All I Need is Something Real   作:作図

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11. Makes an Incredible Shot

 相手からの険しい猛攻が続く。先程から連続で点を決められてしまった事で、試合の流れは完全に相手に向いてしまっていた。

 

 なんとか凌ぐようにラリーを続けるも、押しきられるように点差はどんどんと縮まっていき、現在の点数は19対17。俺達はあとたった二点で勝利ではあるが、もちろん相手も易々と取らせてはくれない。

 

 そんな非常に厳しいこの局面で、満を持してサーブ権が俺に回ってくる。

 

「ここでなんとか一点は決めたいところだな…。由比ヶ浜は引き続き、三浦を狙わずに極力葉山の方に打ってくれ」

 

「わ、わかりましたっ!」

 

 恐らくこの試合で俺がサーブを打つのはこの二本が最後になるだろう。そして、俺のサーブが終われば次のサーバーは三浦。できることならなんとか一点と言わず、ここで試合を決めてしまいたい所だ。

 

 理想をいえば、始動から確実に相手にプレッシャーをかけていける、雪ノ下が放つようなジャンピングサーブが俺にも打てればいいのだが、残念ながらテニス未経験の俺にはそこまでの技量はない。

 

 それでも、自分にできる最高のサーブを打つんだ…。俺はその思いを力に変えるように、ボールを真上に高く高く上げて、自身の後ろからラケットを振り下ろし、勢いよくボールを叩きこんだ。

 

 流石に雪ノ下程の速さを持った球にはならなかったが…。しかし、それでも充分過ぎるほどの威力を秘めた渾身の打球が、葉山の姿を確実に捉えて一直線に飛んでいく。

 

「なっ!」

 

 運良くも足元近くに飛んだためか、葉山は上手く対応することができない。しかし、未経験でありながら葉山もかなりのやり手。なんとかボールを打ち返してみせる。

 

 辛うじて打ちかえされた打球は、ふわりと空に舞い上がり、ゆっくりと緩い楕円を描くように由比ヶ浜の立つ場所にダイレクトに飛んでいく。

 

 ――チャンスボールだ。

 

 それを好機とみた由比ヶ浜は、すぐさまボールの降下位置に駆け込み、やんわりと落ちてきたボールを勢いよく葉山の方向に叩きつける。フォームこそ雑ではあったが確かな威力のこもった球に、バランスを崩していた葉山は今度こそ対応できない。この時ばかりは完璧に決まったと、俺達はそう疑わなかった。

 

 だがなんと、ここで葉山の後ろに三浦が走り込んでいた。あまりにも鬼気迫ったその表情に会場そのものが息を呑む。

 

 そして、不安定な姿勢であることもおかまいなしに、由比ヶ浜の足元。埋めようのない空白部分に、大地を抉りとるような強烈なボールをねじこんでくる。

 

「きゃっ!」

 

 三浦のカウンターショットの球速は非常に速く、彼女は驚きと共に、ほとんど反射だけでそれを打ち返す。首の皮一枚でラケットのふちに当たりはしたものの、打ち上げられたその打球は弱々しい軌跡で揺れている。

 

「悪いけど、ここでもう一点決めさせてもらうし!」

 

 三浦が嬉々として駆け出すのが見えた。蛇の如き雄叫びをあげて、三浦が落下地点に入る。彼女がラケットを打つ体勢を整えたその時。

 

 ひゅうっ、と。一陣の風の音が聞こえた。

 

 突然の強風の影響で、高く上がった打球は強く煽られ、本来の行き先を見失ってしまったかのように遠く遠くに流されていく。三浦の位置からは大きく外れて、俺も、由比ヶ浜も、いや誰しもが予想だにしないような箇所にポテンと落ちて転がっていく。

 

「すげえええええ!!!!」

 

「なんか魔球みたい!?」

 

 一拍置いてテニスコートの周りからヒートアップした群衆の声が聞こえ始める。理解不能な軌跡を描き、見るもの全てを翻弄したそれは、誇張なしに魔球そのものだったといっていいだろう。

 

「な、何はともあれやったね先輩! あと一点!」

 

「あ、ああ! 思ってもない展開だが、これで王手だな」

 

