血界戦線 ~Documentary hypothesis~   作:完全怠惰宣言

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初めて書きました。
今までいろいろな方の作品を読ませていただいているので似ている書き方をしているかもしれませんが、海よりも広い心でよろしくお願いいたします。


異界都市の茶屋店主

今から3年前、「NY大崩落」と呼ばれる未曾有の大災害によってニューヨークが崩壊、その後再構成され、異界(ビヨンド)と現世が交わる異形の都市ヘルサレムズ・ロット(略称HL)が誕生した。

人類と異界存在が共存して暮らす奇怪生物・神秘現象・魔導科学・超常現象、その他etc...混沌が溢れているこの街の片隅で一人の男が目を覚ました。

 

HLには珍しい畳張りの日本建築の部屋で畳ベットで寝ていたその男は突然現れた人肌の温かさと女性特有の甘い香りで目を覚ました。

覚醒させられた頭を動かし、昨晩眠りについた時にはなかったはずの腕の中のぬくもりと、抱き合う形になったせいで潰れさせてしまったその豊満な胸部に意識の大半を持ってかれかけるが、その存在に意識を集中させる。

黒髪のボブカットが目に入り、本当に色々とギリギリだったのだろういつも仕事着で愛用しているシンプルなダークスーツのまま、碌に着替えずにベッドに潜り込んできた彼女のその柔らかい髪を一撫でして声をかける。

 

「お帰り”チェイン”」

 

「・・・・・ただいま、”悠月(ゆづき)”」

 

”チェイン・皇”

「不可視の人狼」と呼ばれる存在であり、交際及び同棲1年半になる愛しい彼女へと。

 

 

意識が(無理矢理)覚醒したためベッドのヘッドボードに背中をくっつけて彼女を抱きかかえる形で態勢を作り替える。

室内の昭明が薄暗いためよく見えないが、普段通りに見える彼女の顔は疲れきっており、目元にはうっすらと隈がみえた。

一方でその顔は欲しかったおもちゃを与えられた無邪気な子供のようにも見えた。

 

「人狼局の仕事、お疲れ様」

 

「・・・うん、・・・疲れ・・・・・た」

 

「でも、せめて上着は脱ごうよシワになっちゃうし寝にくいだろ」

 

「・・・んーーーん・・・」

 

子供が親に甘えるようにぐずる彼女の髪を手櫛でほぐしながら着替えを促すが、どうやら本当に疲れすぎてて甘えん坊モードになってる。

 

「チェイン、もう少しだけだから」

 

「・・・・・・脱ーがーしーてー」

 

そういうと対面になるように座り直し、両腕を振り上げバンザイ状態になる彼女。

 

「はいはい」

 

既に眠りの縁に佇みまともに動こうとしない彼女のジャケットを脱がしていく。

シワにならないようにサイドテーブルにゆっくりと置き彼女に意識をもう一度向けるとズボンを脱ぎさりワイシャツ一枚になった彼女が目の前にいた。

ワイシャツ一枚になったことでより強調された胸元(ご丁寧にボタンも上3つ外されていた)とワイシャツからすらりとのびた脚。

悲しいかなこういう時、彼女から漂う女の色気に大敗している自分はやはり後輩の女関係に強く言えない悲しい男だと再認識させられる。

 

「ゆ・・・づ」

 

「ん?」

 

「おや・・・す・・・・・・・・み」

 

気が付けば再び抱き枕宜しく抱きつかれ深い眠りについた彼女を愛しく思う自分は既に末期だと考えさせられるが、この時間もまた自分にとって大切な時間なのだと思える。

そんな自分「楠守悠月(くすがみゆづき)」に呆れると共に自分のもとに帰ってきてくれた彼女と共に再び眠りについた。

 

午前7時、体に染みついた習慣で目が覚める。

熟睡中の彼女をベッドに残し、洗面台で顔を洗う。

その際、ひと悶着あたのだが互いのために伏せておこう。

顔を洗い、歯を磨き、髭を剃り終え朝食の準備のためにキッチンへと向かう。

朝は比較的に弱い、だからこそ食べないと始まらない。

そして、純日本人の自分はやはりご飯とお味噌汁が嬉しい。

おかずは白菜の漬物とベーコンエッグ。

そして、一番のこだわりは仕事にも直結してくる”これ”だ。

 

 

