血界戦線 ~Documentary hypothesis~   作:完全怠惰宣言

5 / 7
中途半端に力尽きた結果です。
やっぱり先人たちはすごい。


どんな始まりであっても

-あの日握ることのできた君の手を忘れない-

-あの日握ってくれた血だらけの手を忘れない-

-あの日見た傷だらけの唖然とした君の顔を忘れない-

-あの日見れた血だらけの笑顔を忘れたくない-

-あの日、不意に出た言葉に嘘はない-

-あの日、あなたに言われた言葉が嘘でも構わない-

--今こうしていられることが私たちにとっての”真実”なのだから--

 

 

どんな始まりであっても

 

 

 

「チェインさんと悠月さんって、いつも仲イイよね」

 

ある日のライブラでの昼下がり。

アジトには暇を持て余したメアリとバイト明けで疲労困憊のレオ、ゲームに夢中のクラウスと銃の手入れを行うK・Kが何もない一日を過ごしていた。

そんな中、メアリが突然思いついたかのように突拍子もないことを言い始めた。

 

「いや、いきなりどうしたのさホワ・・・メアリ・・・さん」

 

今までの習慣でふとした瞬間に彼女の”彼女”の”カノジョ”の(もういいですかメアリさん・・・・あOKですか)名前を間違えてしまうダメな彼氏レオナルド・ウォッチ。

それを睨み付ける事で言い直しさせるようにしつけたメアリ・マクベスは最近とてつもなく良くしてくれる恩人である男性と、ああなりたいと理想に掲げる(主に肉体的に)女性の仲睦まじさにため息をついて感心している。

それは、ついさっきまで同じソファーに座りながらその間にペットとなった魔獣を座らせ一緒に昼寝をしていた光景を見てそう思ったのか。

もしくは、どちらかが不在の時でもついつい相手を探して周りを見渡してしまう癖を最近知ったからだからだろうか。

はたまた、この前2人で遊びにいった時に聞いた彼氏自慢惚気大会でレオと違い撃沈せずにやり返した悠月の強かさを知ったからだろうか。

兎に角、メアリが現在恋人としての関係の目標と定めている悠月とチェインは人狼局に呼ばれアジトから出かけて行ったのである。

 

「だってさ、いっつも気が付くと二人寄り添うように一緒に居るし、だからって前のホワイトとブラック(あたしとお兄ちゃん)みたいな依存しあう関係でもなく、本当に自然体でいれるってさ理想じゃない」

 

そう言ってソファーに備え付けられたクッションを抱え込みレオにもたれ掛る。

 

「それ、解るわぁ、”お姉さん”その気持ちすっごく解るわぁ。あの二人ってさ、あの関係が当たり前すぎて「いや普通に喧嘩しますから」って言われても逆に嘘だって思って信じられないわよね」

 

目をキラキラさせながら銃をケースへと戻し会話に参加してきたK・K。

ライブラメンバーとしては古参に近い彼女ですら彼らの馴れ初めは知らず、気が付いたら今の関係になっていたらしい。

女3人寄れば姦しいなどと言われているが、性別に関係なく人の恋路というものは古より受け継がれてきた話のタネである。

 

「メアっちが憧れるのも何となく納得しちゃうのよね、なんていうかさもう完全に”夫婦”なのよ。”恋人”ていう関係性ではあるんだろうけど雰囲気が完全に”夫婦”なのよ。この間もたまたま公園であったんだけどさ、あたしの旦那が、そうあたしの愛する旦那が二人を夫婦と勘違いしてたんだから。そういえばあの時もらったお茶は美味しかったわね、今度茶葉貰えないか聞いてみましょ」

 

話が脱線しかけるが悠月とチェイン、二人の関係の深さは確かに周りから見ればすでに結婚して子供も受けているレベルの親密さである。

一方で”束縛する”わけでなくあくまで”他人”であることを理解した上で互いに尊重しあっているような間柄に近所の奥様方も人間・異界人問わず憧れているらしい。

そんな風に3人で話し合っているとエレベーターの到着音がしたので振り返る。

 

「ただいま、戻りました・・・・・って何凝視してるんですか?」

 

そこには、件の中心人物の片割れである楠守悠月が立っていたのである。

 

「気にしないでください」

「お気になさらず」

「うっふふふふふ」

 

三者三様の反応に首をかしげながらクラウスの前に移動する悠月。

クラウスも彼の気配を察知して顔を上げる。

 

「人狼局からですがつい先ほど”奴”がHLに戻ってきたと情報が上がったそうです。私のほうも”伝”を頼って確認したところ”彼女”から情報が回ってきたと日本支部から連絡をもらいました」

「そうか、君たちからしたら因縁の相手だろう。我々も十二分にバックアップさせてもらうから頑張りたまえ」

 

その後も少しの間二人だけで話し終えると悠月はエレベーターへとクラウスはゲームを終了させギルベルトを伴いどこかへ消えていった。

 

 

 

 

「本日付で我々に協力してくれることになった”不可視の人狼”のチェイン・皇君だ」

 

そういわれて紹介された女性は明らかにクタクタの革ジャンを羽織り、インナーもヨレヨレのタンクトップで髪もボサボサだった。

明らかに年上と判断されるK・Kや組織のボスとしてすでに面識のあるクラウス、胡散臭い笑顔を張り付けているが一様年上としてたてられているスティーブンとは明らかに違いこちらに向ける視線は敵意と疑心に満ちており人の姿をしていながら醸し出される雰囲気は手負いの獣のようであった。