「ふ、ふん。確かに今のはあーしらも驚いたけど、こんなマグレが何回も続くと思って貰っちゃ困るし」

 

 確かに三浦の言うとおり、今のはマグレそのものだ。当然何回も続く訳などなく、言うなればただの神のきまぐれ。

 

 今こうして騒いでいる人も、まさかあの打球が由比ヶ浜が狙って起こしたなんて思っている者など誰一人としていないだろう。もちろん事実としてそうではないのだから。

 

「…でも、あのマグレが『意図して起こせる』と言ったら?」

 

「比企谷?」

 

「ヒッキー?」

 

 だけれど、比企谷だけは違っていた。この大勢の中でたった一人。彼はあの奇跡の正体に手が届いていたのである。

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 突拍子もなく告げられた言葉に、俺は暫し困惑した。だってそうだろう。そもそもいつ風がくるかなんて分からないし、第一狙うものでもないはずだ。そう思ったのは俺だけではないらしく、皆も一様に不可解な面持ちになっている。

 

「さっき、由比ヶ浜のボールを流した風はおそらく、昼下がりの総武高校付近でのみ、発生する特殊な潮風だ」

 

「え、何それ初耳。そんなのあんの?」

 

 俺は当然その事を知らなかったが、由比ヶ浜も初耳だったらしい。どこか、彼はちょっとだけ誇らしげな表情になる。

 

「まぁ普通は絶対知りようがない。俺も一年間、一人あの場所と昼飯を共にしたことで掴めた事実だからな」

 

「そ、そうなんだ…。ヒッキー…。あそこでずっと一年間一人で食べてたんだ…。そりゃクラス行ってもいないわけだよ…」

 

「? 何か言ったか?」

 

「う、ううん! 何でもない! 全然! ぜひ続きをどうぞって感じ?」

 

「お、おう…。ま、まぁここからが本題だ。といっても思いつきの提案なんだが…。あの潮風を利用するって言うのはどうだろう?」

 

「利用する? 風に打球なんてそもそも乗るものなの? もし比企谷君の言うとおりに乗ったとしても、コート外に出てしまうことも考えられるわ」

 

 比企谷の提案はなかなかにエキセントリックな物だったが、雪ノ下は感情論で即否定することはせず、あくまでも建設的に、考えられるであろういくつかの問題点を提示する。そんな反応が出ることは想定していたのだろう、彼はそのまま言葉を繋ぐ。

 

「あの潮風はこの時間帯だけ、この隅のテニスコートだけに吹く特別に強いものだ。さっきも見たと思うが、軟式テニスのボール位なら造作もなく持っていってくれる。そして、この風はここのコートを中心に渦巻くように吹きこんでいるから、おそらく、外には滅多に出ない」

 

「ヒッキー…。それ本気…なの?」

 

「ああ。だからタイミングさえ完璧に合いさえすれば、適当なフライを打つだけで、あの変則魔球は容易に再現出来るはずだ」

 

 疑い交じりのその問いに比企谷は大きく縦に頷いてみせる。彼は先程の奇跡のショットを必然に昇華させる術を持ち合わせているというのだ。

 

「なるほどな…。でも肝心の風のタイミングはどうするんだ」

 

「もしこの案に乗ってくれるなら、タイミングは俺が合図なりを出そうと思ってます。つか多分俺しか分からないっすよ。……いや、まぁでもこんな突拍子の無い話、普通は信じられないっすよね」

 

「いいや、面白い案だと思うよ。試してみる価値は充分にあるんじゃないか。ぜひその案で行ってみよう」

 

 風を利用するなんて、とても大胆かつユニークな面白い作戦だ。先程のような球をもう一度打つことに成功したなら、間違いなくこの試合を決めることができるだろう。

 

 だが、それを彼自身が提案したにもかかわらず、比企谷は俺の返答をきくやいなや、急にしどろもどろになる。

 

「ま、マジっすか? 自分で言っておいてあれっすけど、こんな雲を掴むような話、すぐに信じますか普通?」

 

 …なんだ、そんな事か。そんなの答えは決まっている。俺は少しの間も置かずに即答した。

 

