一日の朝
六年前、僕はトラックに引かれそうになった少女を助けたが、跳ねられて死んでしまった。
しかし、助けた少女は世界の頂点に君臨する神であり、僕は一年間修行して一つの世界を管理する神となった。
世界は十二存在しており、僕は第十二世界を担当している。階級は"世界神"。
文明の調査や世界で起きる空間の歪みの修正、そして世界を脅かす存在を排除するのが仕事である。
神になってから五年が経ち、強さはドラゴンボール超の"破壊神"ビルス と同等の力を手に入れた。
いろんなことがあり、僕は書類にして神官王に提出しに来たが、要件はそれだけではない。
「そうですか……そんなことが」
「はい。ですのでここに来れる時間が……」
僕は神官王にミッドガルで暮らすことを伝えるために神界に来ている。
リヴァイアサン戦から二週間が経とうとしていた。僕は悠たちと協力して倒したが、深月との約束でミッドガルの保護を受けることになった。
僕は神様であり、"D"ではないので隔離かと思ったが、ドラゴンを倒した功績で入学という形になった。
"世界神"の正体を知るのは悠と深月、シャルロット学園長と秘書のマイカ・スチュアートである。ミッドガルの教職員や他の"D"には特殊な力を持った"D"ということになっている。
ミッドガルの学生として、島を出ることはできないが神界に行くことは許可をもらった。
神界と下界の時間帯が違うので僕は神官王にミッドガルで主に生活を送ることを伝えた。
神官王は納得してくれて安心した。
「構いませんよ。第十二世界での仕事はしっかりやっているようですし、それに絶対神ゴッド様も納得してくれることでしょう」
「ありがとうございます」
"絶対神"ゴッド、全ての世界の頂点に君臨する最高位の神様で僕が助けた少女だ。世界そのものを作り出すことや、一瞬で消す事もできる存在である。
あの方よりも上は存在しない、全王と同じくらい偉く、無邪気な性格の持ち主。
「神の存在は知られても問題ありませんので、思う存分楽しんでください」
「はい、それでは」
僕は部屋を出て、休憩室に戻って行った。
階段を降りると第八世界の"世界神"パトリック・ホワイトが上がってきた。
「亮、聞いたぞ。下界で暮らすそうだな」
「ええ、いろいろとありまして」
僕は立ち止まってパトリックと話した。
「それはそうと、八重ちゃんには話したのか?」
「いいえ、まだ話してません」
下界で暮らすことは他の"世界神"にも話したが、八重だけはまだ話していなかった。
「そうか……今からでも話せば?」
「そうですね。八重さんが何処にいるか分かりますか?」
僕は八重の居場所を聞いた。
「仕事から帰ってきてるから多分休憩室にいると思うよ」
「ありがとうございます」
場所が分かり八重のいる休憩室に行った。
休憩室は十一階にあり、世界神専用となっている。
扉を開けると八重が左手にペットボトルの水を飲んでいた。
「亮ちゃんおつかれ」
八重は明日に座って本を片手に読んでいた。
「お疲れ様です。八重さん、お話がありまして……」
僕は下界でのことを八重さんに話した。
◇
———ズキン。
左手の甲に鋭い痛みが走り、意識が眠りの淵から浮上する。
瞼を開けると、窓から差し込む朝日が容赦なく瞳へ飛び込んできて、俺は目を細めた。
虫にでも噛まれたのだろうかと、俺は左手の状態を確かめる。
左手の甲には奇妙な形のアザがある。これは上位元素(ダークマター)生成能力者———通称"D"なら、必ず体のどこかに持っている竜紋だ。アザの大きさは上位元素生成量に比例しており、俺の竜紋はひどく小さい。
そんな"D"とては落ちこぼれの証明である小さな竜紋の傍に、細いミミズ腫れが出ていた。
寝ている間に、どこかで傷つけてしまったのだろう。
傷は痛痒いが、引っ掻かないように我慢して、その手で枕元を探る。
指先で目覚まし時計を探り当てると、顔の前に持ってきて時刻を確かめた。
午前六時十分。
普段は六時半にアラームをセットしているので、いつもより少し早い目覚めだ。
しかし二度寝がしたくなるほど、眠気は残っていない。
「……たまには早起きもいいか」
俺はベッドから降り、洗面所へ向かった。鏡に見慣れた自分の顔が映る。
寝起きのせいか、普段より目つきが悪くおもえた。
仏頂面で鏡の向こうから俺を睨みつけてくる少年の名は、物部悠。年齢は十六歳。階級は少尉。
十三歳のときに"D"として身柄を拘束され、軍———ニブルに配属。
三年間、特殊部隊スレイプニルの一員として戦地を転々とした後、つい一ヶ月前にミッドガルへ転属になった。
いや——-正しくは転入か。
ここミッドガルは学園だ。日本の遥か南に位置する無人島を改造して作られた、"D"たちの自治教育機関。物部悠は今、ミッドガル学園の生徒として生活している。
顔を冷たい水で洗うと、少しだけ表情が引き締まった。
俺は部屋へと戻り、学園の制服へと着替える。
———ドンッ!