まずは急須に茶葉を入れる、目安はティースプーンで2杯。

鉄瓶で沸かしたお湯を直接急須へ注ぐ(この時お湯の温度の目安は95℃くらいがいい)。

その後、30秒ほど待つ(味が濃いのが好きな人はもう少し長めにまってもいいと思う)。

その後、少しずつ均等に注ぎ分け、最後の1滴までしぼりきる。

 

 

これで、朝食の時に飲んでもらいたい”玄米茶”の完成である。

お茶の香りが広がっていく。

鼻から思いっきり吸い込み、香りを楽しんでいると、足音が聞こえてきた。

 

「・・・・・・・・・・・・おはよう」

 

まだ少し眠いのかふらふらした足取りのままチェインが寝室から出てくる。

そして、その勢いのまま抱き着いてきた。

 

「はい、おはよう」

 

そういって抱きしめ返すと少しうれしそうに頬ずりしてくる彼女は”狼”というよりも”猫”らしいと思ってしまう。

 

「朝食、出来てるから座って」

 

「・・・・うん」

 

少しだけ名残惜しそうにしながら離れて互いに対面になるように座った。

 

「「いただきます」」

 

男の手料理で昔は悪いと思っていたが、食べ始めると次第に機嫌がよくなっていく彼女を見れるのは少し嬉しく、自分の秘密の一つでもある。

 

「今日の予定は?」

 

チェインがベーコンに嚙り付きながら聞いてくる。

 

「昼からライブラ、そのまま待機・・・・だろ?」

 

「あー、そうだった、悠月は?午前中予定あるの?」

 

「オフィス行くまではお店にいるよ、今日は予約もないし」

 

茶寮(さりょう) 翡翠庵(ひすいあん)

 

それが表向き経営している和風喫茶の名前だ。

HLの片隅にある小さな店には壁一面に茶葉を保管する桐箱が並んでいて、中には世界各国の茶葉が存在している。

完全予約制の茶葉販売店ではあるが常連客ともなると試飲も兼ねてお茶を楽しんでいくスタイルをとるので必然的に様々な茶器も揃っていった。

最近では異界側の客も増えてきており、時折一昔前の間違った日本を信仰する外国人のような反応をされるのが最近の悩みでもある。

 

「・・・・なら、私もお店の整理手伝うわ」

 

「ありがとう、あと今日はレオも手伝いに来るらしいからそんなに忙しくならないはずだよ」

 

そういうと若干不機嫌そうな顔になるチェインだったが、たぶん二人だけの空間にレオという(比較的まともな)異物が入り込むのが嫌なのだろう。

最近、互いに忙しくて二人だけの時間が無かったせいでもあるかな。

朝食を終えて、後片付けをし店の整理を始めて10時を過ぎたごろ。

 

「おはようございます」

 

「ウキャ」

 

話題になっていた少年。

ボッサボサの天然パーマにほぼ閉じているんじゃないかと思ってしまう糸目、ゴーグルを首にかけた少年レオナルド・ウォッチがその頭に相棒の音速猿ソニックを乗せて現れた。

 

「やぁ、レオ、ソニックおはよう」

 

「やぁ」

 

「どーもっす、お二人とも。相変わらずいい匂いのする店ですね」

 

「ウーキャー」

 

そう言うとソニックと共にわかりやすく鼻の穴を広げて音がする程に周囲の香りを嗅ぎ始める。

 

「血生臭いよりは良いだろ、あと”匂い”じゃなくて”香り”といったほうがカッコいいぞ」

 

そう言って注意してやると「まじっすか」と言いたそうな顔をしたレオ。

 

「ま、確かにあのクソモンキーみたいな人類にも到達できていない下等生物に成り下がりたいならいいけど、女の身とすればそういった言い方の違いに心動かせられるものよ」

 

「いや、マジっすか気を付けますわ」

 

「そうね、その方が彼女も喜ぶでしょうに」

 

そういった他愛無い話をしながら在庫チェックを行い予定よりも早めに済んだので一息入れていくことにした。

 

「それじゃ、行こうか」

 

そう言って席を立ったオレに続くように着替え終わったチェインがベッドルームから出て来て、レオも後に続いた。

 

「よくよく考えると悠月さんの店ってちゃんと客来てるんですか」

 

「おやおや、先週20食も人の家にたかりに来ていたとは思えない発言だなレオ」

 

店の心配をされたので意趣返しに少し意地悪をしてやった。

 