「もちろん信じるよ。一ヶ月も一緒にいたんだ。比企谷が何の根拠も無しにそんな提案はしない事くらい俺にだって分かる。それに生憎、突拍子のない話には慣れてるんだ」

 

「………やっぱ先輩バカっすよ。そんなホイホイ人の事信じてたら、いつか騙されて痛い目みますって。第一、失敗したらどうするんすか?」

 

「失敗したらその時はその時だ。大丈夫。どーんと任せておけ」

 

「というか、あんなに自信ありげに提案してきたのに、ちょっと今更ではないかしら? なに、成功すればいいだけの話よ」

 

「…まぁ、確かに」

 

「そうそう。それにあたしももちろん頑張るよっ! 初めて優美子に勝てるかもだし…、第一、さいちゃんのためにも負けられないしっ!」

 

「……よし、分かった。俺が例の潮風がくるちょっと前に右手で合図を出します。先輩は合図を見たら、すぐに上に思いっきり球をぶち上げてください」

 

「了解した。作戦開始、だな!」

 

 

 

>比企谷とのほのかな絆の深まりを感じる…。

 

>比企谷との絆が深まったことで、"道化師"のペルソナを生み出す力が増幅された!

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

「ひそひそと話をしていたけど、作戦会議は済んだのかい?」

 

 俺達の話が終わったのをみると、葉山が気さくに話しかけてくる。思えば随分と話してしまっていた。

 

「ああ。待たせてしまってすまない」

 

 待たせてしまって申し訳ないといいながらも、俺はサーブを打つことなく、コートにボールを打ち付けながら比企谷の合図を待った。

 

 発言と矛盾したこの行動に不信感を覚えたのだろう。警戒ゆえか、葉山・三浦ペアは再度しっかりと位置につきなおす。ただ、流石に俺達が何をしようとしているかまでは解っていないらしい。

 

 そしてついに時は訪れる。前触れもなく、比企谷が遥か上空を右手で指し示す。比企谷のGOサインだ。今現在、風はおよそ吹いていないように思える。しかし、俺は一切迷うことなく、ラケットを握っていない手でボールを上げた。

 

ペルソナアアアアアア!」カッ

 

 全身全霊でボールを遥か彼方上空に打ち上げる。打球は空を上へ上へと、登り竜のように這い上がっていく。そのボールが最高到達点に達した時、舞台裏でずっとスタンバイしていた、一陣の風が再び舞い込む。

 

「まさかっ…!?」

 

 葉山は流石にこれで気付いたらしい。特殊な潮風の影響で打球は再び風に煽られ、不規則な軌跡をつけていく。

 

「こ、これは、風を操る伝説の技、『風精悪戯(オイレン・シルフィード)』!!」

 

 材木座によってまたも鮮やかなる名前が授けられる。確かに、万物流転そのものを形容するようなこの動きは、まさしく妖精の悪戯そのものだ。

 

 空中を誰の干渉も受けずにふわり気ままに流れるボール。だが、それさえも長くは続かない。見るもの全てを惑わしてみせる風の妖精は、この地上の全てを支配する力、重力によって絡めとられていく。

 

 するとどうだ。峠を繋ぐ橋の糸がプツンと切れたみたいに、高さという概念を全て純然たる力に変換した。一瞬で顔色を変えた打球は、我先にと下へ下へ自由落下を始める。

 

 掛け合わされた威力を秘めたボールは相手のコートに着弾。砂埃を地上に置き去りにして再び空への旅へと漕ぎだしていく。三浦がそれを打ち返そうと、おぼつかない足取りで必死に球を追いかけるも、ボールはコート後ろの金網のフェンスに向かっている。

 

「くっ!」

 

 葉山はラケットを投げ捨てると、駆け出した勢いそのままに走り出す。そして砂埃の中、二人の姿は消えていった。

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 砂埃が晴れると、葉山が金網に背をぶつけ、フェンスから三浦を庇うように抱き抱えていた。肝心のボールはコート上に転がっており、俺達の勝利が確定する。

 

 されど、聴衆にとっては試合結果などは二の次らしい。三浦を救出した葉山を賛美するように、どこからともなく葉山コールが鳴り響く。

 