ズボンのベルトを締めたとき、頭上から大きな音が響いてきた。
「何だ……?」
俺は天井を見上げて呟く。この真上は、妹の深月が使っている部屋だ。
心配になり、俺は手早く着替えを済ませて部屋を出た。吹き抜けのエントランスホールから二階へと上がり、深月の部屋の前までやってくる。
「おい深月!何かあったのか?」
「え?に、兄さん?だ、大丈夫です、だから———きゃあっ!?」
扉の向こうから悲鳴と共に、もう一度大きな音が鳴り響いた。
「深月!?」
俺はとっさに扉を開ける。
この宿舎全体が深月の所有物であるという油断からか、深月は部屋に鍵を掛けないことが多い。
勢いよく部屋の中へ飛び込むと、そこには予想外の光景が広がっていた。
散乱する色とりどりの下着と、それに埋もれている裸の妹。傍にはタンスの引き出しがひっくり返っている。
深月は痛そうに頭を押さえていたが、俺が部屋に入ってきたことに気が付いて顔をあげる。
「な……な———」
大量の下着と、長く艶やかな黒髪の隙間から覗く白い肌が、羞恥に赤く染まる。
小ぶりだが形のいい胸を周囲の下着をかき集めて隠し、深月は俺を睨んだ。だが頭に縞柄のショーツが載っているので、いまいち迫力がない。
俺は腕を組み、部屋の様子を改めて確認する。
「えっと……タンスの上の段から下着を取ろうとしたら、バランスを崩してひっくり返ったって感じか?しかも二回も」
「な、何を冷静に状況分析してるんですか!二回目は引き出しを元に戻そうとしてたところに、兄さんが来たせいです!というか、早く出てってください!!」
学園の生徒会長である深月は、厳しい口調で命令する。だが俺はその言葉に従わず、下着に埋もれた深月に近づいた。
「悪い、深月。出て行く前に、少しだけ見せてくれ」
「え……?に、兄さん?見せるって何を———」
生まれたままの姿で俺を見上げる深月。その前に膝を突き、深月の長い黒髪を手で搔き上げる。
「あ……兄さん、ダメ、です……そんな———」
深月は顔を真っ赤にして小さく首を横に振るが、それ以上の抵抗はしない。
俺は深月の頭を抱きしめるように引き寄せ、長い黒髪を指で梳き、掻き分け、その内側を探る。
「んっ……私たち、まだ……約束が———だから兄さん、待って……」
身をよじり、熱い吐息を漏らす深月。
俺の指が探していた微かなふくらみに到達する。びくんと、深月が体を震わせた。
「———痛むか?出血はないが、少し……腫れてるな。ちょっと待ってろ、氷水を作ってきてやるから」
そう言って俺は深月から離れる。
「……え?どういうことですか、兄さん?」
ポカンとした顔で深月は俺を見上げた。
「どういうって、傷を確かめたんだよ。頭打ったんだろ?」
「はい……あ、ああ、そういうことだったんですね。私、てっきり———」
恥ずかしそうに顔を伏せる深月。
「てっきり?」
俺が聞き返すと、深月は耳まで真っ赤にして首を振った。
「な、何でもありません!」
ぷいと顔を背ける深月。
俺はその反応に首を傾げつつ、氷水を作るために台所へ向かったのだった。
◇
「……たまにしか来れなくなるなんて……」
僕は八重に事情を話した。すると八重は寂しいのか頬を膨らませた。
「その……なんで拗ねた顔をするんですか?」
僕は理由を聞くと、八重さんは怒った表情でこっちを見た。正直可愛らしい。
「だって下界と神界の時間の流れは全然違うんだよ!亮ちゃんと会えないのは寂しいよ」
「す、すいません。でも、出来るだけこっちに来ますから。勘弁してください」
僕はなんとか納得してもらおうと思ったがそういう訳にはいかなかった。
僕は仕事で八重といることが少なく、たまに他の世界の調査で一緒になると、満遍の笑みを浮かべる。本当に可愛らしいので、見惚れてしまう。
「まあ、仕方ないか。そうなってしまったんだから」
何とか納得してくれた八重さん。
「でも、向こうの時間帯での夜に来てよね。そうじゃないとみんなにも会えないから」
「分かりました。何とかやってみます」
「じゃあお願い、あと———」
八重さんは突然頬を赤く染めて言ってきた。
「敬語、使わないんじゃなかった?」
「……あっ、そうでしたね」
そういえば、そんな約束をしたことを思い出す。
確か仕事で八重さんの担当する世界で悪の科学者"ドクター"チャンが世界を征服するため、研究所に潜入している時に約束したのだ。
「あっ、また使った。約束でしょ?」
「ご、ごめん。……そうだったね八重さん」
「そうそう、そんな感じよ。八代さんはともかく、同い年の子まで使ってるからもうちょいため口でもいいと思うよ」
「そうだね、気をつけるよ」
八重さんは僕がここに来てから構ってくれてる。最初は先輩後輩の関係だったが、正式に'世界神"になってからフレンドリーに話してくる。
「それじゃあ食堂に行こ?」
「ああ、そうしよう」
僕たちは休憩室を後にした。すると八重さんは僕の右手を自分の左手に絡ませて握った。
「ちょっとだけでもいい?」
頬を染めた八重さんは上目遣いでお願いしてきた。
「っ!? い、いいよ」
八重さんの上目遣いに見惚れてしまい、お願いを聞い入れ、食堂に向かった。
いかがでしたか?次も楽しみにしてください。