「いや、だからこそなんすけどオレ達にあんなにメシ奢ってくれてその上、チェインさんの酒代まで稼ぐなんてすごくないっすか」

 

本当に尊敬している目で見られると少し心が痛む。

 

「色々とやりようはあるのさ、それにチェインの酒代は自分で稼いできてくれるから大丈夫だよ」

 

術式加工された店のシャッターを閉めカギをかける。

 

「さってと、それじゃ行こうか。チェイン夕飯どうする?」

 

「全然、決めてないのよね。でも久しぶりに悠月の料理が食べたいなぁ」

 

「僕はメアリとウィルと一緒に行こうって約束してるので二人を迎えに行ってきます」

 

アジトに行く前の相談をしながら店を出る。 

一歩外に出ればそこはいつものヘルサレムズ・ロッドの大通り

いつものように人間と異界人となんかよく解らない連中が道を練り歩き、奇々怪々、混沌極まった二年前から見慣れた光景が広がっていた。

視界の片隅で殴り合ったり殺し合ったりしている連中がいるけどこれも日常だ。

 

そして、

 

店を出て、歩道に出て、立ち止まって。

空から巨大なロボットが降ってくる。

 

「って、うぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?」

 

これも、日常だ。

 

 

突如目の前に落下してきたのは全長25メートルくらい、4本腕に其々アホみたいな巨大チェーンソーとガトリング銃を持った巨大な戦闘用サイボーグスーツを着用した男性。

大通りのコンクリートを爆砕し、車が大量に潰され、数十人がトマトみたいな染みになっている。

 

「ちょ、って、うぇ、な、なんだこれぇ!?」

 

「うっさいわよ、レオ。こんなの日常茶飯事でしょう」

 

「そうだね、でも見たことない奴だね。どっかのモグリが作った戦闘スーツかな?強そうだね」

 

三者三様の感想を素直に言ったところでチェインのポケットから携帯が鳴った。

 

「はい。あぁ、スターフェイズさん?えぇ、それなら今目の前に。えぇ、えぇ・・・・了解」

 

「スターフェイズさん?何だって?」

 

「ヴァルハラ・ダイナミクスの大規模戦闘用サイボーグ補助スーツ。製作途中でクビになった開発者に強奪されたらしいけど、現在暴走中」

 

「まじっすか」

 

「レオそれ今日何回目」 

 

呆れて物も言えないが、ヘルサレムズ・ロッド的には結構普通だ。

 

「社名に傷がつく前にどうにかして欲しいってロウ警部補経由であの子から依頼だそうよ」

 

「破壊許可は?」

 

「出来るならどうぞだって」

 

「あのー、喋ってる場合ですか?」

 

件の物体は現在進行系で暴れまわってる。

とりあえず通りの車はほとんど消えて2桁くらい死んでいるはずなんだけど、ここくらいまでは日常だけど、

 

「家と店壊されるわけにはいかないね。二人は下がっていて、直ぐに破壊するから」

 

「りょーかい」

 

「うぃっす」

 

そそくさと店の中に隠れる。

オレとLHOSによって構築された結界で守られているうえにオレが守ろうとしているだから、確かにこの場では店内が一番安全だ。

 

「さてと、丁度良い距離だし、やりますか」

 

左手の拳を強く握り込む。

その瞬間、左手に今まで握られていなかった白銀の弓のような物体が出現した。

 

吼漸百罫血仙兵装弓式(くぜんひゃっけいけっせんへいそうゆみしき)

 

弦を引き分ける動作をとった一瞬の間に光の矢が形成されていた。

 

花天ノ法(かてんのほう)

 

鏃が鋭く研ぎ澄まされていき、ついには両刃のナイフのような形となった。

 

鳳扇花(ほうせんか)

 

放たれた矢は操縦者の男性が搭乗している中心部に突き刺さるのと同時に、その巨大な全体を包み込むように蕾の形となり、数秒とたたずに弾け飛んだ。

蕾に包まれたはずの補助スーツはなんの痕跡もなくなくなっていた。

ただ、この光景を目撃した者の目には、さながら光の花のようだった。

 

「それじゃ、行こうか」

 

そこには、戦闘後とは思えない暖かな笑みを浮かべた楠守悠月(一人の男)が佇んでいた。




初めて、自分の作品を表に出しました。
いつも、一定のスピードで投稿していらっしゃる先人の皆様に尊敬の念を抱きました。
今後ともよろしくお願いいたします。
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