「大丈夫か!」

 

「ええ、大丈夫です」

 

 心配になり救急箱を持って駆け寄ると、どうやら二人とも無事らしい。何はともあれ怪我がなくてよかった…。

 

 そう思ったのも束の間。フェンスの間からぞろぞろとオーディエンスがテニスコートに一斉に入り込み、あっという間に大勢の生徒達に辺りを囲まれてしまった。全方位に溢れるばかりの人だかり。ついさっきまでは見えていた比企谷達の姿も、今ではもう全く見えやしない。

 

「な、何だこれ…。あ、あほくせぇ…」

 

「改めて考えると、本当にすごい人数集まってるわね…」

 

「いや…そんな悠長にしてる場合じゃねぇぞこれ。先輩は…、うん、ありゃ無理だな。すません、先戻ってますね…」

 

「見捨てるの早っ! でも…うん。絶対無理かも…。あ、あはは…。頑張って先輩」

 

 異変を感じた比企谷達は、早々にこの場から撤退していく。俺はそんな彼らの声すらも、かすかにしか聞きとることができなかった。

 

「鳴上ぃ! ナイスショットだったぞ!」

 

「葉山くんも流石だったよ~!」

 

「腐、腐腐…。はやはち派だったがこれはこれで…。いかんいかん鼻血が…」

 

 注目はあっという間に俺と葉山に注がれ、学年を問わず人がどんどんと詰め寄ってくる。多くの人から次々に激励の言葉をかけられるが、俺は聖徳太子ではない。大勢の人に一度に捲し立てるように言われると、どうにも聞き取れない。

 

「ねぇねぇ! 葉山くんと鳴上くんでツーショットしてよ!」

 

「それそれ! 葉山とイケメン転校生のツーショットなんてマジ貴重っしょ!」

 

「イケメン二人のツーショット…。キター! 色々とみなぎってきたよ…愚腐腐腐…」

 

 いまいち要領の掴めぬまま、その場の流れで俺と葉山は横に並ばされ、写真を何枚もパシャパシャと撮らされた。隅では鼻血を出して倒れこんだ女子生徒を三浦が外に連れ出しているのが見える。その後も勢いのまま胴上げされたりと色々…、もはや何かのお祭り状態だ。

 

 もうなるようになってくれ…。俺はどこか自棄になって、数多のニーズに応えありとあらゆるポージングをカメラの前でしてみせる。

 

 結局、騒ぎを聞き付けた城廻が仲介に入るまで、この騒動は続いた。

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 試合ももちろん疲れたのだが、その後の対処にも追われてすっかり疲労困憊となった俺達二人。安らぎを求めてたどり着いた自販機の前でゆっくりと体を休める。事態を鎮圧してくれた城廻には本当に感謝してもしきれないな…。

 

「お疲れ…」

 

「ええ、先輩もお疲れさまです。というか先輩は結構ノリノリでしたよね…。そのせいで俺も…」

 

 葉山からもの言いたげな視線を向けられる。彼からしてみると、鳴上がサービス精神旺盛なせいで、隣にいた自身も数々の要望に応えざるを得なくなったのだ。葉山としては早急に退散したかったのだが、そういうわけにもいかなかったのである。

 

「いや、なんか途中から楽しくなって、つい」

 

「…それにしても抱きつくまでやるのは本当に驚きましたけど…」

 

「いや、まぁいいかなって。……なんだろう、ノリで? なんだ? もしかしてもう一度したいのか? すまないが、俺はそういう趣味は――」

 

「違いますよ。本当に違いますからね」

 

「あら、案外ウブなのね」

 

「は、はは…」

 

 完全女装モードで発言したのもあって、葉山の隙のないスマイルは最早崩れ去り、ただの引き笑いになってしまっている。話の流れに不穏なものを感じた彼は、早急にこの流れを絶ちきって、話をテニスの試合内容にすり替えた。

 

「え、えっと…。そ、それと、最後のショットにはやられました。まさか風を使って打ち込んでくるなんて思いもしなかったですよ…。まさに魔球ですね」

 

「そうだな…。俺も考えもしなかったよ」

 

「え?」

 