あいさつも御座なりに済ませるように会釈とも取れない首だけであった。

 

「早速で悪いが、今回の事件から彼女たちの力が大いに期待されてくる。そのため、能力の相性もよさそうな悠月と組んで捜査に当たってもらいたい」

 

そうクラウスが言った瞬間、彼女の瞳の奥に再び黒い何かがうごめいたように感じた。

ライブラとして活動を始めたばかりの我々に来た依頼は当初からきな臭いものであった。

まず、依頼主が不明であること。

ある程度探ろうとすると様々な筋から圧力がかけられてしまい、検索ができなかった。そのうえ、依頼されるまでに少なくとも40人近い仲介を経て依頼されていることからも想像できる通り人界でもかなりの上流階級の存在からの依頼であると考えられた。

次に、依頼内容が具体的過ぎるのだ。

今回の依頼内容は「アブラシィジオテクノロジスティ社から盗まれた薬を一月以内に全て回収し犯人を捕らえること」とされていた。

普通、こういった依頼は「目的」のみが伝えられ、ここまで詳細に期限までつけて依頼されることはまずはない。

最後に、今後発足する「人狼局」が協力体制を敷いてくれている点、これが最も怪しい。

政府関係機関でしかも発足予定(・・・・)とされている暗躍機関を協力させるということはよっぽど一般に知られたくないか急を有する事態なのだろうと推測された。

そんなこともあり、一時的に相棒となるこの女性との捜査が幕を開けたのだった。

捜査は(・・・)実にスムーズにいっていた。

彼女たち”不可視の人狼”の極めて高度な隠密能力によりいつも以上に情報がこちらに入ってくる。

誰が見ても狂喜乱舞しているスティーブンをしり目にどのような時でも自分が触れることはできない位置に立っている彼女を観察する。

彼女は誰に対しても心を許していない。

それは、食事を一緒にするようになったK・Kの姐御に対してもそうだ。

彼女は姐御が食べたものしか口にしない。

自分に出されたものは何かと理由をつけて相手に食べさせる。

酒を飲みに行った時もアルコール分だけ希釈して体外に排出しているのを見た。

クラウスと話している時もそうだ。

クラウスは気づいていてはいないが、彼女は常に視線をクラウスの利き腕から外さない。

目を合わせて話している時も注意は利き腕に向けられている。

そして、クラウスの間合いギリギリに立っている。

スティーブンとの報告にしてもそうだ。

オレと報告に行く際は、オレを盾にしてスティーブンの間合いから外れ常に窓や壁などの逃げ場を意識している。

オレ(悠月)と行動している時などその警戒心が顕著に表れている。

一緒に行動しているようで常に逃げ場を探している。

ある時、密室にて取引をしていた際にも最も薄い壁に背を預けて何かあってもすぐに逃げ出せるようにしていた。

ストレスで頭がどうにかなってしまいそうな時、彼女の同胞である人狼からそれとなく聞かされた彼女の過去は壮絶だった。

異界と人界が交わる前、幼い彼女は同胞にかどわかされ興味本位で人間の前に現れてしまった。

そして、捕まり、ありとあらゆる方法でその体を調べられ、泣いて喚こうとも彼女を捕らえた人間たちは彼女をモルモットを扱うように、丁寧に実験し続けた。

そんな地獄のある日、彼女は交配実験と称して乱暴に扱われようとしていた。

その相手とはオレの因縁の相手でもある糞野郎であったことと、なんの因果か双子に間違われるほどに似ているオレを見ると当時を思い出してしまい、恐怖と殺意が心から溢れてきてしまうらしい。

幸いにもオレの旧友と師匠によって救出された彼女は以降、誰も同胞すら信じられず今まで生きてきたとのことだった。

それを聞いてしまっていこう、彼女に対する興味が薄れていき、あの日ついに彼女を見失ってしまった。

 

「くっそ、どこ行きやがったあの狗女」

 

その日は朝から彼女の様子がおかしかった。

いつもはオレが近づけば誰にも気づかれないように離れていくのに、今日に限っては周りが見ても分かるぐらいに怯えた目でオレを見るまで気づかず、逃げるように離れていった。

そして、人込みの中を歩く際も普段なら離れて歩くのに今日はやけに近くにいた。

そんな彼女が行方をくらませたのはほんの数分前だった。

いやその予兆は前日、アジトに戻る途中に現れていた。

裏路地を歩いてアジトへと向かっていたその時、彼女がフェンスへともたれ掛かる様に背を預けて視線の先に存在する何かから逃げ出そうとしていた。

自身の存在を希釈することにすら頭が回らないほどに混乱している彼女をほっておけず力づくで自分に引き寄せ周りが見えないように抱きしめると彼女はまるで悪夢を見た幼子のように怯えていることが分かった。

その後、数分彼女が落ち着くまで時間を有した上にアジトにつくまで彼女がオレの服から手を離すことはなかった。

そんな彼女が今日はいつも通りだったこともあり油断していた。

 

「(落ち着け、落ち着けよオレ。ここじゃ”あれ”が出来ないから一先ずどこか一人になれる場所へ・・・・って駄目だ。あの狗女にマーキングつけてないから”あれ”使えない)」

 

自分の抜け具合に腹が立つ一方で頭の片隅では冷静に現状使える方法を模索していた。

そして・・・・・・・・。




というわけで続きます。
こう書きたいというモノはあるのですが上手く文章にできない哀れな作者をお許しください。

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