決して軽率な言動はやめてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が予想していた通り、配属されたのは深月と同じブリュンヒルデ教室だった。

 

狭い教室の中は机が3×3で置かれている。

 

原作を知ってるのでみんなのことは少し分かっているが、やはり深月の言う通り問題児のようだ。

 

みんな僕を興味津々に見ていたが、金髪の少女は僕を睨みつけるように見ている。

 

「では、改めて紹介させていただきます。彼は大島亮さんです。年齢は十六歳。出席番号は配属順ですかで九番ということになります」

 

「よろしく」

 

深月の紹介と共に僕は頭を下げる。

 

すると金髪の少女がさらに眼差しを鋭くして立ち上がった。

 

「あなたが一人でドラゴンを倒してきた方なのですか?」

 

僕に向かって質問してくる。

 

「まあね、正確に言えば戦ってきたの方が正解かな」

 

「そうですか……ですが、わたくしはあなたを認めたわけではありませんわ」

 

金髪の少女は言ってきた。

 

確かに男がミッドガルに来ることは誰かしら不満を持つ者がいるだろう。

 

「貴方はなぜ、ドラゴンと戦っているのですか?」

 

「ん?理由か?」

 

金髪の少女は質問してきた。

 

「そうだね〜、修行かな?」

 

「修行ですか?」

 

「ああ、自分自身が強くなりたいからかな?」

 

これに関しては神の仕事にも関係しているので、本当のことは言えなかった。

 

「まあ、純粋に己を鍛えたいからだよ。でも、ドラゴンの進行上に街があったから、被害を出さないように戦ったのも理由の一つだけどね」

 

「そうですか……」

 

金髪の少女は少しは納得してくれたようだ。

 

しかし僕は神であり、"D"ではない。僕のことは特殊な"D"としてあるので、本当は場違いである。

 

「ですが、わたくしはまだ貴方を信用したわけではありません。そもそも本当に"D"なのですか?紹介では特殊な力を持っていると聞きましたが、その力しかないんじゃないですの?」

 

「ん?証拠を見せろってことかい?」

 

僕が聞き返すと金髪の少女は首肯する。

 

「はい、今ここでお願いしますわ。皆さんも興味がおありでしょう?」

 

金髪の少女が呼びかけると、みんなも頷く。

 

「深月さん、いいのか?」

 

「構いません。ですが、単純な物質変換をお願いします。あと、その他の力も周りに被害が出ないようにしてください」

 

「はいよ」

 

許可をもらい、僕は手に力を込めた。

 

上位元素(ダークマター)を作り出すのは初めてだが、僕は"世界神"、創造と破壊を司る神様だ。物質を作ることなど朝飯前だ。

 

すると、野球ボールほどの黒い球体が手のひらに生成された。

 

ざわっと教室内がどよめく。

 

僕は生成された上位元素を練り上げて日本刀を作った。

 

「こんなものか、初めて作るがまあまあかな」

 

周りを見渡すと呆然としていた。やはり、男で上位元素を生成するのは珍しいのだろう。

 

「それ……剣、ですわよね?完全に物質化した剣に見えるのですが?」

 

「まあね、でもこんなので驚かれるとは思わなかったよ」

 

「おっ、驚いてなんていませんわ!まあまあですわ!」

 

「亮さん、このような危険物を作っていいとは許可してはいません。ですので没収します」

 

横から深月が僕の日本刀を取り上げた。

 

「失礼、じゃあ見せてあげるよ。僕の力を」

 

そう言って僕は気をほんのわずかに上げ、手に力を込めた。

 

すると今度はサッカーボールほどの青い球体を作った。

 

「「「「「「!!!」」」」」」

 

悠以外のみんなはさらに驚いた。奇妙な球体に注目し、僕は説明した。

 

「人の体の中に流れるエネルギーがある。それを"気"と言う。これを操作して飛行することや、凝縮、あるいは放出して気功波として放つことができる」

 

「「「「「「「……」」」」」」」

 

皆は絶句していた。一見ひ弱に見える彼は本来人間ができる芸当ではないことをしている。

 

「この力は誰にでも備わっているから、修行をすればできるよ。さらに、この"気"を練り上げて武器を作ることができる。こんな風に」

 

僕は作り出した気弾を右腕に纏わせる。すると、"気"は長いサーベル状になった。

 

あまり力を見せても返って怖がらせるだけだと思い、すぐにやめたが遅かった。

 

「まあ、こんなものかな?中国の山奥で修行した甲斐があった……ん?」

 

教室内は静まっていた。やはりさっきのでやめていればよかったと後悔した。

 

(しまった……やりすぎた。どうしよう……)

 

僕はどうしようか迷ってた。するとある漫画を思い出す。確か海賊の漫画で主人公の祖父がみんなが驚くことを口に出してしまい、その後に言った言葉である。

 