「実はあの案、比企谷が提案してくれたんだ」

 

「…彼が? と言うことは…、あの時話していたのはこの事…?」

 

「ご明察だな。ちなみに風のタイミングを読んでくれたのも比企谷だ。どうやってるのかは分からないけど…。彼は見事一発で当ててくれた」

 

 他にも最初に大きく点差を引き離してくれた雪ノ下、負けじとあの中で頑張ってくれた由比ヶ浜。そう、俺だけじゃ決して勝てなかっただろう。『みんな』がいたからこそ勝てたんだ。

 

「そうなのか…。これは一杯食わされちゃったな。そういえば先輩は、その、奉仕部…に入っているんでしたっけ?」

 

 その問いかけに、俺は一度だけ首を縦に振った。

 

「そうですか、なら…。その…。雪ノ下さんの事、少し気にかけてはくれないか…。いや、俺が言うのも変な話なんだけど…。もし何かあったとき、支えになってあげてほしい」

 

 俺が言うのはあまりにも差し出がましいんだけどね…。と、彼にはあまり似合わない、強い自虐を含んだ口振りで俺に頼みこんだ。彼が何を思ってそれを頼みこんだのか…。今の俺には知りようがないけれど。

 

「もちろんだ。同じ部活を共にする仲間なんだ。誰に頼まれなくたって助けるさ」

 

 仲間が困っていたら助ける…。俺にとって至極当然の事だ。葉山のこの願いを断る理由は皆無と言っていい。

 

「!? そう、ですか…。…ありがとう」

 

 

 

>葉山から深い感謝の気持ちを感じる。

>新たな絆を手にいれたことで、"皇帝"属性のコミュニティである"葉山 隼人"コミュを手にいれた!

 

 

 

「それにしても先輩、転入してきたばかりなのに、本当に顔が広いんですね。さっきの人だかりには三年生も結構見受けられましたし…」

 

 彼はそこで言葉を切った。

 

「……こうやって、色々な人を巻き込んで変えていく…。まるで『あの人』みたいだ」

 

「『あの人』? 葉山の知り合いの人か?」

 

「え…。ああ、はい、そうです。…でもそうだな。似てるとは言ったけど、それは表面だけで。上手くはいえないけど何か、根本的な物が違うような気がする。だから似てるっていうのは、ちょっと的外れなのかも」

 

「えっと…。ど、どっちなんだ…?」

 

「ははっ…。いや、つまらないことを言ったかな。すいません、忘れて下さい。…じゃあ俺は教室に戻ります。昼休みもそろそろ終わりますし。あ、これ、受け取って下さい。優美子の事も色々と迷惑かけたので。些細なものですけど…」

 

 お詫びと、話に付き合ってくれたお礼と称して、スポーツドリンクを一本俺に手渡す。機会があればぜひまた話したい、という言葉を最後に、彼は爽やかに教室に戻っていった。

 

 結局『あの人』って誰なんだ…? 俺と似ているけれど、その実で似ていない人…。当然心当たりなど誰も思い浮かぶことはなく、俺は少しだけ悶々とした気持ちで午後の授業に臨んだ。

 

 

 

to be continued




タイトル日本語訳
『目を疑うようなショットが今、放たれた。』


今作の内容で、誤解を生んでしまいかねないので弁解させていただきますと、葉山が鳴上に雪ノ下を支えてくれと頼んではいますが、今作でも原作同様、雪ノ下に踏み込んでいくのは八幡の役目です。(鳴上はあくまで見守るポジ)

ではなぜ頼みこんだのかというと、葉山が鳴上と自分自身の間にある種のシンパシーのようなものを見出だしたから…。という理由です。

葉山は原作中でも雪ノ下に対する罪悪感を未だ深く抱えている描写が点在しており、恋愛感情の有無こそはっきりとはしていませんが、幼馴染として大切に思っているのは確かだろうと考え、奉仕部に所属かつ、雪ノ下とある程度仲良くしていて、なお協調性のある番長に相談するのは自然かな…。という解釈でシーンを追加しています。

こうした本編で言及できない部分で、かつ過敏になるグレーな部分は、後書きで弁解言い訳させて下さい。

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