「じゃっ、じゃあ……今の、見なかったって……ことにして?」

 

僕は目を逸らして言ったが深月が突っ込んできた。

 

「出来るわけないじゃないですか?」

 

「いっ、いや〜やりすぎたから上位元素(ダークマター)のところまで見たってことにならないかな?」

 

「なりませんよ。でも、今のはともかく、これで彼が"D"であることは証明できました」

 

その一言でみんなも我に返ったようだ。でも、避けられるかもしれない。

 

それでも挫けずに頑張るしかない。

 

「ホームルームの残り時間も少ないですし、簡単な自己紹介に移りましょう。私は飛ばして、出席番号順にお願いします」

 

そう言って深月は金髪の少女を見た。彼女はまだ不服そうな表情を浮かべながらも立ち上がる。

 

「出席番号一番、リーザ・ハイウォーカー。十六歳ですわ。わたくし、まだ納得したわけではありませんが、あなたをクラスメイト見習いにしてもいいと思ってますわ」

 

「クラスメイト見習い?」

 

僕は聞き返す。

 

「あなたはわたくしたちのクラスメイトを守ってくださいました。そのことだけについては評価して差し上げますわ。ですが、簡単にクラスメイトになれるとは思わず、努力してください」

 

彼女はそう言って席に座る。

 

「ああ、ありがとう、リーザさん」

 

「なっ!あなたにお礼を言われることはしてませんわ」

 

彼女は頬を染める。なんだかいじりたくなってきた。

 

次に立ち上がったのは、本を持ったショートカットの少女。

 

「出席番号二番、フィリル・クレスト……十五歳。趣味は読書です。よろしく」

 

「あっ、こちらこそ」

 

ぺこりと小さくお辞儀したので僕もつられてお辞儀した。

 

フィリルと名乗った少女は静かに着席した。

 

続いてボーイッシュな少女が起立する。

 

「ボクはアリエラ・ルー。十五歳。出席番号は五番。よろしく」

 

「よろしく(ん?五番?)」

 

深月を飛ばしても一人ない抜けている。確か四番は篠宮都という少女だ。

 

原作を知っていても、読んでないと忘れるものだ。

 

次の生徒はパソコンを机の上に置いている赤毛の少女。

 

どうやら、飛び級した天才のようだ。

 

「ん」

 

彼女は小型の携帯端末を取り出し、僕に画面をみせる。

 

「出席番号六番。レン・ミヤザワ十三歳。年下だからって舐めるなよ……お前の十倍、頭はいいんだからな……飛び級してるのか」

 

「ん」

 

レンは頷く。

 

「舐めてないよ。けど、調子には乗らないようにするよ」

 

どんどん上手くやっていける自信がなくなる。

 

その後に立ったのは親友の悠だ。

 

「物部悠だ、……と言っても知ってるか」

 

「ああ、よろしくな悠」

 

悠と同じクラスになれて安心した。同性が一人でもいると楽になる。

 

「彼のことを知っているのですか?」

 

リーザは聞いてきた。

 

「まあね、半年前に知り合ってね」

 

僕はリーザの方を向いて答えた。すると、深月が横から入ってきた。

 

「亮さんは兄さんのとこを知ってましたね。亮さん、不純異性交遊はやめてくださいね」

 

深月さんがいきなり注意してきた。

 

「しないよ……ていうか、そんなことする人がいるのか?」

 

「ええ、います」

 

「……なるほど、悠のことか」

 

「そうです」

 

確か悠は原作でどんどん変態化したことを思い出した。

 

「そ、そんなことは……無いかもしれない」

 

周りが静かになった。

 

「何かしたんだ」

 

「疾しいことはしてないぞ」

 

「いや、親友の勘で分かる。お前、か弱い少女を襲っただろ?」

 

「ち、違う!たしかに押し倒してしまったが……あ」

 

悠は墓穴を掘った。すると周りは悠に冷たい眼差しを向けた。

 

隣の銀髪の少女は頬を染めていた。僕はこのクラスにいると思い出した。

 

「大丈夫だよ。僕は聞かなかったことにするから」

 

「あ、ありがとう」

 

悠はそう言って席に座った。まだみんなからの視線はあり、彼は目を逸らした。

 

隣の銀髪の少女が立ち上がって自己紹介をした。

 

「あたしはイリス・フレイア……十六歳。出席番号は七番。リヴァイアサンの時は守ってくれてありがとう、オオシマ」

 

「守ったって言うか……まあ、戦ったのは事実だけど。けど、よろしく」

 

彼女はそう言って彼女は席に座る。

 

こうして僕の学園生活が始まった。




いかがですか?次は第一章最終回です。お楽しみに。

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